はじめての理科でも安心して読めるように、水が氷になる理由(凝固)、氷・水・水蒸気の三つのすがた(状態)、おうちでできる実験、自由研究のまとめ方まで、写真がなくてもイメージできる言葉でくわしく解説します。
さらに、安全のポイント、生活の知恵、地球環境との関係、Q&A、用語辞典、チェックリストも完備。これ1本で“水と氷”の学びが丸ごとわかります。
1.水はなぜ冷やすと氷になる?――温度と分子の関係をやさしく
1-1.水ってどんな物質?
水はH₂Oという物質で、目に見えないほど小さな「水の分子」がたくさん集まってできています。川・雨・海・雪・雲・ジュース・お風呂・汗・涙、そして体の中(血液や細胞)にも水があります。水は地球の表面の約7割をおおい、私たちの体の半分以上も水でできています。
1-2.温度が変わると分子の動きがどう変わる?
- 温かいほど分子は元気に動き回る(ぶつかり合い、すき間が広がる)
- 冷たいほど分子はゆっくりになり、近づいてならびやすくなる
- 分子どうしは引き合う力をもち、温度が下がるときちんと整列しやすくなる
たとえ:みんなが校庭で自由に走り回る=あたたかい水。合図で手をつないでまっすぐ整列=氷。ならび方が変わると、うごき方も変わります。
1-3.氷になる瞬間(凝固)で何が起きる?
水を0℃より下に冷やすと、分子はおたがいに引き合って規則正しく並び、すべらない固い形(結晶)になります。これが氷。氷の結晶は基本的に六角形(ろっかっけい)の骨組みで、雪の結晶も同じ仲間です。ならぶときに少しすき間ができるので、氷は水より体積がふくらみ、軽くなって浮くのです。
1-4.0℃でも凍らない?――過冷却(かれいきゃく)
とても静かに冷やすと、0℃でも結晶の「作りはじめ(核)」ができず、液体のままのことがあります。ここに衝撃を与えたり、氷のかけらを入れたりすると、一気にシャッ!と凍ります。これが過冷却です。
2.状態変化をぜんぶ理解!――凝固・融解・蒸発・凝縮・昇華・析出
2-1.氷がとける(融解)
氷に熱が加わると分子が再び動き出し、固体→液体へ。コップの氷がとけて水が増えるのは融解です。氷を溶かすには、まわりから熱(エネルギー)をもらう必要があります。
2-2.水が湯気になる(蒸発・沸騰)
水が温められると、表面の分子が飛び出して気体(=水蒸気)になります。これが蒸発。100℃になるとブクブク泡が出る**沸騰(ふっとう)**になり、はげしく気体に変わります。洗濯物が乾くのも蒸発が進むからです。
2-3.空気中の水蒸気が水にもどる(凝縮)
冷たいコップの外側につく水滴は、空気中の水蒸気が冷やされて液体にもどる凝縮です。冬の窓のくもり、やかんのフタの水滴も同じ仕組み。
2-4.氷が直接きえる/霜ができる(昇華・析出)
冷凍庫の氷がだんだん小さくなるのは、氷が固体→気体へ直接変わる昇華。逆に、空気中の水蒸気が液体にならずいきなり**氷(霜)になるのは析出(せきしゅつ)**です。
ポイント:氷・水・水蒸気は中身は同じ水。変わるのは温度と分子のならび・動きだけ!
3.三つのすがたをくらべよう――見た目・性質・暮らしの例・実験のネタ
3-1.三態変化(さんたいへんか)の全体像
- 固体(氷):形が決まっている/冷たい/流れない/押すと硬い
- 液体(水):形が自由に変わる/さらさら流れる/入れ物の形になる
- 気体(水蒸気):目に見えない/広がる/湿度として感じる
3-2.暮らしの中の三態変化コレクション
- 氷:冷凍庫の氷、池のこおり、かき氷、アイス、氷砂糖
- 水:水道水、雨、川や海、お風呂、スポーツドリンク、体の中の血液
- 水蒸気:やかんの湯気、霧、雲、加湿器、湯気で見えたドラマのオープニング(想像しやすい例)
3-3.氷と雪のちがい
どちらも固体の水ですが、雪は空気中でできた小さな結晶がふわっと集まったもの。氷は水がまとまって凍った板や塊。結晶の大きさ・空気のふくみ方で見た目や手ざわりが変わります。雪の結晶は六角形で、同じ形は二つとないと言われています。
3-4.氷はどうして浮くの?
