韓国は、歴史・食・買い物・自然・芸能・癒し・体験が一度に味わえる、近くて深い旅行先です。本ガイドでは、はじめての人もリピーターも満足できる**“絶対に行くべき観光スポット”を、見どころ・季節・体験・所要時間・回り方のこつまで実用目線で徹底解説。
さらにモデルコース・空港アクセス・予算・マナー・雨の日プランまで広げ、旅前の疑問をこの一冊で解決します。最後にQ&Aと用語辞典**も用意しました。
ソウルの王道:歴史と都会の今を一日で味わう
景福宮(キョンボックン)——王朝美と写真映えの定番
朝鮮王朝の正宮。広い中庭、楼閣、池、長い回廊が連なり、衛兵交代式や韓服(伝統衣装)体験で一気に非日常へ。周辺の光化門広場、三清洞のカフェ通り、青瓦台の散策と組み合わせると一日が充実。春は木陰の並木、秋は澄んだ空に瓦屋根がよく映え、冬は薄雪の庭が荘厳です。所要:1.5〜2時間(博物館併設で+1時間)。ベストタイム:開門直後か夕方前。
南山ソウルタワー——大パノラマの夜景と聖地巡礼
市街を一望する展望塔。ロープウェーや山道で上り、夕景〜夜景の時間帯が最も美しい。南京錠の並ぶテラス、展望台の展示、南山環状の散策路も人気。夜は塔のライトと街明かりが溶け合い、撮影は三脚なしでも手すりを使えばぶれにくい。所要:1.5時間。こつ:往路ロープウェー・復路徒歩で渋滞回避。
明洞・聖水洞・東大門——流行と買い物の三本柱
明洞はコスメ・屋台・両替がそろう旅の拠点。裏路地のカフェや教会も雰囲気抜群。聖水洞(ソンスドン)は古い工房街が生まれ変わった映えるカフェ地区で、ベーカリーやギャラリーが点在。東大門は深夜まで開く衣料街と、曲線が美しい**デザインプラザ(DDP)**が見どころ。日中は聖水洞、夕食後に東大門という順路だと動きやすい。
追加で寄りたい都心スポット
汝矣島漢江公園で川風に当たりながら夜景ピクニック、盤浦大橋の噴水は時間が合えば幻想的。ソウル林は鹿やリスに出会える都会の森で、聖水洞カフェめぐりと相性が良い。
伝統文化を歩く:静けさと四季の色にひたる
昌徳宮と「秘苑」——世界遺産の庭をのんびり散策
自然地形を生かした離宮。**秘苑(ピウォン)は池と東屋、古木が調和する名園で、春の桜、秋の紅葉、冬の雪景色が格別。解説つき観覧が基本の日もあるため、入場時間を確認して出かけよう。庭園では石橋や回廊の“影”**を画面に入れると奥行きが出ます。所要:2〜3時間。
仁寺洞(インサドン)——工芸・骨董・韓屋茶屋の街歩き
筆・紙・陶器・古本の専門店が続く伝統の通り。茶道・書道体験、韓服での町歩き、路地裏の韓屋(伝統家屋)カフェが人気。週末の歩行者天国や野外公演も楽しい。韓紙のしおりや手づくり茶器など軽い土産も見つかります。所要:2時間。
韓国民俗村・北村韓屋村——暮らしに触れる“時間旅行”
民俗村では昔の家並みや職人の手仕事、農楽(のうがく)を体験。北村韓屋村は石畳と瓦屋根の静かな住宅街で、展望地からソウルの街並みを一望。生活の場なので静粛と私有地配慮を忘れずに。所要:各1.5〜2時間。
歴史街道・城郭・書院へ
都心から電車で行ける水原華城は城壁歩きと行宮、南漢山城は稜線の眺望が魅力。学びの場書院や、宗廟の儀礼空間も合わせれば、韓国の「礼」と「美」の芯が見えてきます。
食と買い物:屋台から最新カフェまで一気に制覇
広蔵市場(クァンジャンシジャン)——活気と名物がぎっしり
ビビンバ、チヂミ、ユッケ、マンドゥ、トッポッキ…屋台の名物が横一列に。人情味あるやり取りも旅の宝。混雑時は列の短い店に入っても味は十分。所要:1.5〜2時間(待ち時間あり)。こつ:人気店は昼前に。
通仁市場・望遠市場——ローカル気分で食べ歩き
観光客が少ない時間帯は地元の空気そのまま。通仁市場の弁当カフェや、望遠市場のコロッケなど小腹満たしに最適。市場での値段交渉はにこやかに、無理はしないが基本。
聖水洞・カロスキル・延南洞——甘いものと小さな芸術
手づくり菓子、パン、きれいな飲み物、ギャラリー併設カフェが点在。季節限定や数量限定に出会えるのも現地ならでは。テイクアウトで公園ピクニックも気持ちよい。人気店は整理券制のことも。
東大門・新沙・弘大——衣服・雑貨・音楽・路上の楽しさ
夜通し開く市場と専門店が並ぶ東大門、並木道の**新沙(カロスキル)は選び抜かれた店が多い。弘大は若者文化と路上ライブの街。買う・見る・聴くが同時に味わえる。免税店や税還付(TAX REFUND)**の仕組みも覚えておくとお得。
