「最大容量が70%を切った。これって無料で交換できるの?」——そんな疑問に、最新の基準と実務の流れで答えます。結論から言うと、AppleCare+に加入していて保証内であれば、最大容量が80%未満のバッテリーは無償交換の対象になり得ます(70%はこの条件に該当)。
一方、未加入や保証外では原則有償です。本記事は、判断のポイントから予約手順、当日の注意、長持ちのコツ、トラブル事例、よくある誤解まで丁寧にまとめました。
0. まず結論と要点(忙しい人向け)
- 無償の基本条件:AppleCare+加入中かつ保証期間内/最大容量80%未満/本体に重大損傷なし/店頭診断で劣化が確認。
- 70%は十分な根拠:80%未満なので基準内。あとは保証の有無と端末状態で決まる。
- 未加入の場合:Apple公式でも有償交換(料金は機種別の定額)。
- 判断のコツ:交換か買い替えか迷ったら、動作の重さ・OS対応・画面状態の三点で決める。
- 予防の柱:温度管理/20〜80%充電/最適化充電オン/高負荷×充電の同時進行を避ける。
1. 「70%以下」が示す意味と、体感の変化
1-1. 最大容量の見方と基準
- 最大容量は、新品時(100%)と比べた今の蓄電力の割合。
- 確認手順:設定 → バッテリー → バッテリーの状態と充電。
- 目安:90%台=軽度、80%台前半=中度、70%台=重度の劣化。
1-2. 充電サイクルとの関係
- 一般に、充電サイクル500回で80%程度になるよう設計。
- 70%台は、サイクル蓄積+温度ストレスで進行している可能性大。
1-3. 70%前後で出やすい症状
- 残量があるのに急な電源オフ。
- 高負荷(ゲーム/動画撮影)時に動作がにぶい、アプリが落ちる。
- 寒暖差で一気に残量が減る。
- ピーク時出力の制限(後述)。
1-4. iOSの自動保護(ピークパフォーマンス管理)
- 急な電源落ちが観測されると、iOSが性能を一時的に抑えることがある。
- 設定画面に**「サービス推奨」**が出たら、交換時期の合図。
1-5. 劣化を早める習慣(やめたいこと)
- 高温環境での長時間充電(車内・直射日光の窓際・布団の中)。
- 充電しながらの重い作業(ゲーム/4K撮影/テザリング)。
- 常時100%の維持、0%までの使い切りを繰り返す。
- 粗悪な充電器・ケーブルの使用。
2. 無料交換の条件——どこまでが「無償」になるのか
2-1. もっとも重要:AppleCare+加入と保証内か
- AppleCare+加入中で有効期間内なら、最大容量が80%未満で無償交換対象。
- 70%はこの基準を下回るため、条件を満たせば無償になり得ます。
- AppleCare+は「2年一括」「毎年更新(自動更新)」の形があり、延長中でも適用されます。
2-2. 本体の状態が良好であること
- 液体侵入、画面割れ、大きな曲がり等があると、先に本体修理が必要で無償対象外となることがある。
- 非正規修理歴や部品改造の記録がある場合、保証対象外の判断の可能性。
2-3. 正規店での診断が必須
- Apple Store/正規サービス提供店で専用診断を実施。
- 表示が80%未満でも、原因がアプリ暴走・基板不良・コネクタ不良等なら、先に別対応となることも。
2-4. 地域の保証・販売店独自補償
- キャリアや量販店の独自補償で電池交換が安くなる場合あり。
- 国や地域の法定保証は「初期不良」や「製造上の不具合」が対象で、自然劣化は原則対象外。
3. 未加入・保証外のときの選択肢と費用感
3-1. Apple公式での有償交換
- 機種別に定額の作業費。最新の金額はApple公式で確認。
- 純正部品/防水・耐塵の整合/ソフトの照合が保たれやすい。
3-2. 非正規修理店の良し悪し
- 長所:即日・低価格・在庫が豊富な場合がある。
- 短所:部品品質のばらつき、防水性能の低下、公式保証の打ち切りリスク。
- 常用の主端末は、公式交換が無難。
3-3. 自分で交換——基本は非推奨
- 分解の難易度が高い。ケーブル断線・画面破損・発火の危険。
- 作業後の動作保証なし。費用節約より代償が大きいことが多い。
