はじめに、防災(ぼうさい)は、地震や台風、大雨、火事などの災害から自分や家族の命を守るための準備と行動のことです。災害は「いつ」「どこで」起こるかを正確に当てることができません。
だからこそ、ふだんから知っておく・決めておく・練習しておくことが、とても大切になります。ここでは、小学生のみんなにもわかる言葉で、防災の基本と具体的な準備のしかたをくわしく説明します。読み終わったあとに、きょうからできる一歩も紹介します。
防災とは?知っておくべき基本
防災の意味と目的
防災とは、災害でけがをしない・命を落とさないために、先に手を打つことです。たとえば家の中の安全な場所を知っておくこと、避難(ひなん)する道や場所を家族で決めておくこと、必要なものをそろえておくことがふくまれます。災害そのものを止めることはできませんが、準備しだいで被害は小さくできます。よく似た言葉に「減災(げんさい)」があります。これは、被害を少なくする工夫のこと。防災と減災はいっしょに考えると力を発揮します。
いつ起こるかわからないから準備する
地震は前ぶれなくやってきます。台風や大雨は天気予報である程度わかりますが、思ったより早く・強くなることもあります。だから、ふだんからテーブルの下にもぐる練習、停電になったときの明かりの場所確認、避難所まで歩くルートの試し歩きなど、小さな練習をくり返して体で覚えることが重要です。ゲームのレベル上げのように、少しずつできることを増やしておくと本番で落ち着いて動けます。
家族で決めておきたい約束
防災は一人より、家族みんなで同じルールを共有しておくと安心です。家のどこが安全か、離ればなれになったらどこに集まるか、連絡がとれないときはどうするかを話し合い、紙に書いて冷蔵庫などに貼っておくと、いざという時にすぐ見返せます。小さなきょうだいがいる家は、**合図の言葉(例:『ヘルメット!』=頭を守る合図)**を決めておくのも効果的です。
災害の種類と「起きたら何が起こる?」
地震が起きたときに起こること
地面が強くゆれると、家具が倒れたり、ガラスが割れたりします。大きな地震のあとには津波(つなみ)がくることもあり、海の近くではただちに高い場所へ移動する判断が必要です。ゆれの最中は、あたまを守ることが最優先。テーブルの下にもぐり、脚をにぎって体を低く保ちます。ゆれがおさまってから、ガス・火の確認、出口の確保、家族の無事の確認をします。
台風や大雨がもたらす危険
台風や線状降水帯(せんじょうこうすいたい)による大雨では、川の水があふれる・地面がくずれる・風で物が飛ぶといった危険が同時に起こります。天気予報で注意が出たら、ベランダや庭の物をしまい、窓のカーテンを閉め、できるだけ外に出ないで安全な部屋で過ごすことが大切です。雨水が濁ってきたり、道路が川のようになってきたら危険のサインです。
津波・火事・土砂災害などの二次災害
地震がきっかけで津波や火事が起こることがあります。津波は速く高く押し寄せるため、海や川べりに向かって走らないこと、高い場所・津波避難ビルにためらわずに移動することが命を守ります。火事のときは、低い姿勢で煙を吸わないようにして避難します。大雨のあとは、山の近くで土砂災害(どしゃさいがい)が発生することがあります。斜面からパラパラ小石が落ちてくる、山からゴーという音がする、川がにごって木の枝が流れてくる、これらは危険の前ぶれです。
停電・断水も災害の一部
強い風や地震で、電気や水が止まることがあります。夜まっくらになる、トイレが流せない、電子レンジが使えない——こんな時こそ、ランタンや飲み水、電池で動くラジオが役立ちます。電気がなくても使える道具を知っておくと安心です。
場所別の安全行動ガイド
家の中でゆれや強風を感じたとき
家の中で地震のゆれを感じたら、まず頭と体を守る行動をします。机の下にもぐる、クッションで頭をおおう、倒れそうな家具から離れる、火を使っていたら安全を見て消す、といった順番です。ゆれがおさまったら、出口をふさぐ物がないか確認し、靴やスリッパで足を守ると安全です。台風の強風時は、窓から離れ、カーテンを閉めてガラスが飛び散らないようにし、停電にそなえて懐中電灯の場所を確認します。長く外に出られない場合は、トイレの水や食べ物の残りを大切に使うことも必要です。
学校や外出先での身の守り方
学校では先生の指示をよく聞き、机の下でダンゴむしの姿勢(頭を守り、体を小さく)をとります。校庭や体育館では、屋根や照明から離れて広い場所に移動します。外出先では、看板・ガラス・電柱から離れ、安全な建物の中へ。エレベーターは使わず、階段を利用します。海の近くで大きなゆれを感じたら、迷わず高い場所へ直行します。お店などにいるときは、店員さんの指示にしたがいましょう。
通学路・車の中・エレベーター
通学路の近くに古いブロック塀(べい)や崖(がけ)がある場合は、離れて歩くルートを家族と決めます。車に乗っているときに強いゆれを感じたら、ゆっくり止まって車外へ。キーを付けたまま、ドアをロックせず、歩いて安全な場所へ移動します。エレベーターに乗っているときは、すべての階のボタンを押すと、最初に止まった階で降りられます。
