寒さが深まる12月は、露地の野菜が霜や冷気に当たって糖度・うま味がぐっと増す“おいしさの本番”。鍋物や煮物、焼きもの、漬物、汁物まで、冬の献立を支える旬野菜を、特徴・栄養・産地・選び方・下ごしらえ・保存・活用レシピ・行事食まで丸ごと解説します。毎日の献立にすぐ使える比率・手順・保存期限の目安も載せた、冬の決定版ガイドです。
1.12月に旬を迎える代表野菜の魅力と使いどころ
1-1.大根|だしを抱く、冬の主役根菜
- 味の特徴:繊維がやわらかく中心までみずみずしい。寒さで甘みが増し、下部はやや辛み。
- 向く料理:おでん、ふろふき、ぶり大根、みぞれ煮、なます、サラダ、浅漬け、大根おろし。
- 買い方:ずっしり重い、肌つや良い、ひげ根少なめ。葉付きは葉先までみずみずしいもの。
- 部位使い分け:上=甘く生食向き/中央=万能/下=辛み強く加熱向き。
- ひと工夫:面取り+隠し包丁で味含みUP。とぎ汁で下ゆでするとえぐみが抜けます。
1-2.白菜|鍋と漬物で真価を発揮
- 味の特徴:煮込むほどとろけ、芯はやさしい甘み、外葉はうま味濃厚。
- 向く料理:鍋、重ね煮、漬物、ロール白菜、クリーム煮、炒め物、スープ、浅漬け。
- 買い方:巻きが締まり重い。切り口が白く、外葉がしゃっきり。黄色い芯は甘みの目安。
- ひと工夫:塩もみで余分な水を出し、短時間調理でも甘み凝縮。
1-3.長ねぎ・葉ねぎ|温めて甘さ際立つ香味野菜
- 味の特徴:寒さで糖度が上がり、白部はとろ甘、青部は香り高い。
- 向く料理:焼きねぎ、すき焼き、鍋、みそ汁、ぬた、焼き鳥、薬味、ねぎ油。
- 買い方:白部が長く締まり、青部にハリとつや。葉先がピンとしているもの。
- ひと工夫:切って空焼き(油なし)→煮ると香ばしさと甘みが増します。
1-4.ほうれん草|寒締めで甘み・栄養アップ
- 味の特徴:肉厚で甘みがのる。えぐみが少なく、色も鮮やか。
- 向く料理:おひたし、胡麻和え、ソテー、グラタン、クリーム煮、汁物、卵料理。
- 買い方:葉が濃緑で肉厚、根元が赤くみずみずしい。茎が太すぎないもの。
- ひと工夫:湯に塩少々→短時間ゆで→冷水→水気をしっかり絞る。
1-5.れんこん|しゃき・ほく両立の名脇役
- 味の特徴:しゃきしゃき~ほくほくまで自在。ほんのり甘く香り高い。
- 向く料理:煮物、きんぴら、天ぷら、酢れんこん、サラダ、すり流し、つくね。
- 買い方:切り口が白い、穴が均一、皮につや。重みがあるもの。
- ひと工夫:酢水で変色防止。薄切り短時間=しゃき/厚切りじっくり=ほく。
1-6.そのほか今こそ美味しい冬の常連
- かぶ:生はみずみずしく、煮るととろり。葉も栄養豊富で炒め物や菜めしに。
- 小松菜:鉄・カルシウムが多く、下ゆで不要で炒め物・汁物に直行。
- ごぼう:香りとうま味の塊。きんぴら、煮物、炊き込みご飯に。泥付きは香りが長持ち。
- 里いも:ねっとり粘りで煮物がごちそうに。下ゆででぬめり調整。豚汁や芋煮にも。
- ブロッコリー:つぼみが締まり甘い。下ゆで1分半で色・食感キープ。温サラダに最適。
2.栄養と選び方の要点(吸収率を上げるコツつき)
2-1.大根
- 主な栄養:ビタミンC、消化酵素(ジアスターゼ)、カリウム、食物繊維。
- 吸収のコツ:生おろしは酵素が活発。加熱はビタミンC損失をだし煮で補う。
- 産地目安:千葉、神奈川、青森、鹿児島など。
- 選び方:重量感、表面の滑らかさ、ひげ根の少なさ。葉付きは葉の鮮度を確認。
2-2.白菜
