筋トレでデカくなる食事は?バルクアップに効く栄養戦略とメニュー完全解説

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筋肉を太くし、体全体の厚みを出し、理想の見た目に近づくためには、食事がトレーニングと同等以上に重要です。筋繊維は刺激を与えただけでは大きくならず、回復と超回復の局面で必要な材料を十分に与えることで初めて肥大が進みます。本稿では、筋量増加(いわゆるバルクアップ)を成功させるために、栄養設計・摂る順番と時間・食材と調理・食事回数・買い物計画・体調管理まで、今日から実行できる形で詳しく解説します。健康上の事情がある方は、主治医の指示を優先してください。


1.デカくなるための大原則(収支・比率・進め方)

1-1.「摂取>消費」を作る:収支の土台

筋量を増やすには摂取エネルギーが消費を上回る期間を作ります。まずは基礎代謝(BMR)と日々の活動量から総消費(TDEE)を把握し、+300〜500kcal/日の余剰で開始。体重が2〜3週間ほぼ不変なら**+100kcalずつ追加、脂肪の増加が速いなら−100〜200kcal**で微調整します。

体重目安の余剰参考:週あたりの体重増加目安備考
55〜65kg+300〜400kcal/日0.15〜0.25kgほっそり体形の初期に適する
66〜80kg+350〜500kcal/日0.20〜0.30kg標準〜やや筋量あり
81〜95kg+400〜550kcal/日0.25〜0.35kg体格大きめ/練習量多い

コツ:体重だけでなくウエスト周径も毎週同じ条件で測定。体重↑でウエスト±0〜+0.5cm程度なら質の良い増量の可能性が高い。

1-2.三大栄養の比率(P・C・F)を数で決める

筋合成の中心はたんぱく質(P)、練習の燃料は炭水化物(C)、土台となるのが脂質(F)。以下を基準に、体調と練習量で調整します。

区分目安量上限/下限の目安ポイント
たんぱく質体重×2.0〜2.3g/日上限目安×2.5g1回20〜35gで分散。肉・魚・卵・大豆を回す
炭水化物体重×4.0〜6.0g/日練習量で±練習前後を厚く、夜は控えめに
脂質総エネルギーの20〜30%下限15%良質な油と魚の脂、卵黄を適量
食物繊維20〜30g/日下限15g腸と吸収のために毎食少しずつ
水分体重×35〜45mL/日汗量で+練習時は電解質も補う

1-3.期間の進め方:増量期→整え期→再加速

同じ食事を続けると体が慣れます。8〜12週間の増量期のあと、2〜3週間の軽い整え期(余剰を0〜+100kcal程度、脂質をやや控えめ)を挟み、また増量に戻す波状運用が長期の伸びを作ります。整え期に消化器の休息睡眠の質を整えると、その後の伸びが安定します。

1-4.体質別の調整(女性/40代以上/やせ型)

  • 女性:鉄・カルシウム・葉酸・たんぱく質不足が出やすい。Pは体重×1.8〜2.2gから開始、Cは周期やむくみと相談し練習日に多め
  • 40代以上:同量でも体脂肪がつきやすい。脂質は**20〜25%**に寄せ、夕食の主食を気持ち少なめに。就寝前の軽いPは維持。
  • やせ型(胃が小さい):液体や半固形(発酵乳、ポタージュ、卵豆腐)で密度高く。油は香味油を少量ずつ使い、無理に揚げ物へ走らない。

2.筋肥大を支える栄養設計(食材と量の実務)

2-1.たんぱく質:質と分け方が決め手

体重×2.0〜2.3g/日4〜6回に分けます。1回20〜35g(手のひら1枚分)を目安に、肉・魚・卵・乳と大豆食品を組み合わせて飽きずに回します。

食品(目安量)たんぱく質脂質ルシン※使いどころ
鶏むね(皮なし100g)23g2g2.0g前後主菜の柱。下味冷凍で回す
豚ヒレ100g22g2g1.8g赤身で扱いやすい
牛赤身100g20g10g1.7g練習量が多い日に
鮭100g22g12g1.6g良質な脂で回復に
卵(1個50g)6g5g0.5g朝・間食に便利
木綿豆腐150g11g6g0.8g胃にやさしい副菜
納豆1P8g5g0.7g食物繊維も同時に補給
ギリシャヨーグルト150g15g0〜4g1.2g就寝前や間食に
かつお缶(水煮1缶)18g1g1.7g非加熱で手早い

※ルシン…筋合成の引き金となる必須アミノ酸。1回2〜3gに届くと理想。卵・豆製品と組み合わせて達成できる。

分散の型:朝(20〜30g)/昼(30〜40g)/練習後(20〜30g)/夕(30〜40g)/就寝前(10〜20g)

