冷え込みが底を打つ2月は、実は野菜がいちばん“甘く・濃く”なる時期。霜や冷気に当たってでんぷんが糖に変わるため、うま味やコクがぐっと増します。ここでは、2月に旬を迎える野菜の特徴・栄養・選び方・保存・下ごしらえ・調理法・一週間献立まで、家庭ですぐ役立つ実用情報を一冊分の濃さでまとめました。買い物前の予習、台所での実践、献立づくりまでこの1本で完結します。
2月が旬の野菜カレンダーと味の特徴(拡張版)
葉もの:ほうれん草・小松菜・春菊・水菜
- ほうれん草…寒締めで葉が肉厚。甘みが強く、えぐみが少ない。おひたし、胡麻和え、ソテー、キッシュ、ポタージュに。
- 小松菜…クセが少なくカルシウム豊富。炒め物、味噌汁、ナムル、浅漬け、オイスター炒めに万能。
- 春菊…香りで食欲をそそる。鍋の名脇役、白和え、天ぷら、サラダ(生食)は柔葉を使用。
- 水菜…シャキっとした食感。サラダ、はりはり鍋、豚しゃぶの相棒に。
根菜:大根・かぶ・ごぼう・れんこん・にんじん
- 大根…中心までみずみずしく甘い。煮物やおでんは“面取り+下茹で”で味しみ抜群。おろしは食べる直前に。
- かぶ…柔らかくジューシー。生はサラダ、火入れでとろり。葉も栄養豊富でふりかけや味噌汁に。
- ごぼう…香りが際立ち、シャキッとした歯ざわり。きんぴら、煮しめ、かき揚げ、サラダに。
- れんこん…ほくほく~シャキシャキ。きんぴら、はさみ揚げ、天ぷら、すり流しの“粘り”が体を温める。
- にんじん…甘み最高潮。グラッセ、ラペ、ポトフ、ケーキやきんぴらの彩りに。
定番:白菜・ブロッコリー・長ねぎ・キャベツ(冬どり)
- 白菜…霜で甘みが増し、葉はとろり・芯はしゃっきり。鍋、漬物、クリーム煮、ロール白菜に。
- ブロッコリー…蕾が締まり甘み濃厚。温野菜、グラタン、ポタージュ、ペペロンチーノに。
- 長ねぎ…白い部分はとろける甘さ、青い部分は香りと栄養の宝庫。焼きねぎ、鍋、ぬた、味噌汁に。
- キャベツ(冬どり)…葉が詰まり甘い。せん切り、ロールキャベツ、回鍋肉、トンカツの相棒に。
いも類・香味:里芋・長芋・じゃがいも(冬掘り)・生姜
- 里芋…ねっとり食感。煮ころがし、けんちん汁、コロッケ、唐揚げが秀逸。
- 長芋…しゃき・とろ両刀。とろろ、短冊、ステーキ、ふわとろ焼き。
- じゃがいも(冬掘り)…煮崩れにくく甘い。肉じゃが、ポトフ、粉ふき、ガレット。
- 生姜…体を温める香味野菜の要。生姜焼き、スープ、ホットドリンクに。
2月の旬野菜・比較表(保存版)
野菜 | 旬の目安 | 主な産地 | 栄養の要点 | 良い品の見分け方 | 相性の良い料理 | 目安保存期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
ほうれん草 | 11〜2月 | 茨城・千葉・埼玉 | ビタミンC/鉄/βカロテン | 葉が濃緑で厚い、根元が赤い | おひたし、胡麻和え、バターソテー | 冷蔵3〜4日/冷凍2〜3週 |
白菜 | 11〜2月 | 茨城・長野・群馬 | ビタミンC/食物繊維/カリウム | ぎっしり重い、切り口が白い | 鍋、漬物、クリーム煮 | 冷蔵(丸)2週間 |
大根 | 11〜3月 | 千葉・神奈川・北海道 | ビタミンC/消化酵素 | ずっしり重い、表面なめらか | ふろふき、煮物、おろし | 冷蔵1週間(カット3〜4日) |
