換気扇・給気口の災害時運用術|粉じん・煙・臭気ガイド

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防災

「回すのか、止めるのか。閉じるのか、開けるのか。」 災害時にもっとも迷いやすいのが換気扇と給気口の運用です。地震後の粉じん近隣火災の煙下水や工場由来の臭気黄砂・火山灰・PMなど、状況により最適解は真逆になります。

本ガイドは**“入れず・出して・守る”を合言葉に、状況別の切り替え手順・フィルターの使い分け・停電時の代替通風までを、家庭で今日から実行できる順序でまとめました。

賃貸・持ち家の両方に対応し、部屋別テンプレ、チェック表、Q&A/用語辞典、さらに住まいの方式(戸建て/集合住宅・24時間換気の種別)別の注意点子ども/高齢/ペットへの配慮**まで拡張しています。


  1. 1.原則と判断フロー:入気・排気・密閉の三択
    1. 1-1.災害時の“3モード”を覚える
    2. 1-2.“におい・色・感覚”で判断する三信号
    3. 1-3.装置別の役割と相性(家にある装置を理解)
      1. 1-4.24時間換気の“種別”をざっくり把握
      2. 1-5.戸建てと集合住宅の違い
  2. 2.シナリオ別:最初の3手+失敗例
    1. 2-1.近隣火災・煙の流入
    2. 2-2.地震後の粉じん・破片・異臭
    3. 2-3.黄砂・火山灰・PMが濃い日
    4. 2-4.下水臭・工場臭・可燃性ガスが疑われる
    5. 2-5.停電時(夏・冬)
      1. 2-6.風向きの読み方(簡易)
  3. 3.フィルタと養生:家にあるもので“入れずに濾す”
    1. 3-1.常設できるフィルタの選び方
    2. 3-2.即席で作る“簡易フィルタ”
    3. 3-3.養生の基本:塞ぐ順番と剝がしやすさ
      1. 3-4.“紙テスト”で逆流チェック
      2. 3-5.家に置く“最小セット”
  4. 4.部屋別テンプレ:台所・浴室・寝室・玄関+居間
    1. 4-1.台所(最強の排気を“安全装置”に)
    2. 4-2.浴室/脱衣(静かに長く排気)
    3. 4-3.寝室(静けさ優先・微量換気)
    4. 4-4.玄関(においの“入口管理”)
    5. 4-5.居間(長時間滞在の空気を整える)
      1. 4-6.部屋別・運用早見表(拡張)
  5. 5.運用・点検・Q&A・用語辞典(続ける仕組み)
    1. 5-1.週間・月間・季節の点検表
    2. 5-2.非常時カード(家族と共有する台詞)
    3. 5-3.“30分で整える”初日メニュー
    4. 5-4.Q&A(よくある疑問)
    5. 5-5.用語辞典(やさしい説明)

1.原則と判断フロー:入気・排気・密閉の三択

1-1.災害時の“3モード”を覚える

  • 遮断(密閉)モード:外気が有害/高濃度(煙・粉じん・異臭・花粉/灰)。給気口を閉じ排気も停止室内の隙間養生テープや濡れタオルで塞ぐ。短時間の在宅待機に向く。
  • 排気優先モード:室内で調理煙・異臭が発生、または室内汚染が主因排気のみ運転給気は最小(必要なら微開)。負圧で屋内汚染を外へ出す。
  • 浄化換気モード:外気は相対的に安全だがこもり二酸化炭素が高い。給気口を開けフィルタ越しに入れて排気対角線上に流す。

1-2.“におい・色・感覚”で判断する三信号

信号兆候取るべきモード最初の一手
赤(遮断)外が煙い/視界が白い/灰が舞う遮断給気口を閉、扉・窓の隙間を塞ぐ
黄(排気)室内発生(焦げ臭/ガス臭/下水臭)排気優先台所・浴室の排気を回す
青(浄化換気)むっとする/息苦しい/頭痛感浄化換気フィルタ越しで対角換気

ポイント:災害時は**“給気”をいじる勇気が必要。入れない判断が最大の防御**になる場面が多い。

1-3.装置別の役割と相性(家にある装置を理解)

装置役割遮断排気優先浄化換気備考
台所の排気扇(レンジ)強力排気逆流防止板の動作点検必須
浴室/トイレ換気扇常時排気音が静か、持続に向く
給気口(壁・サッシ)外気導入◎(閉)△(最小)◎(開)フィルタ装着可
24時間換気(第1/2/3種)全体換気内容次第運転方式を把握

1-4.24時間換気の“種別”をざっくり把握

種別仕組み住まいで多い例災害時の基本
第1種給気・排気とも機械(熱交換あり)高断熱住宅赤は一時停止も選択肢。黄/青は弱運転+給気側調整
第2種給気は機械・排気は自然特殊用途赤は給気停止を最優先
第3種給気は自然・排気は機械多くの一般住宅赤は給気口閉、黄/青は排気弱+給気微開

