圏外時に役立つアナログ地図術|目標物と方角の実践ガイド

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防災

電波が無くても、道は読める。 通信が途絶えた都市・里・山・海辺で、紙地図と身の回りの目印だけで現在地を確かめ、確実に前進するための実践ガイドです。

コンパスが無くてもできる方角の作り方二つの目印で場所を絞る簡易三角測量、歩数と時間で距離を測る方法に加え、地図の折り方・防水・書き込み法雨雪・夕暮れ・強風の補正までを網羅。現場でそのまま使える表・手順・短文テンプレを充実させました。印刷して携行すれば、“圏外”は“焦らず考える時間”へ変わります。


  1. 1.紙地図の読み解き:縮尺・等高線・目標物で現在地を絞る
    1. 1-1.縮尺と距離感(1cm=?m を体で覚える)
    2. 1-2.等高線と地形(登らずとも読みで避ける)
    3. 1-3.目標物の三種(固定・線状・面)
      1. 縮尺・速度・地形 早見表
      2. 持ち歩きの地図術(折り・防水・書き込み)
  2. 2.コンパスなしで方角を作る:太陽・時計・地物の影
    1. 2-1.腕時計法(アナログ文字盤を使う)
    2. 2-2.影と棒の方法(棒1本で東西を読む)
    3. 2-3.都市の地物を方位として使う
      1. 方角作成のミニ手順表
  3. 3.現在地の絞り込み:三角測量の簡易版と歩数カウント
    1. 3-1.簡易三角測量(「見える物×2」で場所を決める)
    2. 3-2.歩数と時間で距離を測る(ペースカウント)
    3. 3-3.交差確認(線状物を使って正誤判定)
      1. 位置絞り込み 早見表
      2. 誤差の原因と対策
  4. 4.都市・里・山でのルート作成:安全と合流を崩さない
    1. 4-1.都市(明るい幹線・正面口・交番前)
    2. 4-2.里(送電線・寺社・水路を“線”に)
    3. 4-3.山(尾根と谷、等高線で“避ける”)
      1. 地域別 ルート設計表
  5. 5.天候・時間帯・非常時の補正:判断を鈍らせない型
    1. 5-1.雨・雪・強風(視界・足元・体温)
    2. 5-2.夕暮れ・夜間(光と反射を増やす)
    3. 5-3.体調・同行(止まる→寄る→知らせる)
      1. 補正ポイント表
  6. Q&A(よくある疑問)
  7. 用語辞典(やさしい言い換え)
  8. まとめ:目印×方角×距離の“三点合わせ”で迷いは減る

1.紙地図の読み解き:縮尺・等高線・目標物で現在地を絞る

1-1.縮尺と距離感(1cm=?m を体で覚える)

  • 縮尺の式:1:25,000なら地図1cm=実距離250m、1:10,000なら1cm=100m。1:50,000は1cm=500m
  • 指の物差し:親指爪の幅=約1cm、手の幅=約8〜9cm(人差)。地図上の直線距離指で素早く当てる癖を付ける。
  • 歩行速度の目安:平地=分速80〜100m、登り=分速50〜70m、下り=分速80〜120m荷物・天候で±20%変動。
  • 暗算のコツ:25,000図は4cm=1km、10,000図は10cm=1kmと覚える。

1-2.等高線と地形(登らずとも読みで避ける)

  • 線が詰む=急坂/崖広い=なだらか。谷はU字が上流へ、尾根はV字が下流へ尖る。
  • トラバース(斜め横断):等高線にほぼ平行に進むと登り下りを減らせる。崩落・雪庇・落石帯は回避。
  • 人工地形:造成地・切土/盛土・堤防は等高線が直線的段差や法面に注意。

1-3.目標物の三種(固定・線状・面)

  • 固定物:神社・塔・給水塔・鉄塔・校舎・交番・煙突。遠方からも形で識別しやすい。
  • 線状物:鉄道・川・幹線道路・送電線・堤防。横切る/沿うで迷いを減らす。
  • 面の境界:公園・湖・広い駐車場・工場敷地。端をなぞると位置合わせが簡単。

縮尺・速度・地形 早見表

要素目安現地でのコツ
縮尺1:25,0001cm=250m親指爪で1cm測る
平地速度80〜100m/分15分で1.2〜1.5km
登り速度50〜70m/分休憩を細かく入れる
等高線密集急坂/崖斜めトラバースで回避
送電線高い鉄塔列鉄塔番号が手掛かり

持ち歩きの地図術(折り・防水・書き込み)

