長い道を、こつこつ一歩ずつ。マラソンは「体の力」だけでなく「心の力」もためされる競技です。いちばんのなぞは、なぜ距離が42.195kmという細かい数なのかということ。
このページでは、距離のひみつ、オリンピックとの深い関係、身近なたとえ、観戦ポイント、自由研究のヒントまで、やさしい言葉でたっぷり解説します。走るコツや安全の工夫、家族と楽しむアイデアもお届けします。
1.マラソンの基本をおさえよう
マラソンってどんな競技?
- 決められた長い距離を、ゴールまで自分の足で走りぬく競技。
 - フルマラソンは42.195km。そのほかにハーフ(21.0975km)や10km、親子向けの短い種目などもあります。
 - 大切なのは、あきらめない心・一定の速さの調子(ペース)・安全な走り方。
 - 同じ「走る」でも、運動会の短距離とちがい、体力を長く保つ工夫がポイントです。
 
だれが走っているの?
- オリンピックの選手だけでなく、世界中の人が年れいや性別をこえて参加。
 - 車いすマラソンもあり、みんなが力を発揮できる工夫が広がっています。
 - 地域の大会は、仮装(かそう)で走る人や、親子でいっしょに走る人もいてお祭りのように楽しいことも。
 
どこで開かれるの?
- オリンピック、世界陸上、市民マラソン(東京・大阪など)、地域の大会、学校の持久走大会や駅伝など。
 - 町なかや名所を走るコースも多く、景色も楽しめるのが人気の理由。
 - 海の近く、川ぞい、古い町並み、城や神社、はしやトンネルなど、地域の顔を感じられます。
 
マラソンとジョギング・駅伝のちがい
- ジョギング:健康のためにゆっくり走ること。記録より気持ちよさが大事。
 - 駅伝:たすきをつなぐチーム競技。区間の走りが合わさって勝敗が決まる。
 - マラソン:ひとりで完走を目指す個人競技。でも沿道の応援は見えない“たすき”。
 
走るときのマナー(大事!)
- 追いぬくときはぶつからないように声かけ。
 - 給水のコップは足元にすてない(転ぶげんいんになります)。
 - 体調が悪いときはムリをしない。周りと自分を守るための勇気です。
 
2.なぜ「42.195km」なの?距離のひみつ
名前のもと:ギリシャの「マラトン」
- 昔、ギリシャの**マラトン(地名)**の戦いの勝利を兵士が首都アテネまで走って伝えたという物語が出発点。
 - この伝説が、近代オリンピックで「長い距離を走る競技=マラソン」を生みました。
 
はじめの距離は約40kmだった
- 第1回アテネ大会(1896年)の距離はおよそ40km。その後もしばらくは大会ごとに距離が少しずつ違う時代が続きました。
 - 町の地形(坂や曲がり)、道路の都合で、同じ大会でも回によって微妙に長さが変わることもありました。
 
42.195kmが生まれたできごと(1908年)
- ロンドン大会では、スタートをウィンザー城、ゴールをオリンピック競技場に設定。
 - その結果、距離が26マイル385ヤード=42.195kmになりました。
 - この長さが「走りやすい」「大会運営に都合がよい」と広まり、世界のきまりとして定まりました。
 
まとめ:マラソンの距離は、伝説(物語)→大会の工夫→世界の標準という流れで、いまの数に落ち着いたのです。
単位の豆知識:マイルとキロ
- 1マイル=約1.609km。26マイル385ヤードを計算すると42.195kmになります。
 - 海外の大会では距離表記にマイルが出ることも。およその換算を知っておくと便利!
 
