地震後に確認すべき家の部位|基礎・外壁・屋根ガイド

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防災

命を守った次の一手は、家の弱点を素早く見抜くこと。 本稿は、基礎・外壁・屋根を中心に、室内設備・ライフラインまでを順序立てて点検するための実務ガイド

まずは 安全確保 → 一次確認 → 記録 → 応急処置 → 専門家へ の流れで、見落としを最小化する。賃貸・持ち家、木造・鉄骨・RCの別を問わず使えるよう、症状の見分け方・数値基準・写真の撮り方・連絡の優先順位まで具体化。さらに時系列のやること一覧印刷して使えるチェック表も用意した。


  1. 1.最初に守るべき原則と一次確認フロー
    1. 1-1.自分と家族の安全を最優先
    2. 1-2.一次確認フロー(玄関→外回り→小屋裏→室内)
    3. 1-3.記録と連絡の基本
  2. 2.基礎・土台を診る|割れ・沈下・傾きの見極め
    1. 2-1.ひび割れの種類と幅の目安
    2. 2-2.沈下・傾きの簡易判定
    3. 2-3.土台・床下の付帯点検
  3. 3.外壁・開口部を診る|割れ・浮き・建て付け
    1. 3-1.外壁材別の注意点
    2. 3-2.サッシ・ドアの建て付けと枠
    3. 3-3.目地・シーリング・防水
    4. 3-4.ブロック塀・擁壁(家の外周安全)
  4. 4.屋根・小屋裏を診る|雨漏り・落下・固定具
    1. 4-1.屋根材別のチェックポイント
    2. 4-2.小屋裏・天井の雨漏りサイン
    3. 4-3.付帯設備(アンテナ・太陽光・換気)の固定
    4. 4-4.屋根に上がらない代替手段
  5. 5.室内・ライフラインの安全再開手順|電気・ガス・水
    1. 5-1.電気:ブレーカーと漏電の確認
    2. 5-2.ガス:遮断表示と復帰
    3. 5-3.水道・給湯:漏水と濁り
  6. 6.応急処置と専門家への引き継ぎ|やること・やらないこと
    1. 6-1.自分でできる応急処置
    2. 6-2.使うと便利な道具と材料(家に備える)
    3. 6-3.専門家へ渡す情報
    4. 6-4.保険・修理の段取り
  7. 7.住まい別・構造別の見落とし防止ポイント
    1. 7-1.木造
    2. 7-2.鉄骨
    3. 7-3.RC(鉄筋コンクリート)
  8. 8.屋外付帯・敷地の安全確認|見落としやすい箇所
    1. 8-1.ベランダ・バルコニー・手すり
    2. 8-2.カーポート・物置・門扉
    3. 8-3.給排水・配管まわり
  9. 9.チェックリスト(印刷して使える)
  10. 10.時系列でやること(24時間/72時間/2週間)
    1. 10-1.0〜24時間以内
    2. 10-2.24〜72時間
    3. 10-3.1〜2週間
  11. 11.Q&A(よくある疑問)
  12. 12.用語辞典(平易な言い換え)

1.最初に守るべき原則と一次確認フロー

1-1.自分と家族の安全を最優先

  • 再揺れ(余震):揺れが続く・警報が出ているときは、屋外の開けた場所へ退避。電線・看板・瓦やガラスの落下に注意。
  • 火気と電気ガス元栓家中の火を確認。分電盤主幹ブレーカーを落としてから各回路を個別に点検。
  • 立入禁止の判断大きな傾き/基礎の大割れ/屋根材の大量落下/煙・ガス臭があれば室内点検を行わず退避
  • 足元保護:厚底の靴・手袋・ヘッドライトを装備。素手・素足は厳禁。

1-2.一次確認フロー(玄関→外回り→小屋裏→室内)

1)家の外周を一周し、傾き・崩れ・落下物を確認。
2)屋根を下から目視(双眼鏡可)。瓦・金具・雨樋の異常を観察。
3)基礎・外壁ひび割れ目地を確認。
4)小屋裏(点検口)と天井雨染み・割れ・光漏れを確認。
5)室内建具の開閉・床の段差・天井の膨らみ電気・ガス・水の状態を確認。

