夜空を見上げると、まんまるの満月、ほそい三日月、半分の半月と、月の形は毎日すこしずつ変化します。なぜ形が変わるの? それは、太陽の光と地球・月のならび方がつくる“見え方のマジック”。
この記事では、満ち欠けの原理から形の名前、観察のコツ、行事や暮らしとの関係、自由研究のアイデア、安全・マナー、先生・保護者向けの指導ヒントまで、小学生向けのやさしい言葉でくわしく解説します。
- 1.月の満ち欠けってなに?まずは全体像をつかもう
- 2.なぜ形が変わるの?太陽・地球・月のならび方を理解しよう
- 3.形とよび名をおぼえよう:満ち欠けのステップ図鑑
- 4.月はいつ見える?時刻・方角の“感じ方”を身につける
- 5.やってみよう!観察ノート・実験・写真で“わたしの月研究”
- 6.月と暮らし:行事・自然・科学のつながり
- 7.自由研究アイデア10(学年別の工夫つき)
- 8.安全・マナー・道具の使い方(重要)
- 9.先生・保護者向け指導メモ(活用のヒント)
- 10.月の満ち欠け 早見&比較表(保存版)
- 11.Q&A:月の“ギモン”を一気に解決!
- 12.用語辞典(むずかしいことばをやさしく)
- 13.まとめ:見上げるたびに“発見”がふえる空
1.月の満ち欠けってなに?まずは全体像をつかもう
**結論:月はいつも丸い。変わるのは“地球から見える光の当たった面の割合”**です。
1-1 観察するとわかる“日ごとのちがい”
- きのうは三日月、きょうは太く、来週は半月――毎日少しずつ形が変化します。
- この変化を**「満ち欠け」**といい、世界のどこでも見られます。
1-2 29.5日でひと回り(ひと月の語源)
- 月の満ち欠けは約29.5日で一周します。
- ※「1か月(ひと月)」という言葉の由来のひとつです。
1-3 形には順番と名前がある
- 新月 → 三日月 → 上弦(右半分) → 十三夜 → 満月 → 下弦(左半分) → かけていく三日月 → 新月。
- 古くから季節や農作業、行事の目安にされてきました。
2.なぜ形が変わるの?太陽・地球・月のならび方を理解しよう
ポイント:月は自分では光らず、太陽の光を反射して光って見える。
2-1 月はいつも“まん丸”――見え方が変わるだけ
- 月そのものは丸い天体。形が変形しているわけではありません。
- 光が当たる面の見える割合が変わるため、形が違って見えます。
2-2 太陽の光+位置関係=明るい面の見え方
- 太陽・地球・月がどんな角度でならぶかで、明るい面の“見える量”が変化。
- 満月:地球から光る面を全面見ている。
- 新月:地球から光る面がほとんど見えない。
- 半月(上弦・下弦):光る面を半分見ている。
2-3 昼間の月/朝方・夕方の月もある
- 月は夜だけのものではありません。昼の青空に白く見える日も。
- 出る時刻・方角は毎日すこしずつ変わります。
2-4 “見かけの動き”をイメージしやすくするコツ
- じぶんが地球、卓上ライトが太陽、白い球が月と考えると、位置関係のイメージがつかめます(詳しくは§5-2)。
3.形とよび名をおぼえよう:満ち欠けのステップ図鑑
3-1 新月→三日月→上弦の月(右半分)
- 新月:空では見えない(またはとても見えにくい)。
- 三日月:新月から2〜3日後。夕方の西の空に細い光の弓。
- 上弦の月:新月から約1週間。右半分が光る「半月」。
3-2 十三夜→満月→下弦の月(左半分)
- 十三夜:満月手前(または後)のほぼまん丸。日本では風情ある名月として愛されました。
- 満月:新月から約2週間。夜空を明るく照らす丸い月。
- 下弦の月:満月から約1週間後。左半分が光る「半月」。
3-3 かけていく三日月→有明の月→新月へ
- かけていく三日月:細くなり明け方の東の空で見やすい。
- 有明の月:夜があけても空に残る月。
- やがて新月に戻り、満ち欠けはくり返します。
3-4 世界の呼び名・文化の小話
- 日本の**十六夜(いざよい)**は、満月の翌日で「ためらい出づる月」。
- 国や地域で満月に固有の名前があることも(例:収穫の月など)。
