要点先取り:出られるかは“1分で開く・またげる・通れる”で決まる 3つの判定基準(開く/またぐ/通る) ベランダからの避難は、ハッチや隔て板が“1分で開く” 、サッシ・段差・物干しを“安全にまたげる” 、家族全員が“横1列で通れる”の3点で決まる。平時に開放手順・動線の幅・足場の強さ を確かめ、夜間や雨天でも迷わない ように配置と合言葉を整える。
役割分担と合言葉 親A :ハッチ・隔て板の開放、親B :子と高齢者の誘導。合言葉:**「ハッチ・段差・物干し、よし!」**で最終確認。 非常キー・軍手・ライト は窓際に常設 。腰の高さ にフックを付け、片手で取れる 位置にする。追加の安全原則(火・煙・雨・風) 火と煙 :風下に逃げない 、低い姿勢 、口鼻を布で覆う 。雨と風 :ポンチョ+滑り止め手袋 で手すりを確実に握る 。夜間 :ヘッドライト(拡散)+手持ちライト(スポット)の二灯 を基本にする。ベランダの“通れる幅”と“またげる高さ”を数で決める 1. 幅の基準(人+荷物+すれ違い) 最低可動幅 :50cm (横歩きで通過可)。安心幅 :60〜70cm (抱っこ・荷物を持っても安定)。物干し・植木・収納 は手すり側に寄せず 、壁側に10cmの余白 を残す。室外機前 は60cmの直線通路 を死守。2. 高さの基準(サッシ・段差・室外機) サッシレール の最大段差 は3cm以内 が理想。マットで3→1cm へ緩和。避難ハッチの縁 は引っかかりゼロ を目標にゴム縁 で保護。室外機の吹き出し高さ と上部クリアランス を確認し、頭や荷物が当たらない ようにする。3. 動線の“高さ×幅”マトリクス(目安) 幅/高さ 0〜3cm 4〜7cm 8cm以上 50cm未満 × × × 50〜60cm △(慎重) × × 60〜70cm ○ △ × 70cm以上 ◎ ○ △ 結論 :幅60cm以上×段差7cm未満 を最低ラインとし、マット・踏み台 で補正する。
4. 計測と記録のテンプレ(家族で共有) 測定場所 幅(cm) 段差(cm) 障害物 是正期限 サッシ前 室外機前 ハッチ周り 毎月1日 に更新し、冷蔵庫と玄関 の2か所へ掲示する。
ハッチと隔て板|“1分で開く”を作る分解・点検・練習 1. 避難ハッチの種類と開け方 床ハッチ型 :ベランダ床面にある。ハンドル→ロック解除→ふたを開ける→梯子展開 。隔て板(蹴破り板)型 :隣戸との仕切り。指定位置を足で強く蹴る (金具を外す型も )。手順カード を名刺サイズ で作成し、窓際のフック に吊るす。2. 年2回の点検手順(10分で完了) 1)砂・汚れ を掃除。 2)ヒンジ・金具 に乾いた布→潤滑剤 (油は最小量 )。 3)開放テスト :タイマーで60秒以内 に開けられるか。 4)ふたのがたつき 、梯子のがた 、足掛かりの高さ を確認。 5)夜間ライト の位置を再確認(片手で取れる高さ )。
3. よくあるNG配置 ハッチ上にプランター・収納箱 。一発退場 (緊急時は開かない)。隔て板の前に物干し台やラック 。蹴るスペース が消える。ハッチのふたを補強材で固定 。原状復帰義務違反 の恐れ。鍵や非常キーを別の部屋に保管 。窓際に常設 へ変更。4. 点検チェック表(貼り出し用) 項目 できた/未 メモ ハッチ上に物なし 60秒以内で開放 タイム:__秒 梯子のがたつきなし 隔て板前60cm確保 夜間ライトの位置OK
5. 子ども・高齢者への教え方(短文合図) **「ハンドル開ける、ふた上げる、梯子出す」**を声に出して練習。 高齢者 は椅子や踏み台 を壁側に固定 しておき、前屈しすぎない 姿勢を覚える。物干し・植木・収納の“安全配置”|落下・転倒・飛散をゼロに 1. 物干しの固定・運用 壁付けポール は根元の緩み を月1点検。自立式ハンガー は重し+転倒防止バンド 。避難時は折りたたみ 、通路から退避 。ハンガー位置 は手すりより内側 、動線の上方を空ける 。洗濯ばさみは巾着へ一括収納 。2. 植木・収納の重心管理 プランターは低重心 。鉢皿の水 はこぼしておく。収納ボックス はベルト固定 、通路側に突出ゼロ 。高い棚 はベランダ不可 。室内へ移す 。サンダルは片寄せ箱 で固定。3. 落下・飛散の“3条件”を消す 高所×軽量×風 がそろうと飛ぶ。フェンス上の小物 は撤去。物干し台のキャスター はロック 、強風予報 で屋内退避 。防鳥ネット・シェード は緊急時にすぐ外せる固定 にする。4. 配置の良し悪し比較(事例) 例 配置 評価 改善 A ハッチ上に薄型ラック × 撤去 。別場所へB 室外機前にプランター列 × 60cm通路 を確保C 自立ハンガー+重し △ 転倒防止バンド 追加D 壁付けポール内側・高所空間空け ◎ 維持
