地球温暖化の進行、大気汚染の悪化、そして持続可能な未来への要請により、世界中でガソリン車の廃止を目指す動きが本格化しています。多くの国が2030〜2035年をめどに新車としてのガソリン車・ディーゼル車の販売を段階的に終了する方針を打ち出しており、これにより電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、さらには水素燃料電池車(FCV)といったゼロエミッション車の普及が急速に加速しています。
本記事では、「ガソリン車を廃止する国はどこか?」という疑問に対し、国別・地域別に詳しく比較しながら、それぞれの政策、背景、導入スケジュールを解説。さらに、今後の展望や課題、日本国内での影響までを包括的に紹介します。
1. ヨーロッパ諸国のガソリン車廃止スケジュールと実態
1-1. ノルウェー:世界最速のEV国家を目指す
ノルウェーは世界で最もEV化が進んでいる国の一つで、2025年には内燃機関車の新車販売を終了する計画です。すでにEV販売比率は8割を超えており、補助金・税制優遇・都市部の通行制限など、さまざまな施策が相互に機能しています。
1-2. イギリス:2030年にガソリン車の新車販売禁止
イギリス政府は2030年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を終了、さらに2035年にはハイブリッド車の販売も段階的に終了します。住宅におけるEV充電設備の義務化も推進されています。
1-3. フランス・ドイツ:EU共通の規制と足並みを揃える
EU加盟国であるフランス・ドイツは、2035年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止するEU規制に準拠しています。各国は自治体レベルで都市内の車両進入制限なども導入し、規制を先取りする動きが強まっています。
1-4. オランダ・スウェーデン:都市環境を重視した早期廃止
オランダやスウェーデンなどの北欧諸国は、2030年までにガソリン車の販売を終了する方針を採用。市街地への内燃機関車の乗り入れを制限するゾーンの設置が積極的に進められています。
2. 北米における州・国ごとの規制状況と課題
2-1. アメリカ:州単位で進む規制とEV推進
アメリカでは連邦レベルでの規制統一は進んでいませんが、カリフォルニア州は2035年にガソリン車・ディーゼル車の新車販売を全面禁止。ニューヨーク州、ワシントン州などもこれに続いています。
2-2. カナダ:2035年までに完全なEVシフトを目指す
カナダは連邦政府として、2035年までに新車販売をすべてゼロエミッション車にする方針を発表。全国で充電インフラ整備が加速し、補助金制度も充実しています。
2-3. アメリカの州間格差と法的課題
アメリカは州の自治権が強く、EV政策にも大きな差があります。一部州では規制に反発する声もあり、連邦政府と州政府の政策のねじれが課題となっています。
2-4. 巨額のEV投資と民間の革新
テスラやGM、フォードといった自動車メーカーは、生産ラインのEV化に向けた数十億ドル規模の投資を発表。EV専用工場やギガファクトリーの建設が相次ぎ、供給体制の整備が急ピッチで進められています。
3. アジア太平洋地域で進む脱ガソリン車の動き
3-1. 中国:世界最大のEV市場と規制の強化
中国は2035年を目標に、新車販売の50%以上をゼロエミッション車とする国家戦略を掲げています。大都市ではすでにガソリン車の新規登録制限が導入され、EV購入者に対するインセンティブも充実。
3-2. インド:エネルギー自立とEVの普及拡大
インド政府は2030年までに新車販売の30%をEVとする目標を設定。EV普及に向けたインフラ開発や企業誘致、インセンティブ制度の導入が積極的に進められています。
3-3. 韓国:2035年に向けた段階的廃止検討中
韓国では現代自動車やKIAを中心にEVラインアップを強化。2035年までにガソリン車の販売を段階的に終了する可能性が高く、都市部では低排出ゾーンの導入も視野に入れられています。
3-4. 東南アジア:バッテリー供給国としての台頭
タイやインドネシアでは、EVだけでなくバッテリーのサプライチェーン構築に国家戦略が向けられています。特にインドネシアはニッケル資源を活かし、アジアのEVバッテリー拠点を目指しています。
4. 日本の対応と業界全体の移行戦略
4-1. 国の方針:2035年に純ガソリン車の新車販売を終了
日本政府は2035年までにガソリン専用車の新車販売を終了する方針を掲げています。ただし、ハイブリッド車は「電動車」として引き続き販売可能な方針です。
4-2. 国内自動車メーカーの対応
トヨタは2020年代中盤からEV専用車の投入を本格化し、2030年までにEV350万台体制を目指しています。ホンダは2040年までに全車種をEVまたはFCVに移行すると表明。日産もリーフに続く複数のEVを展開予定です。
4-3. 充電インフラと再エネ連携の重要性
全国的に200V充電設備や急速充電器の整備が進むほか、V2H(車から家庭への電力供給)を活用した家庭エネルギーの最適化も注目されています。再生可能エネルギーと連携したインフラ整備が課題です。
4-4. 自治体主導の先進的取り組み
東京都をはじめとする一部自治体では、新築マンションへの充電設備義務化、EV購入支援、ゼロエミッションバス導入など先進的な政策が展開されており、国を先導する形で動いています。
5. 世界のガソリン車廃止時期・政策比較表と今後の予測
国・地域 | 新車販売禁止時期 | ハイブリッド車の扱い | 主な特徴 |
---|---|---|---|
ノルウェー | 2025年 | 容認(ただしEVが主流) | EV比率80%以上、EVインセンティブが充実 |
イギリス | 2030年(HEVは2035年) | 段階的に販売終了予定 | 住宅充電設備の義務化、グリーンプラン強化 |
フランス・ドイツ | 2035年 | 一部見直しの可能性 | EU共同方針に準拠、都市部での規制導入も進行 |
アメリカ(CA州) | 2035年 | 容認(PHEVなど) | 州単位での導入、他州にも波及中 |
カナダ | 2035年 | 規定なし | 全国統一規制、充電設備補助と購入インセンティブ拡充 |
中国 | 2035年 | EV/PHEV中心に構成 | 登録制限や購入優遇、国産EVメーカーの急成長 |
インド | 2030年目標 | 容認 | 国家戦略化、都市部優先でインフラ整備進行 |
日本 | 2035年 | HEVは販売継続予定 | ハイブリッド重視の戦略を継続、国産メーカーの対応に注目 |
【まとめ】
ガソリン車廃止に向けた動きは世界的に加速しており、特に先進国を中心に2030〜2035年を目標とした規制導入が現実のものとなっています。それぞれの国や地域で方針や対象車両の定義、スケジュールに差はありますが、共通するのは「ゼロエミッションへの強い移行意志」です。
今後はバッテリー性能の向上、価格の低下、充電インフラの整備拡充、再エネ連携の進展などがEV普及をさらに後押しすることが予測されます。ガソリン車を使い続けることのリスクやコストが増すなか、どのタイミングでEVやPHEVへ移行するかが、カーライフの満足度を大きく左右します。
グローバルな政策動向を把握し、自分の生活スタイルに合った未来の車選びを行うためにも、今後も最新情報に目を光らせておくことが重要です。