家鳴りって何?原因・タイミング・対処法を徹底解説

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知識 経験

夜の「パキッ」「ミシッ」は、たいていが自然な物理現象。 仕組みを知れば、むやみに怖がる必要はありません。本稿では、家鳴りの正体・原因・起こりやすい時期と時間・危険の見極め・実践的な対処にくわえ、構造別の特徴、季節カレンダー、自己診断手順、連絡文の雛形、費用感まで踏み込んで詳解します。戸建てもマンションも共通で使えるように、横文字をなるべく避け、今日から実践できる形でまとめました。


  1. 1.家鳴りの基礎知識――まず「正体」を知る
    1. 1-1.家鳴りの定義と仕組み
    2. 1-2.よく聞こえる場所と音の種類
    3. 1-3.構造による起こりやすさの傾向
  2. 2.家鳴りが起きる主な原因――環境・構造・暮らし方
    1. 2-1.温度差・湿度差による伸び縮み
    2. 2-2.経年変化と乾燥収縮
    3. 2-3.設計・施工の精度や固定不足
    4. 2-4.家具や家電との干渉
    5. 2-5.外部要因
  3. 3.いつ起きやすい?――時間帯・季節・天気の関係
    1. 3-1.夜間・明け方に多いわけ
    2. 3-2.冬・梅雨・雨上がりの傾向
    3. 3-3.暮らしの動きが引き金に
  4. 4.危険の見極め――正常と点検が必要な場合
    1. 4-1.心配いらない場合の目安
    2. 4-2.点検をすすめるサイン
    3. 4-3.築年による注意点
  5. 5.いますぐできる対処と長期の予防
    1. 5-1.室内環境をならす(温度・湿度・換気)
    2. 5-2.家具・建具の当たりを取る(小さな工夫)
    3. 5-3.観察・記録・相談の手順
    4. 5-4.費用感のめやす(参考)
  6. 6.家鳴りの要点が一目でわかる早見表
  7. 7.構造別の傾向と対策の優先順位
  8. 8.自己診断の流れ(迷ったらこの順)
  9. 9.家鳴りと他の音の見分け方(混同しやすい例)
  10. 10.季節別・時間帯別「家鳴りカレンダー」
  11. 11.賃貸・分譲での連絡のしかた(雛形つき)
  12. 12.やってはいけない対処・注意点
  13. 13.家族が不安がるときの声かけ・工夫
  14. 14.小さな道具でできる“見える化”
  15. 15.ケーススタディ(構造別の実例)
    1. 15-1.木造二階建て:冬の深夜に天井から「パキッ」
    2. 15-2.鉄骨造マンション:雨上がりにサッシまわりが「ミシッ」
    3. 15-3.RCマンション:深夜の廊下側壁から「コトン」
  16. 16.Q&A(よくある疑問・拡張版)
  17. 17.用語の小辞典(やさしい言い換え)
    1. まとめ

1.家鳴りの基礎知識――まず「正体」を知る

1-1.家鳴りの定義と仕組み

家鳴りとは、建材が温度や湿度の変化で伸び縮みし、接合部に力がかかった瞬間に出る音の総称です。主な材料は木材・金属・コンクリート。材料ごとの伸縮の差(異種材料の差)や、固定金具のわずかなずれが重なると、弾ける音・こすれる音・軽い衝撃音が生じます。

1-2.よく聞こえる場所と音の種類

  • 場所:天井裏・屋根まわり・梁(はり)・床下・階段・サッシまわり・扉枠・壁クロスの下地・家具が接する壁面。
  • 音の傾向
    • はぜる音(パキッ/ピシッ):乾燥や急な温度変化で出やすい。
    • きしみ(ギィ/ミシッ):床・階段・建具の当たりによる摩擦。
    • 軽い落下音(コトン):天井裏の木片や釘のわずかな動き。
    • 連続する小さな音(パラパラ):内装材が面でなじむ過程。

1-3.構造による起こりやすさの傾向

  • 木造:湿気・乾燥の影響を受けやすく、発生頻度は高め。ただし致命的不具合ではないことが多い
  • 鉄骨造:金属の伸縮が主。接合部の当たりで音。乾燥期や日照の変化で出やすい。
  • 鉄筋コンクリート造:母体は安定だが、内装の木下地やサッシが鳴ることはある。

