まず結論:1人1日“5回+安全係数20〜40%”が基本
1日の目安回数(大まかな基準)
小:4回/大:1回=合計5回/人・日を標準とし、**安全係数+20%を上乗せして備蓄する。猛暑・寒波・体調不良・乳幼児や高齢者がいる家庭、通院や服薬がある場合は+30〜40%**で見積もると安心。個人差はあるが、迷ったら多めが原則。
“袋・凝固剤=1回分”の考え方
簡易トイレは1回=吸収凝固剤+防臭袋1枚が基本単位。凝固剤の**吸収量(例:600〜800mL/包)と、袋の遮臭性能(多層・口止め)**を確認し、1回で1包+1袋を原則にする。におい・衛生を最優先すれば、少量でも回数を分けて交換した方が暮らしやすい。
まず決める三要素
1)人数(常住+平日昼に家にいる人数)。
2)日数(ライフライン不通を想定:最低3日、推奨7〜14日)。
3)回数(5回×日数×人数×安全係数)。
気温・飲水で変わる回数の調整
状況 | 飲水/発汗 | 目安回数の調整 |
---|---|---|
猛暑・発汗多い | 飲水増 | +1回/人・日 |
寒波・暖房少 | 飲水減 | −1回/人・日もあり(便秘に注意) |
発熱・下痢 | 体液喪失 | +2〜3回/人・日 |
計算式と早見表|人数×日数を“回数”に変換する
基本式(電卓いらずの形)
必要回数 = 人数 × 日数 × 5 × 安全係数
安全係数は通常1.2/配慮あり1.3〜1.4。端数は切り上げ。
換算人数の考え方(家族構成に応じて)
区分 | 係数(目安) | 備考 |
---|---|---|
大人 | 1.0 | 通常時 |
小学生 | 0.8 | 体格・在宅時間で調整 |
幼児 | 0.7 | おむつ併用考慮 |
乳児 | 0.6 | 交換頻度は別管理 |
高齢者 | 1.2 | 夜間回数増を見込む |
例:大人2+子1、7日間(安全1.3)
2.0(大人)+0.8(子)=2.8人換算 × 7日 × 5回 × 1.3=127.4 → 128回。
早見表(安全係数1.2の標準)
人数\日数 | 3日 | 7日 | 14日 |
---|---|---|---|
1人 | 18回 | 42回 | 84回 |
2人 | 36回 | 84回 | 168回 |
3人 | 54回 | 126回 | 252回 |
4人 | 72回 | 168回 | 336回 |
5人 | 90回 | 210回 | 420回 |
(※計算=人数×日数×5×1.2/端数切上げ) |
吸収量別の“1包で何回”の目安
凝固剤吸収量 | 小のみ運用 | 大も同袋で受ける | 注意点 |
---|---|---|---|
400mL/包 | 小1回=1包 | 大1回=1包(別袋推奨) | 夏場はにおい早め |
700mL/包 | 小2回=1包(短時間) | 大1回=1包 | 原則1回1包が衛生的 |
1000mL/包 | 小2〜3回=1包(短時間) | 大1回+追い小可 | 重量に注意 |
※臭気・衛生の点から、原則1回1包を推奨。 |
昼夜の利用ピークを考えた配分(7日分の袋の例)
時間帯 | 目安回数の比率 | 7日×4人の袋配分例 |
---|---|---|
朝(起床〜出発) | 30% | 42回中13回 |
昼(在宅者中心) | 25% | 11回 |
夕(帰宅後) | 25% | 11回 |
夜(就寝前・夜間) | 20% | 7回 |
(※在宅パターンに応じて調整) |
ケース別補正|乳幼児・高齢・女性・体調不良・通院中
乳幼児・小児がいる家庭
- 換算係数:乳児0.6/幼児0.7/小学生0.8。
- おむつ併用:固形は袋、尿はおむつ→袋でまとめると交換回数を減らせる。
- におい対策:活性炭シートや重曹を袋の内側に薄く撒く。哺乳瓶・離乳食の洗浄用水を別途確保。
高齢者・介護が必要な家族