1-3.記録と連絡の基本

  • **写真は「遠景→中景→近景」**の順で撮る(位置・規模が分かる)。
  • スケールを入れる:名刺やスケールシール、0.5mm方眼などを当てて撮影。
  • メモ日時・場所・症状・一時対策をひとまとめ(各部位ごとに)。
  • 連絡の優先度:感電・ガス漏れ・大量雨漏り→最優先/外壁の目地切れ・壁紙程度→後日相談

やってはいけないこと
屋根に一人で上がる/破損瓦を素手で触る/傾いた家に長時間滞在/水浸しの分電盤を操作/火気の近くで電源の入切


2.基礎・土台を診る|割れ・沈下・傾きの見極め

2-1.ひび割れの種類と幅の目安

種類見た目危険度応急処置相談先
ヘアクラック髪の毛のように細い(〜0.1mm)写真記録のみ次回点検時に相談
乾燥収縮ひび0.2〜0.3mm、網目状写真+幅測定工務店で確認
構造クラック0.5mm以上/斜め一直線/段差あり立入を控える早急に専門業者へ

幅測定のコツ:名刺や0.5mm方眼を当て撮影。爪が入るなら0.3mm以上の可能性。

2-2.沈下・傾きの簡易判定

  • ビー玉/水準アプリ:床に置き転がる方向・速度を確認。
  • 柱と下げ振り:柱に糸+おもりを垂らし、上端からのずれ量を測る。
  • 基礎天端の段差:同一ラインで上下差がないかチェック。

危険度マトリクス(目安)

兆候
ひび幅〜0.2mm0.3〜0.5mm0.5mm超+段差
傾き体感なしビー玉ゆっくり移動速く移動/扉が勝手に動く
床段差〜3mm4〜7mm8mm以上

2-3.土台・床下の付帯点検

  • 基礎と土台のすき間アンカーボルトの曲がり・抜け
  • 床下配管の抜け・水漏れ(湿り・におい)。
  • 防湿シートの破断土の盛り上がり(地盤の動きの痕)。
  • シロアリ蟻道の新生がないかも併せて確認。

3.外壁・開口部を診る|割れ・浮き・建て付け

3-1.外壁材別の注意点

外壁ありがちな症状注意点
モルタル斜めひび、窓角から放射状叩くと中空音浮きの可能性
サイディング目地割れ、釘周りのひび目地切れは雨水の入口
タイル目地割れ、タイル浮き剥落は落下事故リスク

3-2.サッシ・ドアの建て付けと枠

  • 開閉で擦る/鍵が掛かりにくい枠のゆがみを疑う。
  • 窓枠と壁のすき間玄関ドア上下のすき間を撮影。
  • 網戸レール外れ/戸車破損の併発に注意。

3-3.目地・シーリング・防水

  • シーリング裂け・剥離窓上水切り金物の変形。
  • 雨樋外れ/集水器割れ外壁へ雨水回り込みの原因。
  • 応急はビニール+防水テープで養生。後日防水補修へ。

3-4.ブロック塀・擁壁(家の外周安全)

項目NGの兆候目安・対処
ブロック塀ぐらつき/大きなひび/控え壁なし倒壊危険→近づかない・通行止め。専門家へ
擁壁排水口から水が出ない/膨らみ水圧増大の恐れ→早急に相談

4.屋根・小屋裏を診る|雨漏り・落下・固定具

4-1.屋根材別のチェックポイント

屋根材よくある損傷応急処置危険度
ずれ・割れ・抜け上がらない。下から位置確認し養生シート依頼
金属(立平/横葺)ハゼ開き・釘抜け強風でめくれやすい→業者に固定依頼中〜高
スレートひび・欠け割れ拡大の恐れ→踏み抜かない