1-5.戸建てと集合住宅の違い

  • 戸建て風向きの影響が大。風上側は給気、風下側は排気に見立てやすい。外壁フードの逆止弁を定期点検。
  • 集合住宅共用ダクトの影響がある。近隣火災時管理会社の指示に従い、遮断優先を基本に。共用廊下の煙が流入しやすいため、玄関足元の隙間を塞ぐ。

2.シナリオ別:最初の3手+失敗例

2-1.近隣火災・煙の流入

1)遮断モードへ:給気口・換気下部スリット即閉
2)扉・窓の隙間濡れタオル/養生テープ仮封
3)室内に煙がある場合のみ台所or浴室の排気弱〜中で回し室内の煙を外へ強風下では逆流に注意。

よくある失敗:窓を大きく開けてしまい煙を大量に入れるレンジを強で回しつつ給気全開外の煙まで吸い込む。→ 最初は入れない、必要最小限の微開のみ。

2-2.地震後の粉じん・破片・異臭

1)遮断モード外気遮断
2)室内の浮遊粉じん濡れ雑巾床→低い棚の順に回収(舞い上げない)。
3)排気優先へ切替:浴室やトイレの換気扇で回し、窓はフィルタ越しに1〜2cm微開対角でゆっくり流す。

補足掃除機紙パックの目詰まり排気の舞い上げに注意。水拭き>掃き掃除の順が安全。

2-3.黄砂・火山灰・PMが濃い日

1)遮断モード給気口を閉
2)室内CO2が上がったら給気口に簡易フィルタ(不織布/キッチンペーパー)を内側から重ね浄化換気
3)帰宅後の衣類玄関で払い、袋へ浴室換気脱衣室→浴室→排気一方通行を作る。

コツ網戸の内側不織布を一枚重ねるだけでも粒子の侵入が減る。洗濯物は室内干しに切替。

2-4.下水臭・工場臭・可燃性ガスが疑われる

1)火気厳禁、電気のスイッチ操作も避ける(火花防止)。
2)排気優先モードへ:台所の排気から開始、給気は上流側の最小開口から。
3)鼻・喉の刺激が強い場合は遮断モードに戻り待機管理者/自治体の指示を確認。

豆知識:においの原因が排水トラップの封水切れの場合、コップ1〜2杯の水を流して回復。

2-5.停電時(夏・冬)

1)電動換気が止まる手動で開く上げ下げ窓玄関ドアのチェーン幅対角通風
2)暑さ日陰側を給気、日向側を排気に見立て、温度差換気を利用。
3)寒さ隙間最小短時間の入替換気に切替。加湿器・室内干しこもりの元なので控えめに。

2-6.風向きの読み方(簡易)

  • 旗・木の葉の流れで風上/風下を把握。風上側=給気風下側=排気のイメージ。
  • 共用廊下が煙い場合、廊下側は遮断し、バルコニー側のみで操作。

3.フィルタと養生:家にあるもので“入れずに濾す”

3-1.常設できるフィルタの選び方

目的推奨フィルタ交換目安注意
粉じん・灰不織布/高捕集フィルタ汚れ具合で目詰まりで風量低下
におい活性炭系匂い戻りで湿気を避ける
総合不織布+活性炭の二層両方点検給気口で分離装着

設置のコツ外側=粗く、内側=細かくの順。枠に遊びがある場合はマスキングテープ四辺を固定

3-2.即席で作る“簡易フィルタ”

  • キッチンペーパー+不織布マスク二層にして給気口の内側マスキングテープで貼る。
  • 窓の微開換気では、網戸の内側ストッキングや不織布一枚重ね粒子を減らす
  • 濡れタオル臭気・煙に対する一時的な遮断に有効。1〜2時間で交換

3-3.養生の基本:塞ぐ順番と剝がしやすさ

1)下から上へ(床の隙間→巾木→窓枠→ドア隙間)。
2)養生テープ→マスキング→紙の順で重ね剝がし跡を防ぐ。
3)復旧上から外す一気に全開ではなく段階的に戻す。

3-4.“紙テスト”で逆流チェック

  • 排気口の前に薄紙を近づけ、吸いつけば排気はらわれれば逆流強風・気圧差で結果が変わるため複数回測る。

3-5.家に置く“最小セット”

品目最低数使い道
養生テープ2巻隙間封止、フィルタ固定
不織布(シート/マスク)1袋簡易フィルタ
活性炭パック数個臭気源の局所対策
濡らせるタオル数枚一時遮断、拭き取り

4.部屋別テンプレ:台所・浴室・寝室・玄関+居間

4-1.台所(最強の排気を“安全装置”に)

  • 通常時常時弱運転給気口半開臭気滞留を予防。
  • 煙・油ミストが出たら強運転窓は上流側を最小ドア下のアンダーカットから空気を取り入れる。
  • 災害時逆止弁動作外壁フード開閉を点検。油受け月次で清掃。

4-2.浴室/脱衣(静かに長く排気)