3-4. 比較表:交換手段と特徴
項目 | Apple公式 | 非正規修理 | 自力交換 |
---|---|---|---|
費用 | 機種別定額(中~高) | 低~中 | 低(ただし失敗コスト高) |
品質・安全 | 純正部品/検査 | 店舗と部品に依存 | 個人の技量依存 |
防水・耐塵 | 維持されやすい | 低下することあり | ほぼ維持不可 |
保障 | 公式基準に準拠 | 公式保証は失効の恐れ | 当然なし |
速度 | 混雑で変動(即日〜数日) | 即日が多い | 作業時間・再不具合の再工数 |
4. 無料交換までの流れ——予約から受け取りまで
4-1. 事前チェックと準備
- 最大容量・劣化表示の確認(設定 → バッテリー)。
- AppleCare+加入状態・残期間の確認。
- バックアップ:iCloudまたはパソコン(写真・連絡先・2段階認証の移行コードも)。
- 必要に応じてケース・フィルムを外す(発熱や浮きの確認がしやすい)。
4-2. 予約の取り方
- Appleサポートアプリ/公式サイトから、オンライン簡易診断 → 来店予約。
- 近隣店舗が満席なら配送修理を選ぶ(端末を送付)。
4-3. 来店〜診断〜交換の当日
- 受付後、専用ツールで詳細診断(電池・温度・基板・コネクタ等)。
- 無償条件に合致すればその場で電池交換または預かり。
- 状態次第で、**本体交換(整備済品)**となるケースもある。
4-4. 受け取り後の確認
- 最大容量が回復(新品電池相当)しているか。
- Face ID/Touch ID/カメラ/通話/スピーカーなど基本機能。
- 交換履歴や注意点の説明書を受け取る。
4-5. 配送修理の流れ(概要)
- Webで申込 → 2) 集荷・梱包 → 3) 診断・交換 → 4) 返送受取。
※ 期間は数日〜1週間前後。代替機は原則なし。
5. 交換か、買い替えか——迷ったときの指針と長持ち術
5-1. 判断チャート(簡易)
- 最新OSに対応している → 交換へ。
- 動作が重い・ストレージ不足・画面割れが重複 → 買い替え検討。
- AppleCare+で無償なら、まず交換して延命がコスパ良好。
5-2. 交換後に長く使うコツ
- 充電は**20〜80%**を目安に。
- 高温・直射日光を避ける。充電中はケースを外すと発熱が抑えやすい。
- 急速充電は必要時のみ。普段はゆっくり充電。
- 最適化されたバッテリー充電をオンに。
5-3. 下取りとデータ移行のヒント
- 下取り前に初期化と**「探す」をオフ**。
- 新端末へはクイック開始や有線移行を活用するとスムーズ。
6. 状況別・交換可否と準備チェック表
6-1. 交換可否早見表
状態 | AppleCare+ | 最大容量 | 本体損傷 | 診断結果 | 費用 | 判定 |
---|---|---|---|---|---|---|
標準ケース | 加入・保証内 | 70% | なし | 劣化一致 | 無料 | 無償交換 |
期間切れ | 未加入/保証外 | 70% | なし | 劣化一致 | 有料 | 有償交換 |
本体破損あり | 加入 | 70% | 画面割れ等 | 先に本体修理 | 状況次第 | まず本体修理 |
非正規修理歴あり | 加入 | 70% | なし | 記録あり | 対象外の恐れ | 交換不可の可能性 |
※ 最終可否・費用は店頭判断に従います。
6-2. 来店前チェックリスト
- AppleCare+加入状態と残り期間を確認
- 最大容量が80%未満であることを確認
- バックアップ完了(iCloud/パソコン)
- 身分証と購入証明(必要時)
- アクセサリ・ケースを外す
- 二要素認証の受信先を別端末にも準備
6-3. 受け取り後チェック(当日〜翌日)
- 最大容量表示の確認(100%近く)
- 発熱の有無/充電速度の異常なし
- 各種センサー・カメラ・スピーカーの動作
- Apple PayやSuicaの再設定(必要時)
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 70%ちょうどでも無料ですか?
