車中泊マットの選び方|厚み・収納性・断熱性をプロが比較

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車・バイク

結論先取り:快眠の95%は厚み×断熱×フィットで決まります。体圧分散だけ良くても、床からの冷え(底冷え)と段差を抑えられなければ眠りは浅くなります。おすすめは、①最低でも厚み5cm以上、②季節を問うなら断熱等級(目安R値)3.0以上、③車種の荷室寸法に合わせたカット/ジョイント設計

この記事では素材別の長所短所、厚みと寝心地の関係、季節・車種別の最適解、失敗しない採寸と手入れまで、表・手順図解(文章)・チェックリストで立体的に解説します。


  1. 1.まず押さえる基準:厚み・断熱・フィットの三位一体
    1. 1-1.厚み:底付き感を消す“第一条件”
      1. 体重×寝姿勢の厚み目安(早見表)
    2. 1-2.断熱:床からの冷えを遮る“見えない性能”
      1. 断熱の実感ポイント
    3. 1-3.フィット:段差・傾斜・すき間を埋める設計力
      1. ブリッジ材の素材比較
    4. 1-4.湿気・匂い・騒音:見落としがちな3点
      1. 三大要素の相関(早見表)
  2. 2.素材と構造で選ぶ:5タイプ徹底比較
    1. 2-1.クローズドセル(発泡マット)
    2. 2-2.自動膨張(インフレータブル)
    3. 2-3.エアマット(空気式)
    4. 2-4.折りたたみウレタン(フォーム)
    5. 2-5.ハイブリッド(二層/三層構成)
      1. タイプ別・長所短所(比較表)
    6. 2-6.表面生地・バルブ・付属品の選び方
  3. 3.車種・人数・季節別ベストアンサー
    1. 3-1.軽バン/コンパクト(1〜2人)
    2. 3-2.ミニバン/ワゴン(2〜3人)
    3. 3-3.SUV/セダン(1人+荷物)
    4. 3-4.背の高い・腰痛持ち・ペット同伴の配慮
      1. 季節×標高での推奨構成(表)
      2. 人数×幅の目安(分割運用に便利)
  4. 4.失敗しない採寸・設置・手入れ:プロの実務手順
    1. 4-1.採寸:床“面”ではなく“寝る範囲”を測る
    2. 4-2.設置:段差ブリッジ→ベース→主マットの順
    3. 4-3.手入れ:湿気・直射・匂いをコントロール
    4. 4-4.安全・法規・視界確保の注意
      1. 設置・手入れチェックリスト
  5. 5.価格・重さ・収納の“現実解”:長く使うための目安
    1. 5-1.価格帯と費用対効果
    2. 5-2.重さと収納容積
    3. 5-3.耐久と修理難度
      1. 代表スペックの目安(比較表)
    4. 5-4.所要時間とメンテの現実感
  6. Q&A(よくある疑問)
  7. 用語辞典(なるべく日本語で)
    1. まとめ

1.まず押さえる基準:厚み・断熱・フィットの三位一体

1-1.厚み:底付き感を消す“第一条件”

体重×寝姿勢で必要厚みは変わります。仰向けより横向きは一点荷重になりやすく、同じ体重でも**+1〜2cm必要。一般に5cmで底付き感が大きく減少**、8〜10cmで自宅布団に近づく体感です。腰痛持ちや横向き派は**二層構成(ベース+主マット)**が安定します。

体重×寝姿勢の厚み目安(早見表)

体重/姿勢仰向け中心横向き多めうつ伏せ/硬め好き
〜60kg5–6cm7–8cm5–7cm(空気少なめ)
60–80kg6–8cm8–10cm6–8cm
80kg〜8–10cm10cm+二層8–10cm(フォーム併用)

1-2.断熱:床からの冷えを遮る“見えない性能”

車の床は金属やガラス面が多く熱を奪うため、夏も冬も極端になりがち。数値目安として**R値(熱抵抗)**が高いほど断熱が効きます。春秋はR2.0以上冬も使うならR3.0以上が快適ライン。アルミ蒸着面は上にすると肌触りが冷たくなるため、下向きにして輻射を遮るのがコツです。

