スマートフォンやデジタルカメラでテレビ、パソコン、あるいは他のスマホ画面を撮影した際に、写真や動画に「しましま模様(縞模様)」や「チラつく線」が写り込んでしまった経験はないでしょうか?目視では綺麗に見えるディスプレイが、なぜカメラを通すとしま模様になるのでしょうか。この現象は、動画制作や商品レビューなどで画面を撮影する人にとっては、非常に悩ましい問題です。
本記事では、この「しましま現象(フリッカー現象)」がなぜ起こるのかを詳しく解説しながら、ディスプレイの構造、点滅方式、カメラ側の要因、そして実際の対処法までを幅広く紹介します。日常の疑問を科学的にひも解くことで、快適な撮影ライフに役立てていただければと思います。
1. 画面を撮るとしましまになる理由とは?
1-1. 正体は「フリッカー現象」
しましま模様の原因は「フリッカー(flicker)」と呼ばれる現象で、ディスプレイが非常に速い周期で明るくなったり暗くなったりを繰り返していることが関係しています。人間の目には連続した光に見えても、カメラはこの高速点滅をフレーム単位で捉えてしまい、模様として記録されてしまうのです。
1-2. ディスプレイは常時点灯していない
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの画面は、電気信号に応じて周期的に点灯・消灯を繰り返しています。これは、明るさを制御するために意図的に設計された機構であり、特に暗めの表示や省電力モードではこの点滅が強調されやすくなります。
1-3. シャッタースピードとの不一致が影響
カメラのシャッタースピードが画面の点滅周期と一致していないと、画面の発光していないタイミングのフレームが記録されてしまい、縞模様が現れることになります。このズレがフリッカーの最も顕著な原因のひとつです。
1-4. 周波数の違いがしま模様の条件を生む
地域によって異なる電源周波数(日本では50Hzまたは60Hz)に合わせてディスプレイの点滅も行われており、カメラのフレームレート(fps)と一致しないと干渉が発生します。周波数の違いを理解することは、縞模様の発生を防ぐうえでとても重要です。
2. ディスプレイの種類と点滅方式の違い
ディスプレイの種類 | 点滅の仕組み | フリッカーの出やすさ |
---|---|---|
液晶(LCD) | バックライトのPWM調光 | 中〜高 |
有機EL(OLED) | 各画素ごとの高速点滅 | 非常に高い |
CRT(ブラウン管) | 電子ビーム走査による描画 | 高(特に動画で目立つ) |
電子ペーパー | 電圧固定で表示持続(点滅なし) | ほぼなし |
2-1. 液晶(LCD)のPWM制御とは?
液晶ディスプレイは、光源となるLEDバックライトの明るさを「PWM(パルス幅変調)」という方式で制御しています。これにより、輝度が下がるほど点滅が激しくなり、フリッカーの影響を受けやすくなります。
2-2. 有機ELのピクセル制御
有機ELディスプレイは各ピクセルが自発光するため、画面全体ではなく細かい単位で点滅しています。この構造の違いにより、非常に高速かつ微細な点滅が発生し、しましま模様が現れやすいです。
2-3. ブラウン管のスキャン方式
CRT(ブラウン管)では、電子ビームが画面を順番に走査して描画します。これにより、動画を撮影するとスキャンの進行に合わせて縞模様がくっきりと現れてしまうことがあります。
2-4. 電子ペーパーは点滅しない
電子書籍リーダーに使われる電子ペーパーは、表示内容を書き換えるとき以外は点滅しないため、フリッカーは発生せず、しましまも写りません。
3. カメラの仕様による影響とは?
3-1. シャッタースピードの調整がカギ
シャッタースピードが速すぎると、画面の点滅に対して同期せず、しま模様が出やすくなります。一般的には、ディスプレイのリフレッシュレートに合わせて1/50秒〜1/60秒の範囲に設定するのが理想です。
3-2. ローリングシャッターが原因に
多くのスマホやデジカメは「ローリングシャッター方式」を採用しており、画像を一度に撮るのではなく、上から下へと順にセンサーを読み取っていきます。この読み取りタイミングと点滅がずれると、画面の一部にしま模様が現れます。
3-3. 自動設定がフリッカーを引き起こす
スマートフォンやデジタルカメラは、自動でシャッタースピードやISO感度を調整するため、フリッカーが発生しやすい状況になることがあります。意図せず縞模様が記録されてしまう原因になります。
3-4. カメラアプリや撮影モードによる違い
一部のカメラアプリやプロ向けの撮影モードでは、フリッカー低減機能やシャッタースピードのマニュアル設定が可能です。これにより、しま模様の発生を抑えることができます。
4. しましまを防ぐための撮影テクニック集
4-1. フリッカー軽減モードを活用しよう
カメラやスマホに「蛍光灯対策」「フリッカー防止」などの撮影モードが搭載されている場合は、撮影前に必ずオンにしておくと効果的です。
4-2. シャッタースピードの調整で解決
撮影するディスプレイのリフレッシュレートに応じて、カメラ側のシャッタースピードを調整するのが有効です。60Hzの場合は1/60秒、50Hzなら1/50秒にすると縞模様が出にくくなります。
4-3. 輝度を最大にするのもポイント
ディスプレイの明るさを最大に設定することで、PWM調光の影響を減らし、しま模様を抑えられる可能性が高まります。
4-4. 角度・距離・ズームで微調整
画面に対してのカメラの角度を変えたり、少し離れた位置からズームを使って撮影することで、フリッカーの影響を分散させることができます。
5. フリッカー現象を知れば対策も簡単に
5-1. フリッカーは正常な動作の一部
ディスプレイの点滅は機器の故障ではなく、表示を成り立たせるための基本的な動作のひとつです。カメラ側との相性によって目に見えるだけなのです。
5-2. 知識があれば防げる現象
しましま模様の仕組みを知っておくことで、意図しない写真の失敗や動画撮影時のトラブルを未然に防ぐことができます。
5-3. 動画制作では設定が映像美を左右する
動画で高品質な映像を撮る場合、フレームレートやシャッタースピード、照明環境を意識して調整することが作品の完成度に直結します。
5-4. 今後の進化にも期待
近年はカメラもディスプレイも技術革新が進んでおり、フリッカーの発生を自動補正できるセンサーや、点滅の少ない新型パネルも登場しています。将来的にはしましま模様が完全になくなる日も近いかもしれません。
【まとめ】
画面を撮影した際に発生する「しましま模様」は、ディスプレイの点滅(フリッカー)とカメラのシャッタースピードや読み取り方式のズレによって起こる、きわめて一般的かつ自然な現象です。ディスプレイの種類や構造、カメラの撮影条件、照明環境などが複雑に絡み合ってしま模様が形成されます。
しかし、正しい撮影モードや設定、ちょっとした工夫を施すだけで、その発生を大幅に軽減させることができます。本記事の内容を参考に、より美しく、クリアな画面撮影にぜひチャレンジしてみてください。