サラブレッドの睡眠時間はどれくらい?馬の眠りの仕組みと健康・成績への影響を徹底解説

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おもしろ雑学

馬は立ったまま眠る」——この印象は半分正しく、半分は誤解です。サラブレッドは一日の総睡眠時間が3〜5時間と短く、しかも小刻みに分割して取ります。しかし深い眠り(レム睡眠)に入るには横になって休む時間が不可欠。

この記事では、睡眠時間の目安姿勢ごとの眠り方睡眠不足のサインと影響環境づくりの実践観察・記録の型に加え、季節・年齢・移動・競走週の特殊要因まで踏み込み、今日から使える視点で徹底解説します。競走馬の現場はもちろん、乗馬クラブや功労馬のケアにも役立つ内容です。


  1. 1.サラブレッドの平均睡眠時間とリズム——「短く、分けて」眠る生きもの
    1. 1-1.総睡眠時間の目安(分割型の眠り)
    2. 1-2.浅い眠りと深い眠りの内訳(ノンレム/レム)
    3. 1-3.年齢・性別・個体差で変わる
    4. 1-4.季節・環境・管理で変わる
      1. 1-4補足:季節・環境・管理の実務ポイント
      2. 1-4実例:夏日の一日の組み立て(例)
      3. 1-5補足:場面別の運用ヒント
  2. 2.馬は立って眠る?横になって眠る?——姿勢で役割がちがう
    1. 2-1.立ち寝の仕組み(支えのからくり)
    2. 2-2.伏臥と横臥(胸をつける/横たわる)
    3. 2-3.横臥の目安と観察ポイント
    4. 2-4.群れの中の眠り(見張りと交代)
  3. 3.睡眠不足のサインと影響——行動・体・成績に出る
    1. 3-1.行動の変化(心の面)
    2. 3-2.体の変化(からだの面)
    3. 3-3.成績への影響(仕事の面)
    4. 3-4.「横にならない」主な理由と初動
    5. 3-5.ケーススタディ(仮想)
  4. 4.よく眠るための環境づくり——静けさ・暗さ・柔らかさ・空気をそろえる
    1. 4-1.音・光・風・空気の整え方
    2. 4-2.寝床(素材・清潔・厚み)の比較
    3. 4-3.厩舎配置・相性・放牧の使い分け
    4. 4-4.競走週・遠征時の睡眠保護
  5. 5.観察と記録・実践——眠りを“見える化”して守る
    1. 5-1.日々の記録(書式の型)
    2. 5-2.簡単な指標で管理する
    3. 5-3.専門家と連携する
    4. 5-4.「受診の目安」——このサインが続いたら相談.「受診の目安」——このサインが続いたら相談
  6. よくある質問(Q&A)
  7. 用語の小辞典(やさしい言い換え)
    1. 印刷用メモ(短文)

1.サラブレッドの平均睡眠時間とリズム——「短く、分けて」眠る生きもの

1-1.総睡眠時間の目安(分割型の眠り)

サラブレッドを含む多くの馬は、1日3〜5時間ほど眠ります。これは一度にまとめてではなく、昼夜を問わず数分〜数十分の小休止を何度も積み重ねる「分割型の眠り」。野生の名残として、いつでも動き出せる構えを保つための習性です。

1-2.浅い眠りと深い眠りの内訳(ノンレム/レム)

眠りは大きく浅い眠り(ノンレム)と深い眠り(レム)に分かれます。深い眠りの合計は1日30〜60分ほどにとどまり、ここで記憶の整理・感情の安定・運動学習の固定が進むと考えられています。浅い眠りは立ったままでも可能ですが、深い眠りは横にならないと十分に得られません

1-3.年齢・性別・個体差で変わる

  • 子馬:睡眠は多め(5〜7時間)。横臥が中心。
  • 成馬:3〜5時間。仕事量と気質(神経質・温厚)で変動。
  • 高齢馬:3〜4時間。横臥が難しくなることがあり、寝床と保温が鍵。
  • 性別差:総睡眠は大差ないが、牡馬は周囲警戒で立ち寝が増えやすい傾向が見られることがあります。

1-4.季節・環境・管理で変わる

1-4補足:季節・環境・管理の実務ポイント

  • 照明:夜間は減光し、見回り時も間接光で最小限。明るすぎは横臥を妨げます。
  • 騒音:金属音・扉の衝撃音・深夜の動線を避ける設計に。装備・道具はやわらかい材で養生。
  • 温湿度:夏は送風+遮光+防虫、冬は保温+通風で結露を防ぎます。湿りはアンモニア臭と皮膚トラブルの原因。
  • 寝床沈みすぎず硬すぎない厚み(季節で増減)。汚れは毎日攪拌、湿りは即交換
  • 相性:隣馬の視覚・嗅覚刺激に配慮。仕切りや配置換えで心理的安全を確保。