2.家鳴りが起きる主な原因――環境・構造・暮らし方

2-1.温度差・湿度差による伸び縮み

室内と屋外の寒暖差、季節の乾燥/多湿で材料の寸法が変わります。昼夜の急変雨上がりの湿度上昇暖房・冷房の入り切りが引き金になりやすい。

2-2.経年変化と乾燥収縮

新築〜数年は材料が落ち着く途中で、音が多く出やすい期間。築年が進むと、固定のゆるみ・微少なずれが溜まり、特定の場所が鳴きやすくなることがあります。

2-3.設計・施工の精度や固定不足

ねじの締め加減下地の納まりが不十分だと、接触部で音が出やすい。建具(戸や扉)の建てつけ床材の固定密度サッシの納まりなども影響します。

2-4.家具や家電との干渉

家具の脚と床・壁の当たり冷蔵庫や洗濯機の微振動が、壁下地や床組に伝わって音を助長することがあります。

2-5.外部要因

強風・急な日射・打ち付ける雨が外装材に温度差や力を与え、屋根板金・外壁の取り合いで音が出ることがあります。


3.いつ起きやすい?――時間帯・季節・天気の関係

3-1.夜間・明け方に多いわけ

日中に温まった外装や屋根が夜に冷えると、一気に縮むため音が出やすい。静かな時間帯で小さな音が際立つのも要因です。

3-2.冬・梅雨・雨上がりの傾向

  • 冬の乾燥期:木材が縮み、はぜる音が増える。
  • 梅雨や雨上がり:湿気を吸って膨らみ、こすれ音建具の重さを感じやすい。
  • 夏の午後〜夜:日照で温まった外装が夕立後に冷えるときにも出やすい。

3-3.暮らしの動きが引き金に

暖房・冷房を入れた直後日射が当たる/陰る切り替わり浴室の湯気・乾燥機など、急な環境変化がきっかけになります。


4.危険の見極め――正常と点検が必要な場合

4-1.心配いらない場合の目安

  • 単発で時々、あるいは季節の変わり目だけ
  • 同じ場所でも日によって音量が変わる
  • 建具の動きは普通で、ひび割れやたわみがない。

4-2.点検をすすめるサイン

  • 金属が割れるような大音連続する鈍い衝撃音
  • 新しいひび床の沈み戸が閉まりにくいなど形の変化が出ている。
  • 雨後だけ特定の場所で強い音が続く(雨漏り・下地の含水の疑い)。
  • 地震後に音が急増し、開閉不良や傾き感がある。

4-3.築年による注意点

  • 新築〜築浅:材料が落ち着くまで1〜3年ほど音が出やすい。保証期間内に建具調整を依頼するのが賢い。
  • 築古固定のゆるみ下地の劣化が重なりやすい。定期点検部分補修で予防。

5.いますぐできる対処と長期の予防

5-1.室内環境をならす(温度・湿度・換気)

  • 急な温度変化を避ける:冷暖房は段階的に。就寝前に弱運転でならす。
  • 湿度を保つ:冬は加湿器室内干し40〜60%を目安に。梅雨は除湿換気
  • 空気の通り道を作る:家具で通風をふさがない。押入れや納戸もときどき開放

5-2.家具・建具の当たりを取る(小さな工夫)

  • 緩衝材(フェルト・薄いゴム)を家具の脚・背面に貼る。
  • 床のきしみは、ねじの増し締めや**床用粉末(でんぷん系)**で軽減できる場合がある。
  • 戸の建てつけ蝶番の調整戸車の清掃・注油で改善。

5-3.観察・記録・相談の手順

1)音の場所・時間・天気記録(簡単な表で十分)。
2)家具の当たり室内の急変がないか確認
3)気になる場合は管理会社・工務店・建築士相談。記録が原因の絞り込みに役立ちます。

5-4.費用感のめやす(参考)

