保存食の作り方サバイバル編:非常時に備える自家製レシピと知識大全

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台所で作れる保存食は、ふだんの節約と健康管理に役立つだけでなく、地震・台風・大雪・感染症流行・経済混乱・戦時の物流停止のような非常時に、家族のいのちを支える最後の砦になります。

本稿では、サバイバルの視点でなぜ保存食が必要かを整理し、家庭で再現できる保存技術(乾燥・塩漬け・発酵・瓶詰・粉末化)、長持ちの理屈と衛生持ち運べる携帯食の工夫回しながら増やす備蓄術72時間〜1週間の運用と献立年齢や体質に合わせた配慮までを、実践向けに詳しくまとめました。手順・分量・保存条件を明記し、安全上の注意を随所に添えています。


  1. サバイバルにおける保存食の基本と重要性
    1. “買えない”を前提に組み立てる(仮定づくり)
    2. 熱量・三大栄養・水分(体を動かす土台)
    3. 心の安全にも効く(“食べ慣れた味”の力)
  2. 家で作れる基本の保存食(乾燥・漬け・瓶詰・粉末化)
    1. 干し野菜(乾かして軽く甘く、燃料も節約)
    2. 塩蔵・味噌漬け(発酵の力で長もち)
    3. 干し肉・干し魚(たんぱくを軽く確保)
    4. 瓶詰(熱と密封で安定、冷暗所で短期)
    5. 粉末化(軽くて早い調理)
  3. 保存性を高める工夫と保管の要点
    1. 清潔の徹底(器具・手・場)
    2. 容器の選び方(空気・湿気・光を断つ)
    3. 温度・湿度・光の管理(冷暗と通風)
    4. 穀物・豆の長期保管(主食の土台)
  4. 持ち運べる携帯保存食(軽く・高密度・手早く)
    1. 穀物ぎゅっと棒(焼いて切るだけの高密度食)
    2. 脱気密封のおにぎり(炊いて包んで冷凍)
    3. 粉の汁物・乾燥おかず(湯だけで温まる)
    4. 乾肉・小魚・海藻(歩きながら噛める)
  5. 備蓄を続ける仕組み(回しながら増やす)
    1. 回転保存(食べて補充する)
    2. 在庫表・表示ルール(誰が見ても分かる)
    3. 家族別・用途別に分ける(取り出しやすさ)
  6. いざという時の運用術(72時間〜1週間の食と衛生)
    1. 48時間前〜直後(ある物で回す段取り)
    2. 小さな熱源の連携(燃料節約)
    3. 衛生とごみの管理(病気を防ぐ)
    4. 1週間の回し方(温かい汁を軸に)
  7. 特別な配慮:子ども・高齢・持病・季節
    1. 子ども(噛む力・栄養バランス)
    2. 高齢(たんぱくと水分を欠かさない)
    3. 持病(アレルギー・減塩・糖)
    4. 季節(暑さ・寒さ)
  8. よくある疑問と答え(安全のために)
    1. 乾燥が足りないとどうなる?
    2. 瓶詰はどのくらい持つ?
    3. 塩分が気になる場合は?
    4. 乾物はそのまま食べてもいい?

サバイバルにおける保存食の基本と重要性

“買えない”を前提に組み立てる(仮定づくり)

大規模災害や社会混乱では、店が開かない、開いても棚が空、道路寸断や燃料不足で配送が止まることがあります。買い足せない前提で「家にあるもので72時間→1週間→30日」と段階的に自立できる計画を立てると、必要量と優先順位が明確になります。

熱量・三大栄養・水分(体を動かす土台)

人は一日におよそ1500〜2600kcalを必要とします。主食(米・粉・芋)で熱量を確保し、豆・魚・肉・卵・乳でたんぱく質、油で持続力を足します。食物繊維・ミネラル・塩分・水も欠かせません。とくに水は**1人1日3L(飲用2L+調理1L)**を目安にします。

一日分の熱量と主食・水の目安(成人)