ブロッコリー | 12〜3月 | 愛知・北海道・埼玉 | ビタミンC/葉酸/カリウム | 蕾が密、色が濃い、茎がみずみずしい | 温野菜、グラタン、スープ | 冷蔵3〜4日/冷凍1ヶ月 |
小松菜 | 12〜3月 | 埼玉・千葉・東京 | カルシウム/鉄/ビタミンC | 葉が立ち、茎がしなやか | 炒め物、味噌汁、ナムル | 冷蔵3〜4日 |
長ねぎ | 11〜3月 | 千葉・埼玉・茨城 | ビタミンC/硫化アリル | 白部が長く締まる、青部に張り | 焼きねぎ、鍋、ぬた | 冷蔵1週間/刻み冷凍1ヶ月 |
ごぼう | 11〜2月 | 青森・北海道・茨城 | 食物繊維/ミネラル | 細めでまっすぐ、香りが強い | きんぴら、煮しめ、汁物 | 泥つき冷暗所2週間 |
かぶ | 12〜3月 | 千葉・埼玉・京都 | ビタミンC/消化酵素 | 表面がなめらか、葉が生き生き | 甘酢漬け、煮物、スープ | 冷蔵5〜7日(葉は3日) |
れんこん | 11〜3月 | 茨城・佐賀・愛知 | ビタミンC/食物繊維 | 切り口が白く穴が整う | はさみ揚げ、きんぴら、煮物 | 冷蔵5日/酢水保存可 |
にんじん | 通年(冬甘) | 北海道・千葉 | βカロテン/食物繊維 | 色が濃く張りあり | ラペ、ポトフ、グラッセ | 冷蔵2〜3週間 |
里芋 | 9〜2月 | 千葉・宮崎・埼玉 | 食物繊維/カリウム | ずっしり・ぬめり控えめ | 煮ころがし、汁物、唐揚げ | 冷暗所1〜2週間 |
ワンポイント:寒い日は“根菜+ねぎ+葉もの”の三位一体で、体を内から温め、栄養の偏りも防げます。
旬の“おいしさの科学”をやさしく解説
- 糖化:低温ストレスででんぷんが糖へ変換。大根・白菜・ほうれん草の甘みUP。
- 細胞の引き締まり:寒さで水分が逃げにくく、歯ざわりがよくなる(れんこん・ごぼう)。
- 香り成分の強化:ねぎ・春菊は揮発成分が立ち、鍋に入れるだけで風味の核に。
栄養と健康メリット(相乗効果の“食べ合わせ”付き)
免疫・巡り・腸活を後押し
- ビタミンC(白菜・ブロッコリー・かぶ)…粘膜を守り、風邪に負けにくい体づくり。
- 鉄・葉酸(ほうれん草・小松菜・ブロッコリー)…貧血予防、冷え対策、だるさ軽減に。
- 食物繊維(大根・ごぼう・れんこん)…腸の動きを助け、老廃物の排出を促す。
寒さ対策と美容の味方
- 硫化アリル(長ねぎ)…血行をよくし体を温める。疲労も抜けやすい。
- βカロテン(ほうれん草・春菊・にんじん)…肌の潤いを守り、乾燥の季節にうれしい。
- カリウム(白菜・ブロッコリー・里芋)…余分な水分を整え、むくみ予防に。
食べ合わせで栄養吸収UP
- 脂溶性ビタミン+油:ほうれん草×ごま油、にんじん×オリーブ油で吸収率UP。
- 鉄+ビタミンC:小松菜×レモン、ほうれん草×柚子で鉄の吸収を助ける。
- 食物繊維+発酵:大根×味噌、白菜×キムチで腸活を後押し。
家族別・食べ方の工夫
- 子ども…ほうれん草は“下茹で→水にさらす”でえぐみ減。卵やチーズと合わせて食べやすく。
- 妊婦さん…鉄・葉酸豊富な小松菜やブロッコリーを常備菜に。減塩でも満足な“だし濃いめ”がコツ。
- 高齢の方…大根やかぶを“とろ火でコトコト”。消化にやさしく温まる。根菜は薄切りで噛みやすく。
失敗しない「選び方・保存・下ごしらえ」完全版
市場での見極めポイント(三原則)
- 色:濃い緑・真っ白・つやのある白が目安。
- 形:まっすぐ・締まりがある・葉が立つ。
- 重さ:持ってずっしり=水分と栄養が詰まっている証拠。