氷の六角形の骨組みにはすき間があるため、同じ重さでも体積が大きい=密度が小さい→水に浮くのです。これにより、冬でも池の水は下のほうで液体のまま残り、魚たちが生きのびられるのです。
4.おうちでできる!観察・実験アイデア(安全ポイントつき)
ぜったいに守る:火・熱湯・ガラス容器・ナイフ・ドライアイスは必ず大人と一緒に。こぼれてもOKな場所で行い、手や机をぬらしてもよい準備を。
4-1.温度でくらべる実験(基本)
1)同じ量の水を2つのコップに入れ、片方は冷蔵、もう片方は冷凍へ。
- 0℃に達する時間、凍るまでの時間を温度計とタイマーで記録。
2)水・砂糖水・食塩水を同条件で冷やし、凍り始める温度を比較(氷点降下を体感)。
4-2.過冷却に挑戦(発展)
ペットボトルの水を静かに0℃付近まで冷やし、テーブルにコツンと置いたり、氷のかけらを入れたりして一気に凍るようすを観察。必ずトレーの上で安全に。
4-3.氷の結晶を観察(アート×理科)
薄く広げて凍らせた色つきの氷を虫めがねで観察。六角形の枝分かれ、気泡、溶けはじめの角から崩れる様子をスケッチ。光を当てて虹色が見えるかもチェック。
4-4.塩で氷がとける速さを調べる(生活の知恵)
同じ大きさの氷に食塩/砂糖/何もなしをふりかけ、溶け終わる時間をくらべる。道路の凍結防止、アイスクリーム作りの理屈がわかる。
4-5.「ジュースは水より早く凍る?」を検証(自由研究むけ)
水・100%ジュース・炭酸飲料を同条件で冷凍。凍り始める時刻・完全に凍るまでを測る。砂糖や炭酸の有無が氷点にどう影響するかを考察しよう。
4-6.結露(けつろ)観察とマップ作り
冷えたコップ、ペットボトル、金属スプーン、プラスチックなど材質違いで結露の量を比較。どれがいちばん水滴が多い? できた水滴の大きさの変化も写真で記録。
自由研究のコツ:条件(量・温度・時間・容器・置き場所)をそろえる/写真・表・グラフで見える化/結果だけでなく**なぜ?**を自分の言葉で書く/失敗も立派なデータ!
5.暮らし・地球・安全の知恵――氷と私たちのくらしはこうつながる
5-1.身近な“氷の知恵”ベスト5
1)ジュースをすぐ冷やす:氷+少量の水+塩で温度がグンと下がる(氷点降下)。
2)お弁当を守る:保冷剤は溶けるときに周りの熱をうばい続けるので、ゆっくり冷たさが長持ち。
3)霜取りのなぞ:冷凍庫の霜は析出。こまめに取りのぞくと電気代が節約できる。
4)洗濯物の乾き:風通しと広げ方で蒸発が進み、早く乾く。
5)アイスはなぜとけてベタベタ?:融解で水分が出るので、カップで受けると掃除が楽。
5-2.自然のなかの氷(地球規模)
- 極地の氷床:南極・北極の大きな氷は、昔の空気や気温の情報をとじこめた地球の記録帳。
- 氷河:山の雪がかたまり、とてもゆっくり流れる大きな氷の川。地形をけずってU字谷を作る。
- 海氷:海の水が凍った氷。溶け方は生き物のすみかや海の温度にも影響。
5-3.安全メモ(必ず読もう)
- 氷の上はのらない:池や川の氷は厚さや流れで急に割れることがある。
- ガラス容器の急冷・急加熱はNG:割れてけがの原因。耐熱を使い、急な温度変化をさける。
- ドライアイスは大人と:素手でさわらない。密閉容器に入れない(爆発の危険)。
6.三態変化 まるわかり表(保存版)
| すがた | なまえ | 温度のめやす | 特徴 | 暮らしの例 |
|---|---|---|---|---|
| 固体 | 氷 | 0℃以下 | 形がある/冷たい/流れない | 冷凍庫の氷・池の氷・かき氷・雪 |
| 液体 | 水 | 0~100℃ | 流れる/形が自由 | 水道水・雨・川・お風呂・ジュース |
| 気体 | 水蒸気 | 100℃以上* | 目に見えない/広がる | 湯気・霧・雲・加湿器 |
| 固体→液体 | 融解 | 氷がとける | 熱をうけて液体に | コップの氷がとける |
| 液体→気体 | 蒸発/沸騰 | 水が気体に | 温度や風で進む | 洗濯物が乾く・やかんの湯気 |
| 気体→液体 | 凝縮 | 湿気→水滴 | 冷やされて液体に | コップの結露・窓のくもり |
| 固体→気体 | 昇華 | 氷が直接きえる | 低温・乾燥で進む | 冷凍庫の氷が小さくなる |
| 気体→固体 | 析出 | 霜ができる | 液体にならず固体に | 冬の草や窓の霜 |
圧力で変わります。やかんの*「白い湯気」は微小な水滴で、本当の水蒸気は無色透明**です。
7.自由研究テンプレート(そのまま使える)
7-1.研究テーマの例
- 「食塩の量で氷のとけ方はどう変わるか」
- 「ジュースは水より早く凍るのか」
- 「材質で結露の量に差はあるか」
- 「過冷却水はどんなきっかけで凍るか」
7-2.記録ノートの型
1)目的:何を知りたい? 予想は?