体格・活動目安熱量主食の例(いずれか)たんぱくの例水の目安
小柄・軽作業1500〜1800kcal米2合弱 / うどん2.5玉 / オート麦120g魚缶1、豆150g、卵12.5〜3L
標準・中程度1800〜2200kcal米2合 / パスタ300g / 芋大2本鶏胸150g、卵23L
体格大・重作業2200〜2600kcal米2.5合 / パン6枚+α豚200g、豆200g、卵23〜3.5L

ポイント:暑熱時・発汗時・授乳中は水と塩を増やし、寒冷時は油と糖を増やすと体が楽になります。

心の安全にも効く(“食べ慣れた味”の力)

非常時は不安と緊張で食が細くなります。いつもの味が一口でもあれば落ち着きが戻り、判断力も上がります。保存食は胃袋と心の装備。平時から食卓に混ぜ、味の調整と好みを掴んでおきましょう。

年齢・体質別の配慮(目安)

区分重点具体の工夫
幼児噛みやすさ・薄味やわらか飯・汁物・刻み干し野菜
高齢たんぱく・水分魚缶・豆・粉末スープ、こまめな水分
妊産婦鉄・葉酸・水分鶏レバー缶・豆・乾燥野菜、薄味
食物アレルギー原材料の明示ラベル保管・在庫表に記載

家で作れる基本の保存食(乾燥・漬け・瓶詰・粉末化)

干し野菜(乾かして軽く甘く、燃料も節約)

材料:にんじん・大根・しいたけ・ピーマン など/厚さ2〜5mmに切る。
手順:①日陰で風通しの良い場所に重ならないよう並べる → ②2〜3日乾かし、折るとパキッと割れる硬さまで → ③厚手袋+乾燥剤で密封。
使い方:水で戻して味噌汁・炊き込み・炒め物。皮や芯も刻んで干せばくずなく使い切り
コツ:梅雨どきや湿潤日は電子レンジ短時間+扇風で補助乾燥。天日直射は色が抜けやすいので日陰干しが基本。

塩蔵・味噌漬け(発酵の力で長もち)

塩蔵:野菜に塩2〜3%を均一にまぶし、落としぶた+重しで水を出す。表面の浮き・泡は除去。
味噌漬け:水けをふき、味噌で包んで密封。
保存:涼所で数週間〜。酸味や香りが強くなりすぎる前に食べきり→作り直し
注意:容器・手指は清潔最優先。塩分が気になる場合は食べる直前の塩ぬきで調整。

干し肉・干し魚(たんぱくを軽く確保)

材料:鶏胸・豚もも・白身魚・小魚。
下ごしらえ:薄塩(1〜1.5%)に短時間漬け、水けを完全にふく
乾燥網+風で日陰干し。仕上げに低温オーブン(60〜70℃)で水分を飛ばすと安全度が上がる。
注意:十分な乾燥ができない天候では無理をせず加熱後に冷蔵
。油分が多い部位は酸化が早いので短期消費を。

瓶詰(熱と密封で安定、冷暗所で短期)

手順の概略:びん・ふたを煮沸消毒→具を熱々のうちに詰める隙間を少なく→ふたを閉めて追加加熱→冷暗所。
注意:肉・魚など酸の少ない食品は、家庭設備では長期常温保存を前提にしないのが安全。中心まで十分な加熱ができない場合は、冷蔵の短期保存に切り替える。

粉末化(軽くて早い調理)

干したねぎ・しいたけ・人参、煎ったごま・大豆を粉にし、小袋で小分け。湯で即席汁ふりかけに。粉は空気に触れると劣化しやすいので厚手袋+乾燥剤で保管。

保存法の比較(家庭で再現しやすい四法)

方法長所注意点主な用途
乾燥軽い・燃料いらず・味がのる湿気・天候に左右野菜・きのこ・果物・一部肉魚
塩・味噌漬け道具が少ない・発酵で栄養増清潔・塩分管理野菜・魚
瓶詰すぐ食べられる・味がなじむ加熱不足は厳禁・容器管理肉・魚・豆・煮物
粉末化軽量・湯だけで食べられる酸化しやすい香味・汁物・滋養