地方へ足をのばす:海・山・古都で“もう一つの韓国”
釜山——海雲台・甘川文化村・広安里の三景
青い海と下町が同居する港町。海雲台ビーチは朝の散歩、甘川文化村は色の連なりが写真に映える。夜は広安大橋の光が海面に伸び、ゆったり過ごせる。時間があれば太宗台の断崖や松島スカイウォークも。所要:半日〜1日。
済州島——世界自然遺産の島で癒しの休日
漢拏山のなだらかな稜線、海岸線のドライブ、城山日出峰の朝日が名物。オルレ小道歩き、黒豚・あわび・みかんのご当地料理も楽しみ。万丈窟や翰林公園で自然の造形にふれるのもおすすめ。所要:2〜3日。
慶州・全州・江陵——古都の気配とていねいな暮らし
慶州は仏国寺と石窟庵、夜に輝く東宮と月池が見事。全州は韓屋村と元祖ビビンバ、殿洞聖堂の赤レンガも印象的。江陵は白い砂浜とコーヒー通り、注文津漁港の市場が楽しい。所要:各日帰り〜1泊。
追加で覚えておきたい地方名所
大邱の近代通り、光州の国立アジア文化殿堂、束草の雪岳山国立公園、麗水の海上ケーブルカーなど、テーマを決めて回ると旅が深まります。
体験・癒し・旅のこつ:満足度を上げる“もう一手”
チムジルバン(温浴施設)——汗を流して身も心も軽く
サウナ・岩盤浴・休憩所・軽食コーナーがそろう大浴場文化。あかすりや塩サウナで体がふわりと軽くなる。深夜・早朝の時間つぶしにも便利。施設によっては男女共用の休憩着で家族利用しやすい。
体験型カルチャー——やって覚えるから楽しい
K-POPダンス教室、伝統音楽、陶芸、書道、韓紙工芸、キムチ作り…“観る”から“やってみる”へ。作品は旅の記念として持ち帰れる。予約は前日までに、言語は日本語・英語・韓国語の順で選べることが多い。
旅の計画術——季節×回り方×予算配分
- 春:桜と新緑。宮殿・庭園・山寺が映える。
- 夏:海と森。済州島や山寺は涼やか。
- 秋:紅葉の当たり年は宮殿と南山が絶景。
- 冬:雪の宮殿と王陵は荘厳。市場の温かい料理がごちそう。
**交通カード(T‑money など)**を用意し、地下鉄+徒歩を基本にすると費用も時間も節約できる。夜はタクシーで移動して体力を温存。
空港から市内へ:アクセス&交通カード早見表
出発空港 | 主な行き先 | 移動手段 | 目安時間 | 目安費用 | こつ |
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仁川国際空港 | ソウル都心 | 空港鉄道(A’REX)直通/一般 | 45–60分 | 中 | 直通は早い・一般は安い |
仁川国際空港 | ソウル主要ホテル | 空港リムジンバス | 60–90分 | 中〜高 | 大きな荷物に便利 |
金浦空港 | ソウル都心 | 地下鉄5・9号線 | 30–45分 | 低 | 乗換え少なく楽 |
金海空港 | 釜山都心 | 都市鉄道2号線 | 30–40分 | 低 | 乗換え1回で主要地へ |
済州空港 | 済州市内/西帰浦 | 空港バス/路線バス | 20–80分 | 低 | 路線を事前確認 |
交通カードの基礎:T‑moneyやキャッシュビーを駅・コンビニで購入し、地下鉄・バス・コンビニで利用可。少額ずつチャージして残額を管理しましょう。
モデルコース(王道×穴場のいいとこ取り)
[1日]ソウル凝縮プラン
午前:景福宮と三清洞さんぽ → 昼:仁寺洞で伝統茶と軽食 → 午後:昌徳宮・秘苑 → 夜:南山ソウルタワーで夜景 → 明洞で屋台ごはん。
[2日]ソウル+水原
1日目:王道スポットを上記の順に。2日目:水原華城の城壁歩きと行宮、夜は東大門でショッピング。合間に広蔵市場で腹ごしらえ。
[3日]ソウル+釜山(または慶州)
1–2日目:ソウル。3日目:KTXで釜山へ移動し海雲台・甘川文化村を散策(または慶州で仏国寺・東宮と月池)。夕方の便で帰路へ。
旅費のめやす(個人手配・1人あたり)
項目 | 低〜中予算 | 中〜高予算 | メモ |
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航空券(往復) | 2.5–6万円 | 6–12万円 | 連休は高騰、早割活用 |
宿泊(1泊) | 6,000–15,000円 | 15,000–35,000円 | 立地と清潔感で選ぶ |
