雨のあとにできる「水たまり」。気づくと消えているのはなぜでしょう?その答えは、太陽、風、空気、そして水の性質がつくる蒸発(じょうはつ)にあります。
この記事では、小学生にもわかる言葉で、水たまりができるところから消えるまでを、図・表・自由研究アイデアを交えてたっぷり解説します。読み終わるころには、玄関先の水じまいから自由研究の計画まで、ぜんぶ自分で考えられるようになります。
この記事でわかること
- 水たまりができる場所・できない場所のちがい(地面・材質・形)
 - 蒸発の正体と、太陽・風・気温・湿度が与える影響
 - 水の循環(蒸発→雲→雨)と私たちのくらしとのつながり
 - 家で安全にできる観察・実験、自由研究のまとめかた
 - 言葉のミニ辞典・Q&A・チェックリスト付き
 
1.水たまりはこうしてできる(深掘りガイド)
1-1.雨がへこみに集まる――「器」があるからたまる
雨つぶがたくさん落ちると、地面のへこんだところが「器」の役わりをして水が集まります。へこみが深いほど、同じ雨でも大きく深い水たまりになります。道路のわだちやマンホールの周りに残りやすいのは、この「器効果」のためです。
1-2.地面の材質でちがう――土・砂・アスファルトの差
- 土や芝生:土粒のすき間に水がしみこみやすいので、水たまりはできにくい/長持ちしにくい。
 - 砂・砂利:すき間が多く、下へ水が逃げるのでできにくい。砂浜の表面に一時的にできても、すぐ消える。
 - アスファルト・コンクリート:ほとんどしみこまないため、表面に水が残って水たまりになりやすい。
 - 透水性ブロック:小さな穴やすき間から下に水を通す材料。道路の水たまり対策に使われることも。
 
1-3.大きさを決める三つの条件
| 条件 | どう影響する? | 例 | 
|---|---|---|
| 雨の量・時間 | 多い/長いほど大きく深くなる | 夕立より長雨の方が大きい水たまり | 
| 地面の形 | へこみ・みぞが多いほど溜まりやすい | タイヤのわだち・側溝近くに残る | 
| しみこみやすさ | しみこみにくいほど残りやすい | 校庭の土と校門前のアスファルトの差 | 
1-4.「しみこむ・流れる・しみだす」も大事
- しみこむ(浸透):土のすき間へ。スポンジのように水を吸う。
 - 流れる(排水):地面の傾きで低い場所に移動。側溝へ入ると短時間で減る。
 - しみだす(湧出):地中の水が上へにじみ出ることもあり、雨が止んでも増えることがある。
 
2.蒸発ってなに?見えない水の大へんしん
2-1.水が気体になる――「水蒸気」に変わる
蒸発とは、水が目に見えない気体の水蒸気(すいじょうき)に変わること。水たまりの水は消えたのではなく、空気の中へ「形を変えて」うつっていくのです。分子(とても小さな粒)が元気に動いて水面から飛び出すイメージです。
2-2.「蒸発」と「沸騰」のちがい
| 項目 | 蒸発 | 沸騰 | 
|---|---|---|
| 起こる場所 | 主に表面でおこる | 水の中全体でおこる(泡が出る) | 
| 温度 | どんな温度でも少しずつ進む | 100℃(気圧で変化)近くで急に進む | 
| 見た目 | 水面が静かに減る | グツグツ泡立つ | 
2-3.太陽と地面のあたためパワー
- 太陽光が地面と水面をあたためる → 水の粒が元気になり、空気中へ飛び出しやすくなる。
 - あたたまった地面は下からも水を温め、蒸発をお手伝い。黒っぽいアスファルトは特に熱を吸収しやすい。
 