- 回数:小5〜7/大1〜2で多めに計算。
- 段差なし配置:洋式便座型の簡易台+手すりを用意。
- 皮膚トラブル対策:おしり拭き・保湿剤・防水シートを回数×2で備蓄。
女性の生活週間・体調変化
- 生理期間:尿回数+1/日の上乗せ。
- 別袋運用:生理用品用の黒色防臭袋を小分け。
- におい・衛生:薄荷油のティッシュを袋の口に添えると軽減。使い捨て下着も便利。
体調不良・下痢・嘔吐がある場合
- 安全係数を1.4〜1.6へ。
- 嘔吐物も凝固剤で処理し、二重袋で密閉。
- 電解質飲料を回数÷5本の目安で予備。体温計・記録用紙も準備。
服薬・通院中の家族
- 利尿薬:小の回数**+1〜2/日**を上乗せ。
- 便秘薬・整腸剤:水分と一緒に予備。
- 記録:袋に日付・回数をマジックで記すと、体調の変化に気づける。
品目別の選び方と在庫設計|“1回セット”を数で持つ
最低限のセット(1回分)
- 吸収凝固剤 1包(吸収量600mL以上推奨)。
- 防臭袋 1枚(厚手・多層・口止め付)。
- 汚物袋(外袋) 1枚(黒色・10〜20L)。
あると安心の追加品
- 便座一体型の簡易スタンド(安定・姿勢が楽)。
- ペーパー/おしり拭き(肌ケア優先)。
- 粉末重曹・消臭シート(臭気対策)。
- 使い捨て手袋・エプロン・紙マスク(交換時の衛生)。
- 除菌用アルコール・消毒用ウエット(手指・便座周り)。
袋の種類と選び分け(におい・強度・口止め)
種類 | 口止め | 遮臭 | 破れにくさ | 向き |
---|---|---|---|---|
多層厚手 | ジップ | 高 | 高 | 室内保管が長い時 |
厚手ポリ | 結束 | 中 | 中 | 短期交換前提 |
黒色外袋 | 結束 | 視認遮断 | 高 | 屋外一時保管 |
月次ローテーションのコツ(劣化を防ぐ)
- 夏前と冬前に箱を入れ替える(先入れ先出し)。
- 車載分は半量を家に戻して点検。
- “最後の10回分”は触らないと決め、追加購入で補充。
- 紙の在庫表を箱のフタ内側に貼り使用分に丸を付ける。
在庫量と体積の目安
回数 | 凝固剤総量 | 袋の箱サイズ目安 | 置き場所の目安 |
---|---|---|---|
84回(2人×7日×1.2) | 約1.7kg | 靴箱1段 | 玄関の最下段 |
168回(4人×7日×1.2) | 約3.4kg | 押入れ半段 | 押入れ下段手前 |
252回(3人×14日×1.2) | 約5.0kg | 衣装ケース1個 | 寝室クローゼット下 |
(※凝固剤20g/包換算・概算) |
配置と運用:設置→使用→交換→廃棄の流れと注意
設置の基本(3動作)
1)便座・バケツ等に内袋を装着、縁に外袋を折返し重ねる。
2)凝固剤の包を先に少量まき、使用後に残りを入れる。
3)口をねじって結ぶ→外袋へ→二重結びで密閉。
間取り別の設置ポイント
住まい | 設置場所 | ポイント |
---|---|---|
ワンルーム/1LDK | 風下の隅・換気扇近く | 目隠しパネルと足元マット |
戸建て | 洗面所/脱衣所 | 段差解消・手すりの代用品 |
車中避難 | 後部座席足元 | 滑り止めマット・窓少開で換気 |
交換の合図と回収ルール
- におい・重さ・吸収限界のどれかに達したら交換。
- 家の“仮集積”場所を決め、日陰・換気を確保。
- 日付・回数を書いた札を外袋に貼る(衛生記録にもなる)。
廃棄の考え方(非常時)
- 自治体の指示が最優先。可燃・不燃の扱いは臨時ルールになることがある。
- 猫砂や新聞紙の併用で液だれ防止。
- 長期化する場合は**密閉容器(ペール)**で一時保管し、防虫剤を併用。
におい・衛生・虫の対策(段階別)
レベル | 症状 | 先に打つ手 |
---|---|---|
1 | 近づくと少し臭う | 早めの交換・重曹小さじ1 |
