「なんとなくつけっぱなし」—その習慣、毎日いくら払っていますか? テレビは家庭の中心にある家電のひとつ。ところが、一日中つけっぱなしにすると、月・年の合計で想像以上のコストにふくらみます。本記事ではサイズ別・方式別の実額をわかりやすく試算し、寿命や健康面への影響、今日からできる節電の型まで実践的にまとめました。電気料金は例として30円/kWhで統一して計算しています(地域や契約によって単価は変わるため、後半で26円/40円の感度分析も掲載)。
テレビの電気代はこうして決まる(しくみと要点)
消費電力(W)×使用時間(h)で決まる
テレビ裏面や取説にある消費電力(W)が基本。電力量(kWh)は W × 時間 ÷ 1,000。たとえば100Wのテレビを24時間使うと 2.4kWh/日です。電気代はこの電力量に単価を掛けて算出します。
電気代は「電力量 × 単価」
電力量に電気料金の単価(ここでは30円/kWh)を掛けます。先ほどの例なら 2.4kWh × 30円 = 72円/日。1か月で約2,160円、1年で約26,280円になります。なお時間帯別料金や燃料費調整がある契約では実額が上下します。
仕様・設定で数字が動く
同じサイズでも、画面方式(液晶/有機EL)・明るさ・HDR・倍速表示・常時録画などで消費電力は上下。明るさを下げるだけでも体感以上に節電できます。さらに**映像モード(ダイナミック/標準/映画)**でも差が出ます。
すぐ使える簡易式(メモ)
- 1日の電気代(円) ≒ 消費電力(W)× 使用時間(h) ÷ 1,000 × 単価(円/kWh)
- 月間(30日)= 上記 × 30、年間(365日)= 上記 × 365
サイズ・方式でここまで違う(つけっぱなしの実額)
小型〜中型:32型・40〜50型の目安
- 32型(約60W) … 24hで1.44kWh → 約43円/日、約1,290円/月、約15,700円/年
- 40〜50型(約100W) … 24hで2.4kWh → 約72円/日、約2,160円/月、約26,280円/年
大型:55型以上・有機ELの目安
- 55型(約150W) … 24hで3.6kWh → 約108円/日、約3,240円/月、約39,420円/年
- 有機EL 65型(約180W) … 24hで4.32kWh → 約130円/日、約3,900円/月、約47,450円/年
さらに大画面・高機能のケース
- 75型クラス(約220Wの例) … 24hで5.28kWh → 約158円/日、約4,750円/月、約57,800円/年
- HDR/高輝度・ゲーム時・高フレームレートは一時的に消費電力が増え、上記より高くなることがあります。
補足:有機ELは黒表示が多い映像で省エネに働くケースもあります。一方、高輝度の白が多い映像・HDR映画・スポーツは消費電力が増えがちです。
料金単価の違いでどれだけ変わる?(感度分析)
同じ使用量でも、電気料金の単価で支払額は変わります。100Wテレビを24時間つけっぱなし(2.4kWh/日)の場合:
単価(円/kWh) | 1日の電気代 | 月間(30日) | 年間(365日) |
---|---|---|---|
26円 | 約62円 | 約1,860円 | 約22,630円 |
30円 | 約72円 | 約2,160円 | 約26,280円 |
40円 | 約96円 | 約2,880円 | 約35,040円 |
燃料費調整や再エネ賦課金の上下もあるため、家計への影響を季節ごとにウォッチするのがおすすめです。
視聴スタイル別:あなたの家はどのタイプ?
