太陽光+蓄電の非常時出力計画|日照・方位・負荷ガイド

スポンサーリンク
ソーラーパネル

停電は「どれくらい発電できて、何をどれだけ動かせるか」の見える化で不安が減ります。本ガイドは、太陽光発電(屋根/ベランダ/持ち運び)+蓄電池(家庭用/ポータブル)を前提に、日照・方位・傾き・影を読み解き、重要負荷の優先順位→一日の運転台本→悪天時の節電段階までを数値と手順で整える実務書です。比較表・早見表・チェックリスト・Q&A・用語辞典付き。


  1. 1.非常時出力計画の考え方|全体像を先に決める
    1. 1-1.三段構えの基本方針(昼→夕→夜)
    2. 1-2.“重要負荷”の定義と優先順位(迷わない順)
    3. 1-3.“1日運転台本”の型(印刷して冷蔵庫へ)
    4. 1-4.72時間と7日間の設計(段階的に強くする)
  2. 2.日照・方位・傾き・影|発電量を読み解く
    1. 2-1.方位と傾きの目安(屋根・ベランダ)
    2. 2-2.温度・汚れ・影の影響(現実値のコツ)
    3. 2-3.天気別の発電目安(1kWパネル/1日)
    4. 2-4.コントローラと配線の基本(落とさないために)
  3. 3.負荷(家電)の設計|何Whをどれだけ動かすか
    1. 3-1.家電の消費早見表(一般家庭の例)
    2. 3-2.“昼稼働・夜温存”の家事スケジュール(例)
    3. 3-3.必要蓄電容量の簡易算出(計算の型)
    4. 3-4.“同時使用禁止”リスト(ブレーカを守る)
  4. 4.機器構成と運転モード|停電時の動かし方
    1. 4-1.構成パターン別の使い勝手
    2. 4-2.充電・放電の優先順位(推奨型)
    3. 4-3.“交流と直流”の使い分け(ロスを減らす)
    4. 4-4.安全の基本(絶対に守る)
  5. 5.今日から作れる“我が家の出力計画”
    1. 5-1.わが家の発電・蓄電シート(記入例付き)
    2. 5-2.1日運転台本(貼り付け用テンプレ)
    3. 5-3.悪天時の節電メニュー(段階表)
    4. 5-4.“月1メンテ”チェック(5分で完了)
  6. Q&A|よくある疑問と答え
  7. 用語辞典(やさしい言い換え)
  8. まとめ|数字で迷いを減らす

1.非常時出力計画の考え方|全体像を先に決める

1-1.三段構えの基本方針(昼→夕→夜)

1):発電が主役。まず蓄電へ充電し、余剰で家事(炊飯/洗濯/湯沸かし)をまとめて実行。
2)夕:日没前に残量(SoC)点検
。夜に備え放電上限を設定。
3)重要負荷だけを運転(冷蔵・照明・連絡・扇風機)。電子レンジ/電熱は原則使わない。

1-2.“重要負荷”の定義と優先順位(迷わない順)

  • 命に関わる:医療機器、乳幼児や薬の冷蔵。
  • 安全・情報:照明、スマホ/ラジオ/無線、充電。
  • 衛生・生活:扇風機、炊飯、湯沸かし、短時間の洗濯。

優先は「命→情報→衛生→快適」。家族で合意して紙に固定し、非常時に議論しない。

1-3.“1日運転台本”の型(印刷して冷蔵庫へ)

朝:残量_%/天気_(快晴/薄曇/雨)→ 目標充電_%
昼:家事(炊飯/洗濯/湯沸かし)集中→ 余剰で通信充電
夕:残量再点検→ 夜の放電上限_%/電子レンジ禁止
夜:照明+扇風機のみ/就寝前:残量_%(40%切らない)

1-4.72時間と7日間の設計(段階的に強くする)

  • 最初の72時間1〜1.5kWh/日を目標(照明・通信・冷蔵の維持)。
  • 7日まで食事は非電気の選択肢(水戻し・固形燃料)を増やし、電力は通信と冷蔵へ集中。

2.日照・方位・傾き・影|発電量を読み解く

2-1.方位と傾きの目安(屋根・ベランダ)