2 | 部屋に広がる | 多層袋に変更・活性炭シート |
3 | 隣室にも届く | 二重袋+密閉ペール・換気強化 |
よくある失敗と回避策
失敗 | 何が起きる | 先に打つ手 |
---|---|---|
1包で複数回を常用 | におい・衛生悪化 | 原則1回1包 短時間のみ例外 |
ジップなしの薄袋 | 漏れ・臭気漏れ | 多層・口止め付の袋に統一 |
凝固剤だけ大量購入 | 袋が不足 | 1回セットで数える運用 |
置き場が分散 | 行方不明 | 家族カードに置き場を記載 |
目隠しがない | 利用敬遠・家族渋滞 | つい立て・カーテンを常備 |
まとめ用“逆算ワークシート”(書き写して使える)
ステップ1:家族構成と換算人数
区分 | 人数 | 係数 | 換算人数 |
---|---|---|---|
大人 | 人 | 1.0 | _ |
小学生 | 人 | 0.8 | _ |
幼児 | 人 | 0.7 | _ |
乳児 | 人 | 0.6 | _ |
高齢 | 人 | 1.2 | _ |
合計 | _人 |
ステップ2:日数と安全係数
想定日数 | 安全係数(1.2/1.3/1.4/1.6) | 備考 |
---|---|---|
_ 日 | _ | 夏・冬・通院等 |
ステップ3:必要回数の算出
必要回数=換算人数 × 日数 × 5 × 安全係数= __ 回(切上げ)
ステップ4:在庫と不足の把握
項目 | 現在の在庫 | 必要回数 | 不足 |
---|---|---|---|
凝固剤(包) | _ | _ | _ |
防臭袋(枚) | _ | _ | _ |
外袋(枚) | _ | _ | _ |
消臭材(回分) | _ | _ | _ |
ステップ5:置き場と運用ルール
- 家:玄関下段/寝室クローゼット下。
- 車:助手席下の箱(高温時は移動)。
- 職場:机下の小箱。
- 家族カードに置き場・個数を書いて貼る。
よくある質問(Q&A)と用語辞典(やさしい言い換え)
Q&A(運用の悩みを先回り)
Q1.水が出ない間、1包で小を何回まで?
A.原則1回1包。短時間に限り吸収量700mL以上なら小2回までを目安に。ただし臭気と衛生を優先して早めに交換。
Q2.トイレが1か所しかない。家族が多い。
A.2か所目の簡易台(折りたたみ式)を寝室近くに仮設。夜間の渋滞を避ける。
Q3.便座が冷たくて使いにくい。
A.便座カバー(使い捨て)と足置き踏み台で姿勢が安定し、排泄時間が短縮。
Q4.においが心配。
A.袋の等級を上げる(多層・口止め付)+重曹や活性炭。二重結束で漏れを防ぐ。仮集積は日陰に。
Q5.長期化しそう。保管は?
A.密閉ペールに集約し、日陰・風通しを確保。防虫シートを蓋の内側に貼る。
Q6.賃貸で穴あけができない。
A.床〜天井の突っ張りと結束ベルト、耐震マットを組み合わせ、目隠しカーテンは突っ張り棒で対応。
Q7.車中避難で夜間の交換がつらい。
A.ヘッドライト・静音ポンプ式消毒を常備。使い捨て手袋と袋を就寝前に枕元へ置く。
用語辞典(やさしい言い換え)
- 簡易トイレ:水を使わず、袋と凝固剤で用を足す仕組み。
- 吸収凝固剤:液体を固めてにおいを抑える粉。吸収量で選ぶ。
- 防臭袋:においを通しにくい袋。厚手・多層・口止め付が良い。
- 安全係数:多めに見積もる割合。予想外の増加に備える考え方。
- 二重袋:内袋+外袋で漏れとにおいを対策する方法。
- 仮集積:ゴミ出しまでの一時保管場所。日陰・風通しが良い場所。
まとめ
備蓄は人数×日数×5回×安全係数で回数に変えて考えると、迷いが消える。1回=凝固剤1包+袋1枚を基本単位に、ケース別補正で上乗せし、設置場所・目隠し・仮集積まで含めて運用設計を整える。今日、家族の換算人数と日数を記入し、必要回数を書き出すところから始めよう。