  • 折り目的地周辺が中央に来る観音折りで、北を上に出せる形に。片手で出し入れできるサイズへ。
  • 防水透明袋に入れ、袋の口を下向きに。消せるペンと油性ペンを併用(雨は油性が強い)。
  • 書き込み背骨の道・合流点・危険箇所色を変えて記す。終わったら日付を書き足し次回に活かす。

2.コンパスなしで方角を作る:太陽・時計・地物の影

2-1.腕時計法(アナログ文字盤を使う)

  • 北半球の日中短針を太陽へ向け、短針と12の中間が南。デジタルは紙に円を描き短針を書いて代用
  • 注意:季節・緯度で誤差が生じるため**±15°程度の幅で扱う。サマータイムは1時間補正**。
  • 応用:地図の上(北)を作った南北に合わせる大通りや川の向き矛盾が無いかを確認。

2-2.影と棒の方法(棒1本で東西を読む)

  • 地面に棒を垂直に立て影の先端に石10〜20分後に新しい先端へ石。最初→次の石が東向き
  • 東西線ができたら直角が南北地図の北と合わせ、目標物の方向を読み取る。
  • 弱点:平坦でない地面・濡れ地・強風は誤差が出る。石の位置を大きめに印し再測で補正。

2-3.都市の地物を方位として使う

  • 大通りの走向(例:〇〇通りはおおむね東西)。街路樹の並びで風向や道の流れも読める。
  • 河川の流向(上流→下流)。橋の銘板・河口方向の案内板に東西南北の手掛かりがある。
  • 鉄道の方向(駅間の直線性)。駅の案内表示は方角を明記。高架の影は時間帯で向きが変わる点に注意。

方角作成のミニ手順表

手段所要精度使いどころ
腕時計法30秒日中の大まか方位
影と棒10〜20分停滞時の基準作り
地物の方向即時都市・里の補助

3.現在地の絞り込み:三角測量の簡易版と歩数カウント

3-1.簡易三角測量(「見える物×2」で場所を決める)

  • 地図上で識別できる固定物を2つ選ぶ(例:給水塔と高層ビル、鉄塔と寺社の塔)。
  • 現地でおおよその方角を取り、地図へ方向線を引く。2線の交点付近=現在地の候補
  • 誤差三角形ができたら、三角の中心を当面の現在地とし、**線状物(川・道路)**で確かめる。

3-2.歩数と時間で距離を測る(ペースカウント)

  • 事前に100mの歩数を平地で測る(例:100m=120歩)。現地では心のカウンタで数える。
  • 上り下り補正:登り**+10〜30%、下り−10〜20%**を目安。段差・雪・向かい風でさらに誤差増。
  • 時間クロス:分速80〜100mの目安と時計二重確認し、思い込みを潰す

3-3.交差確認(線状物を使って正誤判定)

  • 推定位置から川・線路・送電線どの方向にどの距離か、地図と現地の見え方を照合。
  • 一致が2つ以上現在地確度が高い。合わなければ方向線を引き直し歩数・時間を再計算。

位置絞り込み 早見表

手順使うものできること失敗の芽
固定物×2ビル・塔交点で現在地推定似た建物の取り違え
ペースカウント自分の歩数距離の裏付け上り下りで狂う
線状物クロス川・線路誤差の検出立入不可で遠回り

誤差の原因と対策

原因典型例対策
目印の誤認似た塔・給水塔番号・色・周囲の建物で再確認
方角の取り違え影が薄い・高架の影腕時計法+地物で二重取り
歩数の誤差段差・群衆で乱れる時間クロス、休憩後に再カウント

4.都市・里・山でのルート作成:安全と合流を崩さない

4-1.都市(明るい幹線・正面口・交番前)

  • 明るい大通り背骨にし、裏道の近道は捨てる。横断は信号交差点のみ高架下は見通し優先
  • 合流点駅の正面口→交番前→明るい店の前順番で固定。同じ言葉で伝える。
  • 短文テンプレ:「圏外。〇〇通りを北上、駅正面に向かう。返信不要。

4-2.里(送電線・寺社・水路を“線”に)

  • 送電線に沿う高台から集落へ導かれる。鉄塔番号は地図の手掛かり。
  • 寺社・学校広い道が集まる結節点行事掲示板で集落名を確認できることも。
  • 水路下りが下流橋の間隔曲がり角で位置を推定。

4-3.山(尾根と谷、等高線で“避ける”)