2-4.風・気温・湿度・気圧の四つのキー
| 要素 | 蒸発への影響 | 身近なたとえ | 
|---|---|---|
| 風 | 水蒸気を運び去り、つねに新しい空気と入れ替わる → 速く進む | うちわで洗たく物が早くかわく | 
| 気温 | 高いほど水の粒が活発になり飛び出しやすい → 速く進む | 夏は水たまりがすぐ消える | 
| 湿度 | 低いほど空気に水蒸気を受け入れる余地あり → 速く進む | カラッとした日ほどよく乾く | 
| 気圧 | 低いほど水は気体になりやすい | 高い山でお湯がぬるくても沸く | 
2-5.場所でちがう!蒸発スピード早見表
| 場所 | 速さ | 理由 | 
|---|---|---|
| 日なたの広い運動場 | とても速い | 日差し+風で水面が広く温まる | 
| 木かげの土の上 | やや遅い | しみこみ+日差しが少ない | 
| アスファルト道路 | 速い | 黒色で熱を吸収、しみこみにくい | 
| コンクリート通路(ビル風なし) | ふつう | 熱はたまるが風が弱いと遅め | 
3.水たまりが消えるまでの道のりと「水の循環」
3-1.できる → あたたまる → 飛び立つ(ステップ解説)
- 雨でたまる:へこみに水が集まりスタート。
 - あたため・かき混ぜ:太陽と風が水面をあたため、空気を入れ替える。
 - 気体へ:水が水蒸気になり空気中へ。
 - 消えたように見える:全部が気体になると水面はゼロに。
 
3-2.蒸発した水はどこへ?――空で雲になり、また戻る
空にのぼった水蒸気は、上空で冷えて小さな水のつぶになり雲を作ります。つぶが大きく重くなると雨や雪になって地上へ。これが地球の水の循環(じゅんかん)です。海・川・湖・植物の葉(蒸散)もこの循環に参加しています。
3-3.「早く消える日」「遅く消える日」のちがい早見表
| 状況 | 水たまりの消え方 | 理由 | 
|---|---|---|
| 晴れて風がある・気温が高い・湿度が低い | とても速い | あたため+風+乾いた空気で蒸発が加速 | 
| くもり・風がない・気温が低い・湿度が高い | ゆっくり | 水が温まりにくく、空気が水蒸気でいっぱい | 
| 日なた vs 日かげ | 日なたが速い | 受ける光と熱量が大きい | 
3-4.くらしの中の蒸発・結露・乾燥剤
- 洗たく物:風通しのよいベランダで乾きやすい。部屋干しは除湿機とセットで。
 - お風呂の鏡のくもり(結露):空気が水蒸気で満タン(飽和)になると、冷たい面で水滴に戻る。
 - 乾燥剤:食品の袋に入っている「シリカゲル」が空気中の水蒸気を吸って蒸発を助ける。
 
4.おうちでできる!安全で楽しい「蒸発」観察と実験
4-1.日なた・日かげくらべ
- 同じ形の透明コップ2つに、同じ量の水(例:100mL)を入れる。
 - 1つは日なた、もう1つは日かげに置く。
 - 毎日同じ時刻に水位を見て、えんぴつでしるしを付ける(もしくはものさしで測る)。
 
ポイント: 室内でも窓ぎわ(ひあたり)と部屋の奥(ひかげ)でOK。結果をノートにグラフで記録しよう。
4-2.風のあり・なしくらべ
- 浅い皿を2枚用意し、どちらにも同じ量の水を入れる。
 - 一方に小さな扇風機(弱)を向け、もう一方はそのまま。
 - 30分ごとに重さを量るか、水位のへり方を観察する。
 
安全: 電気製品は水にぬらさない。大人といっしょに。
4-3.表面の広さでちがう?皿とコップ
同じ量の水でも、広い皿は表面が広く、細いコップは表面がせまい。どちらが早く減るかな?(→ 表面が広いほど蒸発は速い)
4-4.塩水と真水――どっちが早くへる?
- 真水と食塩水(小さじ1/コップ)を用意し、同じ条件で置く。
 - 毎日水位をくらべる。塩が白く残る様子も観察。
 
