料理研究家・平野レミさんが考案したレミパンは、見た目はフライパンに近くても、中身は鍋の多用途性とフライパンの軽快さを一体化した独自設計の調理器具です。本稿では、一般的なフライパンとの違いを、構造・機能・料理の幅・価格と価値・耐久と手入れの観点から徹底解説します。初めての一本を選ぶ人にも、買い替えで迷っている人にも、具体的に判断できるよう丁寧にまとめました。
日々の献立で本当に役立つのは、派手な機能ではなく使う場面の多さと片付けの軽さです。レミパンが長く支持されてきた背景には、深さと蓋、扱いやすい取っ手まわりという三位一体の設計があります。とくに、見える蓋で火加減を合わせ、深さで食材を受け止め、取っ手で安全に運べるという一連の動きが、毎日の台所仕事を確実に助けてくれます。
1.レミパンの基本構造とデザインの要点
深さが生む多用途性と安心感
一般的な浅型よりも側面が高い器形が、炒め煮・蒸し焼き・少量の揚げ物まで幅広い調理を可能にします。深さがあることで油はねや食材の飛び出しを抑えやすく、台所まわりが汚れにくいのも日常で効いてきます。たとえば、肉野菜炒めをそのまま回しかけの出汁で炒め煮に移行し、蓋をして3分蒸らすだけで、具材に味が行き渡った主菜に仕上がります。深さは安全面にも寄与し、幼い子どもがいる家庭でも鍋の縁に触れにくいのが安心です。
ガラス蓋+蒸気調整で火加減が見える
標準の強化ガラス蓋により、鍋内を見ながら火力と時間を決められます。蒸気穴の開閉ができるモデルでは、煮込みでは「閉」、水分を飛ばしたいときは「開」と切り替えるだけで、吹きこぼれや水っぽさを防止できます。蓋は熱を逃がしにくく、弱めの火でも調理が進むため、光熱費の面でも有利です。さらに、ガラス越しに食材の色づきや煮詰まり具合が分かるため、味の決めどころを逃しにくいという利点もあります。
取っ手と蓋つまみの一体設計
握りやすい取っ手と、蓋が自立しやすい形状(モデルによる)が調理の段取りを滑らかにします。濡れた蓋の置き場に困らず、作業台が汚れにくいことは、毎日の手際に直結します。つまみは手袋でもつかみやすい大きさで、安全性と扱いやすさの両立を図っています。料理の途中で両手がふさがっても、蓋を立てておけるだけで鍋回りの整理が保て、盛り付けや味見が落ち着いて行えます。
容量と家族人数の目安(参考)
人数の目安 | 主な用途 | 直径と深さの感覚 | 使い勝手の要点 |
---|---|---|---|
1〜2人 | 一皿料理、弁当のおかず | 24cm前後・やや深め | 洗い物が少ない、素早い加熱で時短 |
3〜4人 | 主菜+副菜、蒸し焼き、少量の揚げ物 | 26〜28cm・深型 | 具材の量に余裕、油はねが少ない |
5人以上 | 大皿料理、煮込み | 28cm以上・深型 | 返しやすさと重量のバランスを確認 |
2.何ができる?料理の幅と得意・不得意
炒める・焼くを底力で支える形
底面は広く、側面が立ち上がっているため、食材を返しても汁や油がこぼれにくい形です。焼き物では蓋を活用して余熱を閉じ込めると、厚みのある肉や魚も中心までしっとり火が通ります。焦げつき防止には、予熱は短め・中火基調・食材の水気を拭き取るという三点を守ると安定します。とくに、粉をはたいた魚のソテーは、入れてしばらく動かさないのが形よく仕上げる近道です。
煮る・蒸す・揚げるを一台で完結させる流れ
炒めた後に水と調味料を足して炒め煮へ移行し、仕上げに蓋で蒸らして味を含ませると、別鍋いらずで片付けまで軽くなります。野菜の蒸し焼きやシュウマイは、蓋と蒸気穴の調整で水っぽさを抑えた仕上がりに。少量の揚げ物も深さのおかげで油はねが少なく、後処理まで含めて手間が減ります。から揚げやかき揚げは油の高さを食材の半分ほどにとどめ、途中で返しながら揚げ焼きにすると、油量を抑えてもカリッとまとまります。
不向きな場面と代替手段の見切り
大量の麺を勢いよく茹でる、骨付き肉を長時間煮込むといった容量と沸騰水量が重要な料理は、深鍋や圧力鍋に任せるのが得策です。オーブン加熱や食器洗い機の使用可否はモデルごとの注意書きを確認し、空だきや極端な高温は表面加工の劣化を招くため避けましょう。調理後の保存は、鍋のまま冷蔵せず清潔な保存容器に移すと、鍋の劣化と衛生上の不安を同時に抑えられます。
