「婚約指輪は給料の3ヶ月分」という有名なフレーズ、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。この言葉は今なお根強く語り継がれているものの、実際には「そこまで出さなきゃいけないの？」と疑問を抱く人も増えています。
本記事では、この“3ヶ月分”という基準がいつ、どのように誕生し、日本にどのように浸透したのかを明らかにしながら、現代の多様な価値観や経済状況に応じた婚約指輪の選び方を紹介します。従来の常識を知ることで、改めて自分たちにとっての最適な選択が見えてくるはずです。
1. 「給料3ヶ月分」の起源とは？
1-1. デビアス社の巧妙な広告戦略
「婚約指輪は給料の3ヶ月分」という言葉のルーツは、世界最大のダイヤモンド企業デビアス社のマーケティング戦略にあります。彼らは1930年代から1950年代にかけてアメリカで広告を展開し、「給料1ヶ月分」「2ヶ月分」と段階的に打ち出していき、やがて「3ヶ月分」が常識として広まりました。
1-2. 日本ではバブル期に根付いた価値観
このフレーズが日本で定着したのは、1970〜80年代の高度経済成長期からバブル時代にかけてのこと。収入の増加とともに、ブランド志向や贅沢品への関心が高まり、婚約指輪にも“高額＝誠意”という考え方が浸透しました。
1-3. メディアとカルチャーによる刷り込み
映画やテレビドラマでは、豪華なレストランで膝をつき、高価なリングを差し出すプロポーズシーンが繰り返し描かれてきました。こうした視覚的な演出が、「婚約指輪は特別なものであるべき」というイメージを強めていきました。
1-4. ステータスとしての意味合い
高価な婚約指輪は、単なるジュエリーではなく、「この女性を幸せにする覚悟がある」という社会的・経済的ステータスの象徴とも捉えられてきました。価格を通じて“覚悟”や“真剣さ”を示すという文化が、3ヶ月分という数字に信ぴょう性を与えていたのです。
2. 給料3ヶ月分は本当に必要？現代の平均価格とは
2-1. 実際の平均購入額はもっと低い
最新の統計によると、日本国内での婚約指輪の平均価格は30万円〜40万円程度。これは実際の月収1〜1.5ヶ月分に相当し、「3ヶ月分」はもはや伝説のような存在になりつつあります。
2-2. カップルの話し合いが当たり前に
現代では、婚約指輪はサプライズで一方的に贈るものではなく、二人で話し合って選ぶケースが一般的。好みや予算、ライフスタイルに合わせて納得のいく形を選ぶことが重視されており、価格ありきの価値観は見直されています。
2-3. 実用性重視のデザインが人気
華美で大きなダイヤモンドよりも、シンプルで普段使いしやすいデザインの指輪が人気を集めています。仕事中も邪魔にならないよう、低めのセッティングや引っかかりにくいフォルムを選ぶ人が増加中です。
2-4. 他の支出とのバランスを取る考え方
結婚には婚約指輪だけでなく、式・披露宴・ハネムーン・新生活準備と多くの費用が必要です。指輪だけに過剰な予算をかけるよりも、トータルでバランス良く予算配分する考えが広く支持されています。
3. 海外の婚約指輪事情との比較
3-1. アメリカも「2ヶ月分」からの変化
アメリカでもかつて「2ヶ月分」が目安とされていましたが、現在ではその基準にとらわれず、購入金額は個々の判断に委ねられています。収入に見合った現実的な選択が好まれています。
3-2. ヨーロッパは文化と伝統を重視
ヨーロッパでは、ジュエリーの価格よりも“歴史”や“物語”が大切にされます。祖母から母へ、そして娘へと受け継がれる指輪を使うなど、感情的価値を重視する傾向が強いのが特徴です。
3-3. アジア圏の多様な価値観
韓国や台湾でも、かつては広告の影響を受け「高額な指輪＝常識」とされていた時期がありました。しかし現在は日本同様、多様なスタイルが浸透し、自由な選択が当たり前になっています。
3-4. 国による文化の違い
日本ではまだ形式や体裁を重んじる文化が根強く残っており、「ちゃんとした指輪を用意するべき」との圧力を感じることも。一方で海外では、“自分たちに合ったスタイル”を堂々と選ぶカップルが多く、個人の価値観が尊重される傾向にあります。
4. 指輪の価格よりも本質的に大切なこと
4-1. 二人の価値観が一致しているか
婚約指輪は、あくまで“二人の愛の象徴”。価格にとらわれず、お互いが納得できるスタイルを選べるかどうかが何よりも大切です。お金の使い方に関する価値観のすり合わせは、結婚生活にも直結します。
4-2. 日常的に使えることの重要性
婚約指輪は長く身につけるものだからこそ、着け心地やデザインの実用性は非常に大切です。華やかさだけでなく、日々の暮らしの中で自然に馴染むかも重視しましょう。
4-3. 想い出に残る選び方
価格ではなく、どこで選んだか、誰と選んだかという“過程”こそが、指輪に深い意味をもたらします。旅行先で見つけたリングや、手作りワークショップで作ったリングなど、体験に価値を置く人も増えています。
4-4. メンテナンスを視野に入れる
高価な指輪は、定期的なメンテナンスが必要な場合も。サイズ直しや石の緩みチェック、クリーニングなどを視野に入れて、長く愛用できる体制が整っているショップを選ぶのも重要です。
5. 「給料3ヶ月分」のこれからの在り方
5-1. 多様化が進む婚約スタイル
SNSやYouTubeなどの情報共有の場が増え、さまざまなカップルの婚約・プロポーズの形が可視化されるようになりました。従来のルールや常識にとらわれず、自分たちの価値観に基づいた選択が当たり前となっています。
5-2. 共に選ぶプロポーズが主流に
昔ながらのサプライズ演出も根強い人気がありますが、近年では「ふたりで一緒に選ぶ」プロポーズが主流に。婚約指輪も一緒に試着して選ぶことで、後悔のない買い物につながります。
5-3. 環境配慮・倫理性を重視した選択肢も
ラボグロウンダイヤモンドやリサイクルメタルなど、サステナブル素材を使った婚約指輪を選ぶカップルも増加。価格よりも地球や社会に優しい選択を重視する人が増えています。
5-4. 本当に大切なのは“想い”
「婚約指輪にいくらかけたか」ではなく、「どんな想いを込めたか」が問われる時代になっています。見栄や常識に縛られず、二人の関係性を深める“きっかけ”として、心から納得できるリングを選ぶことが何よりも重要です。
【婚約指輪に関する価格と価値観まとめ表】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 給料3ヶ月分の由来 | ダイヤモンド業界の広告戦略（デビアス社）。最初は1ヶ月→2ヶ月→3ヶ月へ |
| 現代の平均購入価格 | 約30万〜40万円。実際は月収の1〜1.5ヶ月分が主流 |
| 各国の傾向 | 米：自由化、欧：伝統継承、日本：形式意識強め、アジア圏：自由選択へ移行 |
| 選び方のポイント | 価格＜気持ち・実用性・共感。パートナーとの価値観一致が最優先 |
| 今後のトレンド | 多様化・共創型プロポーズ・サステナブル素材・エシカル消費・ストーリー重視の個性派指輪が人気拡大中 |
