地震が発生した際、「縦に突き上げるような揺れ」と「横に大きく揺れる動き」のどちらを経験したことがありますか?これらはそれぞれ「縦揺れ(P波)」と「横揺れ(S波)」と呼ばれ、揺れの性質も影響力も異なります。地震速報や体感情報では「どちらが危ないのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、「縦揺れと横揺れの違いは?」「どちらが危険性が高い?」「それぞれの揺れにどう対応すべきか?」など、地震対策として重要な情報を詳しく解説します。正しい知識を身につけて、もしもの時に命を守る行動につなげましょう。
1. 縦揺れと横揺れとは?それぞれの特徴と仕組み
1-1. 縦揺れ(P波)とは?
縦揺れは地震発生直後に最初に到達する波で、「P波(Primary wave)」と呼ばれます。地面を上下に押し引きするような動きが特徴で、「ドンッ」と突き上げられるような感覚を覚えることがあります。速度が速く、揺れは短時間です。
1-2. 横揺れ(S波)とは?
横揺れはP波の後に続いて到達する揺れで、「S波(Secondary wave)」と呼ばれます。地面を左右に揺さぶるような動きが特徴で、建物が大きく揺れ、家具の転倒などの被害が多くなる原因になります。到達はP波より遅いですが、揺れの強さと持続時間が長く、被害が大きくなることが多いです。
1-3. 2つの揺れの比較
比較項目 | 縦揺れ(P波) | 横揺れ(S波) |
---|---|---|
到達の速さ | 速い(最初に到達) | 遅い(P波の後) |
揺れの方向 | 上下方向 | 水平方向(左右) |
持続時間 | 短い | 長い |
被害の大きさ | 比較的小さい | 大きいことが多い |
2. 危険性の高いのはどっち?縦揺れvs横揺れ
2-1. 建物被害を大きくするのは横揺れ
横揺れは構造物に対して横方向の強い力を与えるため、柱や壁の倒壊を招きやすく、建物被害が大きくなりやすいのが特徴です。特に高層ビルや老朽化した建物は大きな損傷を受けやすくなります。
2-2. 家具の転倒・落下も横揺れが原因
家庭内の被害、特に家具や家電の転倒・落下、ガラスの破損などは、ほとんどが横揺れによるものです。人への直接的な被害にもつながるため、命の危険を伴うことがあります。
2-3. 突き上げる縦揺れも一瞬で危険
縦揺れは一瞬の強い衝撃で足元をすくわれたり、上から物が落ちてきたりすることでケガのリスクがあります。構造によっては基礎にダメージを与えることもあります。
3. 揺れによって異なる行動のポイント
3-1. 縦揺れ時:まずは姿勢を低くし、頭を守る
突き上げるような衝撃に驚いて立ち上がるのは危険です。身を低くして、頭部をクッションや腕で保護しましょう。天井からの落下物にも注意が必要です。
3-2. 横揺れ時:すぐに安全な場所へ移動
家具が倒れる前にテーブルの下に潜る、壁際から離れる、ガラスの近くを避けるなど、安全確保が重要です。揺れが収まるまで動かず、身を守りましょう。
3-3. 揺れの違いを見分けるのは難しい
実際には、縦と横の揺れは数秒以内に連続して起こるため、体感で区別するのは困難です。そのため、「揺れたら即、安全行動をとる」ことが最も重要です。
4. 過去の地震から見る被害と揺れの関係
4-1. 阪神・淡路大震災(1995年)では横揺れが甚大な被害を発生
阪神・淡路大震災では、横揺れの激しさが住宅倒壊や高速道路の倒壊を引き起こしました。特に木造住宅の被害が集中し、多数の犠牲者を出しました。
4-2. 東日本大震災(2011年)では長周期の横揺れが高層ビルに影響
首都圏の高層マンションでは、長く続くゆっくりとした横揺れ(長周期地震動)によって家具が転倒するなどの被害が出ました。免震構造の重要性が改めて注目されました。
4-3. 縦揺れが強かった熊本地震(2016年)
熊本地震では縦揺れの衝撃が強く、短時間で建物が破壊される例もありました。建物の基礎にダメージを与えたケースも多数報告されています。
5. 事前対策と日常でできる備え
5-1. 家具の固定で横揺れ対策を
横揺れ対策には、家具をL字金具で壁に固定する、滑り止めを使う、重い物を下に置くといった工夫が効果的です。寝室やリビングでは特に優先的に対策しましょう。
5-2. 天井材や照明の落下防止で縦揺れにも備える
天井材の補強、吊り下げ式照明のチェーン補強など、上からの落下物対策も忘れずに。突き上げで天井が崩れることも想定し、防災ヘルメットやヘッドライトも常備すると安心です。
5-3. 揺れを感じたら迷わず「安全行動」へ
揺れの種類を意識するよりも、「揺れを感じたら即座に身を守る」行動が最優先。揺れの初動で判断する力を養うために、防災訓練やシミュレーションも効果的です。
【まとめ】 地震の縦揺れ(P波)と横揺れ(S波)は、それぞれ異なる特徴と危険性を持っています。一般的には横揺れの方が被害が大きくなる傾向にありますが、縦揺れも建物の構造や状況によっては重大な被害をもたらします。大切なのは揺れの種類を見分けることよりも、「すぐに安全な行動をとる」意識と準備。日常から備えを怠らず、家族で防災意識を共有しておくことが、命を守る鍵となります。