「どうして人は言葉で話したり、文字で気持ちを伝えられるの?」——その答えは、体のしくみ(息・声帯・舌)、脳のはたらき、表情や手ぶり、そして文字やルールが育ってきた長い歴史の重なりにあります。このページでは、ことばの科学とコツを、やさしい言葉と表でたっぷり解説します。自由研究、学級活動、朝学習にも使える練習メニューつき!
言葉ってなに?なぜ大切?
言葉は「気持ちと考え」を運ぶ道具
- 「うれしい」「ありがとう」「ごめんね」など、心の中の思いを形にするのが言葉です。
- 言葉にすることで、勘違いやケンカが減り、協力しやすくなります。
言葉があると社会が動く
- 話し合いで役割分担・順番・ルールが決められる。
- 授業の発表、買い物、約束、手紙、ニュース——毎日の仕組みは言葉でできています。
世界の言葉はとっても多い
- 世界には7000以上の言語があると言われます。言葉は、その土地の暮らしや文化が育てた宝物です。
ミニポイント:言葉がなかったら?——危険を知らせるのに時間がかかり、助け合いが難しくなります。言葉はみんなをつなぐ「見えない橋」。
体と脳で作る「話す・聞く・読む・書く」
声はどう生まれる?(息→声→ことば)
- 息:鼻や口から入った空気を肺でたくわえ、外へ出す。
- 声帯:のどの奥の声帯がぶるぶるふるえて「声のもと(音)」になる。
- 口の形:舌・くちびる・上あご・下あごで音を**ことばの音(あ・か・さ…)**に作り分ける。
からだのしくみ早見表
| 部位・はたらき | 具体例 | ひみつポイント |
|---|---|---|
| 鼻・口・肺 | 息を作り外へ出す | 息の量や速さで声の大きさ・高さが変わる |
| 声帯 | ふるえて音になる | 緊張すると固くなり声が出にくい |
| 舌・くちびる・あご | 音を作り分ける | 舌先・舌の横・舌の根の使い分けがコツ |
| 耳・鼓膜 | 音をとらえる | 小さな音も集めて脳へ届ける |
| 脳 | 言葉を選び体へ合図 | 「目的」「相手」「順番」を考える司令塔 |
脳はどう考えて、どう話す?
- 考える:伝えたい内容をまとめ、言葉を選ぶ。
- 合図を出す:口・舌・声帯に「こう動いて」と指令。
- 理解する:耳から入った音を意味として組み立てる。
コツ:会話は「きく→考える→はなす」のくり返し。最初に結論、次に理由、最後にお願い・感謝の順で話すと伝わりやすいよ。
ことばの音をもっとくわしく
- 母音:あ・い・う・え・お。口の形で響きが変わる。
- 子音:k・s・t など。舌や唇の当て方で作る。
- はっきり発音の練習:ゆっくり大きく口を動かす→だんだん速く。
発音トレーニング(30秒)
- ま・み・む・め・も/ら・り・る・れ・ろ をゆっくり→普通→少し早く。
- 早口ことば:赤巻紙・青巻紙・黄巻紙(3回)
正しい姿勢と呼吸で声が安定
- 背すじを伸ばす/両足を床に/おなかで息を出す。
- 1文を10秒以内にすると聞き手も楽。
言葉だけじゃない!たくさんの伝え方
表情・手ぶり・姿勢(言葉を使わない伝え方)
- にっこり笑う、うなずく、手を振る、肩をすくめる——言葉がなくても気持ちは伝わる。
- 目を見て、体を相手に向けるだけで「聞いています」のサイン。
手話・点字・やさしい日本語
- 手話:手・指・表情で表す言語。耳が聞こえにくい人にとって大切なことば。
- 点字:指でさわって読む文字。小さな点の組み合わせ。
- やさしい日本語:短い文・やさしい語でだれにでも伝わる工夫。
絵・音楽・図・映像・手紙
- 色・形・リズム・動きで気持ちを伝えられる。
- 手紙やメモは相手のペースで読めて親切。
伝え方のちがいをくらべよう
| 方法 | 使うもの | いいところ | 気をつけること | ぴったりの場面 |
|---|---|---|---|---|
| 会話 | 声・耳 | 早く細かく伝わる | 早口・言いすぎに注意 | 相談・話し合い |
| 表情・身ぶり | 顔・手・体 | 年齢や国をこえて伝わる | 誤解も起こる | あいさつ・応援 |
| 手話 | 手・指・表情 | 視覚ではっきり伝わる | 学ぶ必要がある | 学校・公共の場 |
| 点字 | 指先・点字板 | 見えなくても読める | 道具が必要 | 本・案内表示 |
| 絵・音楽・図 | 色・音・形 | 感情を豊かに伝える | 受け取り方に幅 | 発表・表現 |
| 手紙・メモ | 紙と筆記具 | 落ち着いて伝えられる | 誤字に注意 | 依頼・お礼 |
| デジタル | 端末 | 遠くの人とすぐ連絡 | 言い方と安全 | 連絡・共同作業 |
合言葉:にこにこ・ゆっくり・みじかく・やさしく(伝え方の4原則)
言葉の歴史と世界の多様性
ことばはどう生まれた?
