人はどうしてうれしいと涙が出るの?その理由をやさしく説明
感情があふれると涙が出るしくみとは?
人の気持ちがとても強くなると、それが体の動きにもあらわれます。うれしい気持ち、悲しい気持ち、びっくりした気持ち、不安な気持ちなど、いろいろな感情があります。その中でも「うれしくて泣く」というのは、とても不思議に思えるかもしれませんね。でも実は、これは脳(のう)の中の働きと深く関係しています。気持ちが高ぶると、脳の中にある「自律神経(じりつしんけい)」という部分が活発になり、「涙を出すよ!」と目に命令を出すのです。だから、気持ちがいっぱいになると、自然に涙がポロポロと出てくるのです。
うれし涙はストレスをぬくためのスイッチ
涙は「気持ちのバランス」をとるためのはたらきもしています。うれしいときの涙は、心の中にたまっていた緊張(きんちょう)や不安、努力したときのドキドキを外に出すためのスイッチのようなものです。たとえば、ピアノの発表会でうまくひけたとき、長い練習のすえにできたとき、「やった!」という気持ちと一緒に涙があふれることがありますね。これは、自分でも気づかないうちに、心がリラックスしている証(あかし)です。
なみだは心と体をつなぐメッセージ
人間の体は、心としっかりつながっているすごい仕組みをもっています。涙が出るとき、それは「いま、心がこう感じているよ!」というメッセージです。自分にも、まわりの人にもその気持ちが伝わります。だから、だれかが泣いているのを見たとき、「どうしたんだろう?」「きっとうれしかったのかな」と思いやるきっかけになります。涙は、心と心をつなぐ大切なサインなのです。
なみだにはどんな役わりがあるの?目をまもるヒーローだった!
目をきれいにしてくれる「涙のシャワー」
涙は、目に入ったゴミや小さなほこりを外に流してくれる、まるでシャワーのようなはたらきをしています。たとえば、風が強い日や砂ぼこりがまっている場所にいるとき、目がショボショボしたり、涙が出てきたりしますよね?これは、涙が一生けんめい目をきれいにしてくれているからです。このように、涙は「目のそうじ屋さん」として、目を健康に保つためにがんばってくれているのです。
目がかわかないようにうるおしている
涙は、私たちが気づかないあいだにも、いつも少しずつ出ています。この涙のおかげで、目の表面(ひょうめん)はうるおい、乾燥(かんそう)から守られています。目が乾くと、まばたきが増えたり、ゴロゴロしたりしてしまいます。でも涙があることで、いつも目の表面がなめらかで、しっかり物を見ることができるのです。涙は「目のローション」みたいな大切なものです。
バイキンをやっつけるパワーも!
涙には「リゾチーム」という成分がふくまれていて、この成分にはバイキンをこわす力があります。たとえば、目にバイキンが入ってきたときでも、涙がそのバイキンをたたかってくれるんです。これはまるで、目の中の小さなヒーローのような存在ですね。だから、涙は「そうじ屋さん」でもあり、「バイキン退治のヒーロー」でもあるんです。
なみだには3つの種類がある!?そのちがいをくらべてみよう
いつも出ている「基礎なみだ」
この涙は、目をつねにうるおして、バイキンやゴミが入らないように守ってくれています。ふだん生活している中では、気づかないくらいの少しずつの涙です。でも、この涙があるからこそ、目は乾かずに、健康でいられるのです。目の健康には、この「見えない涙」がとっても大切なのです。
玉ねぎやゴミのときの「反射なみだ」
玉ねぎを切っているとき、目がツーンとして涙が出ますよね?これは「反射なみだ」とよばれるもので、目が「あぶない!」と感じたときに自動で出る涙です。ほこりや虫が入ったときも同じで、体が自分を守ろうとする「防御(ぼうぎょ)反応」なのです。
感動や悲しみの「感情なみだ」
人の心が大きく動いたときに出る涙です。うれしかったり、悲しかったり、がんばったことがうまくいってホッとしたときなど、感情の高ぶりが涙となって出てきます。この涙は、心をととのえたり、気持ちを表現するためにとても大切な役目をしています。
涙の種類 | 出るときの例 | おもな役わり |
---|---|---|
基礎なみだ | ふだんの生活中 | 目をうるおす・バイキンから守る |
反射なみだ | 玉ねぎを切ったとき、ゴミや虫が入ったとき | 目をきれいにする・異物をながす・あぶない物から目を守る |
感情なみだ | うれしいとき、悲しいとき、感動したとき、努力が実ったときなど | 気持ちをあらわす・心のバランスをとる・ストレスをぬく |
なみだが出る動物は人だけ!?動物の涙のちがい
動物も涙は出るけど、ちょっとちがう
犬や猫などの動物たちも、目から涙が出ることはあります。でもそれは、目をまもるための「基礎なみだ」や「反射なみだ」だけです。つまり、目のうるおいをたもったり、ゴミを流したりするためだけの涙です。人のように「感動して泣く」「うれしくて泣く」ということはありません。
なぜ人だけが感情で泣くの?
人間は、言葉や気持ちをあらわすための「感情」がとても発達している生きものです。脳もとても複雑で、いろいろな感情を感じることができます。そのため、心が強く動いたときに涙を流すという行動がうまれたのです。これは、人間だけが持っている特別な力といえるでしょう。
なみだは「心のあいず」でもある
涙は、気持ちを伝えるサインでもあります。ことばでうまく言えなくても、涙が出ることで「今、こんな気持ちなんだ」と伝わります。だからこそ、泣いている人を見ると、まわりの人もその気持ちを感じ取り、やさしい気持ちになれるのです。涙は、人と人とをつなぐ「心のかけ橋」なのです。
自分の気持ちと涙を大切にする方法
涙はがまんしなくてもいいんだよ
ときどき「泣くのははずかしい」「がまんしないと」と思うことがあるかもしれません。でも、涙を流すことはとても自然なことで、心の健康にも大切なんです。うれしかったとき、悲しかったとき、くやしかったとき……その気持ちをがまんせずに涙として出すことで、気持ちが落ちつき、元気になることがあります。「泣くことはわるくないんだよ」と自分に言ってあげてくださいね。
うれし涙も思い出にしよう
うれしくて泣いた日のことは、あなたにとってとても大切な思い出です。日記に書いたり、写真や絵で残しておいたりすると、あとから見返して「このときこんな気持ちだったな」と思い出すことができます。涙は、心が本気で動いたというサイン。そんな気持ちは、大人になってもずっと宝物になるのです。
泣いている人にはそっとよりそう気持ちを
まわりの人が泣いていたら、無理に元気づけようとしなくても大丈夫です。そばにいてあげるだけで、気持ちが伝わることもあります。「どうしたの?」「そばにいるよ」と声をかけるだけで、心がほっとすることもあるのです。涙には、やさしさを引き出す力もあるのです。
【まとめ】
うれしくて涙が出るのは、心がいっぱいになって、体が気持ちを伝えようとしているからです。涙は、目を守ったり、気持ちを伝えたり、心のバランスをとったりする、大切な役目をもっています。人だけがもつこの特別な力を、大切にしましょう。そして、自分の涙も、まわりの人の涙も、あたたかく見守れる心を育てていきましょう。