「ながらBGM派」
音が欲しいだけの時間が長いタイプ。ラジオ/スマートスピーカー/サウンドバー単独へ切替えると電力を大幅削減。ニュースは音声配信で代替可能。
「家族で長時間視聴派」
夕方〜夜に家族で長時間。自動明るさ・省エネモード・画面サイズ最適化で削減。食事中・就寝前はオフのルール化が効きます。
「ゲーム・スポーツ高負荷派」
HDR・高輝度・120Hzなど電力多め。必要時のみ高画質モード、普段は標準/映画モードに落として消費電力を平準化。
「常時つけっぱなし派」
寂しさ対策や習慣で常時オン。人感センサー連動、オフタイマー、無信号オフ設定を。小型のサブ画面への置き換えも有効です。
つけっぱなしの「見えないコスト」(寿命・体調・ついで使用)
本体の寿命に与える影響
長時間稼働は発熱と部品劣化の原因。液晶はバックライト、有機ELは焼き付きのリスクが上がります。こまめな電源オフが寿命の延命につながります。通気口の埃清掃も放熱効率を高めます。
目と体への負担
見続けは眼精疲労や睡眠の質の低下につながりがち。就寝1時間前は明るさを下げる、ブルーライト抑制、音声のみへ切替が有効。小さなお子さんは視聴距離=画面高さの3倍以上を目安に。
ついでに増える周辺機器の電力
サウンドバー(30〜50W)、ゲーム機(100〜200W)、外付けHDD(5〜10W)、ストリーミング端末(3〜7W)、周辺照明など、同時使用で合算。テレビだけの計算より実費が上ぶれしやすい点に注意。
今日からできる節電テクニック(無理せず続く型)
設定で減らす(効く順)
- 明るさ・画面モードを標準/省エネへ
- 自動明るさセンサーON
- 無信号オフ・スリープ・タイマーを活用
- HDRや高輝度は必要時のみ
- 倍速/高フレームはスポーツ・ゲーム時のみ
使い方で減らす
- ながら視聴は音声メディアへ(ラジオ/スマートスピーカー)
- 見ない時間は主電源オフ。待機電力も年で見ると無視できません。
- **録画・配信の連続再生は「連続再生OFF」**で垂れ流しを防ぐ。
- **CEC連動(HDMI)**を使ってTVオフで周辺機器も連動オフ。
機器で減らす
- 省エネ達成率の高い新機種は同サイズでも電力差が大きい。
- 小型のサブ画面(PCモニター等)に切替えると視聴だけなら低コスト。
- 節電タップで待機電力をまとめて遮断。スマートプラグで自動化も。
電気代早見表・シミュレーション(6h/12h/24h)
単価:30円/kWh、映像モード標準の想定。使用時間での違いがひと目で分かります。
テレビの種類・サイズ | 目安消費電力 | 6時間/日の電気代 | 12時間/日の電気代 | 24時間/日の電気代 | 月間(24h×30日) | 年間(24h×365日) |
---|---|---|---|---|---|---|
32型 液晶 | 約60W | 約11円 | 約22円 | 約43円 | 約1,290円 | 約15,700円 |
43型前後 液晶 | 約100W | 約18円 | 約36円 | 約72円 | 約2,160円 | 約26,280円 |
55型 液晶 | 約150W | 約27円 | 約54円 | 約108円 | 約3,240円 | 約39,420円 |
65型 有機EL | 約180W | 約32円 | 約65円 | 約130円 | 約3,900円 | 約47,450円 |
75型 大画面 | 約220W | 約40円 | 約79円 | 約158円 | 約4,750円 | 約57,800円 |
参考:6時間視聴に抑えた場合(100Wテレビ)→ 0.6kWh/日 = 約18円/日、約540円/月、約6,570円/年。
ストリーミング端末・ゲーム機・音響の影響(合算目安)
機器 | 目安消費電力 | 一緒に使うと…(100Wテレビ/日) | コメント |
---|---|---|---|
ストリーミング端末 | 3〜7W | +約2〜5円/月 | 低いが常時通電だと積み上がる |
外付けHDD(常時録画) | 5〜10W | +約4〜7円/日 | 録り溜め派は要注意 |
