復旧後の家電通電テスト手順|火災・感電防止ガイド

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防災

停電・浸水・落雷・粉じん流入の後にいきなりスイッチを入れるのは厳禁です。内部に水分やほこり、破損が残ったまま通電すると、発煙・発火・感電・再故障の危険が一気に高まります。

本ガイドは、家庭でできる安全確認→乾燥・清掃→段階通電→動作確認→再点検を、機器の種類別に落とした実務マニュアルです。必要な道具、記録の残し方、家族への周知テンプレ、保険・修理の境界線まで、**今日から使える“通電前チェック”**としてお役立てください。


  1. 要点先取り(まずここだけ)
  2. 0.被害状況別の初動:何が起きたかで手順が変わる
    1. 0-1.停電のみ(浸水・落雷なし)
    2. 0-2.浸水・雨漏り・結露が疑われる
    3. 0-3.落雷・過電圧の疑い
  3. 1.通電前の“絶対条件”と準備
    1. 1-1.安全三原則(満たせないなら通電禁止)
    2. 1-2.用意する道具
    3. 1-3.場の整え方(姿勢と置き方)
  4. 2.乾燥・清掃・目視点検:通電前の下ごしらえ
    1. 2-1.乾燥の基準と時間目安
    2. 2-2.清掃の要点
    3. 2-3.目視点検チェックリスト
  5. 3.段階通電の手順:弱→短時間→単機
    1. 3-1.ブレーカー復帰の順番
    2. 3-2.家電単体テストの流れ
    3. 3-3.異常徴候と即時中止の基準
    4. 3-4.温度・時間の目安(家庭向け)
  6. 4.種類別:主要家電の通電テスト要点
    1. 4-1.冷蔵庫・冷凍庫
    2. 4-2.洗濯機(全自動・ドラム)
    3. 4-3.電子レンジ・電気ケトル・トースター
    4. 4-4.エアコン(室内機・室外機)
    5. 4-5.パソコン・ルーター・テレビ
    6. 4-6.IH調理器・電子ポット・炊飯器
    7. 4-7.換気扇・空気清浄機・除湿機
    8. 4-8.掃除機・ドライヤー・電動工具
    9. 4-9.照明・充電器・電池機器
  7. 5.記録・周知・再点検:家族で守る運用
    1. 5-1.通電記録シート(最低限の項目)
    2. 5-2.家族への掲示テンプレ
    3. 5-3.再点検のタイミング
    4. 5-4.修理・廃棄の判断ライン
  8. 6.トラブルの兆候と初動(早見表)
  9. チェックリスト(印刷用)
  10. Q&A(よくある疑問)
  11. 用語辞典(やさしい言い換え)
  12. まとめ:通電は“短く・弱く・一つずつ”

要点先取り(まずここだけ)

  • 濡れ・結露の疑いが少しでもあれば通電しない。 乾燥目安は48〜72時間、倒れた冷蔵庫は直立6〜12時間待機
  • 通電は短く・弱く・一つずつ。 単独口で弱運転1〜3分→停止点検→通常運転
  • 焦げ臭・白煙・異音・局所高温のどれか一つでも出たら即停止→抜く→離れる
  • 延長コードのタコ足・細線×。 試験は直差しスイッチ付短尺延長
  • 記録を残す。 日時・乾燥時間・弱運転時間・異常の有無・担当者を表に記入し、次回点検へつなげる。

0.被害状況別の初動:何が起きたかで手順が変わる

0-1.停電のみ(浸水・落雷なし)

  • まずブレーカーの状態を確認し、分岐OFF→主幹ON→分岐を一つずつON
  • 家電は**重要度順(照明→冷蔵庫→通信機器→その他)**で単体試験。

0-2.浸水・雨漏り・結露が疑われる

  • 分解せず外装と配線を乾燥風通しの良い日陰48〜72時間
  • 塩分を含む水(海水・融雪剤)がかかった場合は清水で拭き洗い→乾燥

0-3.落雷・過電圧の疑い

  • サージ保護タップ焼損・作動痕を示す場合は機器より先にタップを交換
  • 電源投入は情報機器から最後にする(先に冷蔵庫・照明)。

1.通電前の“絶対条件”と準備

1-1.安全三原則(満たせないなら通電禁止)

  • 濡れ・結露の可能性が残る → 通電しない(最低48〜72時間の乾燥)。
  • 焦げ臭・異音・破損を認める → 専門修理へ(テスト対象外)。
  • アース・漏電遮断器の確認未了 → テスト不可

1-2.用意する道具

  • スイッチ付延長(短尺・太線)単独口
  • 漏電遮断器(ブレーカー)の位置図と試験ボタンの扱い方メモ。
  • 非接触温度計タイマー明るい懐中電灯軍手/保護メガネ
  • 乾いた布・綿棒・綿棒用アルコールドライヤーの冷風掃除機(ほこり吸い)

