事故車・修復歴車の見分け方|骨格・塗装・記録簿チェックのポイントをプロが徹底解説

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車・バイク

中古車選びで最初に身につけたいのが事故車・修復歴車の見分け方です。結論から言えば、見抜く鍵は骨格(フレーム)・塗装/パネルギャップ・記録簿/請求書三点照合にあります。

本記事は、現場でそのまま使えるライトの当て方・覗く順番・触る位置まで踏み込み、試乗で拾えるサイン交渉に活かす言い回し、さらに塗膜厚の目安・磁石チェックの注意・アライメント用語までまとめました。最後にチェック表・Q&A・用語辞典を付け、初めてでも確度高く判断できるようにします。


  1. 1.まず把握:事故車と修復歴車の違いと“判断のものさし”
    1. 1-1.定義の整理:どこからが修復歴?
    2. 1-2.判断のものさし:三点照合で精度を上げる
    3. 1-3.入口で落とす:避けたほうがよい“強いサイン”
  2. 2.骨格を見る:下回り→エンジンルーム→室内の順で“強い証拠”から探す
    1. 2-1.下回り:メンバー・フロア・溶接跡をライトでなぞる
    2. 2-2.エンジンルーム:タワー・コアサポート・シーラー
    3. 2-3.室内・トランク:ピラー根元・バックパネル・フロア
  3. 3.外板と塗装を見る:ギャップ・肌・色味で“違和感”を積み上げる
    1. 3-1.ギャップ(チリ)と段差:左右対称か、面がそろうか
    2. 3-2.塗装の“肌(ゆず肌)”と艶:光を斜めに当てて観察
    3. 3-3.色味の差と異素材の色乗り:樹脂パーツの“違和感”
  4. 4.記録と試乗で裏取り:書類の連続性と“光・音・振動”のサイン
    1. 4-1.記録簿・請求書・作業写真:連続性と具体性
    2. 4-2.試乗:直進性・段差の収まり・警告灯自己診断
    3. 4-3.ステアリングと足回りの“ねじれサイン”
  5. 5.交渉・購入判断:避けるラインと“条件付きで買う”の線引き
    1. 5-1.即撤退ライン(初心者向け)
    2. 5-2.条件付きで検討ライン(記録が明確な場合)
    3. 5-3.交渉で使える言い回し(テンプレ)
  6. Q&A(よくある疑問)
  7. 用語辞典(やさしい解説)
    1. まとめ

1.まず把握:事故車と修復歴車の違いと“判断のものさし”

1-1.定義の整理:どこからが修復歴?

事故車は広い意味では事故のダメージ歴がある車全般を指します。一方で中古車市場での修復歴車は、車の骨格(ラジエータサポート/アッパー・ロアメンバー/ピラー/ルーフ/クロスメンバー/フロア/バックパネル等)に損傷・交換・修正が及んだ車のこと。外板(ボンネット・ドア・フェンダー等)の交換や部分塗装のみは、原則修復歴に含みません。この線引きを理解しておくと、価格差の理由や交渉の着地点が見えてきます。

1-2.判断のものさし:三点照合で精度を上げる

  • 骨格溶接跡・波打ち・歪み・シーラーの塗り直しを観察。純正の等間隔スポット均一なシーラー形状に慣れるほど、違和感を拾えます。
  • 塗装/パネル色味差・肌(ゆず肌)・チリ(隙間)・段差を比較。左右対称面の連続性が基準。
  • 記録記録簿・請求書・鈑金写真・測定データ(アライメント/塗膜)で裏取り。
    この三点が同じ方向
    を指せば、判断の確度は飛躍的に高まります。逆にどれか一つだけなら「要追加確認」のサインです。

1-3.入口で落とす:避けたほうがよい“強いサイン”

  • ストラットタワーの歪み・再塗装の段差(円周の継ぎ目)。
  • ピラー根本の波打ち・不自然なシーラー(刷毛跡/盛り過ぎ)。
  • サイドメンバーの凹み・溶接焼け(広範囲の熱影響)。
  • フロアの引っ張り跡・折れ目・補強板の後付け
    これらは骨格修正の可能性が高いため、初心者は即撤退が無難です。

現場で役立つ携行ツール

ツール用途コツ
小型LEDライト溶接/塗装肌の観察斜め30〜45°で舐めるように当てる
ポケット鏡奥まったシーラー/裏面確認ライトと併用で陰影を出す
小磁石樹脂/アルミ/鉄の判別反応が無い=補修とは限らない(樹脂部品あり)
メジャー/厚紙隙間の幅比べ左右同位置で比較する

2.骨格を見る:下回り→エンジンルーム→室内の順で“強い証拠”から探す

2-1.下回り:メンバー・フロア・溶接跡をライトでなぞる

ジャッキアップ不要でも前屈+ライトで要所は見えます。

  • サイドメンバー/クロスメンバー折れ・潰れ・引っ張り跡・面の歪み
  • フロア波打ち・新旧の塗装境目・過度な防錆塗布
  • 溶接ビード純正=等間隔/高さ一定、補修=荒い・途切れ・焼けが出やすい。
  • 牽引フック周り曲がり/再塗装は強い衝撃の痕跡。

