風速指標で行動を決める方法|体感と飛散物の目安の完全ガイド

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防災

強風や台風の接近時、迷いを減らす最短の道は風速を行動に翻訳することです。数字を見て終わりではなく、体感(歩ける/歩けない)飛散物(飛ぶ/転がる)設備(外れる/壊れる)の三本柱に落とし込めば、やることが明確になります。

本ガイドは、平均風速と最大瞬間風速の使い分けを土台に、家庭・職場・移動の判断を表・手順・チェックリストで具体化。準備の順番、ベランダ・庭の撤去優先、車の運用、窓の守り、停電備えまで、風の強さを“いま取るべき行動”へ直結させます。


  1. 1.基礎の確認:平均風速と最大瞬間風速、体感のズレ
    1. 1-1.平均風速と最大瞬間風速の違い
    2. 1-2.体感のズレ:風向・遮蔽・路面で変わる
    3. 1-3.家庭の行動は「先手」へ(時間軸で準備)
      1. 風速別・体感と行動の総合早見表(自宅用)
  2. 2.風速を“見える化”する:自宅基準での観察と計り方
    1. 2-1.家の周りの観察ポイント(風の通りと影)
    2. 2-2.簡易計測と体感スケール(器具あり/なし)
    3. 2-3.平均と瞬間を分けて記録(再現性を高める)
      1. 自宅向け・観察記録シート(例)
  3. 3.飛散物の目安:何が飛ぶかで行動を決める
    1. 3-1.ベランダ・庭の基準(撤去の順番)
    2. 3-2.屋外設備・建材の基準(弱点と補強)
    3. 3-3.近隣への配慮(先に守るのは人の通り)
      1. 飛散物別・対策の一覧表(保存版)
      2. 撤去タイムライン(目安)
  4. 4.移動と作業の中止基準:歩行・自転車・車・屋外作業
    1. 4-1.歩行・自転車(姿勢と通路)
    2. 4-2.車の運転(区間と停車位置)
    3. 4-3.屋外作業・工事(中止ライン)
      1. 行動基準のまとめ表(家庭・職場)
  5. 5.窓・出入口の守り方:養生・二重化・待機場所
    1. 5-1.窓の養生(簡易〜強化の優先順位)
    2. 5-2.出入口の管理(押し戻しと指挟み対策)
    3. 5-3.室内の待機場所(安全帯を決める)
      1. 窓と出入口のチェックリスト
  6. Q&A(よくある疑問)
  7. 用語辞典(やさしい言い換え)
  8. まとめ:風速を行動に変える三原則

1.基礎の確認:平均風速と最大瞬間風速、体感のズレ

1-1.平均風速と最大瞬間風速の違い

  • 平均風速:一定時間(例:10分)の平均。持続的な押しの強さ。
  • 最大瞬間風速:一瞬のピーク。体をあおる突風の強さ。
  • 判断の基本:屋外作業や移動の中止判断は瞬間、窓・固定物など持続影響は平均を重視。常に**「平均+瞬間」セット**で見ます。

1-2.体感のズレ:風向・遮蔽・路面で変わる

  • 建物の角・ビル風は局所的に1.5倍以上の体感。角を回る瞬間が最も危険。
  • 橋・海沿い・谷状地形は風が集中。欄干付近は上から吹き下ろす風でふらつきやすい。
  • 雨×風は視界と体温を奪うため、体感を2段階増しで見積もるのが安全。

1-3.家庭の行動は「先手」へ(時間軸で準備)

  • 前日(〜24時間前):ベランダの大物撤去、雨戸点検、車の給油。
  • 当日朝(〜6時間前):小物の一掃、窓の養生、移動の中止基準を家族で共有。
  • 接近直前(〜1時間前):玄関・窓際の再確認、屋外作業終了屋内退避へ。

風速別・体感と行動の総合早見表(自宅用)

平均/瞬間の目安人の体感飛散物の変化家庭・職場の行動移動・車
3m/s(瞬間5)風を感じる紙くずが舞う軽い小物をまとめる通常
5m/s(瞬間8)向かい風で歩きにくいビニール袋が舞うベランダ小物を屋内へ自転車は注意
10m/s(瞬間15)体があおられる軽い鉢・洗濯物が飛ぶ植木鉢撤去、雨戸点検二輪は控える
15m/s(瞬間20)まっすぐ歩きづらいプランター・屋外椅子が転がるベランダに、遊具は室内高所・橋を避ける
20m/s(瞬間30)立っていられないトタン・看板の一部が外れる窓養生完了、屋外作業中止車は必要最小限
25m/s(瞬間35)歩行困難大型看板・脚立が倒れる室内退避、停電備え走らない判断へ
30m/s(瞬間40)屋外危険屋外構造物に被害室内待機を堅持走行中止