シーン別・使い方の要点(早見表)
料理例 | 手順の流れ | 火加減の目安 | 仕上がりの勘どころ |
---|---|---|---|
野菜たっぷり焼きそば | 具材を炒め→麺と水を加え→蓋で蒸し→水分を飛ばす | 中火→弱め | 蓋で蒸す時間を入れると麺がほぐれやすい |
鶏もも照り焼き | 両面を焼き→調味を入れ→蓋で蒸らす | 中火→弱火 | たれが泡立ち細かくなるまで煮からめる |
シュウマイ | 底に薄く水→網かクッキングシート→蓋 | 中火 | 蒸気穴は半開。肉汁を逃がしにくい |
かき揚げの揚げ焼き | 油を浅くひき→小さめに落とす→返す | 中火 | 返すのは一度。触り過ぎない |
3.比較でわかる優位点と注意点(表で整理)
機能・使い勝手の比較表
項目 | レミパン | 一般的なフライパン | 解説 |
---|---|---|---|
器形の深さ | 深め(炒め・煮る・蒸す・揚げまで) | 浅め(焼く・炒めが中心) | 深さで油はねや飛び散りが減り、用途が広がる |
蓋 | 強化ガラス蓋が標準/蒸気調整あり(モデルによる) | 別売りが多い | 中が見えるので火加減の判断が容易 |
取っ手・つまみ | 握りやすく蓋の自立に配慮(モデルによる) | シンプル | 作業台を広く使え、手際が良くなる |
調理の幅 | 一台多役 | 焼き・炒め特化 | 揚げ焼きや蒸し焼きも得意 |
片付け | 蓋と本体で完結。洗い物が少なめ | 用途により鍋や蒸し器を追加 | 日々の負担が軽くなる |
価格帯 | 中〜やや高め | 低〜中 | 多用途と耐久を考えると総額で逆転の可能性 |
※ 仕様はモデルにより異なります。最新の注意書きを確認してください。
サイズ・重さ・熱源対応の比較表
観点 | レミパン | 一般的なフライパン | 判断の目安 |
---|---|---|---|
直径の目安 | 24〜28cmが中心 | 20〜32cmと幅広い | 家族人数と火口サイズで最適を選ぶ |
重さ | 同径の浅型よりやや重い | 軽量モデルも多い | 深さと蓋の分、取り回しを事前確認 |
熱源対応 | 多くはガス・IH対応(モデルによる) | 材質により異なる | 底面表示と注意書きを確認 |
オーブン・食洗機 | 可否はモデルごとに異なる | 同左 | 取っ手素材や表面加工の条件に左右される |
耐久・手入れ・買い替えの違い
観点 | レミパン | 一般的なフライパン | 長持ちのコツ |
---|---|---|---|
表面加工 | 焦げつきにくい多層コートが中心 | 製品差が大きい | 中火基調で金属ヘラは控える |
手入れ | やわらかいスポンジ+中性洗剤で短時間 | 同左 | 熱いまま急冷しない |
買い替え目安 | こびりつき・深い傷・底の歪み | 同左 | 異常が出たら無理せず新調 |
向き・不向きのまとめ(早見表)
使う人の像 | レミパンの相性 | 判断ポイント |
---|---|---|
時短を求める共働き家庭 | とても良い | 一台多役で片付けが早い、朝の弁当づくりにも適する |
一人暮らしの初心者 | 良い | 深さで失敗が減り、炒め煮や蒸し焼きが気軽 |
大量調理・作り置き派 | 普通 | 量が多い日は深鍋との併用が安心 |
とにかく軽さ重視 | やや不向き | 深さと蓋の分だけ重量が増すことを理解 |
4.価格と価値の見方—初期費用より総費用で判断
価格帯の目安と選択基準
レミパンは一般的なフライパンより初期費用が高めです。ただし、一台で蒸し・煮込み・揚げ焼きまでこなせるため、別の鍋や蒸し器を買い足す必要が減り、道具代の総額や収納の圧迫を抑えられる場合があります。購入時は、普段の献立を思い浮かべて、具体的に何を一つ減らせるかを基準にすると迷いが減ります。家族構成の変化や引っ越しを見越して、次の数年で使い倒せる場面を想像するのも有効です。
長く使うための手入れと扱いの勘どころ