2-2.エンジンルーム:タワー・コアサポート・シーラー

  • ストラットタワー円周の塗装段差・タワーバー固定跡・アッパーマウント痕
  • ラジエータコアサポートスポット溶接ピッチの乱れ・後塗装の縁・ラベルの貼り直し
  • シーラー/コーキング筆跡・気泡・盛り過ぎは再施工の可能性。配線クランプやホースの取り回しズレもヒント。

2-3.室内・トランク:ピラー根元・バックパネル・フロア

  • A/B/Cピラー根元波打ち・塗膜の境・ウェザーストリップの新旧差
  • トランクのバックパネル/サイドパネル溶接痕・シーラー割れ・補強板の追加
  • スペアタイヤハウス引っ張り跡・折れ線・水抜き穴の歪みは追突の手掛かり。

骨格重点ポイント早見表(拡張)

部位純正の状態補修で出やすいサイン
ストラットタワー滑らかな塗膜、均一な点溶接段差、歪み、焼け、円周の継ぎ目
サイドメンバー緩やかなプレス、面が連続潰れ、引き延ばし跡、局所の波打ち
コアサポート等ピッチのスポット跡ピッチ不均一、ラベル貼り直し
バックパネル直線的で均一、シーラー一定波打ち、シーラー盛り過ぎ/割れ
フロア均一な防錆塗装新旧の境、過剰な上塗り

3.外板と塗装を見る:ギャップ・肌・色味で“違和感”を積み上げる

3-1.ギャップ(チリ)と段差:左右対称か、面がそろうか

  • ドア・ボンネット・フェンダー隙間幅を左右/前後で比較。
  • 面の段差は指でなぞると分かりやすい。同一線上で高さが変わるのは要注意。
  • ボルト頭の塗装欠け(工具跡)は脱着サイン。ワッシャ跡のズレも見落としがち。

3-2.塗装の“肌(ゆず肌)”と艶:光を斜めに当てて観察

  • 純正塗装均一な肌で、艶が過度に強すぎ/弱すぎない。
  • 補修塗装肌の荒れ・艶ムラ・埃噛みが出やすい。
  • マスキング跡ゴムモール根元や内側の縁艶の境目として現れる。

3-3.色味の差と異素材の色乗り:樹脂パーツの“違和感”

  • バンパー(樹脂)とフェンダー(金属)の色味差は構造上出やすいが、極端なら再塗装の可能性。
  • ヘッドライト固定耳の割れ/交換、グリルの新旧差も衝撃のヒント。
  • エンブレム/ステッカーの貼り直し跡にも注目。

外板・塗装チェック表(拡張)

項目OKの状態要注意サイン補足
パネル隙間左右ほぼ均一左右差/大きな段差同車種の他個体と比較がベター
ボルト頭塗膜均一工具跡/ワッシャ跡ズレ工場出荷時は均一塗膜が基本
塗装の肌均一荒れ/艶ムラ/埃噛み屋外再塗装で出がち
ゴム縁自然な艶マスキング跡/艶の境触って段差を感じる場合あり

塗膜厚の目安(μm)

  • 純正金属パネル:おおむね80〜150μm
  • 樹脂バンパー60〜120μm
  • 補修塗装180〜300μm以上が多い。
    ※車種・色・製造年で差あり。数値は左右同一部位で比較するのがコツ。

磁石チェックの注意
小磁石は鉄/非鉄の判別に有効ですが、アルミ/樹脂/FRPパネルは反応しません。反応が無い=補修と短絡しないこと。車種の素材構成を把握しておくと精度が上がります。


4.記録と試乗で裏取り:書類の連続性と“光・音・振動”のサイン

4-1.記録簿・請求書・作業写真:連続性と具体性

  • 点検記録簿年次で途切れていないか、距離が論理的に増えているか。
  • 請求書部品番号・作業日・走行距離が明記されているか。アライメント測定表塗膜測定の実測値があれば信用度が上がります。
  • 鈑金写真があれば、部位・範囲・方法が視覚で分かる。

4-2.試乗:直進性・段差の収まり・警告灯自己診断

  • 直進性:ハンドルセンターで流れないか
  • 段差の収まり左右で反応が違わないかパコン/ギシといった異音の有無。
  • 警告灯:通電時の自己診断→消灯エアバッグ/ABSの警告は衝撃歴や配線不良と関連することがある。

4-3.ステアリングと足回りの“ねじれサイン”

  • ハンドルセンターのズレ戻りの悪さ停止直前のノッキングは、サブフレーム歪みアライメント異常の可能性。
  • タイヤの片減り/段減りは、キャンバー/トー不良の痕跡。
  • ブレーキ時のジャダーはローターだけでなくナックルやハブの微妙な歪みが原因のことも。

裏取りのための書類・試乗チェックリスト(拡張)

