要点先取り:視力を守る“二刀流キット”が最強
まず揃えるのは「眼鏡×2+使い捨てレンズ×3〜7日」
災害時は眼鏡の即時視界と使い捨てレンズの衛生・快適を二刀流で確保する。度数の合う眼鏡2本(普段用+予備)とワンデー3〜7日分(1日=左右2枚×人数)から始めよう。これだけで停電・断水・粉じん・夜間移動に強い視覚環境が作れる。乱視・遠近両用の人は度数メモをキットへ同梱し、代替購入の判断を速くする。
水が止まっても回せる“断水モード”
水なし洗浄(保存液・人工涙液・使い捨て)へ即切替できるよう、個包装ワンデー/保存液ミニ/携帯洗浄液を家・職場・外出の3点に分散。夜間は眼鏡優先、昼間は使い捨てなど時間帯ルールを家族で共有する。
破損・紛失の“即応手順”を紙で携行
眼鏡破損→予備へ/予備なし→ワンデー。レンズ紛失→眼鏡へ。この二段三段の切替手順を名刺サイズのカードに印刷してキットへ。処方度数・PD・乱視軸も同カードに書くと、現地調達が速い。
三原則(分散・回転・可視化)
1)分散:家・職場・外出に最小単位で配備。
2)回転:月末に在庫数え→使った分+1補充。
3)可視化:置き場ラベル×度数カードで迷いゼロ。
非常キットの中身を作る|家・職場・外出バッグの三点配置
必携アイテム(最小構成と理由)
- 度数の合う眼鏡×2本(ケース付き)…即装用・衛生リスクゼロ。片方は古い度でも可。
- ワンデー×3〜7日分(個包装)…断水下の主力。使用後は即廃棄で清潔。
- 保存液ミニ(60〜120mL)+ケース(2week/1month派)…水道水を使わない洗浄・保管。
- 人工涙液(防腐剤なし)…乾き・異物感の軽減。共有せず個々に。
- メガネ拭き・使い捨てコットン…粉じん払拭→やさしく拭くの順で傷を防ぐ。
- マスク+防塵ゴーグル…粉じん・煙・風から角膜を守る。眼鏡上から装着可の型を。
- 応急修理セット(鼻パッド・極小ねじ・ミニドライバー・細ワイヤ・テープ)…現場復旧に有効。
置き方のコツ(重複ではなく“役割分散”)
- 家:玄関下段に予備眼鏡+ワンデー3日+洗浄液小+ゴーグル。
- 職場:机の一段目に古い度の眼鏡+ワンデー2日+人工涙液。
- 外出:薄型ポーチにワンデー1日+人工涙液+洗浄液小+マスク。
キット構成チェック表(書き換えて使う)
区分 | 品名 | 目安 | 置き場所 | 補足 |
---|---|---|---|---|
眼鏡 | 予備フレーム | 1本 | 家/職場 | 度数ラベル添付 |
使い捨て | ワンデー | 3〜7日 | 分散 | 片眼予備も数枚 |
ケア | 保存液ミニ | 60–120mL | 家/外出 | 水道水は厳禁 |
目薬 | 人工涙液 | 5–10本 | 分散 | 個包装が衛生的 |
保護 | 防塵ゴーグル | 1個 | 家 | 眼鏡の上から可 |
修理 | 鼻パッド/ねじ/ワイヤ | 一式 | ポーチ | 極小ドライバー |
情報 | 度数カード | 1枚 | 各セット | S/C/AX/PD を記載 |
個人差への対応(近視・乱視・遠近・色覚)
- 乱視(トーリック):軸(AX)情報は必ずカードに。
- 遠近両用:遠方度数の単焦点でも代用可。安全優先で遠方視を確保。
- 色覚配慮:警告色の識別が苦手な場合、文字・形状・音でも確認できるようラベル化。
眼鏡の守り方|破損防止・修理・視界確保の三段構え
破損させない置き方・運び方
- 就寝時は枕元の同じ位置に硬質ケースで固定。地震時も飛散・踏み割れを避ける。
- 移動時は首掛けストラップで落下ゼロ。作業・片付け時は防塵ゴーグルを上から重ねる。
- 濡れたら:断水時は乾拭き→霧吹き→拭き直し。汚れがひどい時はブロー(息ではなく空気)→柔らか布。
応急修理の手順(ねじ・鼻パッド・テンプル)
- ねじ:輪ゴムで仮固定→ねじ入れ直し。穴が緩い時は糸くず1本を噛ませる。
- 鼻パッド:互換パッドで差し替え。なければ医療用テープを丸めて当てて位置補正。
- テンプル折れ:テープ+ワイヤで角度固定。瞬間接着剤はヒンジ付近のみに極少量(レンズ面厳禁)。
フレーム材質別・応急の可否
材質 | 応急接着 | 備考 |
---|---|---|
メタル/チタン | △ | ハンダ不可。曲げ直しは微調整のみ |
アセテート | △ | 熱で変形しやすい。接着は一時しのぎ |
TR/樹脂 | ×〜△ | ひびが広がりやすい。テープ固定が無難 |
コンビ | △ | 種類が混在、力をかけすぎない |
曇り・傷・粉じん・紫外線への対処
- 曇り:ノンアルコールのくもり止め。マスクは鼻ワイヤ密着+下方向に排気。
- 傷:乾いた埃の上から拭かない。粉じんは先に落とす。
- 粉じん:密閉型ゴーグルで上乗せ。風上に顔を向けない。
- 紫外線・眩しさ:クリップオン偏光や度付きサングラスを“預け層”に。夜間は外す。
眼鏡メンテの周期表
項目 | 頻度 | 目安 |
---|---|---|
ネジ増し締め | 月1 | ドライバーで軽く |
鼻パッド交換 | 3〜6か月 | 変色・ベタつきで交換 |
レンズコート確認 | 半年 | くもり止めの効きで判断 |