寿命は使い方で大きく変わります。空だきや極端な高温、金属ヘラの多用は劣化を早めます。中火基調で、温度が上がりやすい料理は蓋で余熱を生かしながら短時間で仕上げると、道具への負担を抑えられます。洗浄はぬるま湯と中性洗剤でやさしく行い、外面の縁や底も水気を残さないよう拭き上げると、見た目と性能が長持ちします。保管は、鍋同士がこすれないよう柔らかい布や紙を一枚はさむと小傷を防げます。
簡易シミュレーション:総費用の考え方
比較条件 | レミパン(中価格帯) | 一般的な浅型を買い替え | 考え方 |
---|---|---|---|
初期費用 | やや高い | 低い | レミパンは一台多役。浅型は蒸し器や深鍋を追加しがち |
買い替え頻度 | 低〜中 | 中〜高 | 使い方次第だが、多用途で分散使用できると摩耗が緩やか |
付帯品 | 蓋が標準 | 蓋は別売りが多い | 蓋の有無が光熱費や仕上がりに影響 |
収納 | 道具点数が減る | 道具が増えがち | 収納費用・管理の手間も総費用の一部 |
故障・買い替えの判断
以前より明らかにこびりつきが増えた、表面に深い傷が入った、底が歪んで火の当たりにムラが出るといった症状は買い替えの合図です。蓋の密閉が弱くなり蒸気調整が効きにくい場合も仕上がりに影響します。道具は安全が第一。迷ったら無理に引き延ばさず新調しましょう。古い鍋の処分は自治体のルールに従い、取っ手など異素材は分別して捨てるとスムーズです。
5.よくある質問(Q&A)と用語辞典
よくある質問(Q&A)
Q:IHでも使えますか。
A: 多くのモデルはガスとIHの両方に対応しています。底面の表示と注意書きを確認し、合わない場合は使用を控えてください。
Q:食器洗い機に入れても大丈夫ですか。
A: 可否はモデルによって異なります。高温乾燥は表面加工や取っ手素材に影響するため、手洗いが無難です。
Q:金属ヘラは使えますか。
A: 表面加工を長持ちさせるため樹脂や木製のヘラが安心です。使う場合は先端を立てず、そっと扱いましょう。
Q:オーブン加熱は可能ですか。
A: 取っ手や蓋の素材、温度条件で可否が分かれます。説明書の範囲内で行い、無理は禁物です。
Q:初めて使う前の準備はありますか。
A: 軽く洗って水気を拭き、少量の油をなじませると焦げつきにくくなります。強火での空だきは避けてください。
Q:焦げついたときの対処は。
A: 鍋が温かいうちにぬるま湯に浸し、柔らかいスポンジと中性洗剤で落とします。重曹を少量溶いた湯を温めてから冷まして洗うと、こびりつきが浮きやすくなります。
Q:蓋の立て方が不安です。
A: モデルによって置き方の向きがあります。説明図の指示通りに差し込み、安定しない場合は作業台にふきんを敷いて支えにしてください。
Q:保存まで一気に済ませたいのですが。
A: 鍋のまま冷却・保存は劣化のもとです。粗熱を取ってから保存容器に小分けし、鍋はすぐ洗うと衛生的で道具も長持ちします。
用語辞典(やさしい言い換え)
表面加工: こびりつきを減らすために表面に施した層。焦げにくさと手入れのしやすさに関わる。
蒸気穴: 蓋についた小さな穴。開閉で蒸気の抜けを調整し、吹きこぼれや水っぽさを防ぐ。
IH: 電気の力で鍋底をあたためる台所の加熱方式。底面が対応材質である必要がある。
空だき: 油や水分がない状態で熱すること。表面加工を傷める原因になる。
揚げ焼き: 少なめの油で、揚げるように焼く調理。深さのある器形が向いている。
余熱: 火を止めた後も残る熱。蓋で逃さないことで短時間で火が通る。
炒め煮: 先に炒めてから煮る調理。油の香りをまとわせつつ味を含ませる方法。
まとめ: レミパンは深型の器形・見える蓋・扱いやすい取っ手によって、一台で多くの調理を安全かつ効率よく進められるのが最大の魅力です。一般的なフライパンに比べ、対応できる料理の幅、片付けの軽さ、日々の安定感で優位に立ちます。価格はやや高めでも、総費用と台所の快適さまで含めれば納得できる投資になり得ます。家庭の人数や台所の広さに合うサイズを選び、正しい手入れで長く活用してください。