ポイント先どり(まずここだけ)
金魚や多くの魚は、口から水を吸い込み、えらで水に溶けた酸素を取りこみ、二酸化炭素を出しています。えらの中は超うすい膜と毛細血管がびっしりで、対向流交換というしくみにより最後の一滴まで酸素をむだなくゲット。だから水がきれい・温度が適切・酸素が十分の3つがそろうと、金魚はずっと元気に泳げます。
金魚はどうやって息をしているの?—体のつくりと“えら”のひみつ
金魚の体は水のくらし用に特化
金魚の体はうろことぬめり(粘液)でコーティング。これは外敵やばい菌、けが、乾燥から体を守るよろい&レインコートです。泳ぐときは、
- 尾びれ:プロペラ役。前進パワーを生み出す。
- 胸びれ:ブレーキ・方向転換・ホバリング。
- 背びれ・腹びれ:体のバランスを保つスタビライザー。
目は水の中の光に合わせてピントが合いやすく、鼻孔はにおいセンサーとしてエサや敵を見分けます。口の形や歯の並び(のどの奥にある咽頭歯)も水中で食べものを砕きやすいようにできています。
えらはどこ?何をしている?
口のすぐうしろのえらぶたの中に、赤いえら(薄いひだ)が左右に並んでいます。ここは呼吸の心臓部。えらの表面はとても薄く、紙より薄い膜の裏側を毛細血管が走り、酸素と二酸化炭素をすばやく交換します。えらぶたはフタ+ポンプの役目も持ち、えらを守りつつ水の流れを調整します。
えら呼吸の流れ(道順つき)
1)口を開けて水を吸いこむ
2)口を閉じると、舌の動きとえらぶたの開閉で水がえらの薄膜を通過
3)そこで酸素が血液へ、二酸化炭素が水へ
4)えらぶたのスリットから水を押し出す
→このサイクルを毎秒数回くり返して、泳ぎながら24時間“息”ができます。
ミクロで見るえらの工夫
えらのひだ(一次小板)から**さらに細い小ひだ(ニ次小板)**がびっしり生え、表面積を爆増。同じ大きさでも、たくさんの空気穴があるほど換気しやすいのと同じ理屈で、少ない酸素でもたくさん吸えるようになっています。
人間と何がちがう?—肺呼吸とえら呼吸をくらべる
人は空気の中で、金魚は水の中で
人は肺で空気中の酸素を取りこみます。水の中では肺が酸素をうまく取り出せないので息ができません。だから泳ぐときは息つぎや道具(シュノーケル・酸素ボンベ)が必要。金魚は逆に、空気ではえらが乾いてしまい呼吸できません。
えらと肺のちがい(見かた早わかり)
- 取りこむ相手:水(えら)/空気(肺)
- 構造:えらは体の外側に薄い板を並べる/肺は体の内側に袋を広げる
- 動かし方:えらは水流を生むポンプで流し続ける/肺は吸う・吐くで入れ替える
- 得意分野:えら=少ない酸素でも効率よく、肺=軽く大量に運べる
皮ふや特別な器官で呼吸する生き物も
カエルは子ども(おたまじゃくし)のときえら、大人は肺+皮ふ呼吸。魚の中にも空気呼吸ができる仲間がいます(ベタのラビリンス器官、ハイギョの肺、ウナギの体表呼吸)。環境に合わせて呼吸スタイルを使い分けるのが生き物のすごいところです。
えらは“超効率エンジン”—対向流交換と水の環境
対向流交換ってなに?
えらの中では、水の流れと血液の流れが逆方向に進みます(対向流)。常に「水側の酸素濃度 > 血液側」という差が保たれるため、端から端まで酸素を取りこみ続けられるのがポイント。並行(同方向)に流すよりはるかに高効率です。
溶けた酸素(DO)と温度のルール
水に溶ける酸素(溶存酸素=DO)は、
- 水温が高いほど減る(夏は要注意)
- 水が動くほど増えやすい(エアレーション・滝・水面の波立ち)
- 植物が光合成する昼は増え、夜は減る
この性質を知っておくと、口パクの原因さがしがスムーズです。
水がよごれるとどうなる?