食費(1日) | 2,000–4,000円 | 4,000–8,000円 | 市場×1、カフェ×1、夕食×1想定 |
交通(1日) | 600–1,200円 | 1,200–2,500円 | 地下鉄中心/タクシー併用 |
体験・入場 | 500–3,000円 | 3,000–10,000円 | 体験や展望台で変動 |
節約術:昼は市場で軽めに、夜は1食に集中。地下鉄24時間券・観光パスを行程に合わせて使い分けましょう。
韓国で絶対行くべきスポット早見表(体験・所要・最寄り)
スポット | 地域 | 特徴・魅力 | おすすめ体験 | 所要 | 最寄りの駅・目安 |
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景福宮 | ソウル | 王朝の正宮、回廊と池が美しい | 韓服体験、衛兵交代式、博物館 | 1.5–2h | 地下鉄「景福宮」 |
南山ソウルタワー | ソウル | 360度の展望、夜景 | ロープウェー、恋人の南京錠 | 1.5h | 明洞→徒歩・ロープウェー |
明洞 | ソウル | 買い物と屋台の中心地 | 食べ歩き、両替、足つぼ | 2–3h | 地下鉄「明洞」 |
聖水洞 | ソウル | 工房街が生まれ変わったカフェ地帯 | ベーカリー巡り、写真 | 2h | 地下鉄「聖水」 |
東大門(DDP) | ソウル | 夜通しの衣料街、曲線建築 | 夜市、建物見学 | 2–3h | 地下鉄「東大門歴史文化公園」 |
昌徳宮・秘苑 | ソウル | 世界遺産の庭園 | 解説つき観覧、庭園散策 | 2–3h | 地下鉄「安国」 |
仁寺洞 | ソウル | 伝統工芸と骨董の通り | 茶道、書道、韓屋カフェ | 2h | 地下鉄「安国」 |
民俗村 | 京畿 | 昔の暮らしを再現 | 民俗芸能、衣装、職人工房 | 2–3h | 水原からバス |
広蔵市場 | ソウル | 屋台の名店が密集 | ユッケ、チヂミ、マンドゥ | 1.5–2h | 地下鉄「鍾路5街」 |
汝矣島漢江公園 | ソウル | 水辺の夜景・屋外ピクニック | デリ購入、夜景撮影 | 1.5–2h | 地下鉄「汝矣島」 |
釜山・海雲台 | 釜山 | 海辺の散歩と夜景 | 海辺カフェ、夜景写真 | 半日 | 釜山地下鉄「海雲台」 |
甘川文化村 | 釜山 | カラフルな丘の集落 | 路地の写真、工房見学 | 2h | 南浦洞からバス |
済州・城山日出峰 | 済州島 | 朝日の名所、海の絶景 | 登頂、オルレ小道歩き | 半日 | 空港からレンタカー・バス |
慶州・仏国寺 | 慶州 | 世界遺産の寺院 | 伽藍見学、紅葉の写真 | 2h | 新慶州からバス |
東宮と月池 | 慶州 | 夜の水鏡が絶景 | 夜間観覧、夜景撮影 | 1h | 慶州市内バス |
全州韓屋村 | 全州 | 伝統家屋とご当地料理 | 韓屋散策、ビビンバ | 半日 | 全州駅からバス |
江陵コーヒー通り | 江陵 | 海を見ながら一息 | 砂浜散歩、喫茶 | 2h | 江陵駅からバス |
チムジルバン | 各地 | 温浴・休憩・食事が一体 | あかすり、岩盤浴 | 2–3h | 主要駅から徒歩圏が多数 |
体験教室 | 各地 | 作って学ぶ観光 | ダンス、陶芸、キムチ作り | 1.5–2h | 予約後に現地集合 |
表の使い方:滞在日数に応じて「所要時間」が短い順に並べ替え、同じエリアを面で押さえると移動のムダが減ります。
雨・猛暑・極寒でも楽しむ“保険プラン”
雨の日:博物館、カフェはしご、チムジルバン、仁寺洞の茶屋、DDP内覧。写真は水たまりの映り込みで雰囲気を出す。
猛暑:午前に屋外、午後は百貨店・地下街・美術館へ。塩分・水分・日陰休憩を意識。
冬:宮殿と王陵の雪景色、屋台の温かいスープ、カイロと手袋は必携。地下道で移動距離を縮める。
安全・マナー・小さな韓国語
安全:深夜の路地は避け、貴重品は前持ち。市場ではバッグの口を閉める。タクシーは公式アプリ・流しの正規車を。
マナー:宗教施設は静粛・帽子・サングラスを外す。住宅街(北村など)は私語控えめ。
ひとこと:「少し辛く」「アレルギーがあります」「おすすめは?」を韓国語または英語で。笑顔と挨拶が最強の潤滑油です。
よくある質問(Q&A)
Q1:一番良い季節は?