2-2.炭水化物:練習の燃料は質と置きどころ

主食は白米・玄米・麺・いも類・果物を使い分け。練習前後に厚く、就寝前は控えめに。食物繊維の多い穀類は練習3時間前までにして腹部の張りを避けます。

主食1食の目安消化感メモ
白米200〜300g軽い即効性の燃料。練習前後に合う
玄米・雑穀150〜250gやや重い腸の状態に合わせ量調整
オートミール60〜80g朝・間食で使いやすい
じゃがいも250〜350g軽い脂質が少なく消化が楽
さつまいも200〜300g便通の助け、腹持ち良い
果物(バナナ等)1〜2本軽い練習前後に手軽

2-3.脂質と微量栄養:ホルモンと回復の土台

オリーブ油・えごま/亜麻仁油・青魚・卵黄・ナッツを少量ずつ。野菜・海藻・きのこは毎食。味噌汁や具だくさんスープで量を確保すると、消化の負担が軽く続けやすい。

項目目標
n-3系脂肪酸週に青魚2〜3回 or えごま/亜麻仁油小さじ1/日さば、鮭、いわし
カリウム2,000mg/日以上じゃがいも、バナナ、ほうれん草
マグネシウム300mg/日前後海藻、豆類、ナッツ
男性7.5mg、女性10.5mg/日前後赤身肉、レバー※体質に注意

塩分:汗を多くかく日は薄味+電解質で。むくみが続く場合は加工品の頻度を見直す。

2-4.胃腸にやさしい“続け方”

  • 調理法:揚げ物は連続させず、蒸す・茹でる・焼く→最後に香味油で満足感を出す。
  • 香辛料:しょうが・にんにく・こしょう・七味で塩分控えめでも満足度↑。
  • 発酵食品:納豆・味噌・漬物(減塩)・発酵乳で腸内環境を整える。

3.食べる時間の設計(前・中・後・分食)

3-1.練習前(1.5〜2時間前):静かに満たす

消化の軽い主食+脂の少ないたんぱく質が基本。例:オートミール+無糖発酵乳+はちみつ少量+ゆで卵。直前に腹が重くならないよう脂は控えめに。

3-2.練習中(60分超の高強度なら)

水だけで足りないと感じる場合は、**水+電解質+少量の糖(10〜20g/時)**で集中力と出力の落ち込みを防ぐ。

3-3.練習後(30分以内):素早く入れる

吸収の速いたんぱく質20〜30g糖質30〜60g。例:乳清由来のたんぱく補助食品+バナナ/米せんべい。1時間後に本食(米・魚/肉・野菜)で整える。

3-4.分食と就寝前:血中アミノ酸を切らさない

4〜6回の分食で巡らせ、就寝前はゆっくり吸収する食品(発酵乳、カッテージチーズ、ゆで卵、豆腐)を少量。

時間帯ねらい
夜明けの材料補充卵・納豆・米・味噌汁
練習前1.5〜2h燃料の準備主食+低脂質たんぱく
練習後0.5h迅速補給速吸収たんぱく+糖質
練習後1〜2h本食米+肉/魚+野菜汁
間食つなぎ発酵乳・果物・ゆで卵
就寝前分解の抑制発酵乳・豆腐・少量のナッツ

4.食材・調理・買い方の工夫(続ける仕組み)

4-1.主菜の下ごしらえ(時短で回す)

鶏むね・豚ヒレ・赤身魚は下味冷凍(塩少々・酒・しょうが・にんにく)で3〜4袋作り置き。解凍して焼く・蒸す・茹でるだけで主菜が整う。肉は繊維を断つ方向に切るとやわらかい。

簡単だれ(混ぜるだけ)

  • しょうゆ:みりん:酢=1:1:1 + しょうが汁
  • 味噌:酒:はちみつ=2:1:1 + ごま
  • レモン汁:塩:こしょう:オリーブ油=2:1つまみ:少々:大さじ1

4-2.主食と副菜の合わせ方(吸収と腸のため)

主食は米・いも類を軸に、汁物で野菜・海藻・きのこをまとめて確保。酸味(酢・柑橘)と薬味で塩を抑え、むくみを予防。

分類とり入れたい例控えたい例ひと工夫
主菜鶏むね・豚ヒレ・鮭・卵・豆腐脂身の多い揚げ物連続蒸す→最後に香味油を回しかけ
主食米・玄米・雑穀・いも菓子パン・甘味飲料練習量で盛りを変える
副菜野菜・海藻・きのこ塩分過多の漬物のみ具だくさん汁で一気に摂る
間食無糖発酵乳・果物・ゆで卵菓子・油の多いバー水と一緒にとり過ぎ防止

4-3.外食・中食・コンビニの選び方

外では主食+主菜+汁物の定食型を優先。麺類は汁を残す、丼は小盛+副菜追加。コンビニはサラダチキン+おにぎり+発酵乳ツナおにぎり+豆腐+バナナなど崩れにくい組み合わせに。