エサの食べ残しやフンはアンモニア→亜硝酸→硝酸と変化。特に前半の2つはえらに有害で、酸素の受け渡しをじゃまします。定期的な水換え、フィルター掃除、エサの量の調整が健康のカギ。バクテリアが住みついたろ材は水道水でゴシゴシ洗わないのがコツ(ぬるま湯や飼育水で軽くすすぐ)。
水温と酸素の関係(季節別アドバイス)
- 春:水温安定前。少量の水換えでゆっくりならし運転。
- 夏:高水温で酸素少。エアーポンプ強化、直射日光を避け、水面送風や冷却ファンで2〜3℃ダウン。
- 秋:食欲UPで水が汚れがち。エサ量と掃除のバランスを。
- 冬:代謝ダウン。エサは控えめ、急な水温変化は避ける。
いろいろな魚の呼吸—海・川・特別な呼吸の仲間たち
海水魚と淡水魚
どちらもえら呼吸ですが、海水魚は塩分を外へ出す塩類細胞が発達。淡水魚(金魚など)は体内に水が入りすぎないよう尿で調節。住む場所がちがえば**呼吸以外の“水の出入り管理”**も変わります。
空気も吸える魚
ベタ・アロワナは低酸素の水たまりでも生き残れるよう、ラビリンス器官で空気呼吸。ハイギョは肺で呼吸し、乾季は土の中で夏眠。ウナギは陸上移動中に皮ふ呼吸でしのぐことがあります。
進化のつながり
昔の魚の一部が肺を発達→浅瀬で空気呼吸→四足動物へ。えら→肺→皮ふの役割分担は、**環境変化に適応するための“進化のノート”**です。
今日からできる!観察・実験・自由研究アイデア
1)えらぶたカウント(データ化に挑戦)
10秒間にえらぶたが何回動くかを記録。朝・昼・夜、エサ前後、水温の違いもメモ。グラフにすると酸素と行動の関係が見えてきます。
2)エアーポンプ/水草の効果(比較実験)
- 条件A:ポンプあり/水草あり
- 条件B:ポンプなし/水草あり
- 条件C:ポンプあり/水草なし
各条件で口パク回数、泳ぐ速さ、底で休む時間を観察。昼と夜の差もチェック。
3)水温テスト(安全第一)
涼しい水とあたたかい水で呼吸回数を比べ、水温→酸素量のつながりを確認。急な温度変化はNG、1〜2℃ずつでゆっくり行います。
4)エサの量と水質(行動が教えてくれる)
少量・適量・多めで翌日の水のにごり、pH・アンモニア簡易試薬の数値、呼吸回数をセットで記録。掃除の最適頻度が見つかります。
5)他の生き物と比べる(図解まとめ)
メダカ、エビ、ザリガニ、カメなど、呼吸のしかたの違いをイラストで整理。**同じ水の中でも“息のやり方”はこんなに違う!**を発表資料に。
6)ミニ模型で満点理解(ライト+ボール)
発泡スチロール球(えら小板)と段ボール(えらぶた)でポンプ模型を自作。水の流れと“交換面”を再現し、対向流の向きを矢印で示そう。
金魚や魚の呼吸がわかる一覧表
| 生き物 | 呼吸する場所・器官 | しくみ | 生活のポイント |
|---|---|---|---|
| 金魚・淡水魚 | えら | 水中の酸素を血液へ、二酸化炭素を水へ | きれいな水・適温(20〜26℃)・十分な酸素 |
| 海水魚 | えら+塩類細胞 | えらで呼吸+体内の塩分バランス調節 | 海水に適応。塩分を出す仕組みが強い |
| 空気も吸える魚 | えら+特別な器官(ラビリンス・肺) | 低酸素時に空気呼吸で生きのびる | 水面での鼻上げは仕様。驚かないで観察 |
| 両生類 | えら→肺+皮ふ | 子はえら、大人は肺・皮ふで呼吸 | 水中と陸上の両方でくらす |
| 人間・ほ乳類 | 肺 | 空気中の酸素を取りこみ、二酸化炭素を出す | 水中呼吸不可。息つぎや装備が必要 |
| 貝・甲殻類 | えら(外えら含む) | 水流でガス交換。体の外側に近いえらも | 水のよごれに敏感。酸欠で動きが鈍る |
トラブル早見表(困ったときのチェックリスト)
| サイン | よくある原因 | すぐできる対処 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 水面で口パクが多い | 酸素不足/高水温 | エアレーション強化・水面送風・一部換水 | 水温を下げる工夫、ろ過能力の見直し |
| えさを食べない | 水質悪化/急な温度差 | 部分換水・温度合わせ | エサ量を1/2に、数日観察 |
| えらが赤く充血 | アンモニア・病気 | 速やかに部分換水・ろ材すすぎ | 必要なら塩浴・専門店/獣医へ相談 |
| 底でじっとする | 酸素不足・疲れ・病気 | 弱水流→中水流、酸素UP | 夜間もエアレーション、照明時間調整 |
Q&A—よくあるギモン
Q1. 金魚が水面でパクパクするのはなぜ?
