結論:火山灰は極小の鉱物片(ガラス質)で、吸い込めばのど・目・肺を刺激し、摩擦すれば塗装・ガラス・家電・可動部を傷めます。守り方の軸は**①密閉(入れない)②沈める(舞わせない)③流す(強くこすらない)④回す(道具と在庫の循環)⑤判断(出歩かない・動かさないを選べる)**の5点。
本稿は、家・からだ・車を同時に守る初動から、掃除の順番、装備の必要量、車種別の差分、やってはいけない行為、翌日以降のメンテまで、今日すぐ使える運用に落とし込みます。
まず守るのは「家・からだ・車」の3本柱(初動10分)
家:入れない・溜めないの二段構え
- 窓・戸・すき間を閉め、換気扇・給気口は一時停止。室内はエアコンを室内循環に。
- 空気清浄機は強→中で連続運転。加湿があれば弱〜中で粉を沈める。
- 玄関マットを濡れタオルに置換し、足裏の灰を絡め取る。靴底は玄関外で叩かない(舞う)。
からだ:吸い込まない・こすらない
- 防じんマスク(目安:DS2相当)または不織布二重、鼻の隙間を指で押さえて密着。
- 保護めがね・帽子・長袖で露出を減らす。コンタクトは眼鏡に切替。
- 目に入った灰は強くこすらず、清潔な水で流す。皮膚はぬるま湯でやさしく洗い流す。
車:視界と吸気を守り、動かさない選択を持つ
- 可能ならカーポートや覆いへ移動。車体カバーは裏面の灰をはたいてから掛ける。
- ワイパーは乾いたまま動かさない(ガラス傷の主因)。
- 走行は視程(見通し)100m以下は見合わせ。必要時は低速・ライト点灯・車間長め、内気循環に。
行動タイムライン(目安)
- 0〜10分:窓・換気の制御、玄関対策、車の保護。
- 10〜30分:屋外動線→排水→室内の順に清掃着手。
- 30分以降:必要な外出のみ。帰宅後の足裏・衣類・髪の灰を先に落とす。
家の中と外の清掃手順(粉を舞わせず、順番で時短)
玄関・ベランダ(屋外動線)
- 霧吹きやじょうろで軽く湿らせる(舞い上がり防止)。
- やわらかいほうきで一方向に集める→ちりとり→厚手袋で二重封。
- 格子・手すりは濡れ雑巾で押し拭き→最後に弱い水流で流す。
雨どい・排水・室外機(壊れると被害拡大)
- 雨どい受け口・集水桝の灰を先に手で取り除く(詰まり防止)。
- 排水口の目皿は外し、たらいで洗浄。固形は可燃ごみへ。
- 室外機は前面吸い込み網を刷毛で落とし→湿らせ拭き。直接の散水は故障原因。
室内(床・布・空気・家電)
- 乾いた床拭き(モップ)禁止。まず固く絞った雑巾で押し拭き→仕上げ乾拭き。
- カーペット:表面に霧吹き→粘着ローラー→最後に掃除機(紙パックは即交換)。
- 家電の吸気口(扇風機・PC・空清)は電源オフ→外装を押し拭き。空清の前面フィルタは水洗い→完全乾燥。
布団・洗濯物・衣類
- 屋外干しは避け、室内干し+弱加湿へ。
- 付着が多い衣類は軽く湿らせた布で表面を押し拭き→洗濯。
- 洗濯槽の糸くずフィルタは終了後に洗浄して目詰まりを防ぐ。
家まわり清掃の順番 早見表
区域 | 先にやる | 後でやる | NG行為 |
---|---|---|---|
玄関・ベランダ | 霧吹き→集める→二重封 | 最後に軽く流す | ブロワーで飛ばす |
雨どい・排水 | 固形を取り除く | 弱い水流で通水確認 | 高圧で一気に流す |
室外機 | 吸気網の灰落とし | 湿らせ拭き | 内部に直接散水 |
室内床 | 濡れ押し拭き→乾拭き | 目地の仕上げ | 乾いたモップで強擦 |
カーペット | 霧吹き→粘着→掃除機 | 紙パック交換 | 最初から強吸引 |
清掃の水量めやす(戸建て標準)
対象 | 使う水量 | コツ |
---|---|---|
ベランダ3㎡ | 6〜10L | 霧吹き→じょうろ弱流 |
