家計と快適さ、どちらも諦めない。お風呂(浴槽)とシャワーの光熱費を、公表単価の目安・実使用の行動パターン・季節差まで踏み込んで徹底比較。人数・燃料(都市ガス/プロパン/電気)別の“最安ルート”、今日から使える時短&節水ワザ、設備投資の回収目安まで一冊分の知識を1記事に凝縮しました。
0. この記事でわかること(要点)
- 結論速読:単身・短時間ならシャワー、15〜16分超えや家族で連続入浴なら浴槽が有利。
- 逆転ライン:燃料とシャワー流量で変化(例:都市ガス×12L/分→約16分)。
- 季節最適化:冬は“高断熱×フタ×連続入浴”、夏は“低温短時間シャワー”。
- 節約の核:追い焚き回数の削減/シャワーの時間と流量の見える化。
- 投資効果:節水シャワー・保温フタは数ヶ月〜1年で元が取れることが多い。
1. 光熱費の基本と“比較のものさし”
1-1. 計算の前提(単価・水量・温度・流量)
- 水量の目安
- 浴槽の湯はり:約200L(半身浴:140〜160L)
- シャワー:通常 12L/分、節水タイプ 6〜8L/分
- 給湯温度の目安:40℃(季節により±2℃、冬は設定が上がりがち)
- 光熱単価(家計向けの概算)
- 都市ガス:160円/㎥
- プロパンガス:300円/㎥
- 電気:30円/kWh
- 水道・下水道:本記事の金額は水道代+燃料費を含む概算(地域・住宅で差)
※本記事の数字は“使える家計目安”。給湯器の効率・水温・住環境で前後します。
1-2. 計算式(おさらい)
電気・ガス代(円) ≒ 消費エネルギー量 × 単価
シャワー水量(L) ≒ 流量(L/分) × 時間(分)
湯はり総コスト ≒ (水道・下水)+(給湯エネルギー)
1-3. 代表シーンのコスト早見(基礎編)
| 条件 | 使用水量 | 都市ガス | プロパン | 電気温水器 |
|---|---|---|---|---|
| お風呂(浴槽200L) | 約200L | 約55円 | 約100円 | 約70円 |
| シャワー(10分・12L/分) | 約120L | 約35円 | 約65円 | 約45円 |
目安:シャワー15〜16分で浴槽コストに接近。節水ヘッド(8L/分)なら約23〜24分まで有利。
1-4. 用語辞典(ぱっと掴む)
- 追い焚き:冷めた湯を再加熱。便利だが燃料追加が発生。
- 節水シャワー:吐水量を絞りつつ体感を保つヘッド。30〜50%削減も可。
- 保温フタ:浴槽の熱逃げを抑制。追い焚き回数が激減。
- 高断熱浴槽:湯温低下が小さい浴槽。長時間でも温かさキープ。
2. 料金シミュレーション:お風呂 vs シャワーの“勝ちパターン”
2-1. 単身(時短・省コスト重視)
- 10分シャワー(12L/分):都市ガス 約35円/電気 約45円
- 浴槽200L:都市ガス 約55円/電気 約70円
→ 単身はシャワーが基本有利。ただし15〜16分超は浴槽に逆転されがち。
逆転ライン(単身・通常ヘッド)
| 燃料 | 浴槽(200L) | シャワー単価(10分) | 1分あたり | 逆転目安 |
|---|---|---|---|---|
| 都市ガス | 55円 | 35円 | 3.5円/分 | 約16分 |
| プロパン | 100円 | 65円 | 6.5円/分 | 約15分 |
| 電気 | 70円 | 45円 | 4.5円/分 | 約16分 |
**節水ヘッド(8L/分)**なら:都市ガス 約2.3円/分 → 約24分までシャワー優位。
2-2. 家族(共有で浴槽が逆転)
| 人数 | お風呂(200L)合計 | 1人あたり | シャワー(各10分)合計 | 1人あたり |
|---|---|---|---|---|
| 2人 | 55円(都市ガス) | 28円 | 70円 | 35円 |
| 3人 | 55円 | 18円 | 105円 | 35円 |
| 4人 | 55円 | 14円 | 140円 | 35円 |
一度沸かした湯を続けて使うほど浴槽が有利。追い焚きは最小限に。