  • 尾根道迷いにくい谷道崩落等高線の詰みガレ場は回避。
  • 鞍部・峠風が抜け目印が少ない方角線で抜ける方向を事前に確認。
  • 海辺や河口近くでは堤防・砂州・導流堤線状の目印。潮位で通行可否が変わる点に注意。

地域別 ルート設計表

地域背骨禁じ手合流
都市明るい幹線裏道ショートカット駅正面→交番→店
送電線・寺社田の畦の横断神社前・学校前
尾根筋等高線密集へ突入鞍部・峠
海辺堤防・遊歩道砂州横断の無計画漁港入口・避難階段

5.天候・時間帯・非常時の補正:判断を鈍らせない型

5-1.雨・雪・強風(視界・足元・体温)

  • 白線・金属板は滑る。歩幅短く・足裏フラット橋の上・日陰のタイルは要注意。
  • 風下の壁を選び、体温は首・手首・腰で守る。濡れたら一枚脱いで拭く→重ね直す
  • 視程が落ちる日は線状物に沿う(川・堤防・幹線)。

5-2.夕暮れ・夜間(光と反射を増やす)

  • 胸のライト下向き反射材腕・足へ。黒服には白いタオルを外側へ。
  • 星の北北極星(北斗七星のひしゃく後端を5倍伸ばした先)。雲・街明かりで見えないこともあるため補助扱い
  • 夜間の歩数誤差を見越し、時間クロスを強めに使う。

5-3.体調・同行(止まる→寄る→知らせる)

  • 不安を感じたら明るい店・交番寄る戻る/走るより寄るが安全。
  • 短文合流テンプレ:「正面口で合流、10分待つ。来なければ交番前。
  • 子ども・高齢者段差回避・休憩刻みを徹底。合図は同じ言葉で繰り返す。

補正ポイント表

状況重点具体策
雨・雪足元白線回避・歩幅短く
夕暮れ視認ライト下向き・反射二重
強風体温風下・壁沿い・橋上回避
不安回避明るい店/交番へ寄る

Q&A(よくある疑問)

Q1.地図と景色が一致しない。どうする?
A. 線状物(川・鉄道・堤防)を探し交差角で合わせる。固定物×2の方向線交点を作り直し、誤差三角形の中心を暫定位置に。

Q2.コンパスがない。方角は正確に出せる?
A. 腕時計法+地物の方向実用十分棒と影東西線を作れれば精度は一段上がる

Q3.山で迷ったら上へ?下へ?
A. 等高線の緩い方向(尾根側)を選ぶ。谷底は増水・崩落がある。尾根に乗ってから方角線で建て直す。

Q4.距離感がずれる。
A. ペースカウント(100m歩数)を事前に測り、時間×分速二重確認上り下り補正を忘れない。

Q5.夜間の北の見つけ方は?
A. 北極星(北斗七星のひしゃく端2星→5倍延長)を補助に。ただし雲・街明かりで見えない場合は地物方位+腕時計法へ切替。

Q6.紙地図は何を持つ?
A. 1:25,000の地形図周辺拡大(1:10,000)裏面に連絡先・合流順をメモし、透明袋で防水。

Q7.目印が少ない高原や造成地では?
A. 送電線・用水路・風車列など線状物を拾う。遠景の山並み輪郭で照合するのも有効。

Q8.海辺での注意は?
A. 堤防・導流堤・避難階段線状物・固定物として使う。潮位・高潮通行可否が変わるため無理はしない


用語辞典(やさしい言い換え)

  • 縮尺地図の1cmが現地で何mかの比率。
  • 等高線同じ高さを結ぶ線。詰む=急、広い=緩
  • 固定物:遠くから見ても形が変わらない目印(塔・給水塔など)。
  • 線状物細長く続く目印(川・鉄道・幹線道路・送電線・堤防)。
  • ペースカウント一定距離の歩数を数えて距離を推定する方法。
  • 簡易三角測量二つの目標物の方向線の交点現在地を絞るやり方。
  • 誤差三角形:二本の方向線が完全に交わらずできる小さな三角中心を暫定位置にする。
  • 背骨の道明るく広い幹線をつないだ迷いにくい徒歩道

まとめ:目印×方角×距離の“三点合わせ”で迷いは減る

見える物(固定・線状・面)で手掛かりを作り、太陽や影で方角を決め、歩数と時間距離を裏付ける。これだけで、圏外の不安は計画的な前進へ変わります。地図の北を自分の北に合わせる—この基本を軸に、背骨の道→合流点→安全確保の順で行動を組み立て、確かな一歩を重ねましょう。

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