  • 粉じん/灰が多い日は給気口を閉浴室換気扇だけ弱運転し、脱衣側の微開から短距離で排気
  • 梅雨・停電復旧直後湿気・カビ対策で連続排気
  • 風呂フタ密閉して蒸気発生源を減らす。排水トラップ水を足して封水維持

4-3.寝室(静けさ優先・微量換気)

  • 遮断モードでは給気口閉隙間塞ぎCO2感覚が出たら枕元から遠い側1cmだけフィルタ越し微開
  • 冬場の冷気窓下の隙間ドラフトストッパーで封止。
  • 低騒音の浴室排気遠くで回す眠りやすい

4-4.玄関(においの“入口管理”)

  • 靴・衣類の粉じん玄関で払い袋密閉
  • におい源(ゴミ・外置きストッカー)は活性炭を併用。
  • ドア足元隙間が大きい家はドラフトストッパー遮断

4-5.居間(長時間滞在の空気を整える)

  • 青(浄化)時は対角の窓/給気口を使いゆっくり換気扇風機の弱入口向きにすると流れが安定。
  • 黄(排気)時は居間の給気を最小にし、台所/浴室の排気を中心に。
  • 赤(遮断)時は窓・給気を閉隙間封止を優先。

4-6.部屋別・運用早見表(拡張)

部屋平時赤(遮断)黄(排気)青(浄化)
台所弱+半開停止・閉強/中+最小給気弱+対角微開
浴室弱連続弱(給気閉)弱/中弱+脱衣側微開
寝室停止閉+隙間封遠方の弱排気フィルタ微開+遠方排気
玄関閉+封玄関扉短時間開閉短時間入替
居間台所/浴室主体対角でゆっくり

5.運用・点検・Q&A・用語辞典(続ける仕組み)

5-1.週間・月間・季節の点検表

項目週次月次季節
逆止弁・外フードの動作
給気口フィルタの清掃
浴室/トイレ換気の吸い込み
レンジフードの油受け
養生テープ・不織布の在庫
黄砂・花粉シーズン準備
ドア下隙間の遮断具点検
排水トラップの封水確認

5-2.非常時カード(家族と共有する台詞)

  • 煙が来た:「給気閉じて、隙間ふさぐ、排気は弱
  • においが室内発生:「排気強め、給気最小
  • 息苦しい:「フィルタ越しに対角微開
  • 下水臭:「封水足して、排気弱

5-3.“30分で整える”初日メニュー

1)給気口の開閉レバー位置を家族で確認し、赤/黄/青の貼り札を用意。
2)不織布+活性炭簡易フィルタ1セット作って貼る
3)逆止弁の紙テストをキッチンで実施。
4)非常時カード冷蔵庫の扉に貼る。

5-4.Q&A(よくある疑問)

Q:遮断モードのとき、どれくらい密閉すべき?
A:短時間在宅が目的。ドア・窓の隙間給気口レンジフード逆止弁を中心に大穴から順に塞ぎ、体調に応じて段階的に緩める

Q:活性炭はどこに置く?
A:給気の入口近く(給気口や上流側の窓内側)。におい源(ゴミ箱・下水トラップ)に局所配置も有効。

Q:24時間換気は止めるべき?
A:赤(遮断)では一時停止が基本。黄/青では運転継続し、給気側を調整(フィルタ・開度)。

Q:窓の“微開”は何センチ?
A:1〜2cmが目安。隙間に不織布を挟み、虫侵入も抑える。

Q:ガスのにおいがしたら換気扇を回す?
A:回さない。スイッチ操作で火花の恐れ。窓やドアを手動で開放し、屋外から連絡する。

Q:小さな子どもや高齢者がいる場合の配慮は?
A:赤(遮断)時は玄関・寝室の隙間封止を先に。足元の冷えに弱い場合は浴室排気の弱を遠くで回す。

5-5.用語辞典(やさしい説明)

遮断モード:外が危険なときに入気・排気を止め隙間を塞いで待機する運用。
排気優先モード:室内の汚れを外へ出すために排気を主に回す運用。
浄化換気モードフィルタ越しの給気+排気室内空気を入れ替える運用。
逆止弁:外気や風の逆流を防ぐ弁。レンジフードや外フードに付く。
対角換気:部屋の対角線上入口と出口を作り、直線的に空気を流す方法。
ドラフトストッパードア下の隙間風を塞ぐ細長い部材。
封水:排水口の水の栓。においの逆流を防ぐ


まとめ
災害時の換気は、入れない勇気(遮断)/出す判断(排気)/濾して入れる工夫(浄化)の三択を状況で切り替えることが肝心です。

今日の五手は、①給気口の開閉位置と逆止弁を点検②不織布+活性炭の簡易フィルタを常備③非常時カードの台詞を家族で共有④封水の維持を習慣化⑤赤・黄・青の貼り札で誰でも即操作。**「回すのか、止めるのか」**で迷わない家にしておきましょう。

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