2-3. 流量別シミュ(シャワーの実力を棚卸し)
| 流量 | 10分の水量 | 都市ガス(10分) | 逆転ライン(都市ガス) |
|---|---|---|---|
| 14L/分 | 140L | 約41円 | 約13分 |
| 12L/分 | 120L | 約35円 | 約16分 |
| 10L/分 | 100L | 約30円 | 約18分 |
| 8L/分 | 80L | 約23円 | 約24分 |
2-4. よくある“見落としコスト”
- 長時間シャワー:15分→25分へ伸びると**+約70%**。
- 追い焚き多発:一度の追い焚きで10〜20円相当増(条件次第)。
- フタ不使用:同じ入浴人数でも追い焚き回数が倍増しやすい。
3. 目的・季節・時間帯で“最適解”は変わる
3-1. 目的で選ぶ(温まり・睡眠 vs 時短・清潔)
- 温まり&睡眠の質:浴槽10〜15分。首・肩・背中まで湯に浸す/就寝60〜90分前が目安。
- 時短&清潔:シャワー5〜7分+最後だけ温湯を首すじへ。さっぱり&省コスト。
3-2. 季節で変える(冬は浴槽/夏はシャワー)
- 冬:湯冷め対策が鍵 → 高断熱浴槽+保温フタ+連続入浴で追い焚き最小化。
- 夏:低温短時間のシャワー中心。汗ばみ時はまず体を洗い→短時間すすぎ。
3-3. 家族の段取り(追い焚きを減らす運用)
- 続けて入る:帰宅後の順番を揃える/間隔を空けない。
- フタ運用:入浴中も半開を徹底。上がる時は即フタ。
- 半身浴の活用:7割湯はりでもイス・かけ湯で温まりやすく。
3-4. 在宅勤務・長時間在宅のコツ
- 日中はシャワー短時間でリフレッシュ、夜は浴槽でコンディション調整。
- 浴室の断熱シート・すきま風対策で湯冷め&追い焚きを抑制。
4. 今夜から効く!節約テクニック集(実践版)
4-1. シャワー編(“時間”と“流量”を制す)
- 節水シャワーヘッドに交換(30〜50%削減も)
- 止水ボタンでこまめに止める(泡立て中は止水)
- タイマーで5〜7分を見える化
- シャワーの角度を垂直寄りにし、体表反射を減らす
- 髪はタオルドライ後に短時間温風で仕上げ(ドライヤー節電も)
4-2. お風呂編(“追い焚き”を劇的に減らす)
- 保温フタ+高断熱浴槽で湯温低下を抑制
- 連続入浴(家族の間隔を詰める)
- 残り湯は洗濯へ再利用(衛生面に注意/すすぎは清水推奨)
- 湯はりを7〜8割に調整し、かけ湯+肩タオルで体感温度UP
- 浴室ドラフト対策(窓のすきま・換気の強弱を最適化)
4-3. 給湯器・設備編(設定だけで削減)
- 給湯温度を**−2℃**見直し(42→40℃)
- 自動保温OFF:必要時だけ追い焚き
- シャワー流量を初期設定から見直し(強すぎ防止)
- 節湯水栓・サーモスタット混合栓で温度ムダを減らす
- 浴室暖房の使い方を最適化(短時間の予熱→OFF)
チェックリスト(今日から)
- ☐ シャワーを7分以内に(スマホタイマー)
- ☐ 入浴後は即フタ、家族は連続入浴
- ☐ 給湯温度を**−2℃**、混合栓の温度固定
- ☐ 節水ヘッド導入、止水ボタンを活用
- ☐ 残り湯を選択的に再利用
5. 小さな投資の回収目安(費用対効果)
| アイテム | 参考価格 | 節約期待 | 回収の目安 |
|---|---|---|---|
| 節水シャワーヘッド | 3,000〜8,000円 | シャワー代 30〜50%減 | 3〜10ヶ月 |
| 保温フタ(断熱タイプ) | 5,000〜12,000円 | 追い焚き 30〜60%減 | 6〜12ヶ月 |
| サーモスタット混合栓 | 10,000〜20,000円 | 温度調整ロス減 | 1〜2年 |
| 高断熱浴槽(入替) | 数万円〜 | 湯温低下が小さい | 中長期(快適性向上が主効果) |
※住戸条件・使用頻度で変動。“時短”効果も家事コストを下げます。
6. よくある質問(Q&A)
6-1. Q:一人暮らしでも浴槽の方が安いことはある?