1-4実例:夏日の一日の組み立て(例)

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1-5補足:場面別の運用ヒント

  • 厩舎:夜間は入退厩を控え、人の動きをまとめる。給餌・掃除は静かな道具に換装し、見回りは短く静かに
  • 放牧地柔らかい地面風下に虫の少ない区画を選ぶ。帰厩後は水分・電解質を整え、横臥が出る環境をすぐ整備。
  • 遠征・輸送暑熱時間帯の回避、車内の滑り止めと敷料、途中の休息停車でストレスを低減。到着日は運動軽め+早寝体制

2.馬は立って眠る?横になって眠る?——姿勢で役割がちがう

2-1.立ち寝の仕組み(支えのからくり)

四肢には腱と靱帯が関節を安定させる「支えの仕組み」が備わり、体重を効率よく支えながら完全に力を抜かず浅い眠りに入れます。驚いたらすぐ動ける——捕食者から身を守る知恵です。

2-2.伏臥と横臥(胸をつける/横たわる)

  • 伏臥(胸を地につける):浅い〜やや深い眠り。胸部への圧のため長時間は不向き
  • 横臥(横たわる):**深い眠り(レム)**の条件。起立が苦手な高齢馬は避けがちで、寝床改善が有効。

2-3.横臥の目安と観察ポイント

1日20〜45分の横臥が目安。横にならない/すぐ立ち上がる場合は、寝床の硬さ・騒音・痛みを疑います。傾きのない床・厚い寝わら、起立補助の導線で負担を減らします。

2-4.群れの中の眠り(見張りと交代)

群れでは交代で見張ることで安全を確保し、横臥の順番が回ってきます。厩舎でも隣馬の相性が悪いと横臥が減るため、配置換え・仕切りで心理的安全を作ります。


3.睡眠不足のサインと影響——行動・体・成績に出る

3-1.行動の変化(心の面)

そわそわ・耳や尾の動き増・過敏反応・あくび増は要注意。目の周りのこわばり落ち着きのなさは疲労の表情です。

3-2.体の変化(からだの面)

免疫の弱り皮膚トラブル・風邪が増加。胃の不調(食欲の波、湿ったふん)、筋のこわばりは故障の火種に。慢性化で体重減少毛づや低下も。

3-3.成績への影響(仕事の面)

反応の遅れ、集中のムラ、最後の踏ん張り不足。調教での学習定着にも睡眠は不可欠で、質の悪い眠りは翌日の動きの再現度を下げます。輸送や連戦での睡眠負債は特に注意。

3-4.「横にならない」主な理由と初動

追加チェック:横臥痕の有無/起立回数の増加/あくび・立ちすくみ/食欲スコアの低下。2日以上続く場合は受診の目安に準じて専門家へ。

3-5.ケーススタディ(仮想)

遠征後に横臥ゼロが続いたセン馬。寝床増量・減光・日中放牧を実施し、3日で横臥30分に回復。併せて装蹄調整で前肢の違和感を軽減し、反応速度も改善。


4.よく眠るための環境づくり——静けさ・暗さ・柔らかさ・空気をそろえる

4-1.音・光・風・空気の整え方

  • :夜間は静かに。金属音・大声・扉の衝撃音を抑える。
  • 減光・間接照明。深夜は5〜10ルクス程度の薄暗さを目安に。
  • 通風は確保、直風は避ける。汗冷えと乾燥を防ぐ。
  • 空気アンモニア臭の低減粉塵対策。こまめな清掃と換気。

4-2.寝床(素材・清潔・厚み)の比較

4-3.厩舎配置・相性・放牧の使い分け

威圧的な隣馬常時騒ぐ個体は眠りの敵。仕切り・配置換えで距離を取り、日中放牧気分転換と軽い運動を確保。帰厩後は静かなルーティンで落ち着かせます。

4-4.競走週・遠征時の睡眠保護

  • 輸送前後:前日に運動を軽めに、到着後は静かな時間帯を作る。
  • レース前夜:人の出入り・音・光を最小化。寝床を増量
  • レース後水分・電解質を整え、横臥が出るまで待つ余裕を。

5.観察と記録・実践——眠りを“見える化”して守る

5-1.日々の記録(書式の型)

「日付/気温/給餌量/飲水量/ふん/横臥の有無と時間/あくび回数/歩様」を一行で記します。週1回の写真(正面・側面)と月1本の歩様動画があれば、変化を追いやすくなります。