4-4.買い物リスト(週の基本)

  • 主菜:鶏むね6枚、豚ヒレ2本、鮭(切り身)4〜6、卵20個、木綿豆腐4丁、納豆6P
  • 主食:米5kg、オートミール1袋、じゃがいも・さつまいも 各1袋、果物(バナナ等)
  • 副菜:ブロッコリー・ほうれん草・にんじん・トマト、わかめ・きのこ類
  • 調味:しょうゆ、味噌、酢、みりん、オリーブ油、えごま/亜麻仁油、香辛料

5.実践テンプレとQ&A(1日モデル・失敗対策・用語辞典)

5-1.ありがちな失敗→すぐ直す

よくある例何が起きる直し方
食べているのに増えない収支不足/分食不足+200kcal上乗せ、間食を追加
体脂肪が先に増える余剰が大きすぎ−100〜200kcal、夜の脂を減らす
途中で胃がもたれる脂多め・食物繊維不足蒸す・茹でる中心、汁物で野菜増
眠りが浅い夜の食べ過ぎ就寝2〜3時間前に食事終了、就寝前は少量
便通が乱れる食物繊維・水分不足野菜・海藻・きのこ+水を1日2L目安
足つり・だるさ電解質不足汁物・果物・塩の質を見直す

5-2.1日のモデル献立(体重70kg・練習日)

時間献立例ねらい
白米300g/卵2個/納豆1P/味噌汁/発酵乳夜の空腹明けの補充
鶏むねの照り焼き200g/玄米250g/野菜炒め/わかめ汁主菜と主食をしっかり
練習前オートミール70g+無糖発酵乳/はちみつ少量/ゆで卵1個燃料準備・腹に軽く
練習後0.5h速吸収たんぱく20〜30g+果物1個迅速補給
練習後1.5hさけの塩焼き180g/白米300g/具だくさん味噌汁回復本食
就寝前豆腐150g+発酵乳夜間の分解を抑える

※ 体重・性別・年齢・胃腸の強さで量は調整してください。

5-3.別パターン(休養日/女性/やせ型)

  • 休養日:炭水化物を各食−50〜80g、脂質をやや増やして満足度を保つ。就寝前Pは維持。
  • 女性(体重55kgの例):P=110g/日、C=220〜300g/日、F=50〜60g/日を分散。鉄とカルシウムの確保を意識。
  • やせ型:汁物・発酵乳・卵豆腐などやわらかい品で密度を高め、間食2回を固定。

5-4.よくある質問(Q&A)

Q1:たんぱく質は多いほど速く大きくなれる?
A:いいえ。総量と分散が大切。体重×2.0〜2.3g/日を超えても伸びは鈍く、胃腸と腎への負担が増える。

Q2:炭水化物を減らして脂質を増やせば太りにくい?
A:高強度の筋トレは糖の燃料が不可欠。Cを削ると出力と回復が落ち、筋分解が進む。練習前後は特に確保。

Q3:たんぱく補助食品(プロテイン)は必須?
A:必須ではないが、時間がない時の補助として便利。基本は固形食で組み、足りない分を補う。

Q4:外食が多い職場でも増やせる?
A:定食型を選び、主菜を倍に・ごはんは練習量で調整。汁物と野菜を足し、甘い飲み物は避ける。

Q5:体脂肪が気になって増量が怖い
A:週0.2〜0.3kgの穏やかな上昇を目安に。鏡とメジャーで胸囲・上腕・太ももも測ると、筋の伸びを把握しやすい。

Q6:夜遅い時間しか食べられない
A:就寝2〜3時間前の軽い主食+低脂質Pへ寄せる。就寝直前は遅吸収のPを少量

Q7:甘いものがやめられない
A:練習直後に少量なら吸収が役立つ。普段は果物と発酵乳で代替。

5-5.用語の小辞典(やさしい言い換え)

  • 筋量増加(バルクアップ):筋肉の量を計画的に増やすこと。
  • 超回復:刺激後に休むと、元より強くなるはたらき。
  • 分散摂取:1日の量を小分けにしてとる方法。
  • 速吸収/遅吸収:体に入ってから吸われる速さの違い。運動後は速く、夜は遅い食品が合う。
  • 基礎代謝(BMR):何もしなくても使う最低限のエネルギー。
  • 総消費(TDEE):1日に使う全エネルギー。

まとめ

筋肉を大きくする鍵は、穏やかな余剰エネルギーを保ちつつ、三大栄養を“適量×適時×分散”で入れること。無理な増量や我慢ではなく、続けられる仕組みを整えるほど伸びは安定します。今日の一食を整えることが、数か月後の見た目を変えます。

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