1-3.場の整え方(姿勢と置き方)

  • 可燃物を30cm以上離す(壁・カーテン・紙箱)。
  • 足元を乾かす、水気のある雑巾は撤去
  • 片手操作(もう片手は背中・ポケット)で感電経路を作らない。
  • プラグは水平にまっすぐ浮き差し禁止。

2.乾燥・清掃・目視点検:通電前の下ごしらえ

2-1.乾燥の基準と時間目安

状況乾燥方法目安時間補足
表面が濡れた乾拭き→日陰で送風24〜48h差込口は綿棒→冷風
内部に結露の疑い日陰・送風・上下面を開放48〜72h家具から外し熱がこもらない位置へ
倒れた冷蔵庫直立して待機6〜12h冷媒オイル戻り待ち
海水・泥水拭き洗い→送風乾燥72h塩分・泥の除去が先

2-2.清掃の要点

  • ほこり・油汚れ発火の引き金。吸い取り→拭き取り→乾拭きの順。
  • 吸気口・放熱口(冷蔵庫裏・電子レンジ側面・PC底面)にほこりの固まりがないか。
  • 電源コードの汚れは固く絞った布乾拭きで仕上げ。

2-3.目視点検チェックリスト

  • 電源コード:ひび割れ、折れ跡、発熱痕。
  • プラグ:変形、黒ずみ、緩み。
  • 筐体:割れ、へこみ、水跡。
  • におい:焦げ臭、薬品臭。
  • 動作部:ファンやベルトの異常、埃絡み。

3.段階通電の手順:弱→短時間→単機

3-1.ブレーカー復帰の順番

1)主幹OFFのまま各分岐をOFF
2)主幹ON重要回路(照明・冷蔵庫)から順1回路ずつON
3)異音・臭い・遮断の有無を1分観察

3-2.家電単体テストの流れ

1)直差し(単独口)
2)電源OFFのままプラグ挿入→スイッチ入り切り瞬時反応を確認。
3)弱運転/低出力1〜3分
4)停止→手・鼻・耳の三感で再点検(温度・臭い・音)。
5)問題なしなら通常運転5〜15分へ。

3-3.異常徴候と即時中止の基準

  • 焦げ臭/金属臭/白煙
  • 触れないほどの熱局所だけ熱い
  • ブレーカー再遮断警告表示。→即停止・プラグ抜き・離れる

3-4.温度・時間の目安(家庭向け)

機器弱運転の例初回時間通常運転延長触れたときの目安
冷蔵庫省エネ運転5分+10〜15分背面「じんわり」程度
洗濯機槽洗浄・空回し3分+5分異音・水漏れゼロ
電子レンジ水入りコップ短時間30秒+30〜60秒匂い正常
エアコン送風10分+10分(冷/暖)室外機の音安定

4.種類別:主要家電の通電テスト要点

4-1.冷蔵庫・冷凍庫

  • 設置:背面放熱スペース5cm以上、水平。
  • 流れ:電源投入→コンプレッサー音確認→庫内灯・表示確認→15分後背面がじんわり温かいか。
  • 注意:倒れていた場合は直立6〜12時間待機後に通電。

4-2.洗濯機(全自動・ドラム)

  • 排水・給水:ホースの割れ・詰まり。
  • 流れ:電源ON→空回しで回転音と水漏れ→給水→排水各3分。
  • 注意防振ゴムずれ排水口逆流

4-3.電子レンジ・電気ケトル・トースター

  • 清掃:庫内の水分・油を除去。
  • 流れ:レンジは水の入ったコップを短時間→湯気と異音確認。ケトルは半分の水で1サイクル。
  • 注意延長コード不可、焦げ臭で即停止。

4-4.エアコン(室内機・室外機)

  • 前準備:フィルター清掃・水抜き、室外機の落下物除去。
  • 流れ送風10分→冷房/暖房に切替→ドレン排水の確認。
  • 注意結露水の逆流室外機の異音

4-5.パソコン・ルーター・テレビ

  • 前準備:電源ユニット周辺のほこり除去。
  • 流れ:PCは起動→ファン音・異臭確認、ルーターは風通し確保、TVは映像・音・リモコンの反応を確認。
  • 注意バックアップは起動直後に。

4-6.IH調理器・電子ポット・炊飯器

  • 前準備:鍋底の水分拭き、底面センサーの汚れ除去。
  • 流れ低出力で1分→鍋底の温度上がりを確認→停止→通常運転へ。
  • 注意:底面の焦げ付き・樹脂の変形は使用中止

4-7.換気扇・空気清浄機・除湿機

  • 前準備:フィルター清掃、ほこり吸い。
  • 流れ弱運転で1〜3分→回転音がスムーズか確認→通常運転。
  • 注意水受けトレーのカビ・水漏れ。

4-8.掃除機・ドライヤー・電動工具

  • 前準備:吸気口・フィルターのごみ除去。
  • 流れ弱運転で1分→焦げ臭・火花**(大きいスパーク)**の有無を確認。
  • 注意:カーボンブラシすり減りは専門点検へ。