玄関たたき1㎡ | 2〜3L | 雑巾で押し拭き→少量で流す |
車1台の予洗い | 30〜60L | バケツ連続注ぎでも可 |
車の保護と清掃(塗装・吸気・視界を守る)
止め方・掛け方(傷を作らない)
- 風下に鼻を向けて駐車(吸気口に灰を入れない配慮)。
- カバーは裏の灰をはたき、引きずらず持ち上げて掛ける。
- 停車中は内気循環・送風弱でガラス内側の曇りを対策。
洗い方の順番(強くこすらず、上から下へ)
- 大量の水で上→下へ流す。ホースがなければバケツ連続注ぎ。
- たっぷり泡立てたスポンジで直線に滑らせる。円を描かない。
- ガラスは流水→スポンジ→流水、ワイパーゴムは別布で拭く。
- 仕上げはやわらかい吸水クロスで押し拭き。ドア内側の水切りゴムも軽く拭う。
整備チェック(視界・吸気・下回り)
- エアフィルタ(エンジン/キャビン):灰が多い日は点検→早め交換。
- ワイパーゴム:ざらつきを感じたら交換。
- 下回り洗浄:水を当てて流すのみ。擦り洗いはブーツ類を傷める。
車内の灰対策(乗る前・乗った後)
- 乗る前に足元マットをパンッと叩かない。湿らせたクロスで押し拭き。
- 乗車後は送風弱・内気循環で灰の再侵入を抑える。
- 掃除機は細口ノズル+弱めで直線に。
EV/ハイブリッド・二輪の留意点
- EV/ハイブリッド:冷却用吸気口への付着を頻繁に点検。充電口まわりは押し拭き→乾拭き。
- 二輪・自転車:チェーンとスプロケットは乾拭き→軽注油。ブレーキ面は水で流すのみ。
車種別・注意点 早見表
車種 | 要点 | NG |
---|---|---|
セダン/ミニバン | 天井が広く灰が溜まりやすい→上から大量の予洗い | 乾拭き・円運動洗車 |
SUV/オフロード | タイヤ・フェンダー内に堆積→下回り流水 | たわしで強擦 |
EV/ハイブリッド | 冷却吸気口・充電口を押し拭き | 吸気口へエアブロー |
二輪/自転車 | 駆動部は乾拭き→注油 | ブレーキ面への油付着 |
必要な装備・消耗品の備え(家族人数別の目安)
個人防護具(家族分を同じ箱に)
- 防じんマスク(DS2相当目安)×人数×3日分。
- 保護めがね・帽子・手袋×人数分。
- 洗顔用ボトル水と人工涙液(目洗い用)を玄関に常備。
清掃道具(舞わせないための道具)
- 霧吹き・じょうろ、やわらかいほうき・ちりとり、厚手ごみ袋(二重)。
- 雑巾・モップ(濡らして押し拭き用)、たらい、小さな刷毛。
- 空気清浄機の予備フィルタ、掃除機の紙パック予備。
車用の備え(視界・吸気・塗装)
- ウオッシャー液(多めに)、やわらかいスポンジ・吸水クロス。
- 簡易カバー、予備ワイパーゴム、エアフィルタ。
- 携帯用噴霧ボトル(走行前にガラスを湿らせる)。
保管場所と補充のリズム
- 玄関の背の低い棚に個人防護箱、外用道具はベランダ端の密閉ケースへ。
- 流行期や火山活動が活発な時期は月1回点検→不足だけ補充。
人数別・初期備え 早見表(目安)
人数 | 防じんマスク | 保護めがね | 厚手ごみ袋 | 霧吹き/じょうろ | 雑巾 | 車用クロス | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1人 | 6枚 | 1 | 20枚 | 各1 | 5 | 2 | 3日分想定 |
2人 | 12枚 | 2 | 40枚 | 各1 | 10 | 4 | 玄関と車に分散 |
4人 | 24枚 | 4 | 80枚 | 霧2/じょ1 | 20 | 6 | 子どもは小さめサイズ |
消耗・交換の目安
品目 | 交換タイミング | メモ |
---|---|---|
マスク | 湿ってきたら/半日〜1日 | 顔に密着、鼻の隙間を抑える |