保存の基本(冷蔵・冷凍・干す・漬ける)
- 葉もの:湿らせた紙で包み、立てて野菜室。下茹で冷凍で2〜3週間。
- 根菜:新聞紙で包み冷暗所。切ったらラップ密封。切り干しにすれば長期保存。
- ねぎ:根を下にして立て保存。刻んで小分け冷凍が便利。
- ベジブロス:皮・芯・根をコトコト煮て“野菜だし”に。冷凍キューブ化で味噌汁や煮物がランクアップ。
下ごしらえの基本テク
- アク抜き:ごぼうは酢水、れんこんは薄い酢水、大根は下茹でで澄んだ味に。
- 切り方:大根は“面取り+隠し包丁”で味しみ&煮崩れ防止。ブロッコリーは茎も皮をむき活用。
- 電子レンジ活用:里芋は皮ごとチン→つるんと剥ける。ほうれん草は少量調理に最適。
冷凍・下処理 早見表
野菜 | 冷凍可否 | 下処理 | 解凍法/使い方 |
---|---|---|---|
ほうれん草 | ◎ | さっと茹でて水気を絞り小分け | 凍ったまま汁物・炒め物へ |
小松菜 | ◎ | 同上 | 同上 |
白菜 | ○ | ざく切り→生冷凍 or さっと茹で | みそ汁・鍋に直投入 |
大根 | ○ | いちょう切りで下茹で→冷凍 | みぞれ・味噌汁・炒め煮 |
ブロッコリー | ◎ | 固めに茹でて冷凍 | 彩り・弁当・グラタンに |
れんこん | ○ | 酢水にさらし→下茹で冷凍 | きんぴら・炒め物 |
ごぼう | △ | ささがき→軽く下茹で | 風味落ち注意、早めに消費 |
身体が温まる調理法と“主役になる”献立アイデア
主菜になる“がっつり野菜”
- 白菜と鶏の塩鍋:白菜の甘み×鶏のうま味。仕上げに長ねぎで香り出し。〆は雑炊。
- 大根ステーキ:下茹で→バターじょうゆで香ばしく。厚切りが満足感◎。柚子皮で香りづけ。
- ブロッコリーの肉巻き:茹で房を豚薄切りで巻き、甘辛照り焼きに。冷めてもおいしく弁当向き。
- 里芋の唐揚げ:下茹で→片栗粉でカリッ。塩+山椒でおつまみにも。
副菜・常備菜で“毎日コツコツ”
- ほうれん草の胡麻和え:すりごま+みりん+しょうゆで簡単名作。白だしで上品に。
- かぶの甘酢漬け:塩もみ→甘酢。葉は“ふりかけ”で無駄なく。ゆず皮で香りを。
- ごぼうとれんこんのきんぴら:太め千切りで噛みごたえを残す。七味or山椒でアクセント。
- にんじんラペ:レモンと蜂蜜、少量の塩。ナッツ追加で満足度UP。
温まる汁もの・ご飯もの
- みぞれ汁(大根おろしたっぷり)…体の芯からぽかぽか。鮭や鶏団子を合わせて主菜級に。
- 小松菜と油あげの炊き込み…香り高く、鉄分もおいしく補給。
- ねぎたっぷり雑炊…疲れた日の“回復ごはん”。卵でとじて優しい味に。
2月の一週間献立プラン(例)
- Mon:白菜と鶏の塩鍋/にんじんラペ/小松菜味噌汁
- Tue:ブロッコリーのペペロンチーノ/大根ステーキ/かぶ甘酢
- Wed:里芋の煮ころがし/鯖の味噌煮/ほうれん草胡麻和え/ねぎぬた
- Thu:豚汁(大根・ごぼう・ねぎ)/れんこんはさみ焼き/白菜浅漬け
- Fri:小松菜とツナの混ぜごはん/鶏むね照り焼き/ブロッコリースープ
- Sat:ロール白菜のトマト煮/にんじんグラッセ/大根サラダ
- Sun:けんちん汁/里芋唐揚げ/れんこんきんぴら/柚子大根
時短の鍵:週末に“下茹で・刻み冷凍・ベジブロス”を仕込むと、平日調理が10〜15分短縮。
よくある失敗と対処Q&A(拡充版)
Q1. ほうれん草は生でも食べられる?