断熱の実感ポイント

  • **背中側の“じわ冷え”**が消えると、入眠が速い。
  • 冬は床→マット→毛布→寝袋の順で温度の層を作る。
  • 結露は温度差が原因。床面の冷えを断てば水滴が減る

1-3.フィット:段差・傾斜・すき間を埋める設計力

2列目格納の段差ラゲッジの傾斜ホイールハウスの出っ張りなどをブリッジ材ジョイント式で均すと、振動と腰の負担が激減。市販マット+インナーパッドの二層構成が実用的です。面で受けることが最優先で、点や線で受けると違和感が残ります。

ブリッジ材の素材比較

素材硬さ/弾性加工備考
合板5–9mm高い/低い切断容易ややあり面で受けやすい、重い
EVAフォーム10–20mm中/中カッター可静か軽い、厚みで調整可
コルク板中/中切断容易静か吸湿、断熱も兼ねる
PPハニカム板中/低カット容易静か軽量、広面積向き

1-4.湿気・匂い・騒音:見落としがちな3点

  • 湿気:就寝中に出る水分で裏面がびしょ濡れになることも。陰干し除湿剤を習慣化。
  • 匂い:新素材のにおい移りタオルシーツで軽減。
  • 騒音:表面がカサカサしやすい生地は薄手シーツで静音化。

三大要素の相関(早見表)

要素役割目安失敗例
厚み底付き防止5cm以上、横向きは8cm3cm以下で段差を拾う
断熱(R値)底冷え防止春秋2.0/冬3.0以上夏でも床冷えで腰が冷える
フィット段差・傾斜補正ブリッジ材+面積合わせ車種に合わず端が浮く

2.素材と構造で選ぶ:5タイプ徹底比較

2-1.クローズドセル(発泡マット)

軽くて丈夫、濡れや汚れに強い定番。厚みは薄め(1〜2cm)が多く、そのままでは底付きや段差補正が弱い。下地(ベース)として敷き、上に別タイプを重ねると真価を発揮。夏の日帰りや非常用にも。

2-2.自動膨張(インフレータブル)

バルブを開くと中のウレタンが膨らむタイプ。5〜10cmの厚みにしやすく、体圧分散と断熱のバランスが良い。空気量の微調整で硬さ調整ができ、車中泊の主役になりやすい。表面の静音性バルブの位置も選定ポイント。

2-3.エアマット(空気式)

厚み10〜15cmも狙えるが、断熱は構造次第。内部に中空隔壁中綿が入ったモデルは底冷えしにくい。軽量・高圧縮だが、パンク対策気温変化での硬さ変動に注意。予備のパッチ保護シートは必携。

2-4.折りたたみウレタン(フォーム)

段差への追従性が高く、カット加工が容易。収納はかさばるが、静音・防振に優れる。常設派ミニバンの床全面敷きに向く。冬は熱の道を塞ぐベースとして強力。

2-5.ハイブリッド(二層/三層構成)

下にクローズドセル、上にインフレータブルの二層、または中央に段差ブリッジ板を挟む三層最も汎用性が高く、冬の底冷えにも強い。収納は一工夫必要だが、快眠率は最も高い構成です。

タイプ別・長所短所(比較表)

タイプ厚み目安断熱収納性耐久/メンテ向き
クローズドセル1–2cm低〜中低(かさばる)高/簡単下地/夏日帰り
自動膨張5–10cm中〜高中/定期乾燥オールラウンダー
エアマット8–15cm中(構造次第)中/パンク注意厚み重視・段差大
折りたたみフォーム3–8cm高/簡単常設・防音重視
ハイブリッド6–12cm中〜低高/手間あり通年・冷え対策

2-6.表面生地・バルブ・付属品の選び方

  • 生地起毛系は静音・防滑、ツルツル系は汚れ落ちが楽。
  • バルブ大径は吸気が速い。逆止弁付きは微調整が容易。
  • 付属品ポンプ袋は収納時の圧縮にも使える。

3.車種・人数・季節別ベストアンサー

3-1.軽バン/コンパクト(1〜2人)