A: あります。2人以上が短時間で連続入浴できる日や、シャワーが常に15分超の人は浴槽の方が安くなることが多いです。
6-2. Q:追い焚きと“足し湯”、どちらが得?
A: 数度の低下なら足し湯が有利。大幅に冷めた場合は追い焚きの方が効率的。前提としてフタ常用が必須です。
6-3. Q:電気温水器・エコキュートはどう運用?
A: 夜間の安い電力で湯を作るほど有利。浴槽は高断熱×フタで追い焚きを最小化し、日中の追加沸き上げを避けると効果が伸びます。
6-4. Q:節水シャワーは水圧が弱くならない?
A: 近年は空気混合や水路設計で体感を維持しつつ吐水を削減可能。一時止水ボタン付きモデルが便利です。
6-5. Q:湯はり量を減らしても温まれる?
A: 半身浴(7割湯はり)+肩に温タオル、入浴中の追い注ぎで体感温度を確保できます。イス利用で水位を稼ぐのも有効。
6-6. Q:プロパン地域はどう最適化?
A: プロパンは単価が高め。節水ヘッドの効果が大。必要に応じて電気寄りの運用(電気ケトルや浴室暖房の最適化)も検討を。
6-7. Q:浴室乾燥機や浴室暖房の電気代は?
A: 乾燥は消費が大きく、1回数十円〜に達することも。時短+部分乾燥や除湿機との分担で抑制。
6-8. Q:子ども・高齢者のいる家の注意点は?
A: 火傷防止の温度設定(40℃前後)と滑り対策を優先。シャワーは止水ボタンで安全・節水を両立。
7. 用語辞典(拡張版)
- 熱効率:投入エネルギーに対する有効加熱の割合。電気ケトルは高効率、ガスは鍋・空気へのロスが発生。
- サーモスタット混合栓:一定温度の湯を安定供給。無駄な温度調整を削減。
- ドラフト(浴室):すきま風・換気で生じる冷気流。湯面からの熱損失が増える。
- ヒートショック:急激な温度差による体負担。予熱や脱衣所の保温で回避。
8. 使い分け早見表(目的×状況)
| 目的/状況 | おすすめ | ねらい | コツ |
|---|---|---|---|
| 単身・平日 | シャワー7分以内 | 時短・省コスト | タイマー&止水ボタン |
| 家族3〜4人 | 浴槽を連続利用 | 1人あたり単価↓ | フタ常用・追い焚き最小 |
| 冬の冷え | 浴槽10〜15分 | 体芯から保温 | 高断熱浴槽・保温フタ |
| 夏・汗流し | 低温シャワー | さっぱり・省エネ | 最後に温湯を首すじへ |
| プロパン地域 | 節水シャワー必須 | 単価差の吸収 | 8L/分以下を選ぶ |
| 来客あり | 浴槽+連続 | 共有で単価↓ | 入浴順を揃える |
9. 〈付録〉自分の家の“実コスト”を測るテンプレ
- シャワーの流量を測る:バケツに1分出してL/分を計測。
- 実際の時間を測る:タイマーで家族の平均を把握。
- この記事の表に当て込み、逆転ラインを算出。
- 運用ルールを決める:
- 平日→シャワー◯分以内/休日→浴槽 など。
- 2週間運用して再測定→微調整。
【まとめ】
- 単身・短時間はシャワーが基本有利。ただし15〜16分超や流量が多いと浴槽に軍配。
- 家族は浴槽の共有で1人あたり単価が激減。連続入浴×フタ常用で追い焚きを最小化。
- 節水ヘッド・保温フタ・温度設定の見直しなど、今日からの小ワザで年間コストは確実に下げられる。快適さと節約は両立可能です。


