「どうして宇宙には空気がないの?」――夜空を見上げると、地球とはまったくちがう世界が広がっています。この記事では、宇宙に空気がない理由、地球に空気がある理由、宇宙で生活するための工夫(宇宙服・宇宙船)、星空観察や自由研究のヒントまで、小学生にもわかることばでたっぷり解説します。読み終わる頃には、地球がどれほど特別な星か、きっと実感できます。
宇宙に空気がない理由をやさしく解説
空気ってなに?(まずは基礎)
- 空気は目に見えない「気体(きたい)」のまざり合い。とくに窒素(ちっそ)、酸素(さんそ)、二酸化炭素、水蒸気、アルゴンなどがふくまれます。
- 私たちは空気の酸素で息をし、音は空気をふるわせて耳に伝わります。火が燃えるのも酸素があるからです。
- 空気には重さがあり、地面に**気圧(きあつ)**という力をかけています(ふだんは感じにくいけれど、じつはとても大きい力)。
宇宙はどうして“空気がない”の?
- 地球をいっぽ出ると、まわりは**真空(しんくう)**に近い空間。気体の“つぶ”(分子)がほとんどありません。
- 空気の分子が集まっていられるには、引きとめる力(重力)と十分な量が必要。広大な宇宙空間ではその条件がととのいにくく、気体はばらばらに広がってしまいます。
- 宇宙はとてつもなく広く、分子どうしがぶつかることもめったに起こらないほど“すきすき”です。
真空(しんくう)ってどんな世界?
- 空気がない=音が伝わらない(映画のような「ドカーン!」は本当は聞こえない)。
- 水は気圧が低いほど低い温度で沸とうするので、真空に近いとすぐ蒸発しやすくなります。
- 空気がないため対流や伝導での熱のやり取りがほぼ起こらず、**放射(ほうしゃ)**でしか熱が出入りしません。日なたはカンカン照り、影はキンキンに冷える――そんな極端な環境です。
- ちり・におい・微生物もごくわずか。地球では体験しにくい“からっぽ”の世界です。
もう一歩:空気がなくても光は届く
- 音は空気など“もの”の振動なので宇宙では伝わりませんが、光や電波は空気がなくてもまっすぐ進むことができます。だから、宇宙では星の光がくっきり見えます。
地球に空気があるのはなぜ?—大気(たいき)と重力のすごい力
大気(たいき):地球をおおう空気の毛布
- 地球は大気という空気のうすい**膜(まく)**におおわれています。高さはおよそ100km以上(もっと上まで影響が続くと考える学者も)。
- 大気があるから呼吸でき、天気が生まれ、水がめぐり、生き物がくらせます。
大気は“層(そう)”になっている
- 対流圏:雲や雨・風が起こる、私たちが住む空気の層。
- 成層圏:オゾン層があり、強い紫外線を弱めてくれる。
- 中間圏/熱圏/外気圏:高くなるほど空気がうすく、温度や現象のようすが大きく変わります(オーロラなども関連)。
重力(じゅうりょく):空気を引きとめる“見えない手”
- 地球の重力が空気をギュッと引きとめます。もし重力が弱かったら、空気は宇宙へ逃げるでしょう。
- 月や火星は重力が弱い→空気を保ちにくいので、いまはほとんど無い/とても薄い大気しかありません。
大気は命を守るシールド
- 紫外線をへらし、**流れ星(小さな隕石)**をすりへらして燃やし、地表を守ります。
- 気温の極端な変化をやわらげ、**水(海・雲・雨)**の循環を支えます。
- 音やにおい、雲や雨、虹や夕焼け……私たちの五感が楽しむ多くの現象は、大気があってこそ。
宇宙と地球をくらべよう—音・温度・光・色の大ちがい
音:宇宙は“しーん”…無音の世界
- 地球:空気が振動を運ぶから声や音楽が聞こえる。
- 宇宙:空気がないので音は伝わらない。通信は**光(電波)**で行います。
- 衛星や探査機の「宇宙の音」は、実際には電波などの信号を人が音に変換したものです。
温度:超さむい&超あついが同居
- 宇宙:太陽光が当たらない所は極寒(−200℃以下も)、当たる所は高温(+100℃以上)になることも。
- 地球:大気と海が熱をならすので、くらしやすい気温に保たれる。
- 宇宙船や人工衛星は、断熱材や放熱板で温度をコントロールします。
光:星がくっきり見える理由
- 宇宙:空気がないから光がまっすぐ届き、星はキラキラくっきり。
- 地球:大気のゆらぎで星はまたたき、昼は空が青い(大気が青い光を散らすため)。
- 夕焼けが赤いのは、太陽の光が長い道のりを通るとき青い光がより散り、赤い光が届きやすくなるため。
空気がある/ないと、何がこんなに違うの?
