干害って何?原因・影響・対策を小学生にやさしく解説(増補版)

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防災

はじめに、干害(かんがい)とは雨がほとんど降らない状態が続いて、水や作物が足りなくなる困りごとのことです。川や池の水がへり、畑の土がカラカラに乾くと、お米や野菜がうまく育たなくなるだけでなく、わたしたちの生活の水も不足します。この記事では、干害のしくみから、起こったときの行動、毎日のそなえ、理科の視点やミニ実験、家族で使える計画表まで、むずかしい言葉を使わずにていねいに説明します。


干害の基本|どうして起こるの?

① 気象のしくみと干害のつながり

海の上や大きな空気の流れが変わると、雲ができにくくなり、長いあいだ雨が降らないことがあります。気温が高いと水たまりや川の水が早く蒸発してしまい、地面の水分もどんどん失われます。さらに、台風が少ない年は、ふだんならもたらされる雨が届かずに不足し、干害が強まりやすくなります。風が強く、空気が乾いている日が続くと、草や木の水も葉っぱから空へ逃げてしまい(これを「蒸散(じょうさん)」といいます)、土の中の水はさらに少なくなります。

② 地形・地域によって起こりやすさが変わる

川や湖が少ない土地、森や山が少ない場所は水をためておける量が少ないため、雨が減るとすぐに水不足になりがちです。反対に、ダムやため池が多い地域では雨の多い時期の水をためておけるので、干害の影響をあるていど弱められます。町がひろがってコンクリートが増えると、雨がしみこまずにすぐ流れてしまい、**地面のタンク(地下水)**にたまる量が少なくなることも、干害を強める理由になります。

③ いつ起こりやすいの?季節のポイント

梅雨のあとに雨の少ない夏が続くと、畑や田んぼは高い気温と強い日ざしで急速に乾燥します。冬に雪や雨が少ない年も、春〜夏に川の水がへりやすく、のちの干害につながります。秋に台風が少ないと、秋雨の補給が足りず、冬のはじめから水不足が見えはじめることもあります。

原因とサインをまとめた表

原因起きやすいとき身近に見えるサイン
雨が少ない梅雨明け直後の晴天続き水たまりがすぐ消える、土がひび割れる
気温が高い真夏日・猛暑日が連続植物がしおれる、川の水位が下がる
乾いた風からっ風・フェーン洗たく物がすぐ乾く、のどがかわく
台風が少ない秋の降雨が少ない年ダムの貯水率が下がる、取水制限の知らせ
都市化コンクリート面の増加水がしみこまず下流へすぐ流れる

干害が暮らしと自然に与える影響

① 作物と食べものへの影響

土が乾くと根っこが水を吸えず、葉が黄色くなる、実が小さくなるといった変化が出ます。お米は花がつきにくくなり、収穫量がへることがあります。野菜や果物も水分が足りないと味や大きさに影響が出て、店に並ぶ量が少なくなります。牧草がとれないと、牛や羊のエサが減り、牛乳などの生産にも影響することがあります。

② 生活の水不足と健康への影響

川や貯水池の水位が下がると、節水のお願いや給水車が出ることがあります。水が少ないとトイレ・おふろ・洗たくを減らさなくてはいけないことも。暑さが続く中で水分が足りないと、熱中症の心配も大きくなるため、上手な水分補給が大切です。ほこりっぽい日が続くと、のどや目が乾いて痛くなることもあるので、マスクやゴーグルで守りましょう。

③ 自然環境と安全への影響

カラカラに乾いた森や草地は火がつきやすく、山火事が広がりやすい状態になります。川の水がへると魚や生きもののすみかもせまくなり、**生態系(せいたいけい)**に影響が出ます。池の水温が上がると、酸素が少なくなり、魚が苦しくなることもあります。

影響と現れやすいサイン

分野主な影響身近なサイン
作物収穫量の減少・品質低下価格上昇、並ぶ品目が少ない
生活断水・取水制限・節水要請給水車の案内、節水ポスター
健康熱中症・のどや目の乾きこまめな水分と塩分の案内
安全山火事・粉じん増加「火気厳禁」の呼びかけ、立入制限