サウンドバー | 30〜50W | +約22〜36円/日 | 音量・サラウンドで上下 |
据置ゲーム機 | 100〜200W | +約72〜144円/日 | 高負荷タイトルで上振れ |
同時使用時は合算して見積もりを。テレビ単体の試算より高額になります。
実測してみよう:家のテレビは本当に何W?(簡易計測)
- ワットチェッカーをコンセントに挿し、テレビを接続。
- 通常視聴・映画・ゲームなど場面別に10〜15分測定。
- 平均W × 使用時間で日/週/月の電気代を推計。
- 設定変更前後で比較し、効果があるものを残す。
ポイント:明るさ・HDR・倍速のON/OFFで**二桁%**の差が出ることも。測ってから決めると後悔が少ないです。
買い替えでどれだけ得?(損益分岐の考え方)
- **旧型液晶(200W)→新型省エネ(100W)**に買い替え、毎日6時間視聴の例:
電力量差=0.6kWh/日 → 約18円/日 → 約540円/月 → 約6,570円/年節約。 - もし年間6,570円浮くなら、5年で約3.3万円相当。価格差と見比べて検討を。
コツ:画面サイズを維持しつつバックライトの効率や省エネ達成率で比較。映像の満足度も含めて総合判断を。
節電チェックリスト(印刷推奨)
- 画面モードは標準/省エネになっている
- 自動明るさ・無信号オフ・スリープをONにした
- 就寝1時間前に明るさを落とす/音声のみへ切替
- CEC連動で周辺機器も一括オフ
- 録画の連続再生OFF・自動連続再生を切った
- 通気口の埃を月1で清掃
- 節電タップ/スマートプラグで待機電力を管理
- 家族で視聴ルール(食事中オフ等)を共有
よくある質問(Q&A)
Q1. つけっぱなしでも待機電力は関係ありますか?
A. 視聴中は関係しませんが、つけっぱなしをやめても主電源を切らなければ待機電力はかかることがあります。主電源オフや節電タップで対策を。
Q2. 有機ELは電気代が高いのですか?
A. 高輝度・HDR・静止画の多い用途では増えやすい傾向。ただし暗いシーンの多い映像では抑えられることも。明るさ自動調整や省エネモードを活用しましょう。
Q3. 画質を落とさず節電するコツは?
A. 部屋の照明を少し落として画面の明るさも下げると、見え方の満足度を保ちながら消費電力を下げられます。色温度をやや暖色にするのも効果的。
Q4. 子どもがいるので完全オフが難しい…
A. **自動オフ(無操作◯分で消灯)**を設定。音声だけでよい時間はラジオに切替。視聴ルール(食事中は消す等)を家族で共有すると続きます。
Q5. テレビの電気代より他の家電の方が高い?
A. 夏冬はエアコン、通年では冷蔵庫が高くなりがち。とはいえ大画面+長時間のテレビは無視できないコスト。合算管理を。
Q6. 固定料金プランと時間帯別料金では?
A. 夜間単価が安いプランなら、夜の視聴が多い家庭は有利に。契約の単価表を確認し、生活時間と合うプランへ見直すと効果大。
用語辞典(やさしい言い換え)
- 消費電力(W):使っている瞬間の電気の大きさ。
- 電力量(kWh):一定時間で使った電気の合計。W × 時間 ÷ 1,000。
- 待機電力:使っていないのにコンセントにつながっているだけで使う電気。
- HDR:明るい所と暗い所をくっきり映す機能。高画質だが電力は増えがち。
- 自動明るさセンサー:部屋の明るさに合わせて画面の輝度を自動調整する仕組み。
- CEC(HDMI連動):テレビのオン/オフに合わせて周辺機器を連動させる機能。
まとめ
- 24時間つけっぱなしはサイズ次第で月数千円〜年数万円に。
- 明るさ・自動オフ・視聴時間の見直しで、体感を崩さず大きく節電できます。
- 周辺機器・録画・ストリーミングも含めて合算で管理すると、家計インパクトを正しく把握できます。
- まずは設定の見直しとタイマーの常用、次に実測・買い替え検討へ。
今日から、設定と使い方の小さな工夫でムリなく節電。
家計にもテレビの寿命にもやさしい視聴習慣に切り替えましょう。