保存性を高める工夫と保管の要点

清潔の徹底(器具・手・場)

成功の半分は清潔で決まると言っても過言ではありません。まな板・包丁・ざる・瓶は熱湯食品用アルコールで処理。手は石けんで30秒以上。生と加熱済みの道具の使い分け、台ふきの乾拭き仕上げも徹底します。

容器の選び方(空気・湿気・光を断つ)

厚手袋・密封びん・金属缶を使い分け、食品により乾燥剤・脱酸素剤を組み合わせます。透明容器は光劣化を防ぐため紙や布で覆う。穀物・粉は防虫板唐辛子のさやを入れて虫害を抑えます(強い香りは苦手)。

温度・湿度・光の管理(冷暗と通風)

直射日光を避けた冷暗所が基本。押し入れ最下段・キッチンの熱源近くは不適。北側の物置が安定しやすい。梅雨時は乾燥剤の入れ替えを早め、夏は高温になる天袋を避けます。

穀物・豆の長期保管(主食の土台)

白米は無洗米+密封で使いやすく、玄米は冷所で。豆は虫の混入の有無をふるいで確認し、密封びんで保管。粉は小分けして酸化を遅らせます。

容器と保管の組み合わせ例

食品容器追加資材場所目安保存
干し野菜厚手袋乾燥剤冷暗所3〜6か月
味噌漬け陶器・密封箱落としぶた涼所1〜3か月
肉の瓶詰密封びん清潔布冷暗所1〜数か月(開封後冷蔵)
穀物密閉びん防虫板涼所6か月〜
粉末品厚手袋乾燥剤冷暗所1〜3か月

持ち運べる携帯保存食(軽く・高密度・手早く)

穀物ぎゅっと棒(焼いて切るだけの高密度食)

押し麦・砕いた木の実・干しぶどうをはちみつ練りごまでまとめ、薄板に広げて焼き、冷めたら棒状に切ります。1本200〜250kcalを目標に配合。包丁に油を薄く塗ると切りやすい。

脱気密封のおにぎり(炊いて包んで冷凍)

炊き込み・わかめ飯を小さく握り、空気を抜いて密封冷凍。非常時は常温戻し→袋のまま湯せんで衛生的に温食。手に塩水をつけて握ると日持ちが延びます。

粉の汁物・乾燥おかず(湯だけで温まる)

粉みそ、乾燥ねぎ、わかめ、高野豆腐、切り干し大根の小袋セットを作っておくと、湯だけで塩分・水分・たんぱくを素早く補給可能。

乾肉・小魚・海藻(歩きながら噛める)

小魚の干物焼きのりは軽く、割って携行袋に。乾肉は薄切り・低温加熱乾燥で噛みやすく仕上げる。塩飴・黒砂糖は即効の糖として役立ちます。

携帯食の重さあたりの熱量めやす

食品100gあたりの熱量強み
木の実(くるみ等)650〜700kcal高密度・噛む満足感
穀物ぎゅっと棒450〜550kcal自作で配合自在
干し芋約300kcalやさしい甘み・食物繊維
黒砂糖約380kcal即効の補給

備蓄を続ける仕組み(回しながら増やす)

回転保存(食べて補充する)

「買って積むだけ」は賞味期限切れの近道。普段の献立に保存食を組み込み、食べたら同じ物を買い足す方式に切り替えます。先入れ先出しの棚づくりで迷いをなくす。

在庫表・表示ルール(誰が見ても分かる)

在庫表に品名・個数・賞味期限・保管場所を記し、入れ替え日に○印。透明容器には日付ラベル。アレルギーや宗教上の制限は太字で明記します。

家族別・用途別に分ける(取り出しやすさ)

家族の数だけ小分け袋を作っておくと配布が速い。**台所用(調理)/持ち出し用(即食)/寝室用(夜間)**など場所別に分けると実戦的。

三日分×家族3人の例(目安)