4-2.小屋裏・天井の雨漏りサイン

  • 天井の染み・膨らみ断熱材の濡れ木材の新しい色変化
  • 点検口から昼間の光漏れ屋根材の隙間の可能性。
  • 受けバケツ梁・電線を避け天井材を突かない

4-3.付帯設備(アンテナ・太陽光・換気)の固定

  • アンテナ傾き/支線ゆるみ
  • 太陽光パネルの枠・配線外れ(感電注意)。
  • 換気フード外れ/鳥害ネット破損

4-4.屋根に上がらない代替手段

  • 地上からのズーム撮影双眼鏡自撮り棒で軒先撮影
  • 雨音の変化(金属屋根)や天井裏の滴音も手掛かり。

5.室内・ライフラインの安全再開手順|電気・ガス・水

5-1.電気:ブレーカーと漏電の確認

  • 主幹→各回路の順に上げる。どれかで落ちる=その回路で漏電の疑い
  • 濡れた家電・水濡れコンセント完全乾燥後に再試験
  • 焦げ臭・異音があれば即切断。

5-2.ガス:遮断表示と復帰

  • メーター表示遮断なら、器具OFF→元栓OFFを確認し、復帰ボタン→約3分待ち
  • 臭いがあれば窓開け→退避→連絡。復帰操作は中止。

5-3.水道・給湯:漏水と濁り

  • メーターのコマ無使用で回る漏水疑い
  • 最初に茶色い水が出る→しばらく放流。給湯器は水の安定後に点火。

ライフライン再開の優先度早見表

状況電気ガス水道
室内が乾燥している
天井から漏水××△(元栓を確認)
ガス臭・異音〇(換気扇は止)×

6.応急処置と専門家への引き継ぎ|やること・やらないこと

6-1.自分でできる応急処置

  • ブルーシート養生(足場不要の範囲・二人以上)。
  • 外壁目地の一時防水(防水テープ+養生)。
  • 家具固定強化(L字金具・ベルト)。
  • 雨樋の仮固定(結束バンド・針金)。

6-2.使うと便利な道具と材料(家に備える)

種別ポイント
測定レーザー距離計・下げ振り・水準器アプリ写真とセットで記録
養生ブルーシート・養生テープ・防水テープ風でばたつかない張り方を練習
固定結束バンド・針金・L字金具腐食しにくい材質を選ぶ
安全厚手手袋・ヘッドライト・ゴーグル破片・釘から身を守る

6-3.専門家へ渡す情報

  • 部位別写真(全体→中景→近接)。
  • 発生日・天候・再揺れの有無
  • 応急処置の内容(材料・範囲・日付)。
  • 建築年・工法(不明なら外観写真)

6-4.保険・修理の段取り

  • 契約種別(火災・地震特約など)を確認。
  • 保険会社→施工会社の順で連絡すると、重複工事・範囲漏れを防げる。
  • 見積書・領収書・写真一式で保存

7.住まい別・構造別の見落とし防止ポイント

7-1.木造

  • 筋かい位置の内壁斜め割れが出やすい。
  • 基礎と土台のズレ土台割れに注目。
  • 小屋裏の火打ち金物の緩みも確認。

7-2.鉄骨

  • ボルト緩み・座金変形外壁取り合いのすき間。
  • ALCパネル目地切れに注意。
  • 金属梁・柱の塗膜割れ(錆の起点)を見逃さない。

7-3.RC(鉄筋コンクリート)

  • 柱・梁の爆裂(鉄筋露出)エキスパンションジョイント付近の損傷。
  • 打継ぎ目のひび雨漏りの入口になりやすい。
  • 外部階段の踏面・蹴上の割れも要チェック。

8.屋外付帯・敷地の安全確認|見落としやすい箇所

8-1.ベランダ・バルコニー・手すり

  • 手すりのぐらつき床の排水口つまり笠木の継ぎ目の割れ
  • タイル浮き空洞音で判断。

8-2.カーポート・物置・門扉

  • ポリカ板の外れ支柱の傾き
  • 物置のアンカー抜け門扉ヒンジの緩み
  • 重い扉養生で開閉制限を。

8-3.給排水・配管まわり

  • 屋外給湯器の固定配管の曲がり・漏れ
  • 排水マスの浮き悪臭(排水トラップ破断のサイン)。

9.チェックリスト(印刷して使える)

