世界で「ガソリン車廃止」が進んでいる、と聞くと、いま乗っている車が急に使えなくなるように感じる人は少なくありません。実際、2030年や2035年という数字だけを見ると、かなり切迫した印象があります。車の買い替えを考えている人はもちろん、仕事で車両を使う会社にとっても、これは放っておけない話です。
ただ、このテーマは言葉がひとり歩きしやすいところがあります。多くの国が規制しているのは、まず「新車販売」であって、既に走っている車を一律にすぐ禁止する話ではありません。しかも、同じ2035年でも、日本とEU、英国、北米、アジアでは中身が違います。ここを混同すると、必要以上に焦ってしまいます。
大切なのは、どの国が何を廃止しようとしているのかを整理し、自分の暮らしや事業にどう関係するのかまで落とし込むことです。この記事では、世界の規制動向を国・地域別に整理したうえで、個人と企業がどう備えるべきかを、判断しやすい形でまとめます。
結論|この記事の答え
まず押さえるべき結論
結論から言うと、ガソリン車を「廃止する国」は増えていますが、その多くは新車販売を段階的に終える話です。EUは2035年から新車の乗用車とバンをゼロエミッションへ進めるルールを採択していますし、英国は2030年に新しい純ガソリン・純ディーゼル車の販売を終え、2035年に新車を100%ゼロエミッションへ移す方針です。カリフォルニア州は2035年モデルで新車100%ZEV基準、カナダは2035年に新しいライトデューティ車の100%ZEVを目標にしています。
アジアでも流れははっきりしています。日本は2035年までに新車乗用車販売を電動車100%へ、中国は2035年に新車販売の主流を電動車にする方針、インドは2030年にEV比率30%を目標にしています。つまり、2030〜2035年が世界の大きな節目だと見ておくと全体像をつかみやすいです。
何が規制され、何がすぐには規制されないのか
ここで一番大事なのは、「新車販売の規制」と「既に持っている車の使用制限」は別だと分けて考えることです。多くの国・地域で厳しくなっているのは新車側です。一方で、都市によっては走行規制や無排出ゾーンが先に強まり、日常利用に影響するケースも出ています。たとえばオランダでは、都市部のゼロエミッションゾーン拡大が進んでいます。
つまり、「世界中で一斉にガソリン車が乗れなくなる」と考えるのは正確ではありません。○○な人はA、という形で整理すると、いまの車を使い続けたい人は“自国の新車規制”より“自分が日常で走る街のルール”を先に見るべきです。逆に、次の車を買う人や事業で車両更新する人は、新車販売規制のタイムラインを先に見たほうが判断しやすいです。
迷ったときの最小解
迷ったらこれでよい、という最小解はシンプルです。まず、自分に関係するのが「新車販売規制」なのか「都市の走行規制」なのかを分けること。次に、日本国内の話なのか、海外拠点や輸出入が関わる話なのかを分けること。最後に、次の車検・リース更新・設備更新のタイミングに重ねて判断することです。
この順番で見れば、「ニュースで見た年号に振り回される」ことが減ります。特に個人では、買い替え判断は制度だけでなく、自宅充電の可否、月の走行距離、総費用で決めたほうが失敗しにくいです。企業でも、最も厳しい地域のルールを起点にしておくと後から混乱しにくくなります。
ガソリン車廃止の「廃止」とは何を指すのか
多くの国は新車販売の規制を指す
一般に「ガソリン車廃止」と報じられるとき、対象は新車です。EUのルールも、英国の年次目標も、カナダの2035年目標も、新たに売る車の中身をどう変えるかという話です。ここを既存車の全面禁止と受け取ると、話がずれてしまいます。
既存車の使用禁止とは意味が違う
すでに保有している車は、国によって扱いが異なりますが、多くは直ちに一律使用禁止にはなりません。実務上は、税負担、燃料費、部品供給、都市部の乗り入れ条件などの周辺条件が変わる形で、だんだん乗りにくくなることが多いです。これは「法律で即終了」というより、「維持条件が変わる」という理解のほうが現実に近いです。
都市の走行規制は別で考える
見落としやすいのが都市規制です。国全体の販売ルールより先に、都市中心部で無排出ゾーンや低排出ゾーンが広がることがあります。オランダのゼロエミッションゾーンや、ノルウェーのような明確なゼロエミッション目標は、その象徴です。仕事や生活で都市部へ入る頻度が高い人は、販売規制だけでなく、日々の利用制限を見たほうが実務的です。
欧州・英国・北欧はどこまで進んでいるか
EUは2035年に新車ゼロエミッションへ