品目1日あたり3日合計備考
主食(米・麺・餅)2合相当6合相当無洗米が便利
たんぱく(魚缶・豆)1〜2缶3〜6缶卵粉・粉乳も有効
油脂(ごま油等)大さじ2大さじ6小瓶で小分け
野菜(乾物)ひとつかみ3つかみみそ・乾燥わかめ等
1人1日3L27L生活用水は別途

いざという時の運用術(72時間〜1週間の食と衛生)

48時間前〜直後(ある物で回す段取り)

警報・予報で2日前から準備。冷蔵庫の消費優先表を作り、停電時に先に食べる物を前面へ。直後は火を使わず食べられる物から出し、調理は湯だけで済ませる。水は飲用を最優先、洗い物は拭き取りで代替。

小さな熱源の連携(燃料節約)

卓上こんろ・固形燃料は風よけを使うと燃費が伸びる。湯を保温容器に移し二次利用、鍋はふた必須。袋ごと湯せんの**“袋調理”**は衛生的で洗い物が少ない。

衛生とごみの管理(病気を防ぐ)

生ごみは密封、汁気は紙で吸わせて捨てる。食器は熱湯・食品用アルコールで拭き、使い捨て敷き紙で洗い物を減らす。手洗いが難しいときは消毒液を活用。

72時間ミニ献立(例)

時間帯1日目2日目3日目
米飯+乾燥汁米飯+干し野菜卵とじ米飯+みそ汁+海苔
魚缶丼+漬物おにぎり+粉の汁物うどん+乾燥ねぎ
肉の瓶詰と芋豆とさばの煮込み炊き込みご飯

1週間の回し方(温かい汁を軸に)

汁物+主食+たんぱく一品を基本形に、乾物と缶詰を日替わりで回す。温かい一杯が体温と気力を支えます。


特別な配慮:子ども・高齢・持病・季節

子ども(噛む力・栄養バランス)

やわらか飯・おじや・粉末だしを活用。甘みは干し芋・甘納豆で自然に。誤嚥しやすい硬い木の実は刻む

高齢(たんぱくと水分を欠かさない)

魚缶・豆・卵粉でたんぱくを確保。こまめな水分温かい汁で負担を軽く。塩分は食前の塩ぬきで調整。

持病(アレルギー・減塩・糖)

在庫表に食べられない原材料を明記。減塩が必要な方は無塩の乾物+香味で満足感を。糖を制限する方は油とたんぱくで腹持ちを図ります。

季節(暑さ・寒さ)

暑熱時は水・塩・酸味(梅・酢)で体を守る。寒冷時は油・糖で発熱を助け、温かい飲み物を増やす。


よくある疑問と答え(安全のために)

乾燥が足りないとどうなる?

水けが残るとかび・異臭・粘り。折ってぱきっと割れるのが乾燥の目安。迷ったら短時間再乾燥

瓶詰はどのくらい持つ?

家庭設備では長期常温保存を前提にしないのが安全。冷暗所で数週間〜数か月、開封後は冷蔵で早めに。中心までの十分加熱ができない場合は冷蔵短期へ。

塩分が気になる場合は?

下漬けは薄塩、食べる直前に塩ぬき。香辛料・酢・昆布だし・柑橘で塩味以外の満足を作る。

乾物はそのまま食べてもいい?

噛み砕ける物は可。ただし水なしで大量摂取は消化に負担。湯で戻すと安全で量も増えます。


まとめ:平時の工夫が非常時を救う

保存食づくりは、むずかしい技ではなく下ごしらえの延長です。乾かす・漬ける・熱して密封・粉にするという四つの柱を、清潔・密封・冷暗の三条件で支えれば、家は小さな倉(くら)になります。普段の食卓に少しずつ取り入れ、食べて補充する回し方で備えを育てましょう。味のなじんだ保存食と湯の一杯は、いざという時に心身を支える最強の道具です。今晩、干し野菜をひと皿仕込む——その小さな一歩が、家族の大きな安全につながります。

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