荷室長1,300〜1,700mmが多い。幅を詰めた2枚ジョイントが扱いやすい。ベースに発泡+上に自動膨張5〜7cmで“底付きゼロ”。冬はインナー毛布を挟むと体感が変わる。背の高い人対角レイアウトで足元余裕を確保。

3-2.ミニバン/ワゴン(2〜3人)

2列目フラット化の段差が最大の課題。段差ブリッジ板+自動膨張8〜10cmで家のベッド感に。家族の寝相を想定し幅60cm×人数分で分割すると運用が楽。小さな子どもは落下防止の縁パッドで安心。

3-3.SUV/セダン(1人+荷物)

後席片倒し+助手席前倒し段差と傾斜が残りやすい。折りたたみフォーム+エアマット10cmの二層で吸収。頭側を5〜10mm高くして逆流感を防ぐと熟睡しやすい。タイヤハウスの出っ張りはEVAで面当て。

3-4.背の高い・腰痛持ち・ペット同伴の配慮

  • 背の高い人足先スペースを優先し、対角配置+薄型枕。
  • 腰痛持ち硬め二層(フォーム+薄型エア)で沈み込みを制御
  • ペット:爪で傷つきにくい起毛生地洗えるカバー

季節×標高での推奨構成(表)

季節/環境推奨構成断熱目安寝具レイヤーの例
夏・平地自動膨張5–7cm単体R≈2マット→タオルシーツ→薄掛け
春秋・里山発泡ベース+自動膨張7–8cmR≈3発泡→自膨張→毛布→寝袋薄
冬・高地発泡+自膨張8–10cm+毛布R≥3.5発泡→自膨張→毛布→寝袋厚

人数×幅の目安(分割運用に便利)

人数推奨幅備考
1人60–70cm体格に合わせて調整
2人120–140cm60–70cm×2の分割が運用楽
3人180cm前後子どもは50–55cmでも可

4.失敗しない採寸・設置・手入れ:プロの実務手順

4-1.採寸:床“面”ではなく“寝る範囲”を測る

  • 最長・最短・中央の長さを測り、最大値−10mmでカット余裕を確保。
  • ホイールハウスラゲッジ金具の出っ張り位置を図に起こす。
  • 枕・足元の高さも想定して段差材を用意。**型紙(A4分割)**を作ると失敗が減ります。

4-2.設置:段差ブリッジ→ベース→主マットの順

  • 段差ブリッジ:合板5〜9mmやEVA板で面当て。角は面取りで布を傷めない。
  • ベース:クローズドセルを隙間なく敷く滑り止めシートを併用。
  • 主マット:自動膨張/エアを空気半分→体重で微調整腰が沈むなら空気を足す、肩が張るなら抜く

4-3.手入れ:湿気・直射・匂いをコントロール

  • 使用後は風を通し、陰干しで内部の湿気を抜く。
  • 抗菌カバータオルシーツで汚れを受ける。
  • 長期保管は軽く膨らませた状態で圧痕を防止。高温車内放置は避ける

4-4.安全・法規・視界確保の注意

  • 走行中は必ず収納(後方視界・制動時の飛散防止)。
  • エアバッグ作動域シートベルト装置に干渉しない設置。
  • 火気厳禁(暖房器具は換気と一酸化炭素警報器)。

設置・手入れチェックリスト

項目できたメモ
段差位置を図面化した
ブリッジ材を面当てで固定
ベースをすき間なく敷設
空気量を就寝姿勢で微調整
使用後は陰干し・通気を確保
走行時は確実に固定/収納

5.価格・重さ・収納の“現実解”:長く使うための目安

5-1.価格帯と費用対効果

  • 〜5,000円:発泡や薄手フォーム。下地用途に好適。
  • 5,000〜15,000円:自動膨張の中心帯。寝心地と収納のバランス
  • 15,000円〜:厚手エア/多層。段差大・冬も使うなら検討。修理キット同梱か確認。

5-2.重さと収納容積

厚みと断熱を上げるほど重く・大きくなります。常設派は重量寄り、撤収派は収納寄りで最適点が変わる。車載の収納ボックス高さに合わせて直径を選ぶと後悔しません。直径×長さの筒体積でおおよその車内占有を見積もれます。