- 主な栄養:ビタミンC、カリウム、食物繊維、葉酸。低エネルギーで満足感◎。
- 吸収のコツ:油と合わせると脂溶性成分の吸収が上がる。豚肉や豆腐と好相性。
- 産地目安:茨城、長野、北海道、新潟など。
- 選び方:巻きが締まり重い。切り口白く、外葉しゃっきり。
2-3.長ねぎ
- 主な栄養:アリシン、ビタミンC、葉酸。体を温める作用が期待。
- 吸収のコツ:刻んで空気に触れさせると香り成分が立つ。油で軽く加熱すると甘み増。
- 産地目安:埼玉、千葉、群馬、岩手、京都(九条ねぎ)。
- 選び方:白部長く締まり、青部にハリ。曲がりが少ないもの。
2-4.ほうれん草
- 主な栄養:鉄、βカロテン、ビタミンC・E、葉酸、マグネシウム。
- 吸収のコツ:鉄はたんぱく質+ビタミンCと一緒に。卵・肉・大豆・柑橘と合わせる。
- 産地目安:関東・東北各地。
- 選び方:濃緑で肉厚、茎が締まる。根元赤いものは甘みあり。
2-5.れんこん
- 主な栄養:ビタミンC、食物繊維、カリウム、ポリフェノール。
- 吸収のコツ:酢でビタミンCの損失を抑え、色も白く保つ。
- 産地目安:茨城、徳島、愛知、佐賀、熊本。
- 選び方:切り口白、穴均一、表面つや、重み。
2-6.かぶ・小松菜・ごぼう・里いも・ブロッコリー
- かぶ:ビタミンCと消化酵素。生はビタミンC保持率◎。
- 小松菜:鉄・カルシウムたっぷり。油炒めで吸収率UP。
- ごぼう:不溶性食物繊維と香り成分。水にさらしすぎない。
- 里いも:カリウム・食物繊維・ガラクタン。下ゆででぬめり調整。
- ブロッコリー:ビタミンC・葉酸。蒸し1〜2分で栄養ロスを抑える。
3.“いちばんおいしい”火入れと味付け(比率で覚える)
3-1.大根・白菜の味含ませ黄金比
- だし煮の基本(水:だし=1:1)+薄口しょうゆ:みりん:酒=2:2:2(各大さじ)/だし400ml。
- ふろふきだれ:白味噌:みりん:だし=2:1:2。柚子皮少々で冬の香り。
- 重ね煮:白菜(芯→葉)と豚薄切りを交互に。弱火15〜20分で甘み凝縮。
3-2.長ねぎ・ほうれん草の香りと色を生かす術
- 長ねぎ:
- 甘焼き…1本を4等分→切り目→弱火10分でとろ甘。
- 白髪ねぎ…繊維に沿って細切り→水にさらし5分→水気を切る。
- ほうれん草:
- 下ゆで30〜40秒→冷水→しぼる。和え衣(すりごま:しょうゆ:砂糖=2:1:1)。
3-3.れんこん・かぶ・小松菜の食感コントロール
- れんこん:薄切り炒め=強火2分/厚切り煮物=落しぶたで中火15分。
- かぶ:生スライスは塩もみで甘みUP。煮物は皮つきで煮崩れ防止。
- 小松菜:油なじみ良し。先に炒めてから汁へ入れると味がぼけない。
3-4.だし・たれ・みそ味の作り置き
- 鍋だし:水800ml+昆布8cm+かつお節15g(沸騰後弱火5分)→しょうゆ大さじ2、みりん大さじ2、酒大さじ1、塩少々。
- 万能甘辛だれ:しょうゆ:みりん:砂糖=2:2:1。焼き・煮・絡めに。
- 味噌だれ:味噌:みりん:だし=2:1:2。ごま・柚子で季節感。
4.長持ち保存・下処理・使い切り術(食品ロスゼロ)
4-1.冷蔵・冷凍・干し野菜のベストプラクティス
- 大根:葉は切り離し、新聞紙で包み立てて冷蔵。輪切り下ゆで→冷凍で煮物がすぐ作れる。
- 白菜:外葉を外し根元を下に。カットはラップ密封。塩漬けで日持ち大幅UP。
- 長ねぎ:新聞紙で包み野菜室。刻みは小分け冷凍。青部はねぎ油やだしに。