空清フィルタ | 表面が灰色に見えたら | 水洗い→完全乾燥 |
掃除機パック | 吸いが落ちたら | 降灰日は交換頻度UP |
ワイパーゴム | ざらつき・ビビり | 早め交換でガラス保護 |
やってはいけないこと・判断基準・近隣配慮
禁止事項(家)
- 乾いたモップ・雑巾で強くこする(舞い上がり→吸入)。
- 高圧洗浄で一気に流す(排水詰まり・飛散)。
- 室外機へ直接散水(故障)。
禁止事項(車)
- 乾いたワイパーを動かす、から拭き、円を描く洗車。
- エアブローで吸気側へ吹き込み(内部へ灰侵入)。
外出と運転の判断
- 視程100m以下、強い降灰、風が強いときは見合わせ。
- 必要時は低速・ライト点灯・車間長め、停車中は内気循環で。
近隣への配慮と共同清掃
- 掃き出し時間は朝夕の風が弱い時に。
- 路上へ流さない。袋で固めて可燃ごみへ。
- 共有部(通路・雨どい)は声かけ→役割分担で短時間に終える。
やる/やらない 早見表
場面 | やる | やらない |
---|---|---|
床清掃 | 濡れ押し拭き→乾拭き | 乾いた強こすり |
ベランダ | 霧吹き→一方向に集める | ブロワー・高圧直噴 |
車ガラス | 流水→スポンジ→流水→拭き上げ | 乾いたワイパー作動 |
翌日以降の点検・メンテ(家・車・体)
家
- 空気清浄機・換気口のフィルタを再点検。
- サッシ溝・網戸は湿らせ拭き→綿棒で目地を仕上げ。
- 目立つ傷は早めに補修(床・壁のこすれ跡)。
車
- **エアフィルタ(エンジン/キャビン)**の状態を再確認。
- 下回りの白っぽい堆積があれば流水で流す。
- ブレーキの鳴きやビビりが続くなら、整備工場で点検。
からだ
- 咳・目の痛み・肌荒れが続くときは屋外作業を控える。
- 水分補給とぬるま湯での鼻洗い・洗顔を意識。
Q&A:迷いどころを即解決(拡張)
Q1. 掃除は水拭きだけでいい?
A. 最初は水拭き一択。粉が減ったら軽い乾拭きで仕上げます。
Q2. マスクが無い時の代用は?
A. 不織布二重または厚手ガーゼ重ねで隙間を抑える。鼻の形に沿わせます。
Q3. 洗車機に入れても大丈夫?
A. 大量の予洗い後なら可。予洗い無しは擦傷の元です。
Q4. 玄関と室内、どちらを先に?
A. 先に屋外動線(玄関・ベランダ)。外からの再侵入を止めてから室内へ。
Q5. ペットがいる場合は?
A. 換気は最小限、床は濡れ押し拭きを回数多めに。散歩後は足洗い→乾拭き。
Q6. ロボット掃除機は使って良い?
A. 最初は不可。灰がブラシ・車輪に詰まり舞い上がる。押し拭き後に使用。
Q7. ベランダの植木は?
A. 葉の灰を霧吹き→やさしく流す。土の上は強い散水NG(跳ね返りで窓が汚れる)。
Q8. 自転車通勤は?
A. 可能なら見合わせ。必要時は低速・ゴーグル、帰宅後チェーン乾拭き→注油。
用語辞典(やさしい言い換え)
- 防じんマスク(DS2):細かい粉を吸い込みにくくする規格の作業マスクの目安。
- 視程:どれくらい先まで見えるかの距離。運転可否の判断に使う。
- 押し拭き:こすらず、上から押して粉を布に移す拭き方。
- 先入れ先出し:先に入れた道具・在庫から使う回し方。
- 内気循環:車の空気を車内だけで回す設定。灰の侵入を減らす。
まとめ:入れない・舞わせない・強くこすらない
火山灰の日は、家・からだ・車を同時に守るには初動10分が勝負です。密閉→沈める→流すの順で、乾いた強こすり・乾拭きワイパーは避ける。装備は玄関と車に分散し、在庫は先入れ先出しで回す。翌日はフィルタ・溝・下回りをもう一度点検。これだけで健康被害・修理費・作業時間を大きく下げられます。今日のうちに、霧吹き・やわらかいほうき・厚手袋・吸水クロスを玄関にまとめ、月1点検の習慣をつけましょう。