情報疲れを防ぐ“情報係”の作り方|家庭内役割分担ガイド

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防災

非常時ほど“情報の洪水”は判断を鈍らせます。 家族のだれかが情報係となり、集める→選ぶ→整える→伝える→記録する→見直す一定の型で回せば、むだな心配や重複行動が消え、行動が揃います。本稿は家庭内の役割分担としての情報係を、手順・道具・台本・表・訓練まで落とし込み、今日から実装できる形に整えました。


  1. 要点先取り(まずここだけ)
  2. 1.情報係の役割を決める:範囲と線引き
    1. 1-1.情報係の基本任務(6つ)
    2. 1-2.“やらないこと”を先に決める(疲れの芽を摘む)
    3. 1-3.平常時と非常時の切替え(運用表)
  3. 2.情報源の設計:一次情報を最短で取る
    1. 2-1.優先順位の原則(一次→二次)
    2. 2-2.情報の棚(フォーマット)を用意(実例)
    3. 2-3.“裏取り”の簡易ルール(3条件)
    4. 2-4.弱い通信の時の取り方(電気がない時)
  4. 3.伝え方の設計:短く、揃えて、届かせる
    1. 3-1.30秒で伝える台本(テンプレ)
    2. 3-2.掲示・配布の型(家の中と家の外)
    3. 3-3.音声と視覚の二重化
    4. 3-4.うっかりミスを減らす「三つの確認」
  5. 4.役割分担の作り方:情報係だけに負荷を寄せない
    1. 4-1.家庭内の役割マップ(標準)
    2. 4-2.通知の頻度と“静寂タイム”(時刻めやす)
    3. 4-3.合言葉で確認ミスを減らす
    4. 4-4.高齢者・幼児・ペットへの配慮
  6. 5.道具・台帳・訓練:情報が回る家にする
    1. 5-1.情報係の道具箱(最低限+あると安心)
    2. 5-2.家族用“状況ボード”の作り方(版下)
    3. 5-3.週10分の訓練台本(家庭版)
    4. 5-4.月次の見直し(5分)
  7. 6.情報の“重さ”を見分ける:暮らしに効く優先順位
    1. 6-1.三段ふるい(命→生活→予定)
    2. 6-2.言い換え辞典(むずかしい言葉→やさしい言葉)
    3. 6-3.不安を広げない書き方(三つの型)
    4. 6-4.情報の重み付け(家の事情に合わせる)
  8. 7.実行テンプレート:朝・昼・夜の運用
    1. 7-1.朝(登校・出勤前)
    2. 7-2.昼(状況変化のチェック)
    3. 7-3.夜(静寂タイム前)
    4. 7-4.非常時(避難が視野)
  9. 8.よくある失敗と対処
  10. 9.チェックリスト(印刷して使える)
  11. Q&A(よくある疑問)
  12. 用語辞典(やさしい言い換え)
  13. まとめ:情報は“減らして・揃えて・回す”

要点先取り(まずここだけ)

  • 一次情報を最優先(自治体・インフラ・学校・職場)。うわさは採用しない。
  • 30秒台本で「結論→家の行動→次回確認」をそろえて伝える。
  • 紙の“状況ボード”を原本に。全員がそこを見る→同じ文を転送。
  • 通知は時間枠で(通常は朝・昼・夕)。非常時のみ間隔を短縮。
  • 静寂タイム(就寝前1時間)は更新停止。心身を守る。

1.情報係の役割を決める:範囲と線引き

1-1.情報係の基本任務(6つ)

1)収集:公的機関・学校・職場・インフラの発表を拾う
2)選別:家に関係するものだけ残す(地名・時刻・影響)
3)要約一文で結論一行で行動一時刻で次回
4)掲示:冷蔵庫・玄関・家族グループに同じ文を掲示・送信
5)記録時刻/出所/要点/行動/次回で残す
6)見直し:古い紙をはがし、最新版だけを残す

1-2.“やらないこと”を先に決める(疲れの芽を摘む)

  • うわさの追跡をしない感想の転送をしない出所不明は保留
  • 速報の連投をしない。**まとまった枠(例:30分ごと)**で通知。
  • 意見の討論は別枠。情報係は事実と行動だけに集中。

1-3.平常時と非常時の切替え(運用表)

状態収集間隔通知回数重点
平常1日1回朝のみ連絡網更新・機器点検
注意1〜2時間朝・昼・夕断水・停電の見込み、通行情報
警報10〜30分その都度避難・安全行動、集合方針
復旧1〜3時間昼・夕復旧めど、節水・節電の運用

2.情報源の設計:一次情報を最短で取る

2-1.優先順位の原則(一次→二次)