A. 水中の酸素が不足しているサインかも。エアーポンプを強める/水換えをする/水温を下げる(急変は×)。夜間は植物が酸素を作らないので、夜に増える口パクは“あるある”です。
Q2. 水換えはどれくらいのペース?
A. 目安は週1回で総量の3分の1。新しい水はカルキ抜き+水温合わせ。フィルターは同時に大掃除しない(バクテリアを守る)。
Q3. エサはどれくらい?
A. 1〜2分で食べきる量を1日1〜2回。週に1回は少食デーを作ると水が安定。食べ残しは水質悪化→呼吸トラブルのもと。
Q4. 夏に元気がない…どうすれば?
A. 水温管理(20〜26℃)、酸素補給、直射日光回避。扇風機で水面をなでるだけでも蒸発冷却で数℃下げられます。ふたは少し開けて通気を確保。
Q5. えらが赤く充血して見える
A. 水質悪化や病気のサイン。すぐ部分換水、ろ過の点検。改善しなければ**塩浴(0.3%目安)**や専門家へ相談。
Q6. エアーポンプがないとダメ?
A. 水草や上部ろ過で十分な場合もありますが、夏・高密度飼育・夜間はポンプが安心。停電時の手まわし送風(ウチワ)も覚えておこう。
Q7. 小さい水そうでも飼える?
A. 小型水そうは水質変化が急。初心者は大きめ(目安:45〜60cm)が安定。広いほど酸素も多く、呼吸トラブルが減ります。
用語じてん(やさしい言葉で)
- えら:水の中の酸素を体に入れる場所。金魚の“呼吸き”。
- えらぶた:えらを守るフタ。水を外へ出す出口にもなる。
- 酸素/二酸化炭素:生き物が吸う気体/出す気体。
- 対向流交換:水と血液が逆向きに流れて、酸素を効率よく取りこむしくみ。
- 溶存酸素(DO):水に溶けている酸素のこと。多いほど魚は楽。
- 皮ふ呼吸:皮ふからガスをやりとりする呼吸(カエルなど)。
- ラビリンス器官:空気からも酸素を取りこめる特別な器官(ベタなど)。
- アンモニア:エサの食べ残しやフンから出る有害物。えらにダメージ。
家族でできる“金魚を守る”毎日のルーティン
- 朝:様子見→食欲チェック→えさは“少なめ”から。
- 昼:水温とポンプの音をチェック。異常音は詰まりのサイン。
- 夜:口パク増ならエアー強化。照明は8〜10時間で消灯。
- 週1:1/3換水、ガラスぬめり取り、ろ材は飼育水ですすぐ。
- 月1:ホース・ポンプ・ろ過槽の点検、予備ポンプの動作確認。
まとめ—“きれいな水・適温・酸素”で、金魚はずっと元気!
金魚はえらで水中の酸素を取りこみ、対向流交換でムダなく呼吸します。だからこそ、水質管理・温度管理・酸素補給がいちばん大切。観察ノートや簡単な実験で、呼吸の回数や行動の変化を記録すると、金魚の気持ちがもっと分かります。
今日からさっそく、あなたの水そうでも“呼吸の科学”を見つけてみましょう。小さな気づきが、金魚の大きな安心につながります!