コンタクトの運用術|断水・停電下でも目を守る
使い捨て(ワンデー)を“非常モード”の主役に
- 断水ですすぎ・こすり洗いが難しいため、ワンデー中心に切替。外したら即廃棄。
- 2week/1month派は保存液+ケースの携帯サイズを。すすぎは保存液のみで完結。
保存液の種類と注意(MPS/H₂O₂)
種類 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
MPS(多目的) | こすり洗い・すすぎ・保存が1本で可能 | 水不要で非常向き |
過酸化水素(H₂O₂) | 消毒力が高い | 専用ケースで中和必須/眼に入れない |
非常時はMPS優先。H₂O₂は中和時間を確保できる環境でのみ使用。 |
ハード(RGP)・乱視・遠近の人の工夫
- RGP:人工涙液→レンズ外す→ケース→保存液。粉じん時は眼鏡へ切替。
- トーリック(乱視):軸ズレが体調悪化につながるため、眼鏡代替を確実に。
- 遠近両用:遠方視優先の代替度数を1本用意。
断水時の洗浄プロトコル(2week/1month)
1)手指をウエットで清拭→完全乾燥。
2)レンズを保存液でこすり洗い→すすぐ。
3)新しい保存液で満たしたケースで消毒・保管。
4)水道水に触れた疑いがあれば廃棄。無理をしない。
目の乾き・ゴロゴロ・装用時間の管理
- 人工涙液(防腐剤なし)を小まめに。
- 風・埃・冷暖房直撃の環境では装用時間短縮。
- 痛み・かすみ・充血が出たら即外して眼鏡へ。
レンズ在庫とローテーション
期間 | 目安 | 運用 |
---|---|---|
3日 | 最小 | 家・職場・外出で分散 |
7日 | 推奨 | 週1で個数チェック |
14日 | 余裕 | 家族分まとめ買い→先入先出 |
粉じん・煙・化学臭から目を守る|保護具と動線設計
防塵ゴーグルを“重ね掛け”する理由
眼鏡の上から装着できる密閉型なら、粉じん・飛沫・風を遮断できる。火山灰・黄砂・解体粉じんでは最短ルート・風下回避を徹底し、マスク+ゴーグルで角膜・結膜を守る。
目の洗浄代替と退避の判断
- 人工涙液→まばたき多めで異物を流す。
- 洗浄水がない/痛みが強い場合はレンズを外し眼鏡へ。
- 化学臭・刺激はその場から退避が最優先。換気の良い上流側へ移動。
視界確保の“夜間セット”
- ヘッドライト(拡散)+手持ちライト(スポット)の二灯運用。
- 反射バンドで合図・被視認性を上げる。
- 予備電池は眼鏡ケースと同居させ、取り出し1動作で使えるように。
運用ルール・Q&A・用語辞典|迷いを手順に変える
運用ルール(A4に貼っておく)
1)粉じん→眼鏡+ゴーグル/断水→ワンデー。
2)痛み・充血→即外す→人工涙液→眼科受診を検討。
3)在庫は月末に数える(使った分+1補充)。
4)予備眼鏡の置き場は玄関下段と職場の一段目。
5)家族の度数カードにS/C/AX/PDと装用種類を記載。
月次点検チェックリスト(そのまま使える)
項目 | OK/補充 | メモ |
---|---|---|
予備眼鏡の位置・状態 | ケース/拭き同梱 | |
ワンデー個数(家/職場/外出) | 3/7/14日分 | |
保存液の残量・開封日 | 期限と清潔度 | |
人工涙液の本数 | 個包装の有効期限 | |
ゴーグルの装着感 | 眼鏡の上から可否 | |
修理セット一式 | ねじ・パッド・工具 |
よくあるQ&A
Q1. 眼鏡が割れた。接着剤で直して良い?
A. ヒンジ周辺のみ極少量なら一時しのぎに。レンズ面・鼻当てへの付着は視界劣化・肌荒れの恐れ。予備へ切替が基本。
Q2. 保存液が切れたら?
A. 2week/1monthは使用中止→眼鏡へ。ワンデーに切替。水道水は厳禁。
Q3. 目がしみる・かすむ。
A. 即外す→人工涙液→10分休む。改善しない・痛い場合は装用中止。
Q4. 使い捨ては何日分が現実的?
A. 最低3日、推奨7日、余裕14日。家・職場・外出に分散すればロスが少ない。
Q5. 乱視が強く、替えが効きにくい。
A. 眼鏡の度数を主力に。トーリック在庫は最小限+度数カードで現地調達を想定。
Q6. くもり・においが気になるマスク環境。
A. ノーズワイヤ密着+下方向排気で曇り低減。無香料を選ぶと目への刺激が少ない。
用語辞典(やさしい言い換え)
- ワンデー:1日で捨てる使い捨てレンズ。水が止まっても衛生的。
- 2week/1month:同じレンズを複数日使うタイプ。保存液とケースが必要。
- 人工涙液:涙に近い成分の目薬。乾き・異物感を軽くする。
- 防塵ゴーグル:粉じんや飛沫から目を守る保護めがね。眼鏡の上から装着可だと便利。
- PD:瞳孔間距離。眼鏡の中心合わせに必要な数値。
まとめ
非常時に見えることは移動・判断・安全の土台。眼鏡×2+ワンデー3〜7日+人工涙液+防塵ゴーグルを家・職場・外出に分散し、粉じん→眼鏡/断水→ワンデーの切替ルールを家族で共有しよう。度数カードの可視化×月末在庫点検(使った分+1補充)を習慣化すれば、視力の安全は仕組みとして回り続ける。