A. AppleCare+加入かつ保証内で、80%未満なら対象。70%は範囲内。最終可否は店頭診断で決定。
Q2. 交換するとデータは消えますか?
A. バッテリーのみ交換でもバックアップ必須。本体交換の可能性もあるため念のため準備を。
Q3. どれくらい時間がかかりますか?
A. 店舗・在庫・混雑次第で当日〜数日。配送修理は数日〜1週間目安。
Q4. 膨張しているが使い続けてよい?
A. 危険。直ちに使用・充電を中止し相談を。画面浮き・破損・発火の恐れあり。
Q5. 表示の最大容量が急に下がった。
A. 電池の再計測で補正されることがある。数回の充放電で表示が安定する場合も。
Q6. 交換後またすぐ劣化しない?
A. 温度管理・最適化充電・ゆるやかな充電で寿命を延ばせる。習慣がカギ。
Q7. 画面やスピーカーも同時修理できる?
A. 可能だが別料金。見積もり時にまとめて相談を。
Q8. AppleCare+未加入。今から入って無料にできる?
A. 事後加入での過去不具合の無償化は不可。今後の故障・電池劣化に備える意味はある。
Q9. サードパーティの充電器でも大丈夫?
A. 認証品推奨。粗悪品は過電流・発熱・劣化加速の原因。
Q10. 冬に一気に残量が減る。故障?
A. 低温で化学反応が鈍り、一時的に出力が落ちる。温めると回復することが多い。
Q11. 交換後に防水は保たれる?
A. 公式交換なら基準を満たす作業。とはいえ完全保証ではないため水濡れは避けるのが無難。
Q12. 充電の最適な頻度は?
A. こまめでOK。**20〜80%**を目安に上下させる使い方が電池にやさしい。
8. 用語ミニ辞典(やさしい言い換え)
- 最大容量:新品時とくらべた今の電池の入る量。
- 充電サイクル:0→100%の充電を1回と数える回数(部分充電の合計でも1回)。
- ピークパフォーマンス管理:電源落ちを防ぐため、一時的に性能を抑える仕組み。
- AppleCare+:通常保証を広げる有料プラン。電池や故障に手厚い。
- 正規サービスプロバイダ:Appleが認めた修理店。純正部品・手順で直す。
- 配送修理:端末を送って修理する方法。来店がむずかしい人向け。
- 整備済品交換:本体ごと交換になる場合に受け取る端末。Apple基準で点検済み。
- 膨張:電池がふくらむ異常。発火の危険があるため使用中止。
9. 実践レシピ:電池を長持ちさせる暮らし方
9-1. 1日の基本ルーティン
- 朝:残量40〜60%なら出発、足りなければ短時間だけ継ぎ足し。
- 日中:高温になる場所(車内・直射日光)を避ける。
- 夜:最適化充電オンで就寝。発熱が気になるなら充電完了前に外す。
9-2. 季節のコツ
- 夏:充電中はケース外し。高負荷アプリ+充電を同時にしない。
- 冬:屋外での長時間利用はモバイルバッテリー併用。ポケットで保温。
9-3. 旅行・出張のコツ
- 急速充電器+認証ケーブルを携行。ホテルでの就寝充電は最適化を活用。
- 移動中に満充電の維持を長時間しないよう、必要量だけ充電。
10. サポートで伝えるとスムーズになる「ひと言テンプレ」
- 「最大容量が**70%**で、急な電源オフが起きます。AppleCare+加入中です。診断と電池交換をお願いします。」
- 「配送修理を希望します。バックアップ済みで、二要素認証の受信先も用意しています。」
11. まとめ——「70%以下」を見たら、まずやること
- 加入状況を確認:AppleCare+が生きていれば無償の可能性大。
- 予約して診断:店頭の正式診断が可否の決定打。
- 準備を整える:バックアップ・身分証・アクセサリ外し・二要素認証の確認。
- 交換後は予防:温度管理、最適化充電、ゆるやか充電で長持ち。
ポイント:70%は放置しない。 使い勝手の低下だけでなく、安全面の不安も。条件が合うなら早めの交換が、結局いちばんの節約です。