A. 冬のものはえぐみが少なめ。サッと湯通ししてからサラダにすると食べやすいです。
Q2. 大根の辛みを抑えるには?
A. 先端は辛みが強いので“真ん中〜葉元”を選ぶ。おろしは時間を置かずすぐ食べるのがコツ。煮物は下茹でで辛み抜き。
Q3. 白菜を丸ごと保存する方法は?
A. 芯を少しくり抜き、濡らしたキッチンペーパーを詰め新聞紙で包み、立てて冷暗所へ。使う分だけ外葉からはがす。
Q4. ブロッコリーのゆで加減は?
A. 小房で1分半〜2分。余熱で火が入るので少し固めに。氷水で色止め。茎は皮を厚めにむいて細切りで炒め物へ。
Q5. ねぎは青い部分も使える?
A. 栄養は青い部分に多い。刻んで味噌汁や炒め物、ぬた和え、薬味に活用を。
Q6. ごぼうの泥はどう落とす?
A. たわしでこするだけでOK。香りを残すため、皮はむきすぎない。変色は酢水で防止。
Q7. 里芋のぬめりが気になる?
A. 塩もみ→下茹でで軽減。電子レンジ加熱後に皮むきが楽。
Q8. 切った大根がすぐスカスカに…
A. 断面をぴったりラップし立てて保存。早めに“おろし・味噌汁”で使い切る。
Q9. 下茹での塩は必要?
A. 青菜は塩少々で色よく。根菜は無塩でOK。アクの強いものは米ぬか・米のとぎ汁も有効。
用語辞典(知って得するミニ知識)
- 寒締め…冬の寒さに当てて栽培し、糖度と栄養を高める方法。
- 面取り…角を落として煮崩れを防ぐ下ごしらえ。
- 隠し包丁…味のしみ込みを良くするために入れる浅い切り目。
- 白い粉(ブルーム)…白菜やきゅうり表面の粉状の自然物質。鮮度が良い目印。
- ベジブロス…野菜の皮や芯で取る“野菜だし”。うま味と栄養の宝庫。
- 寒仕込み…低温期に味噌や漬物を仕込むこと。発酵が穏やかで味が丸くなる。
買い物・仕込みチェックリスト(印刷OK)
- 旬の葉もの:葉色濃く、根元赤い/葉が立つ
- 旬の根菜:ずっしり重い/皮つや/切り口白い
- ねぎ:白部長い・青部に張り/曲がり少ない
- 保存資材:新聞紙・保存袋・キッチンペーパー・製氷皿(ベジブロス用)
- 常備調味:みそ・しょうゆ・みりん・酢・ごま・だし・油
- 週末仕込み:青菜下茹で冷凍/大根下茹で/ベジブロス/浅漬け1種
まとめ
2月は“甘み・うま味・栄養”が三拍子そろった冬野菜の最盛期。旬を賢く選び、正しく保存し、体が温まる調理でいただけば、家族の健康と食卓の満足度が大きく変わります。今日の買い物から、旬野菜の力を味方につけましょう。