測り方の工夫
- 距離は、車輪に距離計をつけて実際の道路をたどって測ります。
 - 走る人が曲がる内側の線にそって測るなど、決められたルールで正確さを保っています。
 
3.オリンピックとマラソンの名場面
町を走るからこそ生まれるドラマ
- マラソンは競技場だけでなく、街路・橋・坂道・名所を走ります。
 - 暑さ・風・雨・寒さなど自然条件も勝負の一部。給水の取り方、坂の上り下りの工夫が勝敗を分けます。
 - 観客の声援(せいえん)が力になり、笑顔でスピードが上がることも。
 
歴史に残るトピック(例)
- 1960年ローマ:アフリカの選手がはだしで優勝。走る勇気が世界を感動させました。
 - 1984年ロサンゼルス:女子マラソンが正式種目に。だれもが同じ距離に挑む時代へ。
 - 東京の大会(1964/2020)では、都市の景色とともに走る姿が日本中をわかせました。
 
技術と工夫の進化
- シューズやウエア、給水の置き方、気象情報の活用など、科学の力で安全性と記録が向上。
 - 観戦も、テレビやネットでコース全体の動きを追えるようになりました。
 
駅伝とのちがい(おさらい)
- 駅伝はたすきをつないで走るチーム競技。
 - マラソンはひとりで完走を目指す個人競技。でも沿道の応援はみんなの力をつなぐ“見えないたすき”。
 
4.42.195kmを身近に感じる・安全に楽しむ
距離のイメージ早見表
| たとえ | およその回数・長さ | メモ | 
|---|---|---|
| 学校の200mトラック | 約211周 | 休み休み計算しても長い! | 
| 家のまわり1kmコース | 約42周 | 近所の安全な道で想像してみよう | 
| 歩数(歩幅70cmと仮定) | 約6万歩 | 一歩一歩の積み重ねが大記録に | 
| 自転車なら | 約2時間(ゆっくり) | 走るのがどれほど大変かわかる | 
| 山手線の半分くらい | およそ半周強 | 都市の広さを実感(目安) | 
※ 数値はイメージ用の目安です。
コースの地形で変わる走りやすさ
| 地形 | 走りのポイント | 例 | 
|---|---|---|
| 坂道(上り) | 歩幅を小さく、腕をやや大きくふる | 橋やトンネルの出入口 | 
| 坂道(下り) | 体を起こし、かかとに体重を乗せすぎない | 河川ぞいのくだり | 
| 直線が長い | ペースを一定に、給水のタイミングを決める | 海沿いの道路 | 
| カーブが多い | ぶつからないよう外側から安全に | 市街地の細い道 | 
小学生の安全な「はじめの一歩」
- まずは1km・2kmから。走る前後は準備運動・整理運動。
 - 速く走るよりゆっくり長く。息が弾むけれどお話できるくらいが目安。
 - 水分補給はこまめに。暑い日は帽子、寒い日は手袋。
 - 足に合う運動ぐつを。ひもはしっかり結ぶ。夜は反射材で安全に。
 - 家族や友だちと並んで走らない(道いっぱいに広がらない)。
 
体と心をととのえるコツ
- 走る日は早寝早起き、ごはんは消化のよいものを少し早めに。
 - 休む日も大切。体を休めることで強くなる=休養も練習。
 - 目標は「前回より少し長く」「歩かずに走れた時間をのばす」など、小さく分けて達成。
 - 苦しくなったらいったんスピードを落とす。歩いて呼吸をととのえてもOK。
 
あると安心!持ち物チェック
- 帽子/日よけタオル
 - 小さなドリンク(こぼれにくいキャップ)
 - 絆創膏(まめ対策)
 - 反射バンド(夕方)
 - 連絡先メモ(家族の電話番号)
 
ペース配分のいちれんの流れ(例:2km)
- 0〜400m:とてもゆっくり。体をあたためる。
 - 400〜1600m:一定の調子。息が弾むけど話せるくらい。
 - 1600〜1800m:少しだけスピードを上げる。
 - 1800〜2000m:笑顔でゴール!その後は歩いて呼吸を整える。
 