対策概要おおよその費用
家具の緩衝材・戸当たりフェルト・ゴムなど数百〜数千円
戸の建てつけ調整蝶番・戸車の調整0円(自分)〜1万円前後
床の増し締め・部分補修きしみ部の固定1〜5万円程度
下地の補強・再固定壁・天井の当たり改善3〜10万円程度
大規模補修構造的なずれ是正規模によって大きく変動

:上記は目安。地域・建物・工法で変わります。


6.家鳴りの要点が一目でわかる早見表

項目内容
主な原因温度・湿度の急変、乾燥収縮、固定のゆるみ、材料どうしのこすれ
起きやすい時間夜間・明け方、暖房や冷房の入り切り直後
起きやすい季節冬(乾燥)、梅雨・雨上がり(多湿)、夏の夕立後
危険度の目安多くは問題なし。大音の連続・形の変化があれば点検
まずの対処温湿度をならす、換気、家具の当たり調整、記録→相談

7.構造別の傾向と対策の優先順位

構造起こりやすさ音の傾向先にやる対策
木造高めはぜる音・きしみ温湿度調整、家具の当たり、床・建具の微調整
鉄骨造金属のきしみ温度差をならす、金具の点検
鉄筋コンクリート造低〜中サッシ・内装下地の音窓まわりの調整、内装下地の確認

8.自己診断の流れ(迷ったらこの順)

1)単発か連続かを確認(単発なら様子見)。

2)形の変化(ひび・たわみ・戸の不具合)がないか観察。

3)温度・湿度の急変がなかったか、生活の動きと時刻を照合。

4)小さな対処(加湿/除湿、換気、家具の緩衝、建具の微調整)。

5)記録を添えて専門家に相談(管理会社・工務店・建築士)。


9.家鳴りと他の音の見分け方(混同しやすい例)

音の出どころ家鳴りの特徴似た音・他の原因見分けポイント
天井・屋根気温差で夜に増える単発音雨漏りの滴、動物の足音天気との連動・足跡の連続性の有無
壁・サッシ乾燥時のはぜる音サッシのがたつき、風切り音風の強弱で変化するか
床・階段体重をかけるときのきしみ床鳴り(下地不良)人が乗ると再現するか
配管まわり温度変化で配管が動く音水撃(急に水を止める音)水の使用と同時
家電まわり熱で外装が縮む音冷蔵庫・給湯器の作動音電源のオン・オフと連動するか

10.季節別・時間帯別「家鳴りカレンダー」

時期よくあるきっかけ家鳴りの傾向先回り対策
真冬暖房開始・乾燥はぜる高い音が増える加湿、段階的暖房、寝る前の弱運転
日射の増加・寒暖差昼夜で音の出方が変化風通しを確保、家具の当たり確認
梅雨多湿・雨上がりこすれ音、建具が重い除湿・換気、戸車清掃
真夏強日射→夕立外装の伸縮音カーテン・すだれで直射軽減
乾燥へ移行はぜる音が復活加湿準備、床の点検

11.賃貸・分譲での連絡のしかた(雛形つき)

連絡前に用意:①音の場所 ②時間帯 ③天気や暖房などの状況 ④写真・動画(可能なら)

連絡文の例(賃貸・管理会社宛)

いつもお世話になっております。◯◯号室の△△です。最近、夜22時〜24時頃リビング天井付近から「パキッ」という音が1〜2分おきに数回聞こえます。雨上がりの日に多い印象です。建具の動きやひびは確認できませんが、原因の確認と、必要であれば簡易点検をご相談したくご連絡しました。記録した音声・動画もございます。ご対応をご検討ください。

分譲の場合は管理会社・理事会・施工会社の窓口へ、同様の内容で相談します。


12.やってはいけない対処・注意点

  • 壁や天井をむやみに開口しない(見えない配線・配管を傷つけるおそれ)。
  • 強い力でねじ込み・打ち込みを行わない(下地を割る、亀裂の原因)。
  • 市販の発泡材を隙間に無差別に充填しない(湿気の逃げ道をふさぐ)。
  • ガス臭・焦げ臭と家鳴りを混同しない(異臭はすぐ通報)。

13.家族が不安がるときの声かけ・工夫

  • 子どもには:「家が伸び縮みして背伸びしてる音なんだよ」と比喩で安心させる。
  • 高齢者には:温湿度の数字を見せて「今日は乾燥しているので出やすい日です」と状況を言語化
  • 寝室:就寝前の弱暖房・加湿静音の環境音で突発音への注意を和らげる。