  • 南向きが基本。東/西午前/午後に強み。北向きは大幅減(係数0.6前後)。
  • 傾きは**緯度±10°が目安。都市部ベランダは15〜30°**の緩い角度が扱いやすい。

方位×傾きによる発電係数(南=1.00の概算)

方位/傾き10°20°30°40°
0.971.000.980.94
0.860.880.890.87
西0.860.880.890.87
0.550.600.620.61

※ 年間の概算係数。季節/気温/汚れで変動。

2-2.温度・汚れ・影の影響(現実値のコツ)

  • 温度上昇で出力は低下(夏の屋根は高温)。風通し裏面の空気層で抑える。
  • 汚れ・ほこりは朝夕の柔らかい布で軽く拭う。水が貴重な時は乾拭き+ブロワ
  • 部分的な影でも直列接続は大きく落ちる。並列影に強い接続を検討。

2-3.天気別の発電目安(1kWパネル/1日)

天気春/秋備考
快晴4.0〜5.5kWh3.5〜4.5kWh2.0〜3.0kWh温度/影で上下
薄曇り2.0〜3.0kWh1.5〜2.5kWh1.0〜1.8kWh反射光が効く
雨天0.3〜0.8kWh0.2〜0.7kWh0.1〜0.5kWh最低限運用

2-4.コントローラと配線の基本(落とさないために)

  • 太陽→蓄電は**最大電力点追従(MPPT)**が有利(難しい言葉だが、より上手に取り込む装置)。
  • 配線の太さ/長さで損失。短く太く端子の緩みゼロ
  • 屋外ケーブルの防水足に引っかけない導線を徹底。

3.負荷(家電)の設計|何Whをどれだけ動かすか

3-1.家電の消費早見表(一般家庭の例)

機器消費電力のめやす1時間の電力量非常時の使い方
冷蔵庫(中型)70〜150W(平均)70〜150Wh開閉を減らし間欠運転
炊飯器300〜700W300〜700Wh昼の高発電帯にまとめ炊き
電気ポット700〜1000W700〜1000Wh保温しない→魔法びんへ
電子レンジ1000W前後1000Wh短時間・単独使用のみ
扇風機20〜40W20〜40Wh夜の熱中症対策に有効
LED照明5〜10W5〜10Wh必要部屋のみ
洗濯機200〜500W200〜500Wh正午前後に短時間
スマホ充電5〜10W5〜10Wh昼に集中充電
ノートPC20〜40W20〜40Wh省電力設定で
ルーター6〜12W6〜12Wh復電までは親機テザリングも

3-2.“昼稼働・夜温存”の家事スケジュール(例)

  • 炊飯・洗濯・湯沸かし10:00〜14:00に集中。
  • 冷蔵庫は昼に温度を下げて蓄冷、夜は開閉最小
  • 夜は照明+扇風機中心、電子レンジ/電熱は原則停止。

3-3.必要蓄電容量の簡易算出(計算の型)

1日の使用予定電力量(Wh)=各機器の**(消費W×使用h)**の合計
必要蓄電容量(Wh)=1日の使用予定×悪天係数(1.3〜1.8)

例:合計1200Wh/日、悪天係数1.51800Wh以上を確保

3-4.“同時使用禁止”リスト(ブレーカを守る)

  • 電子レンジ+電気ポット
  • 炊飯器+ドライヤー
  • 洗濯機(脱水)+電子レンジ

瞬間の合計W連続出力を超えないよう、時間で分ける


4.機器構成と運転モード|停電時の動かし方

4-1.構成パターン別の使い勝手

構成強み注意点
家庭用蓄電池+屋根パネル5kW+7kWhなど自動切替・重要負荷回路が使える設定で非常時優先を確認
ポータブル電源+ベランダパネル200W×2+1kWh設置が簡単、持ち出し可天気に左右、配線保護を厳守
両方併用屋根+ポータブル冗長性が高い充電の優先順位を決める

4-2.充電・放電の優先順位(推奨型)

1)日中:パネル→蓄電池(80〜90%で止める設定があれば活用)
2)日中の余剰:**家事(炊飯/洗濯/湯沸かし)**に回す
3)夜間:重要負荷のみに放電(冷蔵・照明・連絡)