5-3.耐久と修理難度

  • 発泡/フォーム:穴に強く、簡単補修
  • 自動膨張:バルブと生地の端部ケアで長持ち。
  • エアパンク修理キット常備マット下に保護シート寒暖差で硬さが変わるので出発前に再調整。

代表スペックの目安(比較表)

項目発泡自動膨張エアフォームハイブリッド
厚み1–2cm5–10cm8–15cm3–8cm6–12cm
断熱目安低〜中中〜高
収納性中〜低
重さ低〜中
価格感中〜高中〜高

5-4.所要時間とメンテの現実感

作業目安時間コツ
設置(段差材含む)5〜15分事前に型紙化・番号付け
空気調整2〜5分就寝姿勢で微調整
撤収5〜10分ポンプ袋で圧縮
乾燥/陰干し15〜30分風通しの良い日陰

Q&A(よくある疑問)

Q1.厚みは何cmあれば十分?
A.仰向け中心なら5〜7cm、横向きが多いなら8〜10cmが安心。段差が大きい車は二層構成が現実的です。

Q2.冬の底冷えがつらい。厚みだけ増やせばOK?
**A.**厚みだけでは不十分。断熱(R値)を上げ、床面に発泡ベース+主マットの二層で熱の通り道を遮断してください。

Q3.エアマットはパンクが心配…
A.マット下に保護シート、角の面取り修理キット常備で実用上問題は抑えられます。冬は空気が冷えて硬さが変わる点だけ再調整を。

Q4.車種専用マットは高い?汎用品で十分?
A.段差が少ない車は汎用+ブリッジ材で十分。段差が大きい車/ミニバンは専用品か自作カットの方が最終満足度が高いです。

Q5.結露とにおいを防ぐには?
A. 除湿剤+通気、使用後の陰干し抗菌カバー。冬は床面アルミシート温度差を和らげると結露が減ります。

Q6.二人で幅何cmが快適?
A.一人60cmが目安。寝相が広い人は65〜70cm。分割にすると夜中の体圧で相手が沈みにくい利点があります。

Q7.まくらや掛け物はどう選ぶ?
A.車中は頭側が下がりやすいため、薄めの枕足元5〜10mm高が快適。掛け物は重ね着発想で、体幹に一枚足すと温かい。

Q8.汗かきで蒸れる。どうすれば?
A. 綿タオルシーツ内気循環、可能なら隙間換気。起毛面は汗冷えしにくい。

Q9.小さな子どもと一緒でも使える?
A. 縁パッド寝返りスペースを確保。ランタンは低発熱のものを選び、結露対策を強化。

Q10.災害時の簡易ベッドとしても使える?
A. はい。発泡+自動膨張の二層は避難所の床冷え対策に有効。片付けやすさも重要視を。

Q11.中古のマットはアリ?
A. へたり・バルブの癖・臭いを確認。価格差が小さいなら新品が安心。

Q12.収納は縦置きと横置きどっち?
A. 自動膨張は横置きで歪み防止、エアは縦置きでもOK。直射高温は避けましょう。


用語辞典(なるべく日本語で)

  • R値(熱抵抗)熱の通りにくさ。数が大きいほど断熱が高い目安。
  • クローズドセル独立気泡の発泡材。軽い・水に強い・断熱は中程度。
  • インフレータブル自動膨張タイプ。中のウレタンが空気を取り込み膨らむ。
  • ブリッジ材段差を“面”で受けるための板やEVAフォーム。
  • 二層構成ベース+主マットの重ね使い。断熱と段差吸収に有効。
  • 体圧分散:体の重さを広い面積で受けて一点に負担をかけないこと。
  • 底付き:マットが沈みすぎて床の硬さを感じる状態。

まとめ

快眠の鍵は厚み×断熱×フィット。まずは5cm以上R値2.0〜(冬は3.0〜)車種に合わせた段差処理を満たす構成を選びましょう。迷ったら発泡ベース+自動膨張の二層がコスパと快適性の黄金比。

採寸→段差ブリッジ→二層敷設→通気乾燥のルーチンを身につければ、車内が**“移動する寝室”**へ変わります。次の週末は、停止線の先に広がる星空まで、ぐっすり眠って走りましょう。

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