観察ポイント: 塩水は水だけが先に蒸発し、塩は残る。海のしおからのヒント!
4-5.観察カード(書き写して使おう)
| 日付・時刻 | 天気・気温・湿度 | 場所(ひなた/ひかげ/風) | 水位(cm) | 気づき | 
|---|---|---|---|---|
| 4/20 15:00 | 晴れ・22℃・40% | ベランダ・風あり | 3.2 | においなし、表面に小さな波 | 
5.ミニ計算&環境の視点:ヒートアイランドと水はけ
5-1.かんたん試算:水たまりは何時間で消える?
たとえば、直径1m・深さ1cmの水たまり(水量約7.8L)が、夏の晴れ・風ありの日に毎時3mmずつ水位が下がるとすると…
- 必要時間 ≒ 
10mm ÷ 3mm/時 ≒ 3~4時間 
条件(気温・風・湿度・日射)で大きく変わります。観察して自分の町の「目安」を作ろう!
5-2.都市のくらしと蒸発
- ヒートアイランド:アスファルトが熱をため、蒸発が進むいっぽうで夜に熱が逃げにくい。
 - 透水性舗装・雨庭(レインガーデン):しみこませて水たまりを減らし、植物の蒸散で涼しくする工夫。
 
6.Q&Aと用語辞典(困ったらここ!)
6-1.Q&A――よくある疑問に答えます
Q1.水たまりの水はほんとうに消えてしまうの? A.消えたのではなく、目に見えない水蒸気になって空気にまじっています。やがて雲・雨になって戻ってきます。
Q2.冬なのに水たまりが早くなくなる日があるのはなぜ? A.気温が低くても、風が強い・空気が乾いている・日差しが強いと蒸発は進みます。
Q3.大きい水たまりと小さい水たまり、どっちが先に消える? A.同じ条件なら浅くて広い水たまりの方が、水面が広いぶん早く小さくなります。
Q4.雨のあとにすぐ晴れると道路が早くかわくのはどうして? A.日差し+黒っぽいアスファルトの熱吸収+車の走行風で、蒸発がいっきに進むからです。
Q5.水蒸気はどこへ行くの?見えないの? A.空気中に広がり、冷たい場所にふれると白い湯気や雲・霧になります。見えないときも必ず存在します。
Q6.同じ晴れでも、春と夏で消え方が違うのは? A.夏は気温が高く、地面の温度も高いので蒸発が速く進みます。湿度が高いと少し遅くなります。
Q7.砂利道と芝生、どっちが水たまりできにくい? A.一般に砂利道の方がすき間が多く、下へ水が逃げるのでできにくいです。
Q8.塩水の水たまりはどうなる? A.水だけが先に蒸発し、塩が白く残ります。潮だまりの塩の結晶はこの仕組み。
6-2.用語辞典(やさしいことばで)
- 蒸発(じょうはつ):水が気体の水蒸気に変わること。
 - 水蒸気(すいじょうき):空気にまじった目に見えない水の気体。
 - 湿度(しつど):空気の中にどのくらい水分がふくまれているか。
 - 水の循環(じゅんかん):海・川・地面から空へ、水が蒸発 → 雲 → 雨となってめぐる大きな流れ。
 - 表面積(ひょうめんせき):水や物の外側の広さ。広いほど蒸発しやすい。
 - 飽和(ほうわ):空気がこれ以上水蒸気を受け入れられない状態。
 - 結露(けつろ):水蒸気が冷たい面で水滴にもどること。
 - 蒸散(じょうさん):植物の葉から水が空気中へ出ていくこと。
 
【まとめ早見表】水たまりが消えるスピードを決めるもの
| 要素 | 速くなる条件 | 遅くなる条件 | ひとことメモ | 
|---|---|---|---|
| 日差し | 強い | 弱い/くもり | 地面も温まり下からも加熱 | 
| 風 | ある | ない | 水蒸気をはこび、空気を入れ替える | 
| 気温 | 高い | 低い | 水の粒が活発になる | 
| 湿度 | 低い | 高い | 乾いた空気ほど受け入れOK | 
| 気圧 | 低い | 高い | 低いほど気体になりやすい | 
| 水面の広さ | 広い | せまい | 広いほど蒸発が進む | 
| 地面の材質 | アスファルトなど | 土・芝生 | しみこみにくいほど表面に残る | 
結論: 太陽・風・気温・湿度・気圧・水面の広さ・地面の材質が、蒸発のスピードを左右します。水たまりが消えるのは、地球の大きな「水の循環」の一場面。身近な観察から、自然のしくみを感じてみましょう!

 