- 呼吸:地球はOK、宇宙はNG(機械で空気を用意する必要)。
- 火:地球は燃える、宇宙は空気がないと燃え広がらない。
- 雲と雨:地球は水がめぐって天気ができる。宇宙は雲も雨も基本なし。
惑星でくらべる「空気のある・なし」—地球はどこが特別?
いろいろな天体の大気
- 金星:とても厚い二酸化炭素の大気。地表は超高温、雲は強い酸のしぶき。
- 火星:空気はとても薄い(二酸化炭素が主)。砂ぼこりの嵐が起こることも。
- 木星・土星:巨大ガス惑星。水素やヘリウムが主成分。分厚い大気で“地面”は見えない。
- タイタン(※土星の衛星):窒素が主成分の濃い大気。メタンの湖があると言われる不思議な世界。
- 月(水の少ない衛星):ほぼ真空。空が黒く、影はとてもくっきり。
地球が“いのちの星”と呼ばれる理由
- ちょうどよい重力で空気を引きとめ、水が液体でいられる温度帯。
- 適度な大気と磁場が太陽のこわい放射線から守ってくれる。
宇宙で生きる工夫—宇宙服・宇宙船・ISSのひみつ
宇宙服(スペーススーツ)は“動く小さな部屋”
- 空気(酸素)を入れて気圧(きあつ)をつくり、真空や温度差、紫外線から体を守る。
- 多層構造(外側の丈夫な布/断熱/微小隕石(ごく小さい石)対策)。
- 内側には冷却水が流れる下着や通信装置、ヘルメットのバイザー(太陽光カット)など。
- 手袋やブーツも特別設計。工具がつかみやすいのに気圧を保つ不思議な仕組みです。
宇宙船・国際宇宙ステーション(ISS)の中
- 地球に近い空気の組成と気圧に調整。二酸化炭素(CO2)除去装置で空気をきれいに。
- 電気分解で水から酸素を作り、水分は回収・再生して再利用。換気ファンで空気を循環させます。
- 食べ物は飛び散らないよう工夫されたパック。調味料もこぼれにくい形に。
宇宙でのくらしの工夫
- 睡眠:上下の感覚がないため、寝袋を壁に固定して寝ます。
- トイレ:空気の流れで吸い取る仕組み。水はとても貴重なのでリサイクルが基本。
- 運動:筋肉や骨が弱くならないよう、毎日トレーニング。
- 訓練:水中での作業練習、宇宙服でのシミュレーション、長期滞在のための体力づくり。
観察・実験・自由研究アイデア—安全にたのしく深めよう
おうちでできる“身近な真空”観察(安全第一)
- 真空パック食品を観察:袋がピタッと貼りつく→空気が少ないと物に力がかかる実感。
- ペットボトルのへこみ実験:あたためた空気が冷えて体積がへると、ボトルがへこむ(※やけど・破損に注意/保護者と)。
- 熱と放射を感じる手のひら実験:黒い紙と白い紙を日なたに置き、あたたまり方のちがいを観察(色と熱の吸収)。
星空観察のコツ(はじめてでもOK)
- 街あかりの少ない場所で星座早見盤を使う。双眼鏡があれば月のクレーターや星団もくっきり。
- 空が青い理由・星がまたたく理由をノートに図でまとめよう。観察した時刻・方角・気温もセットで記録!
調べ学習テーマ例(自由研究にぴったり)
- 「月と地球のちがいを図にする」
- 「火星の大気と水のなぞを調べる」
- 「宇宙服のしくみを分解図で表す」
- 「ISSの空気・水のリサイクルを追う」
- 「夕焼け・朝焼けの色のひみつ」
まとめ方のヒント(発表で差がつく!)
