避難生活では、生理・衛生・着替え・防犯・プライバシーといった女性特有のニーズが同時多発で押し寄せます。加えて、避難所は過密・騒音・光漏れ・限られた水資源という制約が重なり、「手早く・清潔に・目立たず・安全に」が合言葉になります。
本ガイドは、女性が今日そのまま真似できる持ち物リストと数量、使い方、収納の小ワザ、避難所での立ち回り、さらに妊娠/授乳・更年期・持病への配慮までを実務目線で網羅しました。印刷してチェックリストとしても使えます。
1. 女性の防災グッズ基本セット(7日分を基準に)
生理・衛生の必需品(1人・7日)
- ナプキン/タンポン:周期に関わらず多め(昼用14〜20枚・夜用7〜10枚、タンポン10本目安)。
- おりものシート:7〜14枚。汗・蒸れ対策に。
- 布ナプキン/月経カップ:水が限られても消臭袋+アルコール併用で管理可。
- ウェット/ボディシート:大判×7〜10枚入り×1〜2袋。無香料推奨(周囲配慮)。
- 除菌アルコール・手指消毒ジェル:携帯30〜50ml×2、据え置き300ml×1。
- 歯みがきシート/マウスウォッシュ:1日2回×7日分。個包装だと配布しやすい。
- 消臭袋(不透明):20〜30枚。中身が見えない色を選ぶ。
数量早見表|生理・衛生
| 期間 | 昼用ナプキン | 夜用ナプキン | タンポン | おりものシート | 消臭袋 | ボディシート |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3日 | 6〜9 | 3〜4 | 4〜6 | 3〜6 | 9〜12 | 1袋(小) |
| 7日 | 14〜20 | 7〜10 | 10 | 7〜14 | 20〜30 | 1〜2袋 |
| 14日 | 28〜36 | 14〜20 | 20 | 14〜28 | 40〜60 | 2〜3袋 |
衣類・下着・快適装備(動きやすさ×目隠し)
- 速乾下着:ショーツ3〜4、吸水ショーツ1〜2、ブラトップ/カップ付き2〜3。
- レギンス/ルームウェア:伸縮・速乾。ワンマイルで外出もOKな色味。
- ソックス:厚手×2、薄手×2。冷え/汗の両対策。
- 大判ストール/ポンチョ:目隠し・保温・授乳カバーに多用途。
- ネックウォーマー/スリッパ:就寝時の冷え対策に。
衣類ミニ表|7日/1人
| アイテム | 数量 | 備考 |
|---|---|---|
| 速乾ショーツ | 3〜4 | 夜干し→朝乾く素材 |
| 吸水ショーツ | 1〜2 | 夜間・多い日に安心 |
| ブラトップ | 2〜3 | 着替えやすく洗濯も簡単 |
| レギンス/パンツ | 1〜2 | 伸縮・速乾 |
| ストール/ポンチョ | 1 | 目隠し/保温/日除け |
プライバシー・防犯・貴重品管理(見えない・触れさせない)
- アイマスク・耳栓:睡眠の質を確保。ランタンは壁反射で眩しさ軽減。
- 防犯ブザー/ホイッスル:外ポケットの即取り出し位置。
- 鍵付きミニポーチ/南京錠:貴重品・生理用品の視線対策。黒/濃色推奨。
- 小型LEDライト:手元+足元を同時に照らせる角度で常備。
医薬品・フェムケア(体調の“いつも”を持ち出す)
- 常備薬:鎮痛解熱、胃腸薬、整腸剤、アレルギー薬、婦人科で処方中の薬。
- 生理痛対策:鎮痛薬、温感パッチ、カイロ(低温やけどに注意)。
- スキンケア:ワセリン/バーム(摩擦対策)、低刺激クリーム。
- その他:携帯ビデ(ポータブル洗浄器)、ミニミラー、コンパクトブラシ、ヘアゴム。
2. 生理・衛生のマネジメント(水が貴重でも清潔に)
“水量別”クリーニング・モード
- 水0モード:ボディシート→乾いたタオルで押さえる→衣類交換。ニオイ対策は消臭袋で二重。
- 少水モード(500ml前後):携帯ビデで局所リンス→アルコール拭き→乾燥。手は消毒→水の順。
- 十分水モード:手洗い・うがい・簡易洗濯。折り畳みバケツがあると効率的。
月経カップ/布ナプキンの運用ポイント
- カップ:手指消毒→装着/取り外し。アルコール拭き→少量の水でリンス。可能な場面で煮沸(在宅時)。
- 布ナプ:使用後は密封袋で持ち帰り。酸素系漂白剤は在宅復帰後に。
捨て方・見せない工夫・皮膚トラブル回避
- 消臭袋→ジップ袋の二重化で漏れ・臭い・視線をブロック。
- かぶれは通気ショーツ+おりものシートを短時間で交換。
- 摩擦部(太もも内側・アンダー)にワセリン薄塗り。
口腔ケア・ドライヘアの小ワザ
- 歯みがきシート/マウスウォッシュ:朝・就寝前に固定しリズムを守る。
- ドライシャンプー:根元→側頭→後頭、最後にタオル吸い取り。汗拭きは上から下へ一方向。
3. 防寒・着替え・睡眠の快適化(狭い・硬い・寒いに勝つ)
レイヤリング(季節・年齢を問わず効く)
- ベース:速乾インナー(汗冷え防止)。
- ミドル:フリース/スウェット。
- アウター:ウィンドブレーカー/レイン。
- 足元:厚手ソックス+レッグウォーマー。カイロは腰/お腹/足首。
季節別の微調整
| 季節 | 追加/工夫 | 時間帯のコツ |