- ほうれん草:下ゆで→水気を絞り小分け冷凍。凍ったままみそ汁・炒め物へ。
- れんこん:酢入り下ゆで→薄切り冷凍。生保存は湿らせたキッチンペーパー+袋。
- ごぼう:泥付きは新聞紙+冷暗所。ささがきは酢水→水気を切って冷凍。
4-2.余りがちな部位の活用
- 大根葉:炒めてふりかけ、油揚げと炒め煮、菜めし、混ぜご飯。
- 白菜外葉:細切りかき揚げ、餃子のたね、きざみ漬け、炒めナムル風。
- ねぎ青い部分:スープのだし、ねぎ油、ぬた、香味焼き。
4-3.作り置き・下味冷凍(平日を時短)
- 大根の下味冷凍:しょうゆ・みりん・だしで漬けて冷凍→解凍煮で味しみ早い。
- 白菜ミルフィーユ:豚薄切りと交互に重ね鍋に詰める。冷蔵2〜3日OK。
- ほうれん草ごま和えの素:和え衣を先に作り冷蔵。ゆで葉と和えるだけで一品。
4-4.保存期限めやす表
食材 | 冷蔵 | 冷凍 | ひとこと |
---|---|---|---|
大根(丸) | 1〜2週間 | 輪切りで1か月 | 葉は即切り離し |
白菜(丸) | 1〜2週間 | ざく切りで1か月 | 塩漬けで+1〜2週間 |
長ねぎ | 1週間 | 刻みで1か月 | 青部はだし・油に |
ほうれん草(ゆで) | 2〜3日 | 小分け1か月 | 生は乾燥注意 |
れんこん(下ゆで) | 3〜4日 | 薄切り1か月 | 酢水で色よく |
5.年末の行事食・地域料理・献立サンプル
5-1.行事食・地域の味を旬野菜で
- 年越し副菜:大根なます、れんこん梅和え、白菜浅漬け、ねぎぬた。
- 郷土料理:
- 秋田「だまこ鍋」:白菜・ねぎ+米だんご。醤油だしが体に染みる。
- 新潟「のっぺ」:里いも・れんこん・にんじんなど根菜たっぷりの煮物。
- 九州「がめ煮」:根菜と鶏を甘辛に。年末のごちそう。
- おもてなし:白菜ミルフィーユ鍋(柚子こしょう)、大根ステーキ(バターしょうゆ)、ほうれん草と卵のグラタン。
5-2.かんたん献立例(3日分)
- 1日目:白菜ミルフィーユ鍋/大根なます/れんこんのきんぴら
- 2日目:ぶり大根/小松菜と油揚げの煮びたし/ねぎのぬた
- 3日目:ほうれん草グラタン/れんこん天ぷら/かぶの浅漬け
5-3.鍋だし・浅漬け・なますの比率早見
- 鍋だし:だし800ml+しょうゆ大さじ2+みりん大さじ2+酒大さじ1+塩少々。
- 浅漬け(200g分):塩小さじ1/砂糖小さじ1/酢大さじ1。好みで昆布・唐辛子。
- 大根なます:大根:にんじん=5:1、酢:砂糖:塩=4:3:少々。
6.よくある質問Q&A(実践版)
Q1:大根が辛い。甘く食べるコツは?
A:上部を生食、下部は加熱。下ゆでで辛み成分を減らし、だしでコトコト煮含める。みぞれ煮は火を止める直前におろしを入れると辛みが穏やか。
Q2:白菜を大量消費したい。
A:浅漬け・重ね煮・スープベースが3本柱。ざく切り冷凍でみそ汁・炒め物にも即戦力。芯は薄切りで先に火入れ、葉は後入れで食感を残す。
Q3:ほうれん草のえぐみが気になる。
A:湯に塩少々→短時間ゆで→冷水→水気をしっかり絞る。根元の泥は十字に切り込みを入れて洗う。鉄の吸収はレモン・柑橘を添えると良い。
Q4:ねぎの青い部分は硬い?
A:繊維に沿って斜め薄切り→油でさっと炒めると甘く香ばしい。細かく刻んでねぎ油にすれば保存もきき、炒め物・スープの香り付けに万能。
Q5:れんこんが変色する。
A:切ったらすぐ酢水へ。加熱後は変色しにくい。冷凍は薄切り下ゆでが扱いやすい。
Q6:ごぼうのアク抜きはどのくらい?