- 表・グラフ・図を入れて、ひと目でわかる紙面に。
- 難しい言葉にはふりがなや用語じてんをつける。
- 実験は安全第一・手順写真・失敗メモも書くと内容が深まる。
差がひと目でわかる!地球・宇宙・月/火星の比較表
| 比べるポイント | 地球(ちきゅう) | 宇宙空間(うちゅう) | 月・火星などの星 |
|---|---|---|---|
| 空気(大気) | ある(厚い大気) | ない(ほぼ真空) | ほとんどない/とても薄い |
| 音 | 伝わる | 伝わらない | ほぼ伝わらない |
| 温度 | 0〜40℃前後で安定 | −200〜+100℃以上も(場所で極端) | 極端・昼夜差が大きい |
| 光の見え方 | 空は青い/星はまたたく | 星がくっきり/空は黒い | 空は黒い/地表の色がはっきり |
| 気圧 | 1気圧前後 | ほぼ0 | とても低い |
| 水 | たくさん(海・雲・雨) | ほぼ無い | 氷・地下にわずか(場所による) |
| 生き物 | たくさんいる | いない | いない(今のところ確認なし) |
| 重力 | 強い(空気を引きとめる) | ほぼ感じない | 弱い(空気を保ちにくい) |
| 守り(紫外線・隕石) | 大気が守る | なし(むき出し) | ほぼなし |
| 人のくらし | ふつうに生活できる | 宇宙服・宇宙船が必要 | 基地・宇宙服が必要 |
| 火のふるまい | 普通に燃える | 空気がないと燃えにくい | 燃えにくい |
| 天気 | あり(雲・雨・風) | なし | ほぼなし(火星は砂嵐あり) |
よくある質問(Q&A)
Q1. 宇宙に“まったく”空気はないの?
A. 完全にゼロではありませんが、とてもとても少ないので、息はできないし、音も伝わりません。
Q2. 宇宙で爆発しても音がしないの?
A. はい。音は空気の振動なので、真空では聞こえません。宇宙船内では空気があるので音がします。
Q3. どうして空が青いの?
A. 太陽の光のうち青い光が大気で散らされやすいから。宇宙には大気がないので空は黒く見えます。
Q4. 月でジャンプが高くなるのはなぜ?
A. 月の重力が弱いから。体が軽く感じて高く跳べるのです。
Q5. ISSの空気はどこから来るの?
A. 地球から運ぶ+船内で**再生(リサイクル)**して使います。二酸化炭素は機械で取りのぞきます。
Q6. 宇宙ではどうやって熱が伝わるの?
A. 空気がないので伝導・対流はほぼ起きません。主に**放射(ほうしゃ)**で熱が出入りします。
Q7. 宇宙で水はどうなる?
A. 気圧が低いとすぐ沸とうしやすく、氷→水→水蒸気の変化も地球とちがうスピードで起こります。
Q8. もし地球の大気がなくなったら?
A. 呼吸ができず、水はすぐ蒸発、気温は極端に。生き物は生きられません。大気は命の守り手です。
Q9. 宇宙飛行士はなぜ運動するの?
A. 無重力だと筋肉・骨が弱くなるから。毎日運動して体を守ります。
Q10. 宇宙で紙飛行機は飛ぶ?
A. 空気がない場所では揚力が生まれないので飛びません。宇宙船の中(空気あり)なら飛びます。
用語じてん(むずかしい言葉をやさしく)
- 真空(しんくう):空気などの気体がほとんどない“からっぽ”の状態。
- 大気(たいき):地球をおおう空気の層(そう)。天気や呼吸にかかわる。
- 重力(じゅうりょく):物を引っぱる力。地球の重力が空気や私たちを引きとめる。
- 気圧(きあつ):空気が物におす力。宇宙服は体のまわりに適切な気圧をつくる。
- 紫外線(しがいせん):太陽光の一種。浴びすぎは肌に良くない。大気が一部をさえぎる。
- 太陽風(たいようふう):太陽から吹き出す電気をおびた粒の流れ。大気がない星では直接当たる。
- 放射(ほうしゃ):空間をへだてて熱が伝わること(例:太陽のぬくもり)。
- 国際宇宙ステーション(ISS):宇宙飛行士が長く滞在して研究する“空飛ぶ実験室”。
- 成層圏(せいそうけん):大気の層の一つ。オゾン層が強い紫外線を弱める。
- 磁場(じば):地球がもつ見えない磁石の力。宇宙から来る粒子から身を守る助けになる。
学びを深める「チェックリスト」
- 空気と大気のちがいを説明できる
- 宇宙で音が聞こえない理由を言える
- 地球の大気の“層”の名前を3つ言える
- 宇宙服が必要な理由を3つ言える
- 自由研究のテーマを1つ決めた
さいごに(まとめ)
- 宇宙に空気がないのは、真空で気体がばらばらに広がってしまうから。
- 地球には大気と重力があり、空気・水・適度な気温がそろっていのちを守る。
- 宇宙で生きるには、宇宙服・宇宙船・ISSなどの工夫が不可欠。
星空をながめながら、「音・温度・光・空気」を意識してみよう。宇宙のふしぎを知れば知るほど、地球がどれだけ特別かが見えてきます。観察・実験・読書で、あなたも“宇宙博士”の一歩へ!