海や川の近くにいるときの判断
川の水位が上がっていたり、濁(にご)った水や流木が増えていたら危険のサインです。川岸や橋の上に近づかないでください。潮が急に引く、海から大きな音がするなどの変化に気づいたら、津波の前ぶれかもしれません。すぐに高台へ移動し、警報が解除されるまで戻らないことが大切です。船や港に近い場所では、ロープや重い物が飛んでくる危険もあるので、建物の中へ避難しましょう。
きょうからはじめる備え
家の安全点検と固定
背の高いタンスや本棚は転倒防止金具や耐震マットで固定し、寝る場所の近くには倒れやすい家具を置かないようにします。ガラスには飛散防止フィルムをはり、夜間の停電にそなえて、懐中電灯やランタンの置き場所を家族で共有します。玄関やトイレなど**家の中の「安全スペース」**を日ごろから確認しておきましょう。ペットがいる家庭は、キャリーケースと予備のリードを玄関近くに置いておくと、避難がスムーズです。
防災グッズと持ち出し袋
非常食や水、懐中電灯、モバイルバッテリー、ホイッスル、救急セット、マスク、タオル、着がえ、雨具、手袋、ヘルメットなど、3日分を目安にそろえておくと安心です。子ども用にはお気に入りのお菓子や小さなおもちゃも1つ入れておくと、不安な気持ちを落ち着かせる助けになります。持ち出し袋は**重すぎないこと(体重の10〜15%が目安)**もポイントです。アレルギーや持病がある人は、お薬手帳のコピーと常用薬を忘れずに。
防災グッズ早見表(ご家庭向け)
カテゴリ | 具体例 | 選び方・ポイント |
---|---|---|
食べ物・水 | レトルト・乾パン・ようかん・飲料水 | ローリングストックで常に新しいものに入れ替える。水は1人1日あたり約3Lを目安に。 |
明かり・電源 | 懐中電灯・LEDランタン・モバイルバッテリー | 乾電池と充電式を二重化。停電時にすぐ使える場所に置く。 |
情報・連絡 | 手回しラジオ・ホイッスル・連絡メモ | スマホが使えない時の代わりを用意。家族の電話番号を書いた紙を入れておく。 |
衛生・健康 | マスク・アルコールシート・救急セット | 小さなけがでも早めの手当。常用薬がある人は数日分を小分けに。 |
防寒・雨対策 | アルミブランケット・カッパ・手袋 | 体温を守ることが命を守る近道。季節に合わせて入れ替える。 |
書類・小物 | 身分証のコピー・小銭・筆記具 | 連絡がつかない時の身元確認や公衆電話で役立つ。 |
子ども・ペット | お気に入り菓子・小さなおもちゃ・ペットフード | 心の安心につながる物も1点入れる。ペットは1週間分をめざす。 |
防犯・安全 | 笛(ホイッスル)・携帯ライト・簡易ヘルメット | 夜間の移動や助けを呼ぶ合図に有効。 |
情報の集め方と避難の練習
自治体の防災アプリや気象情報をふだんから確認する習慣をつくります。家族でハザードマップをひらき、避難所までの道を実際に歩いてみましょう。夜や雨の日にも試しておくと、本番に強くなります。月に1回、持ち出し袋の中身チェックの日を決めると、準備が続きやすくなります。家でできる「3分防災ゲーム」として、①懐中電灯を見つけて点灯、②非常食を1つ取り出す、③家族の集合場所を言う——をタイムアタックで練習すると、楽しく身につきます。
連絡方法と家族のルール
災害時は電話がつながりにくくなります。家族で、メッセージアプリ・公衆電話・伝言サービスの順に試すなど、手順を決めておきましょう。家から避難するときは、メモを置く(日時・向かった場所・人数)と、あとから来た家族が安心できます。学校や学童、塾でのお迎えルールも事前に確認しておくと、あわてずにすみます。
まとめとチェックリスト
おさらい:命を守る3つの約束
第一に、あたまを守る。第二に、高い場所や安全な場所へ早く移動する。第三に、家族で決めたルールを思い出して落ち着いて行動する。この3つをおぼえておけば、災害の種類がちがっても正しい行動につながります。さらに、むりをしない・もどらない・近づかないの3つをそえると、危険をへらせます。
家族のためのミニ計画テンプレート
家族の集合場所はどこか、連絡が取れないときの伝言方法はなにか、避難所までのルートはどれかを紙に書いて共有しましょう。「おうちの安全チェック表」「持ち出し袋の中身リスト」「連絡先メモ」の3点をセットで作ると、見直しやすく、実行しやすい計画になります。小学校の自由研究で、家や学校の安全マップを作るのもおすすめです。
明日からのアクション
今日このあと、懐中電灯の場所を家族で確認し、玄関に小さな持ち出し袋を置きましょう。週末にはハザードマップを見ながら避難ルートをおさんぽしてみてください。台風の季節が来る前に、ベランダの物を固定・整理し、非常食を1品だけでも追加しましょう。小さな一歩でも、準備は確実にあなたの力になります。防災を知り、練習し、続けることで、あなたと家族の命を守ることができます。