区分確認項目OKNGメモ
外周傾き/沈下がない
屋根瓦・板金のずれ/落下なし
基礎0.5mm以上のひびなし
外壁目地切れ/浮きなし
開口部ドア/窓の開閉良好
小屋裏雨染み/光漏れなし
室内床段差/天井割れなし
電気ブレーカー正常
ガス臭いなし/復帰OK
水道漏水なし/濁り解消
バルコニー手すりぐらつきなし
ブロック塀ぐらつき/大ひびなし

10.時系列でやること(24時間/72時間/2週間)

10-1.0〜24時間以内

  • 安全確保(退避判断・火気停止・主幹ブレーカーOFF)。
  • 一次確認(外周→屋根下から→基礎→室内)。
  • 写真とメモの整理、応急養生(足場不要範囲)。

10-2.24〜72時間

  • ライフラインの段階的復帰
  • 保険会社へ連絡・相談(写真一式送付)。
  • 専門業者の手配(屋根・外壁・電気・ガス・水道)。

10-3.1〜2週間

  • 詳細点検(小屋裏・床下・バルコニー・外構)。
  • 見積取得・工期調整
  • 再発防止策(家具固定・非常用品の更新)。

11.Q&A(よくある疑問)

Q1:壁紙だけが裂けました。放置で良い?
A:壁紙のみなら急ぎではないが、同位置の石膏ボード割れが疑われる。ピンホールで内部確認し、写真保管。

Q2:屋根の一部がはがれました。自分で上がって直せますか?
A:不可。落下危険が高い。下から位置特定し、業者へ写真と位置情報を送る。

Q3:玄関ドアが閉まりにくいです。
A:枠のゆがみの可能性。無理な開閉は避け、蝶番・戸当たりを撮影して相談。

Q4:ガス臭がします。
A:全窓開放→元栓OFF→電気スイッチは触らないすぐ連絡を。

Q5:雨漏りが止まりません。
A:受けバケツ+濡れ保護で家電・分電盤を守り、天井の膨らみ突かない専門家へ

Q6:ブロック塀が少し傾いた気がします。
A:触れず・寄らず・通さず。倒壊リスクがあるため、ロープで通行止めし専門家へ。

Q7:分電盤が濡れました。乾けば使えますか?
A:不可乾燥後でも内部劣化の恐れ。電気工事士へ点検依頼。

Q8:床下が湿っています。
A:配管漏れの可能性元栓を閉め水道業者へ。カビ対策に換気を。

Q9:外壁タイルが浮いている音がします。
A:落下危険。触れず、テープで進入防止し、外壁業者へ。

Q10:保険申請はいつまでに?
A:写真・領収書・見積書をそろえ、早めに連絡。期限がある場合が多い。


12.用語辞典(平易な言い換え)

  • 基礎:家を地面に固定するコンクリート部分。
  • 土台:基礎の上で家を支える横向きの木/鋼材。
  • 構造クラック:家の力を伝える部分に入る危険な割れ。
  • 目地・シーリング:外壁と外壁のつなぎ目をふさぐ弾力材。
  • 小屋裏:天井と屋根の間の空間。点検口から見える。
  • 爆裂:コンクリートが剥がれて鉄筋が見える状態。
  • エキスパンションジョイント:地震などの動きを逃がすすき間。
  • 下げ振り:重りを糸に付けて垂らし、垂直をみる道具。
  • 天端:基礎などの上面のこと。

まとめ
地震後の家は、安全確保→外回り→屋根→基礎→室内→ライフラインの順で点検すると漏れにくい。写真と数値で記録し、危険度の高い箇所には近づかない応急処置は足場不要の範囲でにとどめ、最終的に専門家へ引き継ぐ。保険・修理の段取りを早めに進め、**再発防止(家具固定・非常用品更新)**まで一体で考える。見える化と手順化が、暮らしの再開を速める。

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