A:さっと酢水1〜2分で十分。長時間は香りごと抜けるので注意。
Q7:子どもが野菜を苦手がち。
A:甘みが出る重ね煮・グラタン・ポタージュがおすすめ。小松菜は卵と、ほうれん草は乳製品と合わせると食べやすい。
7.冬野菜 用語辞典(簡潔に)
- 寒締め:寒さに当てて育て、糖度やうま味を高める栽培法。
- 面取り:大根などの角を薄く削り、煮崩れや味の抜けを防ぐ下ごしらえ。
- 重ね煮:材料を層に重ね弱火で煮る調理。水分と甘みが引き出されやさしい味に。
- 下味冷凍:調味料と一緒に冷凍して味を含ませ、解凍後すぐ調理できる方法。
- 白髪ねぎ:ねぎを繊維に沿って細切りにし、水にさらして辛みを抜いたもの。
8.12月旬野菜 比較早見表(特徴・栄養・料理・選び方)
野菜 | 旬の目安 | 主な産地 | 主な栄養 | 向く料理 | 選び方の要点 |
---|---|---|---|---|---|
大根 | 11〜2月 | 千葉・神奈川・青森・鹿児島 | ビタミンC、消化酵素、カリウム | おでん、ぶり大根、みぞれ煮、なます | 重量感・肌つや・ひげ根少、葉みずみずしい |
白菜 | 11〜2月 | 茨城・長野・北海道・新潟 | ビタミンC、カリウム、食物繊維 | 鍋、漬物、重ね煮、ロール白菜 | 巻きが締まり重い、切り口白、外葉しゃっきり |
長ねぎ | 11〜3月 | 埼玉・千葉・群馬・岩手・京都 | アリシン、ビタミンC | 焼きねぎ、鍋、みそ汁、ぬた | 白部長く締まり、青部にハリつや |
ほうれん草 | 11〜2月 | 関東・東北 | 鉄、βカロテン、ビタミンC・E、葉酸 | おひたし、グラタン、ソテー、汁物 | 濃緑で肉厚、根元赤くみずみずしい |
れんこん | 11〜3月 | 茨城・徳島・愛知・佐賀・熊本 | ビタミンC、食物繊維、カリウム | 煮物、天ぷら、きんぴら、酢漬け | 切り口白、穴均一、表面つや、重み |
かぶ | 11〜1月 | 千葉・埼玉・青森 | ビタミンC、消化酵素 | 生サラダ、煮物、浅漬け | 実に張り、葉しゃっきり、重量感 |
小松菜 | 11〜3月 | 関東各地 | 鉄、カルシウム、ビタミンC | 炒め物、煮びたし、汁物 | 葉色が濃い、茎太すぎない |
ごぼう | 11〜2月 | 青森・茨城 | 食物繊維、マグネシウム | きんぴら、煮物、炊き込み | 泥付き・張りがある、香りが強い |
里いも | 10〜12月 | 宮崎・千葉・埼玉 | カリウム、食物繊維、ガラクタン | 煮物、汁物、田楽 | 皮しっとり、ふっくら丸い |
ブロッコリー | 11〜3月 | 愛知・北海道・埼玉 | ビタミンC・葉酸 | 温サラダ、炒め物、グラタン | つぼみ締まり、色むら少 |
9.買い物&下ごしらえチェックリスト
- 重量感・色つや・葉の状態を確認(軽い・しおれは避ける)。
- 大根は部位で用途を分ける(上=生/中央=万能/下=加熱)。
- 白菜は外葉→炒め、芯→煮物・スープ、柔らかい葉→浅漬け。
- ねぎは青い部分まで活用、ねぎ油を作ると無駄なし。
- ほうれん草は短時間ゆで・冷水・水切り徹底。根元の砂をしっかり落とす。
- れんこんは切ったら酢水へ。下ゆで→小分け冷凍が便利。
- 作り置き(だし・たれ)で味を決め、平日を時短。
さいごに
12月の野菜は“寒さ”が作る自然のごちそう。部位の使い分け・正しい下ごしらえ・賢い保存で、甘みと旨み、栄養を余すことなく食卓へ。年末のおもてなしから日々の養生まで、旬野菜で体を温め、心も満たす冬をお過ごしください。