優先度情報源使いどころ
1公的機関自治体、防災、気象、警察、消防、電力・水道・ガス避難・断水・停電・通行止め
2学校・職場学校メール、連絡網、社内掲示登校・勤務判断
3現場観察家の周り、近所の状況足元の危険
4報道テレビ、ラジオ広域の状況
5個人発信SNS、掲示板参考。裏取りできたら採用

2-2.情報の棚(フォーマット)を用意(実例)

時刻|出所|要点(結論)|家の行動|次回確認
10:00|区役所|本日18時まで断水|風呂水保管・飲水3L/人確保|17:30
  • 色分け:赤=命に関わる/青=生活/緑=復旧。古い紙は即廃棄

2-3.“裏取り”の簡易ルール(3条件)

  • 出所が2つ以上一致時刻が新しい地名が具体で採用。
  • 写真・地図・番号付き発表は優先、再掲は1回まで

2-4.弱い通信の時の取り方(電気がない時)

  • 電池ラジオ近所の掲示人づての順。
  • 人づては地名・施設名・時刻まで聞けた内容のみ採用。

3.伝え方の設計:短く、揃えて、届かせる

3-1.30秒で伝える台本(テンプレ)

結論:○○区で断水18時までの見込み。
家の行動風呂残り湯を保管、飲み水3L/人を確保。
次の確認17:30に更新。担当:

ポイント数字・地名・時刻を入れる/1家族1文に集約/復唱して誤解防止。

3-2.掲示・配布の型(家の中と家の外)

  • 冷蔵庫前のA4掲示:時刻・出所・要点・次の行動を1枚に。
  • 玄関の一枚:避難方針・集合場所・持出袋の確認事項。
  • 家族グループ:同じ文章を一度に送る。追記は編集で一本化
  • 近所向け:集合場所の掲示は住所・時刻・代表者名を明記。

3-3.音声と視覚の二重化

  • 停電時ラジオ+手書き
  • 夜間小声読み上げ懐中電灯で掲示を指し示す。
  • 耳の不自由な家族には筆談カードを常備。

3-4.うっかりミスを減らす「三つの確認」

1):誰に伝えたか(名前)
2):どの紙・どの文を使ったか(原本)
3):次回いつ確認するか(時刻)


4.役割分担の作り方:情報係だけに負荷を寄せない

4-1.家庭内の役割マップ(標準)

役割主担当代行主な仕事
情報係大人A大人B集める・要約・掲示・更新
現場係大人B高校生家の外の確認、写真、危険の見張り
物資係大人C中学生水・食材・電池の残量、配分、補充案
連絡係高校生大人A親族・近所・PTA連絡、要支援者の確認
記録係中学生大人C時刻・出所・行動記録、後日の振り返り

4-2.通知の頻度と“静寂タイム”(時刻めやす)

  • 通常朝7:30/昼12:00/夕19:00
  • 注意報相当1〜2時間ごと
  • 警報・避難10〜30分ごと
  • 静寂タイム就寝前1時間は更新を止める(命に関わる情報は除く)。

4-3.合言葉で確認ミスを減らす

  • 合言葉:「要点三つ」。伝える側は結論・家の行動・次回時刻の三つだけ必ず言う。受ける側は復唱

4-4.高齢者・幼児・ペットへの配慮

  • 文字を大きく(18pt以上)色分けでわかりやすく。
  • 薬・アレルギー物資係が台帳化。
  • ペットの避難同行・水量・フード量も数で管理

5.道具・台帳・訓練:情報が回る家にする

5-1.情報係の道具箱(最低限+あると安心)

区分具体例ねらい
受信ラジオ、携帯、モバイル電源停電時も受信を切らさない
記録A4バインダー、太ペン、ふせん立っても書ける、見やすい
掲示画びょう・マグネット・テープ冷蔵庫・玄関に一括掲示
明かり懐中電灯、頭につける灯り手を空けて作業できる
予備乾電池、紙の地図、呼び笛迷子・停電時の備え

5-2.家族用“状況ボード”の作り方(版下)

きょうの方針:__________________
時刻|出所|要点(結論)|家の行動|次回確認
__|__|______|____|__
__|__|______|____|__
完了印:□水 □食材 □充電 □ごみ □連絡
担当:__ 次の更新:__:__
  • 終わった行動に**✔印**、古い紙は破棄一枚だけ掲示。

5-3.週10分の訓練台本(家庭版)

  • 土曜の朝:前週の連絡網を見直し
  • 避難所まで徒歩一度だけ歩く(要支援者の速度で)。
  • ラジオ受信→30秒要約→家族へ伝達の練習。
  • 紙の地図で“集合地点”を指差し確認。

5-4.月次の見直し(5分)