A:春(3〜5月)と秋(9〜11月)。花と紅葉が美しく、歩く観光がはかどります。夏は海と森、冬は宮殿の雪景色がねらい目です。
Q2:支払いは現金?カード?
A:市内は交通カード+クレジットカードでほぼ対応可能。市場や屋台では小額の現金も用意しましょう。
Q3:移動は地下鉄だけで足りる?
A:主要観光地は地下鉄+徒歩で十分。郊外はバスも活用。済州島は車が便利です。
Q4:言葉が不安です。
A:観光地は日本語・英語表記が増えています。あいさつと数字だけ覚えて、あとは指差しと笑顔で十分伝わります。
Q5:屋台は衛生的に大丈夫?
A:人が多い店、回転の早い店を選ぶのが基本。辛さの調整やアレルギーは事前に一言伝えましょう。
Q6:チップは必要?
A:基本不要。特別な案内や荷物運びを受けた際に気持ちを渡す程度でOKです。
Q7:Wi‑Fiと通信は?
A:レンタルルーターか現地SIMが手早い。短期なら空港受取が楽です。
Q8:治安は?夜歩きは?
A:大通りは比較的安全ですが、深夜の路地は避け、貴重品は前持ちを徹底。屋台や市場では置き引きに注意。
Q9:両替のこつは?
A:市内の公認両替所がレート良好。必要額のみこまめに換えると安心です。
Q10:一日でどこまで回れる?
A:ソウルなら宮殿+市場+夜景で三点盛りが現実的。移動に1時間の余白を見込み、食事は混雑を避けて早めに。
Q11:子連れ・シニアの注意点は?
A:階段・石畳が多い地域ではベビーカーより抱っこ紐が安全。バリアフリーの入口・エレベーター位置を事前確認。
Q12:写真はどこが映える?
A:景福宮の回廊は午前の斜光、南山はマジックアワー、東宮と月池は水鏡が静かに揺れる夜が狙い目です。
用語ミニ辞典(やさしい言い換え)
- 韓服(ハンボク):韓国の伝統衣装。
- 韓屋(ハノク):木と土でつくる伝統家屋。中庭と縁側が特徴。
- チムジルバン:温浴・休憩・食事がそろう大浴場施設。
- T‑money:地下鉄・バス・売店で使える交通カード。
- 屋台(ポジャンマチャ):簡易な飲食の小さな店。夜に活気づく。
- オルレ小道:済州島の海沿い・里山を結ぶ遊歩道。
- DDP:東大門デザインプラザ。曲線が美しい大規模施設。
- 広域急行(KTX):主要都市を結ぶ高速列車。
- 税還付(TAX REFUND):一定額以上の買い物で消費税の一部が戻る制度。
まとめ
韓国は、定番の都心と“もう一つの地方”を組み合わせるだけで、旅の奥行きが一気に増します。王朝の宮殿、屋台の湯気、夜景の光、海と山の静けさ——たくさんの表情を短い滞在でも濃密に味わえるのが魅力。
季節と体験を意識して自分だけの行程を組み、歩きやすい靴と適度な余白で、思い出の一枚と物語のある旅を手に入れてください。必要な準備(交通カード・通信・天候対策)を整え、文化への敬意を忘れずに歩けば、旅はもっと豊かになります。