5. 季節前メンテ(梅雨・台風・降雪) 梅雨 :吸水マット と防カビ清掃 。台風 :すべての小物を屋内へ 、ベルト固定 再確認。降雪 :すのこ耐荷重 と滑り止め砂 を準備。段差・足場・手すり|“落ちない・挟まない・滑らない”を形にする 1. 段差を無くす・緩める サッシレール は段差緩和マット で3cm→1cm へ。ハッチ縁 はゴム縁保護 で引っ掛かりを減らす。水勾配で滑る 場所は吸水マット を一方向 に敷き、逆走を防止 。2. 足場の補強 すのこ は耐荷重表示 を確認(最低100kg )。割れ・腐食 は季節前に交換 。凍結時 は滑り止め砂 を撒く(塩は金属腐食の恐れ)。踏み台 はゴム脚 のあるものを採用し、片手で移動しない 運用にする。3. 手すり・窓の安全 手すり高さ は110cm以上 が安心。子どものよじ登り を防ぐため足掛かりになる物を置かない 。網戸 は体重をかけない (外れやすい)。開口時はストッパー を使う。サッシ鍵 は上下二重ロック 、非常時は上だけ解錠 で転落防止 。4. 夜間の照明配置(見える・被視認される) ヘッドライト は拡散 、手持ちライト はスポット 。ランタン は室内側に1台 置き、足元の影 を減らす。反射テープ をポンチョ裾・手首・足首 に追加。5. 家族別の通過手順(例) 家族 手順 補助 乳幼児 抱っこ→親が先に段差確認→受け渡し 抱っこ紐/背負子 学童 親が先導→手すり側を歩く 軍手・ライト 高齢 前傾しすぎない→小刻み歩行 杖・滑り止め手袋 妊娠中 片手で手すり確保→歩幅小さく 段差マット必須
運用・訓練・ルール|“1分で出られる家”にする 1. 月1ミニ訓練(5分) 1)通路の物を退避→幅60cm を確保。 2)ハッチ開放テスト (60秒以内)。 3)声かけ合図 「ハッチ・段差・物干し、よし! 」。 4)閉鎖→原状復帰 、点検表に記入 。 5)夜間版 としてライト2種 を実点灯 する。
2. 夜間・雨天・停電の特則 ヘッドライト は窓際の専用フック に常設。雨天 はポンチョ+薄手手袋 で手すりを確実に握る 。停電 時は足元→手すり→通路 の順で照らす。強風 の場合は引き戸・サッシの開閉角 を最小 にし、物が飛ばない か先に確認。3. 近隣連携と管理規約 隔て板は共用部分 。自室の物を置かない 。避難経路の常時確保 は管理規約 の基本。季節物の一時置きは時間を決めて撤去 。年1回は管理会社へ点検依頼 を出す。消防設備点検 の日に併せて自宅点検 を行う。 4. 訓練記録シート(テンプレ) 日付 実施者 ハッチ開放(秒) 通路幅(cm) 是正点 ____ ____ ____ ____ ____
5. ベランダ専用“持ち出しパック”(窓際常設) 品名 数 目的 軍手(滑り止め) 2組 手すり・物干しを確実に握る ヘッドライト 2台 両手を空ける・合図 手持ちライト 1台 遠方照射 ポンチョ 2着 両手フリー タオル 2枚 濡れ/滑り対策
Q&A(よくある疑問)と用語辞典 Q&A Q1. 隣の家との隔て板は壊して良いの? A. 緊急時のみ 。指定位置を蹴る 仕様。前に物を置かない のが大原則。Q2. ハッチの上に薄いマットなら置いてよい? A. 不可 。開放の妨げ になりうる。通路マットはハッチ外 へ。Q3. 室外機の前が狭い。動かせる? A. 勝手移動は故障・規約違反 の恐れ。60cm通路 を確保するよう周囲の物を整理 。Q4. 子どもが手すりに登りたがる。 A. 足掛かりになる家具・箱を置かない 。窓ロック も併用。Q5. 雨の日はどうする? A. 滑り止め手袋・段差マット・ポンチョ を使い、手すり側通行 を徹底。Q6. 夜間で停電、しかも強風。 A. 二灯照明+窓開口最小 、飛散物の退避 を先に。声かけ合図 で動く。Q7. 足が悪い家族がいる。 A. 段差マット・踏み台 を常設し、通路幅70cm以上 を目標に。介助者の位置 を毎回固定。
用語辞典(やさしい言い換え) 避難ハッチ :下の階へ降りるためのふた と梯子 。隔て板(かくていた) :隣との仕切り 。緊急時に破れる板 。通路幅 :人が通る幅 。60cm あると安定。段差マット :段をゆるくする板やゴム 。つまずきを減らす。転倒防止バンド :物が倒れないように固定する帯 。反射テープ :光を返して目立たせる帯 。暗い場所で見つけやすい。まとめ ベランダ避難の鍵は、1分で開くハッチ・またげる段差・通れる動線 の3点だ。通路60cm×段差7cm未満 を基準に物干し・植木・収納 を再配置し、月1の5分訓練 で開放→合図→復旧 を回す。
窓際常設の“持ち出しパック”と二灯照明 を足し、今日からハッチ上の物撤去・段差マット設置・ライト位置固定 の3つを実行しよう。**「ハッチ・段差・物干し、よし!」**を家族の合言葉にしておけば、夜間・雨天・停電 でも迷いがない。