4.月はいつ見える?時刻・方角の“感じ方”を身につける
4-1 月の形とおおよその見え方(北半球基準)
| 形(よび名) | 見えやすい時刻 | 見えやすい方角 | ひとことメモ |
|---|---|---|---|
| 新月 | 見えにくい | ― | 太陽とほぼ同じ方向。昼に重なり見えない。 |
| 三日月(上弦前) | 夕方〜宵 | 西の空 | 夕焼けとならぶ細い光。写真映え。 |
| 上弦の月(右半分) | 夕方〜夜 | 南の空 | 新月から約1週間。半月の影がシャープ。 |
| 十三夜〜満月 | 夕方〜明け方 | 東→南→西 | とても明るく、一晩中の観察に最適。 |
| 下弦の月(左半分) | 深夜〜明け方 | 南の空 | 満月から約1週間。早起き観察向き。 |
| かけていく三日月 | 明け方 | 東の空 | 夜明け色に細い月が映える。 |
※ 正確な時刻・方角は日ごとに変化。天体アプリや暦で確認しましょう。
4-2 南半球だと向きが“反対”に見えることがある
- 地球上での見る位置が変わるため、光る向き(右/左)が逆に感じられることがあります。
4-3 天気・季節と見え方の関係
- 乾いた空気の日は輪郭がくっきり。湿度が高いとやわらかい光に。
- 冬は空が澄み、クレーター観察に向く日が多いです。
5.やってみよう!観察ノート・実験・写真で“わたしの月研究”
5-1 観察ノート(毎日10分でOK)
- 同じ時刻に空を見て、
- 形(スケッチ) 2) 方角 3) 高さ(手のひら法) 4) 天気 5) 気づいたこと
- 1か月続けると、満ち欠けの流れがつかめます。
観察メモ例(テンプレ)
| 日付 | 時刻 | 形のスケッチ | 方角 | 高さ | 天気 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 9/3 | 18:30 | 細い弓形 | 西 | 指3本分 | 快晴 | 夕焼けと月がならんだ |
5-2 おうち実験:ボール+ライトで満ち欠け再現
- 白い球=月/部屋の電灯=太陽/自分=地球。
- 体の前で球を持ち、身体の周りをゆっくり回すと、光の当たり方の違いで新月→満月→新月を再現できます。
- まぶしさに注意し、目とライトの安全距離を保ちましょう。
5-3 連続写真&タイムラプス
- 1日1枚、同じ場所・同じ時刻・同じ設定で撮影。
- アルバムに並べると形の変化が一目でわかります。
5-4 望遠鏡・双眼鏡で“表面のようす”を観察
- 半月の前後は、昼夜の境目(ターミネーター)に影ができ、**クレーター・山脈・海(暗い平原)**が立体的。
- 手ぶれ防止に三脚や手すりを活用。
5-5 さらに発展:星座・惑星といっしょに観察
- 月の近くに木星・金星・土星がならぶ夜は**“共演”**が楽しめます。
- 星座早見やアプリで並び方を調べてみよう。
6.月と暮らし:行事・自然・科学のつながり
6-1 行事や文化と月
- 十五夜(中秋の名月):お団子・すすきでお月見。
- 十三夜:日本独自の“後の名月”。栗や豆を供える風習も。
6-2 潮の満ち引きと月(自然のリズム)
- 月と太陽の引力で海の水位が上下。
- 新月・満月のころは潮の差が大きく、上弦・下弦のころは小さめ。
6-3 体験学習のアイデア
- 近くの海や川で潮位の変化を観察し、月相とくらべる。
- 郷土の行事と月の形の関係をしらべ、ミニ発表会。
7.自由研究アイデア10(学年別の工夫つき)
- 月相カレンダー作り(低学年):1か月のスケッチを色紙でまとめる。
- 影で測る月の高さ(中学年):指や手のひらスケールを統一し、グラフ化。
- 写真アルバム(中〜上):同条件撮影で形の変化を記録。露出メモも。
- おうち実験レポート(全学年):ボール+ライトで月相再現。図解つき。
- 潮位と月相の相関(上学年):気象庁データ等を用いて散布図に。
- ことばと月(国語×理科):十六夜・有明などの言葉を調査し小辞典に。
- 世界の満月の呼び名(社会×理科):地図にアイコンでプロット。
- 観察場所別の見え方(地理×理科):市街地と郊外で比較、空の明るさ計測。