  • 連絡先変更役割交代道具の場所を更新。
  • 掲示位置(冷蔵庫・玄関)の視認性を再点検。

6.情報の“重さ”を見分ける:暮らしに効く優先順位

6-1.三段ふるい(命→生活→予定)

内容判断
1命にかかわる避難指示、河川氾濫、火災即伝達・即行動
2生活に直結断水、停電、通行止め30分単位で更新
3予定学校や行事の中止・延期朝夕で十分

6-2.言い換え辞典(むずかしい言葉→やさしい言葉)

  • 氾濫危険情報川があふれそう
  • 計画停電この時間は電気が止まる
  • 給水車運用水を配る車が来る
  • ライフライン電気・水道・ガス
  • 物流の乱れ荷物が予定どおり届かない

6-3.不安を広げない書き方(三つの型)

  • 数字と時間:「18時まで断水の見込み」。
  • 行動を一つ:「風呂の水を残す」。
  • 次の確認:「17:30に更新」。

6-4.情報の重み付け(家の事情に合わせる)

  • 乳児・高齢者がいる家は水・医療を重く。
  • 通勤が必須の家は交通を重く。
  • 在宅勤務中心なら停電・通信を重く。

7.実行テンプレート:朝・昼・夜の運用

7-1.朝(登校・出勤前)

1)夜間の公式発表を確認。
2)きょうの方針をA4に書く。
3)登校・勤務の可否を決め、連絡係が送信
4)持ち物・充電残量を点検。

7-2.昼(状況変化のチェック)

1)断水・停電の復旧見込みを確認。
2)買い物や外出の可否を判断。
3)夕方の準備(水・食材・充電)を指示。
4)要支援者の安否を近所と共有。

7-3.夜(静寂タイム前)

1)翌日の予定を再確認。
2)充電・持ち物の点検。
3)静寂タイムに入ることを宣言。
4)紙を一枚だけ残し、他は廃棄。

7-4.非常時(避難が視野)

  • 結論→行動→次回のみを10分ごとに更新。
  • 集合場所連絡が途絶えたときの合図(家の前・張り紙)を徹底。

8.よくある失敗と対処

失敗原因対処
通知が多すぎて読まれない速報の連投朝昼夕+非常時のみ高頻度に制限
家族内で情報が食い違う複数チャンネルで別文同じ文を掲示→それを転送
デマに振り回される出所不明を採用一次情報2本の一致で採用
記録が散らばる紙・端末が混在A4ボードを“原本”に固定
古い紙が残る差し替え忘れ掲示は常に一枚だけの運用
子どもが理解できない難語・長文短文・大きな字・色分けに変更

9.チェックリスト(印刷して使える)

  • 情報係・現場係・物資係・連絡係・記録係を割り当てた
  • A4状況ボードを冷蔵庫と玄関に掲示
  • 家族グループにテンプレ文章を保存
  • ラジオ・懐中電灯・太ペンを定位置に
  • 週10分の訓練をカレンダーに登録
  • 合言葉「要点三つ」を全員が復唱できる
  • 集合場所と“連絡断絶時の合図”を決めた

Q&A(よくある疑問)

Q1.情報係は一人でいい?
A. 主担当1人+代行1人が安心。体調不良や外出時に代行が回せます。

Q2.子どもにも役割を持たせてよい?
A. 記録係や近所見回りの補助など、年齢に応じて安全な範囲で。

Q3.端末が使えないときは?
A. ラジオ+手書きに切替。掲示を読んで声で伝える体制へ。

Q4.SNSは見ないほうがいい?
A. 見てもよいが“参考”扱い公的発表で裏取りできたものだけ採用。

Q5.仕事と家庭の情報が混ざる…
A. 家の原本はA4ボードに統一。仕事は別端末・別帳で分ける。

Q6.親族が多くて連絡が大変。
A. 連絡係代表1人へまとめて送信代表から親族へ展開してもらう。

Q7.高齢の親が難しい言葉を理解しづらい。
A. 言い換え辞典の表現に差し替え、大きな字・短文で掲示する。


用語辞典(やさしい言い換え)

一次情報発信元そのものの情報(自治体や会社から直接)。
裏取り別の信頼できる所同じ内容を確かめること。
静寂タイム更新を止めて休む時間。心身の疲れを防ぐ。
原本家の中の正式な紙。ここに書かれた内容が正しいとする。
集合場所はぐれた時に集まる地点。地図に丸印で示す。


まとめ:情報は“減らして・揃えて・回す”

家族に必要なのは大量の情報ではなく、行動に結び付く少数の要点です。情報係一次情報→要点→掲示→行動→記録の流れを保ち、静寂タイムで心身を守る。これで情報疲れは大きく減り、いざという時も家族の足並みがそろう。今夜、A4一枚から始めましょう。

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