2)方法:用意したもの/条件(量・温度・時間)/手順
3)結果:写真・表・グラフ・気づきメモ
4)考察:なぜそうなった? 予想とくらべてどう?
5)まとめ:わかったこと・次に試したいこと
6)安全:気をつけた点/失敗したらどうする?
7-3.グラフの選び方
- 時間のちがい→折れ線グラフ
- 量のちがい→棒グラフ
- 割合→円グラフ
8.よくある勘違いをスッキリ!
- 「氷は冷たさの“もと”」→×:氷そのものが冷たいのではなく、とけるときに周りの熱をうばうから冷たく感じます。
- 「湯気=水蒸気」→△:白く見える湯気は水滴。水蒸気そのものは透明。
- 「雪はふわふわだから水と違う物質」→×:どちらもH₂O。形(結晶)と空気の入り方がちがうだけ。
9.Q&A(もっと知りたい!)
Q1.0℃なのに凍らないことがあるのは?
A.過冷却です。静かに冷やすと結晶の作り始め(核)ができず、0℃でも液体のまま。衝撃や不純物で一気に凍ります。
Q2.塩をかけるとなぜ氷が早くとける?
A.氷点降下。塩がとけると水の性質が変わり、凍り始める温度が下がるため、今の温度では「溶けやすい」状態になります。
Q3.氷はどうして水に浮くの?
**A.六角形の結晶にすき間ができ、体積がふくらむ→密度が小さくなるため。氷山の多くは水面下にかくれているけれど、全体としては水より軽いので浮かびます。
Q4.湯気はなぜ白く見えるの?
A.本当の水蒸気は無色。 白いもやは、冷えて細かな水滴になったものが光を散らすから。
Q5.気圧が変わると沸騰の温度は変わるの?
A.変わります。 高い山では気圧が低く、100℃より低い温度で沸騰します。
Q6.冷凍庫で作る氷が白くにごるのは?
A.空気の泡や不純物が結晶の間に入るから。ゆっくり凍らせたり、一度沸かして空気をぬいた水を使うと、透きとおりやすいです。
10.用語ミニ辞典(小学生むけ)
- 分子(ぶんし):ものを作る、とても小さなつぶ。水の分子はH₂O。
- 結晶(けっしょう):分子がきれいに並んだ固体の形。氷や雪の六角形が代表。
- 凝固(ぎょうこ):液体が冷えて固体になること。水→氷。
- 融解(ゆうかい):固体が熱で液体にもどること。氷→水。
- 蒸発(じょうはつ):液体の表面から分子が飛び出して気体になること。
- 沸騰(ふっとう):液体の中でも気体がぶくぶく生まれる状態。
- 凝縮(ぎょうしゅく):気体が冷えて液体にもどること。結露(けつろ)。
- 昇華(しょうか):固体が液体にならずに直接気体になること。
- 析出(せきしゅつ):気体が液体にならずに固体になること(霜)。
- 氷点降下(ひょうてんこうか):塩などがとけると凍る温度が下がる現象。
11.チェックリスト(学びが身につく!)
- 氷・水・水蒸気のちがいを説明できる
- 融解・凝固・蒸発・凝縮・昇華・析出を言葉で説明できる
- 結露ができる理由を身近な例で話せる
- 「氷が浮く理由」を友だちに教えられる
- 自由研究の目的・方法・結果・考察を書ける
- 実験の安全ポイントを守れる
12.まとめ
水が氷になるのは、温度が下がって分子が規則正しく並ぶから。 氷・水・水蒸気は同じ水でも、温度と分子の動き方によって性質が変わります。家の冷凍庫、コップの結露、外の霜や雲――身近なところで三態変化は毎日おこっています。
観察・実験・記録をくり返すと、自由研究でも大きな差がつきます。今日から温度・時間・見た目をメモする習慣をはじめて、自然のふしぎを自分の言葉で発見しよう!