4-3.“交流と直流”の使い分け(ロスを減らす)

  • 直流(USB/車の口)は変換ロスが少ない。スマホ/LEDは直流優先
  • **交流(家庭用コンセント)は便利だがロス10〜15%**を見込む。
  • 延長コード太く短く耐荷重を守る。

4-4.安全の基本(絶対に守る)

  • 屋内で発電機を使わない(一酸化炭素)。
  • 逆流(作業員側へ電気が戻る)を起こさない。分電盤の工事は有資格者のみ。
  • 雨天の屋外接続部防水+足元の段差養生

5.今日から作れる“我が家の出力計画”

5-1.わが家の発電・蓄電シート(記入例付き)

項目記入欄記入例
パネル枚数・合計W____W400W×2=800W
方位・傾き____南20°
日照の良い時間____10:00〜14:00
蓄電容量____Wh1024Wh
充電方式____太陽+AC(復電時)
重要負荷____冷蔵/照明/通信
同時禁止の組合せ____レンジ+ポット 等

5-2.1日運転台本(貼り付け用テンプレ)

朝:残量_%/天気_ → 目標充電_%(80〜90)
昼:炊飯/洗濯/湯沸かし集中→ 通信・照明を満充電
夕:残量再点検→ 夜の放電上限_%(40以上)
夜:照明+扇風機/電子レンジ禁止/就寝前に残量記録

5-3.悪天時の節電メニュー(段階表)

段階残量/天気対応備考
A快晴・残量>70%通常運用、昼に家事集中余剰で湯→魔法びんへ
B薄曇・残量40〜70%電子レンジ中止、洗濯短縮冷蔵開閉を減らす
C雨天・残量<40%炊飯中止(水戻し)・照明最小連絡は文字中心

5-4.“月1メンテ”チェック(5分で完了)

  • パネルの固定/汚れ、配線の緩み/破損
  • 蓄電池の充放電テスト(20分だけ)。
  • 非常用テーブル(本書の表)を最新に更新。

Q&A|よくある疑問と答え

Q1.雨が続くとどれくらい動かせる?
1kWパネルで0.3〜0.8kWh/日が目安。蓄電容量を厚めに見て、食事は火器や水戻しに切替。

Q2.冷蔵庫は止めずに運用できる?
開閉を減らし、昼に温度を下げて蓄冷、夜は間欠運転で持たせる。

Q3.炊飯器と電気ポット、どちらを優先?
炊飯器は総量が大きいが短時間で昼集中電気ポット保温しない運用なら有効。

Q4.電子レンジをどうしても使いたい
正午前後の発電ピークに単独で短時間同時使用はしない

Q5.方位が北向きしか取れない
係数0.6前後を想定。枚数増設日中の家事集中で補う。

Q6.ポータブル電源だけでも効果はある?
ある。小型パネルでも昼の充電→夜の照明・通信に回すだけで安心感が変わる。

Q7.パネルを窓際に立てかけても大丈夫?
転倒防止日射の角度に注意。落下防止の固定反射の近隣配慮を必ず。

Q8.家族がつい電気を使いすぎる
段階表を冷蔵庫に貼り、C段階に入ったら電子レンジ・電熱の封印を全員で共有。


用語辞典(やさしい言い換え)

蓄電容量(Wh):電気をどれだけためられるか。1000Wh=1kWh。
出力(W):一度にどれだけの機器を動かせるか
変換ロス:直流↔交流の切替で失われる分
重要負荷回路:停電時に優先的に電気を回すための家の回路。
間欠運転つけたり止めたりして電気を節約する動かし方。
最大電力点追従(MPPT):太陽から上手に取り込む装置の仕組み。難しい言葉だが、より多く充電できると覚えればOK。


まとめ|数字で迷いを減らす

非常時は感覚に頼らない方位・傾き・天気発電の上限を見積もり、家電のWh使い道を決め、1日運転台本家族の動きをそろえる。今日、わが家の発電・蓄電シートを埋めて冷蔵庫に貼る。段階表/同時禁止リストを加えれば、誰が見ても迷わない運転ができる。

タイトルとURLをコピーしました