干害が起きたときの行動ガイド

① 家でできる節水のコツ

水は出しっぱなしにしない、歯みがきはコップの水で、シャワーは短く切り上げるなど、小さな工夫の重ね合わせが大切です。食器洗いはため洗い→すすぎの順にすれば、少ない水でもきれいになります。お風呂の残り湯は洗たく・床そうじ・庭の水やりに再利用しましょう。

② 外出や学校で気をつけること

暑い日はこまめに水をのむ、汗で失った塩分も少しずつ補います。校庭の散水やプールの水は、地域のルールにそって節水モードに。植木の水やりは朝夕の涼しい時間に行うとむだが減らせます。水筒は保冷タイプにして、少ない量でも温度が上がらないようにしましょう。

③ 体を守る暮らしの工夫

室内ではカーテンやすだれで日ざしをやわらげ、扇風機やエアコンを上手に使って体の熱をためこまないようにします。汗をかいたら涼しい場所で休み、水分をゆっくり補給しましょう。帽子や日かげを使えば、体からにげる水分(汗)もへらせます。

行動チェックシート

場面今できることやってみたら✓
歯みがきコップ1杯で口をすすぐ
シャワータイマーで時短、止水レバーを使う
洗たくまとめ洗いで回数を減らす
植物の水やり朝夕に、根元へゆっくり
料理野菜はボウルで洗い、すすぎ水を再利用
お風呂残り湯を掃除に活用

一日の時間割でみる節水ヒント

時間帯できる工夫
歯みがきはコップ、洗顔はぬるま湯少量
水筒を持参、日かげ・帽子で汗を減らす
夕方植物の水やりは日が弱い時間に
シャワーは短時間、食器はため洗い

事前の備えと地域でできること

① 家庭の準備

ペットボトルの飲み水と、トイレや掃除に使える生活用水を分けてストックします。雨の日は雨水タンクやバケツでためて、植木や掃除に再利用すると良いでしょう。水が重くて運びにくいときは、キャスター付きのタンクがあると便利です。

② 学校・地域での取り組み

掲示板や配布物で節水の目標を共有し、給水所の場所や連絡方法を確認します。地域の公園では打ち水の時間や回数を調整し、必要なときだけ効率よく行います。自治体のサイトで貯水率や取水制限の情報をチェックする習慣をつけましょう。

③ 農家の工夫

畑にはマルチ(ビニールシート)を使って土の水分を逃がさないようにしたり、少ない水でも育つ作物をえらんだりします。ため池やスプリンクラーの時間予約で水の無駄づかいを減らす方法もあります。風よけの木を植えて乾いた風を弱めるのも効果的です。

備えのポイント早見表

分類具体例ねらい
水の確保飲み水の保管、雨水タンク生活と植物の両立
使い方ため洗い・節水ノズル使用量をへらす
情報給水所・取水制限の確認あわてず行動できる
連絡家族の集合場所・連絡先はぐれ防止、安心

理科の目で見よう|水の一生(循環)と干害

水は、海→雲→雨→川→海というぐるぐるの旅(すいじゅんかん)をしています。干害のときは、この旅の**「雨」や「地下水にしみこむ」**部分が弱くなります。だから、雨が少ないだけでなく、地面にしみこむ量が少ない町では、地下の水タンクが空っぽになりやすいのです。

場所何が起きる?干害との関係
水蒸気が集まって雲になる雲ができにくいと雨が減る
山・森雨をうけてゆっくり流す木が少ないと一気に流れてしまう
地面にしみこみにくい地下水がたまりにくい
海に水をはこぶ道水位が下がると取水がむずかしい

ミニ観察:家の近くの土の色川の水位を、雨の日と晴れの日でくらべてみよう。写真やメモで残すと、季節ごとの変化が見えてきます。


おうちでできる安全なミニ実験(大人といっしょに)

実験1:蒸発の速さをくらべよう

お皿を2つ用意し、水を同じ量いれます。一つは日なた、もう一つは日かげに置き、1時間ごとに水の高さをしらべます。日なたのほうが早く減れば、暑さで水が空へにげることがわかります。

実験2:土の上のシートで水を守れる?