- 大昔:身ぶり・叫び・歌で合図。
- 共同生活で情報を伝える必要が増え、音と意味、並べ方(文のルール)が育つ。
- 文字の発明で、考えを時間と場所をこえて残せるように。
年表で見る「伝え方の進化」
| 時代 | できごと | 伝え方の進化 |
|---|---|---|
| 太古 | 身ぶり・声 | 合図で危険・気持ちを知らせる |
| 古代 | 文字の発明 | 話し言葉が書き言葉に |
| 中世〜近世 | 紙・本の広まり | 知恵がたくさんの人へ |
| 近代 | 電話・放送 | 遠くへ声が届く |
| 現代 | インターネット | 世界中と一瞬で交流 |
日本語の特色(ひらがな・カタカナ・漢字)
- ひらがな:やわらかい音を表しやすい。
- カタカナ:外から来た言葉や音を表すのに便利。
- 漢字:意味が一目で分かりやすい。三つを使い分ける力が日本語の強み。
今日からできる!上手な伝え方(話す・聞く・読む・書く)
話す:一文は短く、順番をそろえる
- 結論→理由→お願い・感謝の3ステップ。
- 主語と相手を明確に:「わたしは…」「あなたはどう思う?」
- 声はおなかから、ゆっくり・はっきり。
聞く:うなずき・くり返し・要約
- うなずき・あいづち(「なるほど」「たしかに」)。
- 言いかえ確認:「つまり、〜ということ?」
- 最後に要点まとめ:「では、あした8時集合でOK?」
読む:大事な言葉に線、見出しで整理
- どんな目的で読んでいるかを意識。
- わからない言葉は前後の文から推理。
書く:だれに・なにを・どうして・どうしてほしい
- あいさつ→用件→ていねいな言い回し→しめくくり。
- 誤字チェックは声に出して読むと見つかりやすい。
場面別・会話レシピ(そのまま使える)
| 場面 | よくある言い方 | やさしい言い方 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 友だちをさそう | 「来る?」 | 「明日の放課後、一緒に図書室で本を選ばない?」 | 時間・場所・内容をセットで |
| 注意したい | 「それダメ!」 | 「安全のために、ここでは走らないでね」 | 目的を先に |
| 断りたい | 「ムリ」 | 「今日は予定があるから、明日ならできるよ」 | 代案を添える |
| けんかのあと | 「悪かった」 | 「さっきは言いすぎた。悲しい気持ちだった。ごめんね」 | 事実+気持ち+あやまり |
| 困っている人に | 「どうしたの?」 | 「手伝えることある?カバン持とうか」 | 具体的に提案 |
| 先生に質問 | 「わからない」 | 「ここ(教科書のこの文)の意味を、もう一度ゆっくり聞きたいです」 | 指さし・ページ指定 |
| 電話・オンライン | 「聞こえる?」 | 「今、声は聞こえています。資料の3ページを見ています」 | 状況を言葉で共有 |
困ったときのヒント
| 困りごと | やってみること |
|---|---|
| 緊張して話せない | 深呼吸→目線を上げる→メモを1行ずつ読む |
| ことばが出ない | 3語メモ(時間・場所・お願い)を先に用意 |
| 空気がピリピリ | いったん休む→事実だけ→気持ちを「私は」で伝える |
| 長くなりがち | 一文10秒ルール/不要な言い直しを減らす |
デジタル時代の伝え方(安全・やさしさ)
ネットの5ルール
- 名前・住所・写真をかんたんに出さない。
- いやな気持ちになる言い方はしない・広げない。
- 困ったら大人に相談。
- 相手の時間を考えて送る(夜おそくは控える)。
- 送る前に深呼吸1回(読み返して確認)。
絵文字・スタンプのコツ
- たくさん使いすぎると意味がぼやける。最後に1つが目安。
- 冗談は会っているときのほうが伝わりやすい。
だれにでも伝わる工夫(インクルーシブ)
- ゆっくり、はっきり、短い文で。
- 漢字にはふりがな/図や写真をそえる。
- 指さし・メモ・ジェスチャーを使う。
- 手話のあいさつを1つ覚えてみる。
小さな配慮が大きな安心に。みんなが参加できる場を作ろう。
自由研究・観察アイデア(すぐできる)
- 1日の会話観察:家族のあいづち回数と会話の長さをグラフ化。
- 言いかえ実験:同じ内容を「命令形/お願い形/質問形」で伝え、反応の違いを記録。