5-2.簡単な指標で管理する

  • 横臥分数:1日20〜45分が目安。ゼロが続けば要確認。
  • あくび回数:急増は眠気・不安の信号。
  • 瞬き・耳の向き:緊張が強いと増える/固まる。
  • 夜間の中断:起立回数が多いほど浅眠化。カメラ記録が有効。

5-3.専門家と連携する

役割分担の基本

  • 獣医師:痛み(跛行・筋)、胃腸(疝痛・胃炎)、皮膚、呼吸を評価。鎮痛や胃保護、整腸の是非を検討。
  • 装蹄師:ひづめバランス・着地・滑りを点検。靴型やパッドの選択で起立・横臥の負担を軽減。
  • 調教師/厩務:夜間の静音・減光、見回り頻度、放牧と運動量の調整、寝床の厚み管理を実務で担う。
  • 環境担当:照明・騒音源・換気・防虫の改善。季節ごとの温湿度設定を決める。

連絡テンプレ(共有フォーマット)

  • 日付/担当/気温・湿度
  • 横臥分数・起立回数・夜間中断
  • あくび回数・食欲スコア・ふんの状態
  • 歩様(主観1〜5)・痛みサインの有無
  • 寝床厚さ・敷料・臭気・騒音メモ
  • 実施対策・反応・次の一手

週次ミーティング(10〜15分)

1)先週の指標レビュー → 2)問題個体の深掘り → 3)今週の対策と担当 → 4)遠征・工事など特記事項の共有。

エスカレーション基準

  • 横臥ゼロが24〜48時間継続
  • 食欲や体重が連続2日以上で悪化
  • 新規の跛行・片脚荷重・呼吸の乱れ

文書化:対策はその場で記録し、翌朝に反応の確認を必ず行う。

5-4.「受診の目安」——このサインが続いたら相談.「受診の目安」——このサインが続いたら相談

  • 横臥ゼロが48時間以上続く
  • 食欲低下や体重減少が併発
  • 片脚荷重・明らかな跛行が出現
  • あくび・落ち着かなさが急増し改善しない

よくある質問(Q&A)

Q1:馬の睡眠は本当に3〜5時間だけ?
A:はい。短時間を小刻みに取ります。深い眠りは合計30〜60分ほどです。

Q2:立ったままで深い眠りに入れる?
A:いいえ。深い眠りには横臥が必要です。立ち寝は浅い休息が中心です。

Q3:横にならないのは異常?
A:寝床・騒音・痛みなどの要因を疑います。20〜45分/日の横臥が目安です。

Q4:睡眠不足はどこに出る?
A:落ち着きの低下、反応の遅れ、食欲の波、皮膚や胃の不調など。成績にも響きます。

Q5:改善の第一歩は?
A:静けさ・暗さ・柔らかい寝床を整え、日課を静かに。横臥分数を記録します。

Q6:高齢馬はどう配慮する?
A:厚い寝わら、保温、起立の助けを。無理をさせず、短い運動を毎日。

Q7:機器で見張るべき?
A:監視カメラや動きの記録器は有効ですが、人の観察が基本です。

Q8:放牧は睡眠に効く?
A:はい。気分転換と軽い運動夜の横臥を促します。

Q9:輸送や遠征が続く時は?
A:前後に休養日を置き、寝床増量・減光・静音で睡眠を守ります。

Q10:睡眠薬は使える?
A:鎮静は獣医の管理下で限定的に安易な使用は転倒や胃腸不調のリスクがあります。


用語の小辞典(やさしい言い換え)

浅い眠り(ノンレム):体を休める眠り。立ったままでも可能。
深い眠り(レム):夢を見る段階。横臥が必要で心身の回復に重要。
立ち寝:四肢の支えの仕組みで体重を支えながら取る浅い眠り。
横臥(おうが):横になって眠ること。深い眠りの条件。
疝痛(せんつう):腹痛の総称。落ち着かない・横臥と起立を繰り返すなどの所見。
装蹄(そうてい):ひづめを整えること。姿勢と歩きの安定に直結。
睡眠負債:不足分の積み重ねで生じる慢性の眠り不足。


印刷用メモ(短文)

横臥は1日20〜45分が目安。
静けさ・暗さ・柔らかい寝床・良い空気をそろえる。
横臥分数・あくび・食欲・中断回数を一行で記録。
迷ったら運動量を下げ、休ませ、専門家へ。


まとめ:サラブレッドの眠りは短く分かれていますが、その中のわずかな横臥(深い眠り)が健康と成績を支えます。横になれる安心な環境と静かな日課を整え、毎日の小さな観察で守っていきましょう。

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