EUは、2035年から新車の乗用車とバンをゼロエミッションへ進める枠組みを採択しています。欧州委員会や理事会の案内でも、2035年が大きな到達点として位置づけられています。欧州はこの方針に合わせて、充電網や産業支援も一体で進めているのが特徴です。
英国は2030年と2035年を使い分けている
英国は少し整理が必要です。2025年の政府発表では、2030年から新しい純ガソリン・純ディーゼル車は販売終了、2035年に新車は100%ゼロエミッションへ、そして一定のハイブリッド車は2035年まで販売可能とされています。つまり、英国は「2030年に純内燃を区切り、2035年に最終到達」という二段階で見たほうがわかりやすいです。
ノルウェーとオランダは先行事例として重要
ノルウェーは、2025年に新車をゼロエミッションへという目標を早くから掲げ、政策と市場の両面で先行しています。オランダは2030年に新しい乗用車をゼロエミッションへという方向を示しつつ、都市部のゼロエミッションゾーンを進めています。先行国を見ると、成功の条件は「規制」だけではなく、価格、インフラ、日常の使いやすさを同時に進めている点にあります。
北米はどこが先行しているか
カリフォルニア州が実質的な基準を作っている
米国は連邦で一律に動いているわけではなく、州単位の規制が強いのが特徴です。特にカリフォルニア州は、Advanced Clean Cars IIで2035年モデルまでに新車100%をゼロエミッション車基準へ持っていく方針を示しています。しかも、こうした基準は他州へ波及しやすく、実質的な市場標準になりやすいです。
カナダは全国目標で2035年へ進む
カナダは、2035年に新車のライトデューティ車100%をZEVにする目標を全国ベースで掲げています。州ごとの差はありますが、国としての方向が明確なので、企業が北米全体で考えるときは、米国の州規制とカナダの全国ルールを分けて見たほうが混乱しにくいです。
北米で押さえるべきなのは、「連邦より州が先に動く」ことです。事業者はここを軽く見ると、拠点ごとの更新計画がずれやすくなります。
アジア太平洋ではどう動いているか
日本は2035年に新車販売を電動車100%へ
日本は2035年までに新車乗用車販売を電動車100%にする目標を示しています。ここでの電動車にはEVだけでなく、HEV、PHEV、FCVも含まれます。つまり、日本は欧州のような「新車ゼロエミッション一択」とは少し違い、ハイブリッドも含めた移行を前提にしています。
中国は2035年に電動車を主流にする青写真
中国は2035年に新車販売の主流を電動車にする計画を進めています。政府系の発表では、2035年までに新車販売でEVが主流になることや、輸送部門のクリーン化を進める考え方が示されています。中国は市場の大きさに加え、電池産業との一体感が強く、価格や供給網にも影響を与えやすい存在です。
インドは2030年に30%を目標
インドは2030年にEV比率30%を目標としています。インドは国土、所得、用途の差が大きいため、一気に全面転換というより、段階的に比率を上げるアプローチです。二輪・三輪や商用車も含めた電動化の流れが強いのが特徴です。
比較すると、アジア太平洋は「同じ電動化でもスピードと中身が違う」ことが見えてきます。
| 国・地域 | 主な目標 | 節目 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 新車販売を電動車100%へ | 2035年 | HEVを含む |
| 中国 | 新車販売の主流を電動車へ | 2035年 | 産業政策と一体 |
| インド | EV比率30% | 2030年 | 段階移行型 |
表だけで見ると似ていますが、実務では「EVのみなのか」「HEVを含むのか」がかなり重要です。
個人は何を基準に備えるべきか
今すぐ買い替えるべき人
今すぐ見直しやすいのは、車検や大きな整備が近い人、月の走行距離が多く燃料費負担が重い人、自宅で200V充電できる人です。こうした条件がそろうと、EVやPHEV、HEVへの移行効果が数字で見えやすくなります。新しい規制を理由に焦るのではなく、今の車の維持条件が次の選択に合わなくなってきた人が動きやすいです。
まだ様子見でよい人
一方で、年間走行距離が少ない人、次の数年で車の使い方が変わる可能性がある人、自宅充電環境が整っていない人は、急いで決めなくてもよいことがあります。新車規制は動いていますが、今の車がすぐ使えなくなるわけではないからです。まず失敗したくない人はC、つまり「次の車検までに情報と条件を整理する」進め方が無難です。
EV・HEV・PHEVの選び分け