- 非言語だけで伝えるチャレンジ:ジェスチャーのみでお題を伝える(だれが最短で当てるか)。
- 早口ことばトレ:毎日30秒×2週間。録音して聞きやすさを自己評価。
- 多言語あいさつ集め:5か国のあいさつを調べ、音の似ている点・違いを比べる。
観察メモテンプレート
- いつ:______/どこで:______/だれと:______
- 目的:______
- 使った伝え方(○で囲む):会話/表情/手ぶり/手紙/図/デジタル
- うまくいった点:______ 工夫したい点:______
10問ミニクイズ(○×)
- 声は息が声帯をふるわせて生まれる。……( )
- 会話は「話す」だけできればうまくいく。……( )
- ひらがな・カタカナ・漢字を使い分けるのが日本語の特色。……( )
- 表情や手ぶりは、言葉がなくても気持ちを伝えられる。……( )
- 一文はなるべく長いほうがていねい。……( )
- デジタルでの連絡は、送る前に読み返すとよい。……( )
- 文字は、遠くの人や未来の人にも伝えるために役立つ。……( )
- 困ったら大人に相談するのはNGである。……( )
- やさしい日本語は、短い文・やさしい語で伝える工夫。……( )
- うなずきやあいづちは聞き手の合図として大切。……( )
こたえ:1○ 2× 3○ 4○ 5× 6○ 7○ 8× 9○ 10○
Q&A(よくある質問)
Q1. 赤ちゃんはどうやって言葉を覚えるの?
A. 周りの人の声をたくさん聞き、まねし、ほめられて語いが増えます。「語りかけ」「読み聞かせ」が近道。
Q2. 方言ってなに?
A. 地域ごとの言い方のちがい。方言はその土地の大切な文化です。
Q3. 二つの言語を同時に学んでも大丈夫?
A. 大丈夫。よく聞き、使う機会があればどちらも伸びます。混ざる時期があっても心配いりません。
Q4. 文字がなくても暮らせる?
A. 会話はできますが、遠くや未来へ正確に伝えるには文字が便利です。
Q5. 緊張して声が小さくなる…
A. おなかから息。最初の一文を暗記。ゆっくり・はっきりを意識。
Q6. けんかの後、なんて言えばいい?
A. 「さっきは言いすぎた。悲しい気持ちだった。ごめんね」——事実+気持ち+あやまりをセットで。
Q7. 手紙とメール、どっちがよい?
A. ゆっくり伝えたい・形に残したいなら手紙。急ぎや確認ならメールやメモ。
Q8. 外国の人に伝えるコツは?
A. ゆっくり・短い文・やさしい言葉・図や写真・指さし。笑顔も大事。
Q9. 話が長いと言われる…
A. 一文10秒・3項目まで・「結論→理由→お願い」で整理しよう。
Q10. 聞いてくれないと感じる…
A. 相手の名前を呼ぶ・目を合わせる・要点を1つに絞る・タイミングを変える。
用語じてん(やさしい言いかたで)
- 声帯(せいたい):のどの中の小さなはりのような部分。ふるえて声になる。
- 発音:音をはっきり出すこと。舌・くちびるの動きが大切。
- 語い:知っていて使える言葉の数。
- 文法:言葉をならべるきまり。伝わりやすさの土台。
- 非言語:言葉を使わない伝え方(表情・手ぶり・視線など)。
- 手話:手や指・表情で表す言語。目で見て理解する。
- 点字:指でさわって読む文字。小さな点の組み合わせ。
- 傾聴(けいちょう):相手の気持ちに寄りそって、ていねいに聞くこと。
- やさしい日本語:だれにでも伝わるように、短く分かりやすく言いかえる日本語。
- 要約:大事なところだけを短くまとめること。
まとめ:言葉は人と人、心と心をつなぐ力
- 言葉は気持ちと考えを運ぶ魔法の道具。
- 体(息・声帯・舌)と脳が協力して、会話が生まれる。
- 表情・手ぶり・手話・点字・図・手紙・デジタルなど、伝え方はたくさん。
- にこにこ・ゆっくり・みじかく・やさしくを合言葉に、今日から実践!
小さな一言が、だれかの一日を明るくします。まずは「ありがとう」から。
おまけ:ワークシート&チェックリスト
きょうの会話ふり返り
- うれしかった一言:______________
- やさしい言いかえ:______________
- 明日ためす会話のコツ(1つ):______________
チェックリスト(できたら✓)
- 結論→理由→お願いの順で話した
- うなずき・あいづちで聞いた
- 一文10秒を守った
- 送る前にメッセージを読み返した
- 誰にでも伝わる言い方をえらんだ