|---|---|---|
| 夏 | 扇子/ハンディ扇、汗拭き強化、薄手長袖で日避け | 昼は活動を短く、朝夕に移動 |
| 梅雨 | 速乾衣類・替え靴下増量、除湿剤 | 濡れ物は即ジップ袋へ |
| 冬 | 断熱マット/アルミシート、ネックウォーマー | 就寝1h前カイロで入眠促進 |
目隠ししながら“素早く”着替える
- 大判ストール/ポンチョで肩〜胸元を覆う→内側に新しい服を先に通す→外側を脱ぐ。
- 上下1セットを圧縮袋で1日分パック化。取り出し・収納が秒で完了。
睡眠環境の底上げ(省スペース)
- 床断熱:バスタオル→衣類→アルミシート→ブランケットのサンド構造。
- 光・音:アイマスク+耳栓。ランタンは壁反射で間接光。
- 枕:エアピロー or タオルロールで首カーブに合わせる。
4. プライバシーと防犯の設計(避難所で自分を守る)
プライバシー確保の小ワザ
- ロープ+S字+タオルで即席パーテーション。出入口側は二重にして視線を緩和。
- 女性同士の島を作り、就寝帯サイン(小声・暗色ライト)を掲示。
- 目立たない色の収納袋で動線上の視線をカット。
防犯行動の基本(習慣にする)
- 周囲と名前で挨拶し、顔見知りを増やす(抑止力)。
- 貴重品は分散(身・枕元・リュック内ポケット)。
- 違和感を覚えたら距離を取り、ブザー/ホイッスルに手をかける。
夜間の安全チェック
- 枕元にライト・ブザー・携帯。通路側は荷物で塞がない。
- 一人行動を避ける。トイレは複数で、明るい通路を選ぶ。
相談・要望の伝え方テンプレ
- 事実→気持ち→お願い:「夜間の光が眩しく感じます。壁向きにしていただけると助かります。」
- 管理者へ:「女性用スペースの仕切りをもう一枚追加できないでしょうか。素材はタオルでも大丈夫です。」
5. 女性が特に備えるべき+数量目安・パッキング・プラン
7日分の数量目安(1人)
| カテゴリ | 品目 | 数量 | メモ |
|---|---|---|---|
| 生理 | 昼用/夜用/タンポン | 14〜20/7〜10/10本 | 周期外でも“多め”が鉄則 |
| 衛生 | ボディシート/消臭袋 | 1〜2袋/20〜30枚 | 無香料・不透明袋 |
| 下着 | 速乾ショーツ/吸水ショーツ | 3〜4/1〜2 | 夜間・多い日に吸水 |
| 快適 | ストール/カイロ | 1/10〜14 | 体幹・足首を温める |
| 防犯 | ブザー/小型ライト | 各1 | 外ポケット固定 |
| 口腔 | 歯シート/マウスウォッシュ | 14枚/7回分 | 朝・夜の2回固定 |
| 医薬 | 鎮痛/胃腸/アレルギー薬 | 必要量 | 服薬中の薬は最優先 |
ライフステージ別の加点アイテム
| 状況 | 追加すると楽 | 注意点 |
|---|---|---|
| 妊娠中 | 母子手帳、マタニティ帯、ノンカフェイン温飲、むくみ対策ソックス | 冷え・転倒防止、無理な長時間立位を避ける |
| 授乳期 | 授乳ケープ(代用可:大判ストール)、乳頭ケアクリーム、使い捨てパッド | こまめな水分、搾乳用ジップ袋 |
| 更年期 | 速乾インナー、保冷ジェル、カフェイン調整 | 急なホットフラッシュ対策に重ね着 |
| 持病 | 服薬7〜14日分、処方内容の控え、保険証コピー | 薬はリュック最上段で瞬時に出す |
パッキング設計(上中下3層+外ポケット)
- 上段:貴重品・薬・防犯ブザー・ライト・1日分パック。
- 中段:ボディシート、下着パック、ストール、カイロ。
- 下段:衣類・アルミシート・ブランケット。
- 外ポケット:アルコール、ティッシュ、ホイッスル、ミニライト。
在宅/避難所/車中泊での“置き方”
| シーン | 置き方 | 注意 |
|---|---|---|
| 在宅 | 寝室・洗面・玄関に分散。目録を扉裏へ | 補充日を月1で固定 |
| 避難所 | 区画端に仕切り、枕元=薬/ブザー/ライト | ランタンは壁反射、火気厳禁 |
| 車中泊 | ヘッドレスト後ろポーチ、足元は空ける | 換気・一酸化炭素対策、温冷差調整 |
アクションプラン(24h/72h/7日)
- 24h:生理・衛生1日分パック×7作成→ブザー/ライトを外ポケットへ→枕元に耳栓/アイマスク固定。
- 72h:数量表どおり7日分へ増強→パッキング上中下を整え→要望テンプレをメモ保存。
- 7日:在宅/避難所/車中泊の置き方を家族と共有→補充日をカレンダー登録。
まとめ|女性のための防災は“清潔・快適・安全”の三本柱
災害時は、水が少ない・人目が多い・時間がないの三重苦。だからこそ、1日分パック化、見えない収納、素早く着替えられる装備、そしてプライバシーと防犯の仕組み化が効きます。
加えて、妊娠/授乳・更年期・持病などライフステージ別の加点で、より実態に合った安心が得られます。上の表とプランをそのまま写すだけで、避難先でも清潔を保ち、暖かく眠れ、安心して過ごせる環境が作れます。いま、リュックを開き、7日分の女性向けセットを整えておきましょう。