区分見るポイントOKライン要注意
記録簿年次連続・距離整合連続、矛盾なし途切れ、逆転
請求書部品名・距離・日付明記あり曖昧/記載なし
測定データアライメント/塗膜厚数値が左右均整片寄り/極端値
警告灯通電→消灯全消灯常時点灯
直進性センターで直進問題なし流れ/戻り不良

アライメント測定表の読み方(基本)

  • トー:左右合計が0付近なら直進安定が出やすい。極端なトーアウト/インは不安定。
  • キャンバー:左右差が大きいと片減り流れの原因。
  • スラスト角0°付近が理想。ズレはリアアクスル位置の異常サイン。

5.交渉・購入判断:避けるラインと“条件付きで買う”の線引き

5-1.即撤退ライン(初心者向け)

  • ピラー/ルーフ/フロアへの修正跡。
  • サイドメンバーの折れ・引き延ばし
  • 溶接の焼け・荒い盛りが広範囲。
  • アライメント値が著しく外れ、タイヤ片減りが顕著。
    これらは骨格剛性・直進安定・再売却価値に大きく影響するため、価格が魅力でも撤退が安全です。

5-2.条件付きで検討ライン(記録が明確な場合)

  • 外板交換(ボンネット・フェンダー・ドア)のみで骨格無傷塗装品質良好
  • 小範囲のバックパネル板金溶接品質・防錆処理が適正作業記録・写真が残る
  • 鈑金範囲が軽微アライメントデータが良好直進性に問題なし
    この場合は価格優位を取りつつ、保証・アフターを明確にして購入します。

5-3.交渉で使える言い回し(テンプレ)

ストラットタワーの塗膜段差コアサポートのスポットピッチに違和感があります。骨格の作業履歴アライメントデータの提示をお願いします。」
外板交換のみ骨格無傷とのご説明でしたが、バックパネルのシーラー盛りが見えました。作業写真のご提供と、総額での価格調整をご検討ください。」
塗膜測定の左右差が大きいため、再塗装範囲の明示保証内容の記載をお願いします。」

購入判断 早見表

状態判断補足
骨格修正が広範囲撤退安全・再販に大きく影響
骨格無傷+外板交換のみ条件次第で可価格優位・記録重視
アライメント悪化・直進流れ慎重原因特定と費用試算
軽微な再塗装の明示あり品質と価格バランスで判断

Q&A(よくある疑問)

Q1.バンパーやドアの交換は修復歴になる?
A. いいえ。 原則骨格に及ばない外板交換修復歴に含みません。ただし交換点数が多い色味差/肌荒れが目立つ場合は、状態評価としては慎重に。

Q2.記録が全くないが状態が良さそう…買っていい?
A. 慎重に。 骨格・塗装・試乗の三点が良くても、記録が空白なら将来の説明責任で不利。価格優位が十分あり、第三者検査で裏が取れるなら検討余地。

Q3.アライメント調整で真っ直ぐ走れば問題なし?
A. 原因次第。 サブフレーム歪み足回り曲がりが原因なら調整だけでは再発します。部品交換履歴測定データで根本原因を確認。

Q4.修復歴車は絶対に避けるべき?
A. 安全第一が原則。 ただし軽微な外板交換記録の整った小範囲板金は、価格メリットで選ばれることも。用途・予算・再販時期を踏まえ総合判断を。

Q5.見抜ける自信がない…どうすれば?
A. 第三者検査(有償)やアライメント測定を依頼。チェック表を使い、ライト・鏡・小磁石を持参。雨天は屋根下照明で光を作ると精度が上がります。

Q6.アルミや樹脂パネルの車はどう見る?
A. 磁石が効かないため、隙間/肌/段差/塗膜厚の比較が主力。取り付け耳の割れ固定位置ズレを重点確認。


用語辞典(やさしい解説)

  • 骨格(フレーム):車体の基礎となる構造部材。ここへの損傷・修正は修復歴扱い。
  • パネルギャップ(チリ):パネルとパネルの隙間。左右差や段差は脱着/修理の痕跡
  • ゆず肌:塗装面の細かな凹凸模様。肌の荒れは補修塗装の手掛かり。
  • シーラー:隙間を埋める樹脂。盛り過ぎ・筆跡は再施工のサイン。
  • アライメント:足回りの幾何学(トー/キャンバー/キャスター/スラスト角)。数値悪化は歪みの可能性。
  • バックパネル:トランク奥の骨格部材。追突の影響が出やすい。
  • スポット溶接:点状の溶接。等間隔が純正の基本。ピッチ不均一は再作業の手掛かり。
  • 塗膜厚(μm):塗装の厚み。左右同一部位で比較し差を見る。

まとめ

骨格→塗装→記録→試乗の順で強い証拠から確認し、三点照合で判断する——これが事故車・修復歴車を見分ける最短ルートです。強いサインが出たら撤退条件付きで買うなら価格・保証・記録を明示。塗膜厚やアライメントなど数値の裏付けを取りつつ、チェック表を片手に根拠で選ぶ目を磨いていきましょう。

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