- 望遠鏡で表面マップ(上):クレーター名を写し取り、レジェンド作成。
- 親子ワークショップ企画:観察会の進行表と安全計画をデザイン。
8.安全・マナー・道具の使い方(重要)
- 夜道は安全第一:反射材・ライト・保護者同伴。
- 近所への配慮:私有地や道路での長時間の立ち止まりに注意。
- 道具:双眼鏡はのぞきながら歩かない。三脚は人の通行をさまたげない。
- 健康:寒い夜は防寒、夏は虫よけ・水分。
- ※ 太陽観察をする場合は必ず専用フィルター。肉眼や望遠鏡で太陽を直視しない(本記事は夜間の月観察が中心)。
9.先生・保護者向け指導メモ(活用のヒント)
- 学習目標:月の満ち欠けの原因(位置関係と反射)を言葉で説明できる。
- 活動構成:①導入(写真提示)→②モデル実験→③屋外観察→④ふりかえり。
- 評価の視点:連続記録の継続性、図解の正確さ、用語の使い分け。
- 個別配慮:撮影が難しい場合は共同アルバムを作成/語彙支援カード配布。
10.月の満ち欠け 早見&比較表(保存版)
| 段階 | 形のようす | 地球からの見え方 | 代表的な見やすい時刻 | 観察ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 新月 | 太陽と同方向 | ほぼ見えない | ― | 月齢0。潮差が大きいことが多い。 |
| 三日月 | 細い弓形 | 夕方、西 | 18時前後(季節で変動) | 地平線近く、空の赤と好相性。 |
| 上弦 | 右半分が光る | 南で高い | 夜のはじめ | 影がくっきり、クレーター立体感。 |
| 十三夜 | ほぼ満月 | 東からのぼる | 宵〜夜 | 日本の“後の名月”。風情ある光。 |
| 満月 | まん丸 | 一晩中 | 夕〜明け方 | 明るくにぎやか。写真は露出に注意。 |
| 下弦 | 左半分が光る | 深夜〜明け方の南 | 深夜〜朝 | 早起き観察に最適。影のコントラスト。 |
| 有明・細月 | とても細い | 明け方、東 | 夜明け前 | 空の色のグラデーションと一緒に。 |
11.Q&A:月の“ギモン”を一気に解決!
Q1.月はどうして自分で光らないの?
A.月は岩石でできた天体。太陽光の反射で明るく見えます。
Q2.満月の夜でも丸く見えないことがあるのは?
A.満月の瞬間は短く、天気や観察時刻でわずかに欠けて見えることがあります。
Q3.昼にも月は見える?
A.見えます。特に上弦・下弦のころは青空の月が見えやすいです。
Q4.日食・月食と満ち欠けのちがいは?
A.満ち欠け=毎日の見え方の変化。日食・月食=影が一直線に重なる特別な現象です。
Q5.南半球では向きが逆?
A.観察地点が変わると、光る向き(右/左)が逆に見える場合があります。
Q6.“月のうさぎ”はどこ?
A.満月の濃淡模様(月の海と呼ばれる暗い平原)が、うさぎに見えるという見立てです。国や文化で見える形の物語がちがいます。
Q7.満月は必ず15日?
A.月の動きは一定ではないため、満月の日は14日や16日になることもあります。
12.用語辞典(むずかしいことばをやさしく)
- 満ち欠け:月の形が日ごとに変わること。
- 上弦/下弦:半月のこと。北半球では上弦=右半分、下弦=左半分が光る。
- 新月:光る面がこちらからほとんど見えない月。
- 満月:光る面が全面見える月。
- ターミネーター:月の昼と夜の境目の影の線。凸凹が目立つ観察の名所。
- 月齢:新月からの日数(小数で表すことも)。
- 月の海:月表面の暗い平原(海ではない)。
- 潮の満ち引き:月と太陽の引力で海の水位が上下する現象。
13.まとめ:見上げるたびに“発見”がふえる空
月の満ち欠けは、太陽の光と地球・月の位置関係がつくる、身近でダイナミックな自然現象です。名前を知る → 観察する → 実験で確かめる → 生活と結びつける、この順番で学ぶと理解がぐっと深まります。
まずは今夜の空を見上げ、形・方角・明るさを1行メモ。1か月後には“君だけの月図鑑”が完成します。家族や友だち、クラスのみんなと観察会を開いて、空の物語を分かち合いましょう。