4-9.照明・充電器・電池機器

  • 前準備:口金・差込口の乾拭き。
  • 流れ短時間点灯→熱や匂い→通常点灯。
  • 注意粗悪な充電器は発熱・異臭の恐れ、使用中止も選択肢。

5.記録・周知・再点検:家族で守る運用

5-1.通電記録シート(最低限の項目)

日時機種名場所乾燥時間清掃済初回弱運転異常有無対処担当
10/7 14:00冷蔵庫キッチン48h15分A

5-2.家族への掲示テンプレ

  • 「通電前に声かけ」ルールを紙にして冷蔵庫に貼る
  • 危険サイン表(焦げ臭・白煙・異音・高温)を見える場所へ。
  • 子ども・高齢者勝手に電源を入れない工夫(プラグ抜き・ブレーカーOFF)。

5-3.再点検のタイミング

  • 初回テストの24時間後再触診・再嗅覚・再聴覚
  • 1週間後ねじの緩み・異音の再発を確認。
  • 季節家電使用前の年1回、このシートで予備点検。

5-4.修理・廃棄の判断ライン

  • 水が入った痕跡(錆・白い結晶・水跡)が基板周辺に見える→通電せず修理・廃棄
  • 電源コードの芯見えプラグの変形即交換
  • 塩分水に浸かった可能性が高い→清水で拭き洗い→十分乾燥でも不安なら専門へ

6.トラブルの兆候と初動(早見表)

兆候あり得る原因初動次の一手
焦げ臭・白煙配線ショート・油汚れ発火即停止・抜く・離れる自然鎮火後に外装確認、専門へ
金属臭・うなり音モーター・コンデンサ異常停止・冷却通電再開せず修理相談
局所高温ほこり詰まり・接触不良停止→吸い取り・清掃改善しなければ専門へ
ブレーカー落ち漏電・過電流分岐を切り分け漏電遮断器の試験→業者手配
点滅・ちらつき接触不良・安定器劣化電源OFF→口金清掃改善なければ交換
通信機器が不安定サージ・過熱再起動・冷却電源装置交換・配線見直し

チェックリスト(印刷用)

  • 乾燥は48〜72時間を満たした
  • プラグ・差込口綿棒+冷風で仕上げた
  • 吸気口・放熱口のほこりを除去した
  • 直差し/短尺延長で試験した(タコ足×)
  • 弱運転→停止→通常運転の順を守った
  • 三感チェック(温度・におい・音)を実施した
  • 記録表に日時・時間・異常を記入した

Q&A(よくある疑問)

Q1.乾いたように見えるが、すぐ使って良い?
A. 目視だけでは不十分。48〜72時間の乾燥を待ち、プラグと差込口綿棒+冷風で仕上げます。

Q2.延長コードで試して良い?
A. スイッチ付・短尺・太線の延長で単独口なら可。タコ足・細線・巻き取りのまま厳禁です。

Q3.ブレーカーが何度も落ちる。
A. 分岐ごとに切り分けて原因を特定。漏電の可能性があるため再試験禁止のうえ専門へ。

Q4.PCや冷蔵庫の中身が心配。
A. PCは起動直後にバックアップ。冷蔵庫は庫内温度の回復を待ち、生鮮の安全性を確認して判断。

Q5.見た目が無事でも不安。
A. 音・におい・温度三感チェックを短時間で。違和感が一つでもあれば停止→相談

Q6.サージ保護タップは再使用できる?
A. 焼け跡・変形・作動表示がある場合は交換。無傷でも落雷後は交換推奨です。

Q7.洗濯機に泥水が入った。
A. 通電せず排水口周りの泥を取り除き→乾燥。不安なら専門点検へ。

Q8.エアコンから水が垂れる。
A. ドレン詰まりの可能性。停止→排水口清掃。改善しなければ業者へ。


用語辞典(やさしい言い換え)

漏電遮断器:漏電を感じると自動で電気を切る装置。
弱運転:機器の最小出力で動かすモード。
直差し延長やタコ足を使わず壁のコンセントに差すこと。
触診・嗅覚・聴覚チェック手の温度感・におい・音で異常を探る基本点検。
サージ:落雷などで起こる一時的に高い電圧。機器を傷める。
ドレン:エアコンなどの排水管


まとめ:通電は“短く・弱く・一つずつ”

通電テストは短時間・低出力・単独運転が鉄則です。乾燥→清掃→目視→段階通電→再点検の順を守れば、火災・感電・再故障の危険は大きく下げられます。家族で声かけルール記録シートを共有し、今日の復旧を安全第一で進めましょう。

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