14.小さな道具でできる“見える化”

道具目的使い方のこつ
温湿度計(2台以上)部屋ごとの差の把握リビングと寝室窓際と室内に置き差を記録
騒音計・スマホの録音音量と時間の記録同じ時刻に毎日1分録音すると傾向が見える
懐中電灯・小鏡ひび・すき間の確認光を斜めから当てて小さな段差を探す

15.ケーススタディ(構造別の実例)

15-1.木造二階建て:冬の深夜に天井から「パキッ」

状況:就寝後1時間ほどで数回。ひびや建具不良なし。
対応:就寝前30分の弱暖房加湿、屋根裏の断熱材の浮きを点検。
結果:発生頻度が半減。たまに出ても単発で終わるように。

15-2.鉄骨造マンション:雨上がりにサッシまわりが「ミシッ」

状況:夕立の後に限定。
対応:サッシレールの清掃・乾拭き・薄く潤滑、カーテンで直射軽減
結果:音が目立たなくなった。

15-3.RCマンション:深夜の廊下側壁から「コトン」

状況:不定期に小さな音。
対応配管点検口を開け、配管の固定バンドのゆるみを調整(管理会社)。
結果:解消。


16.Q&A(よくある疑問・拡張版)

Q1:家鳴りは幽霊の合図では?
A:物理的な伸び縮みの音です。自然現象と考えて大丈夫です。

Q2:新築なのに音が多いのは欠陥?
A:材料が落ち着く過程ではよくあること。建具調整などで改善する場合が多いです。

Q3:夜になると必ず鳴る。故障?
A:昼夜の温度差で起きることが多いです。急な冷暖房を避け、弱運転でならすと和らぐことがあります。

Q4:放置しても大丈夫?
A:単発で形の変化がなければ問題なし。ただし大音の連続ひび・沈みがあれば点検を。

Q5:どこに相談すればいい?
A:分譲なら管理会社・施工会社、賃貸なら管理会社や大家。戸建ては工務店や建築士へ。

Q6:床のきしみは家鳴り?
A:多くは下地と仕上げ材のこすれねじの増し締め粉末のすり込みで軽減することがあります。

Q7:防音材を増やせば止まる?
A:根本原因は伸縮です。温湿度管理と当たりの調整が先。防音材は補助的です。

Q8:マンションでも起きる?
A:起きます。内装の木下地やサッシが要因になることがあります。

Q9:地震後に家鳴りが増えた
A:家具固定のゆるみ・建具のずれが増えるため。開閉不良や新しいひびがあれば早めに点検を。

Q10:動物の足音との違いは?
A:連続して規則的に動くかが目安。家鳴りは単発で散発的なことが多い。

Q11:天井裏で何か落ちたような音
A:木片のわずかな動き配管の当たりのことがあります。繰り返すなら点検口から確認を。

Q12:就寝中に音で起きてしまう
A:弱暖房・加湿・環境音で緩和。寝具の位置を壁・サッシから少し離すのも一手です。


17.用語の小辞典(やさしい言い換え)

  • 家鳴り:家の材料が伸び縮みする時の音
  • 乾燥収縮:乾いて小さくなること。
  • 含水率:材料にどれくらい水分が含まれているかの割合。
  • はぜる音弾けるような高い音
  • きしみこすれて鳴る音。床や階段でよく起きる。
  • 下地:壁や床の仕上げを支える土台
  • 梁(はり):天井や床を支える太い横材
  • 建具戸・扉・障子・ふすまなどの総称。
  • 取り合い材料と材料がぶつかる場所
  • 点検口中をのぞくための小さな開口

まとめ

家鳴りは多くが自然な現象で、正しく見極めれば心配は小さいものです。まずは温度と湿度をならし、換気を整える。それでも気になるときは場所・時刻・天気の記録を添えて専門家に相談しましょう。音の正体がわかることが、安心して住み続けるための知恵につながります。必要に応じて小さな調整→点検→部分補修の順で無理なく進め、暮らしの安心を育てていきましょう。

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