5.もっと深く知る:Q&A・用語・年表・自由研究
Q&A:よくある疑問
- Q1:どうして42.195kmは変わらないの?
A: 20世紀はじめに国際競技の基準として決まり、世界中の大会がその長さを守っているからです。 - Q2:歩いたら失格?
A: 競歩ではなくマラソンなので、歩いても失格にはなりません。ただし競技としてはできるだけ走り続けるのが目標。 - Q3:雨や暑さのときは?
A: こまめな給水、体温調整、帽子や日よけが重要。大会側も時間をずらしたり、給水所を増やしたりします。 - Q4:子どもは何kmまで?
A: 体のようすを見ながら短い距離から。無理は禁物。学校や地域の指導にしたがい、家族といっしょに安全第一で。 - Q5:速くなるコツは?
A: 週に2〜3回、短い距離を同じ調子で走る習かんを作ること。走らない日は筋トレやストレッチ。 - Q6:食べ物は何がいい?
A: 走る前は消化のよい主食(ごはん・パン)を少しだけ。走った後は水分・たんぱく質で回復。 - Q7:ケガを防ぐには?
A: 靴を足に合わせ、急に距離を増やさない。痛みが出たら休むが最優先。 - Q8:記録はどう付ける?
A: カレンダーに距離・時間・体調を書くだけでOK。成長が見えて楽しくなります。 
用語辞典(やさしい言葉)
- ペース:自分に合った速さの調子。速すぎず遅すぎず、同じ調子で進むこと。
 - 給水:走りながら水や飲み物をとること。体温調整と安全の要(かなめ)。
 - 関門:コース上の時間制限地点。安全のため、一定時間をすぎると走れなくなる場所。
 - スパート:さいごに力を出して速くすること。ゴール前の見どころ。
 - 折り返し:決められた地点でUターンしてもとの道を戻る形式。
 - ラップ:ある区間ごとのかかった時間。自分の調子を知るヒント。
 
年表・雑学ミニ表
| 年・できごと | ポイント | 
|---|---|
| 1896 アテネ | 近代オリンピックでマラソン実施。約40km | 
| 1908 ロンドン | ウィンザー城→競技場の設定で42.195kmに | 
| 1920年代はじめ | 国際競技の標準距離として定着 | 
| 1984 ロサンゼルス | 女子マラソンが正式種目に | 
自由研究アイデア
- 身近な道で1kmコースを作り、家族と一定の調子で走った時間を記録。
 - 気温・風・坂の角度で、走りやすさの違いを観察。
 - オリンピックや地元大会のコース図を調べ、名所や高低差(坂)を地図にまとめる。
 - 42.195kmを分割して、毎日すこしずつ走り「合計でフルマラソン」を達成するチャレンジも楽しい!
 
6.やってみよう!7日間のやさしい練習プラン(入門)
- 1日目:歩く+ゆっくり走る10分(1分走って1分歩く×5)
 - 2日目:休む(ストレッチ)
 - 3日目:連続で8〜10分ゆっくり走る
 - 4日目:休む(なわとび・体幹あそび)
 - 5日目:1kmにチャレンジ(タイムは気にしない)
 - 6日目:休む(早寝・ごはん)
 - 7日目:1km+100mだけスピードを上げてみる
 
ポイント:苦しくなる前に止めること。楽しく終わると「またやりたい!」につながります。
7.観戦と応援の見どころ(家族で楽しむ)
- 先頭のかけひき:速さを上げ下げして相手の力を試す場面。
 - 給水の上手さ:飲み方ひとつで後半の走りが変わる。
 - 坂や向かい風:姿勢や足の運びの工夫に注目。
 - 応援のコツ:名前やゼッケンの番号をよんで声をかけると、走る人は元気爆上がり! 手をたたくリズムも力になります。
 
まとめ:一歩ずつ、物語のゴールへ
マラソンの42.195kmは、伝説から生まれ、街や人の思いとともに育まれてきた世界共通の距離です。長い道のりは、小さな一歩の積み重ねでしか進めません。
安全に楽しく、少しずつ自分の記録をつくっていきましょう。学んだ歴史や雑学を家族や友だちと語り合えば、観るのも走るのも、もっと好きになります。あなたの一歩から、新しい物語がはじまります。

 