植木鉢を2つ用意し、同じ植物に水をあげます。一つは土の上にアルミホイルや厚紙を軽くのせ、もう一つはそのまま。次の日、土のしめり具合をくらべると、ふたのあるほうが水をにがしにくいことがわかります。畑のマルチと同じ考え方です。

安全面の注意:屋外で火や薬品は使いません。実験のあとは手を洗いましょう。


ケーススタディ|もし、わたしの町で干害が強くなったら

朝、学校のスピーカーから「節水にご協力ください」とお知らせ。家では、家族で決めたルールどおりシャワーは3分、歯みがきはコップ1杯。給食では、地元野菜が少ないのでメニューが少し変更されました。帰り道、公園の池は水が少なく、魚が少し元気がない様子。夕方、ベランダの植物には朝にためた雨水をあげます。夜、ニュースでダムの貯水率をチェックして、明日の計画を家族で話し合います――このように、一日の暮らしの中でできる小さな工夫を続けることが、町全体を助けます。


よくある質問(Q&A)

Q1:水をのむのも節約したほうがいいの?
A:体の水分はけちらないでください。のどがかわいたら必ずのどをうるおし、熱中症を防ぎます。節約するのは、洗い物や掃除などの「使い方」です。

Q2:どんな飲み物がいいの?
A:水で大丈夫ですが、汗をたくさんかく日は少しの塩分もいっしょにとると安心です。砂糖の多い飲み物ばかりは、かえってのどがかわくことがあります。

Q3:庭や学校の植物はどうすればいい?
A:朝夕の涼しい時間に、根元へゆっくりあげるとむだが少ないです。表面をマルチでおおうと、土の水がにげにくくなります。

Q4:雨がふったら、もう大丈夫?
A:一度の雨では地下水やダムはすぐには回復しません。天気がくもりでも、しばらくは節水を続けましょう。

Q5:干害で山火事がふえるのはなぜ?
A:草木が乾いて火がつきやすく、広がりやすいからです。花火やたき火はやめ、火のそばをはなれるときは完全に火を消すことが大切です。

Q6:家族が離れているときに断水になったら?
A:あらかじめ集合場所と連絡先を決めておきましょう。給水所の場所も地図で共有しておくと安心です。


用語ミニ図鑑

言葉やさしい説明
取水制限川やダムからくみ上げる水の量を減らすこと
蒸発水が空気にまざって空へにげること
蒸散植物が葉っぱから水を空へ出すこと
マルチ土の上にしくシート。水分を守る
貯水率ダムやため池にたまっている水のわりあい

まとめと学びを続けるコツ

① きょうの大事なポイント

干害は「雨が少ない」「気温が高い」「水をためにくい」条件が重なると起きやすい現象です。起こると作物・生活・自然のすべてに影響が広がりますが、節水・備蓄・雨水の活用でダメージを小さくできます。

② 家族会議の進め方

週末に5分だけ、家族で節水ルールを話し合いましょう。「台所はため洗い」「シャワーは○分」「植木の水やりは朝夕」など、家ごとの約束を紙に書いて、見えるところに貼っておくと続きます。給水所や連絡先、集合場所も同じ紙にまとめておくと、いざというときに迷いません。

③ 1週間チャレンジ計画

1日目は歯みがきコップ、2日目はシャワー短縮、3日目はお風呂の残り湯再利用、4日目は食器のため洗い、5日目は植木の朝夕水やり、6日目は雨水の回収、7日目は家族会議でふりかえり。全部できたら、家の水の使い方がぐんと上手になっています。

おわりに――水はみんなで分け合う大切な資源です。小さな節水の積み重ねが、地域全体を助ける力になります。今日からできることを一つ決めて、無理なく続けていきましょう。

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