EVが向くのは、短距離中心で自宅充電ができる人。HEVが向くのは、長距離や充電環境がない人。PHEVが向くのは、平日は短距離、週末は長距離という人です。費用を抑えたいならD、つまり無理にEV一択にせず、生活条件に合う電動化を選ぶほうが続きやすいです。
企業はどう備えるべきか
社用車更新は早い地域基準で考える
企業では、規制が最も厳しい拠点を基準にしたほうが計画が立てやすいです。北米ならカリフォルニア州、欧州ならEUルール、国内なら自治体の先行策を見る形です。ルールの遅い地域に合わせると、後で更新が詰まりやすくなります。
インフラ整備は一気にやりすぎない
社用車の電動化でよくあるのが、一度に大きな設備を入れようとして計画が重くなることです。まずは定常ルートの車から始め、夜間の普通充電で回る範囲を広げるほうが現実的です。事業所では、台数ではなく「どの用途から変えるか」を先に決めたほうが失敗が少ないです。
よくある失敗と、これはやらないほうがよい例
年号だけで焦って判断する
2030年、2035年という数字だけを見て、すぐに全てのガソリン車が使えなくなると考えるのは典型的な失敗です。新車販売規制と既存車の扱いは分けて考える必要があります。これはやらないほうがよいです。
新車規制と既存車規制を混同する
もうひとつ多いのが、「販売禁止=使用禁止」と受け取ることです。実際には、都市の無排出ゾーンや事業ルールが先に効く場合もあり、国全体の法律だけ見ていても不十分です。日常で走る場所のルールまで見て初めて判断できます。
充電環境を後回しにする
EVシフトの話になると、車種や補助金ばかり見て、自宅・職場・集合住宅の充電条件を後回しにしがちです。けれど、実際の使いやすさはそこがかなり大きいです。制度だけ整っていても、充電の現実が合わなければ、生活では続きません。
保管・管理・見直しのポイント
年1回は見直したい情報
このテーマは、一度調べて終わりにしないほうが安心です。少なくとも年1回は、自分が関係する国や都市の規制、補助金、充電環境、下取り相場を見直したいところです。特に制度は固定ではなく、調整や例外整理が入ることがあります。
制度変更を追うときのコツ
制度を追うときは、国の方針、自治体や州のルール、都市の走行規制を分けて見るのがコツです。全部を一緒にすると混乱しやすいからです。個人なら車検や買い替えの半年前、企業なら年度計画の前に一度整理すると実務に乗せやすいです。
チェック項目を絞るなら、次の4つで十分です。
| 見直し項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 新車販売規制 | 次の車の選択肢が変わるため |
| 都市の走行規制 | 日常利用に直結するため |
| 充電環境 | EV・PHEVの実現性が変わるため |
| 補助・税制 | 総費用が動きやすいため |
結局どうすればよいか
優先順位の整理
結局どうすればよいかを整理すると、優先順位は明確です。第一に、自分に関係するのが新車販売規制か、走行規制かを分けること。第二に、次の更新時期を確認すること。第三に、充電環境と総費用を見て、EV・HEV・PHEVのどれが現実的かを考えることです。世界の流れは確かに電動化へ向かっていますが、判断は年号だけでなく、自分の条件で決めたほうが合理的です。
後回しにしてよいもの
後回しにしてよいのは、海外の一番厳しいルールをそのまま自分の締切だと思い込むことです。EU、英国、カリフォルニア州、カナダ、中国、日本は、似ている部分もありますが中身は違います。まずは自分の生活圏と購入計画に関係する範囲を押さえれば十分です。
今すぐやること
今すぐやることは3つで足ります。ひとつ目は、自分の国や都市で「新車規制」と「走行規制」のどちらが関係あるかを確認すること。ふたつ目は、次の車検、リース満了、設備更新の時期を書き出すこと。三つ目は、自宅や職場で充電できるかを確認することです。ここまでやると、世界の規制ニュースがようやく自分の行動に結びつきます。
最後に、迷ったときの基準をひとつに絞るなら、「次の更新タイミングで、電動化のほうが総費用と手間の両方で合理的か」です。合理的なら前に進む。まだ早いなら、次の節目まで条件を整える。この考え方なら、焦りすぎず、遅れすぎずに動きやすいです。
まとめ
ガソリン車を廃止する国は増えていますが、多くは新車販売を対象にした規制です。EUは2035年、英国は2030年と2035年の二段階、カリフォルニア州とカナダは2035年、日本はHEVを含む電動車100%を2035年目標にしています。中国やインドも明確な電動化目標を持っています。つまり、世界の基調は確かに電動化です。ただし、いま大切なのは年号に振り回されることではなく、自分に関係する規制の種類と、次の更新タイミングを見極めることです。