瞬間風速が基準を超えやすい場所(角・橋・海沿い)は、表の1段階上で判断。


2.風速を“見える化”する:自宅基準での観察と計り方

2-1.家の周りの観察ポイント(風の通りと影)

  • 通り道:直線の路地、建物の角、谷筋、橋上、ビルの間。
  • 風の影:壁・植栽・駐車場の奥。待避・合流の安全位置として把握。
  • 風向別の危険場所
    • 南風:南向きベランダ・玄関が直撃。
    • 北風:北面の窓・勝手口からすきま風が増える。
    • 西風:夕方は帰宅動線と重なりやすい。

2-2.簡易計測と体感スケール(器具あり/なし)

  • ハンディ風速計:玄関外・ベランダで地上1.5mに。体で風上を向いて計測。
  • 体感スケール
    • 木の枝が常に揺れる:約5〜7m/s。
    • 旗が常時はためく:約8〜10m/s。
    • 電線がうなる・砂埃が舞う:約12〜15m/s。
    • 看板がきしむ音:20m/s級を疑う。
  • 簡易風向サイン:ビニールひも・紙テープを胸の高さに垂らして風の向きとばたつきを確認。

2-3.平均と瞬間を分けて記録(再現性を高める)

  • 1分間の最大値=瞬間連続10分の平均=平均
  • 時刻・場所・高さ・遮蔽をメモ。翌回も同じ条件で測ると比較が効く。
  • 風向の矢印を地図に書き足して、家族と共有

自宅向け・観察記録シート(例)

時刻場所/高さ体感/音風速計(平均/瞬間)風向行動
16:00玄関/1.5m旗がはためく7/12m/sベランダ小物撤収
18:30ベランダ/1.5m砂埃が舞う11/18m/s南西植木鉢撤去・雨戸
21:00駐車場奥/1.5m看板きしむ16/27m/s西室内退避・走行中止

測る場所を固定すると、次回以降の判断がぶれません。


3.飛散物の目安:何が飛ぶかで行動を決める

3-1.ベランダ・庭の基準(撤去の順番)

  • 道路側へ飛ぶ物高さがある物重い物の順で手を付ける。
  • 5〜10m/s:洗濯物・軽い鉢・バケツ→屋内へ。
  • 10〜15m/sプランター・折りたたみ椅子ロープ固定 or 撤去
  • 15m/s超物干し台・簡易柵完全撤去。手すりの結束バンドは補助であり、主固定にはしない。

3-2.屋外設備・建材の基準(弱点と補強)

  • 波板・トタン端部の浮きが出やすい→ビス増し締め端部テープ
  • 看板・旗支柱の根元が弱点→取り外しまたは巻き取り
  • 脚立・自転車風下に倒す鎖固定、壁沿いへ寄せる。

3-3.近隣への配慮(先に守るのは人の通り)

  • 通学路・歩道側に面した物を最優先で撤去。
  • ゴミ箱の蓋ベルト固定ペットの小屋屋内へ。

飛散物別・対策の一覧表(保存版)

物品飛び始めの目安すべき対策置き場所
洗濯物・軽い鉢5〜8m/s屋内退避室内・浴室
プランター・折り畳み椅子10〜12m/sロープ固定/撤去玄関内
物干し台・簡易柵15m/s〜完全撤去室内保管
自転車・脚立12〜15m/s風下に倒す+鎖壁沿い
波板・トタン20m/s〜端部補強+ビス増し事前補修

撤去タイムライン(目安)

時間軸ベランダ外周
24時間前大物の撤去開始片付け・整理看板・旗の取り外し準備
6時間前小物の一掃遊具・テーブルを屋内自転車・脚立を固定
1時間前最終見回り残りの鉢撤去ゴミ箱の蓋固定

4.移動と作業の中止基準:歩行・自転車・車・屋外作業

4-1.歩行・自転車(姿勢と通路)

  • 10m/s:傘は使わず雨合羽へ。建物沿いを歩く。
  • 12〜15m/s:自転車は押し歩きに切替。風上に体を傾けると安定。
  • 横断は最短距離風下側の歩道へ。橋・高所は回避。

4-2.車の運転(区間と停車位置)

  • 15m/s橋・高架は避け、速度を落とし、車間を長めに。
  • 20m/s:車体があおられる。必要最小限にとどめ、屋内駐車へ早めに退避。
  • 停車の向き風に正対させるとドアのばたつきが抑えられる。風下ドアの開閉に注意。

4-3.屋外作業・工事(中止ライン)

  • 10m/s脚立作業中止、高所は安全帯でも無理をしない。
  • 15m/s高所作業・看板作業中止、足場は点検のみ。
  • 20m/s屋外作業原則中止室内作業へ切替。

行動基準のまとめ表(家庭・職場)

風速歩行/自転車作業家庭
〜8自転車注意通常軽作業可小物屋内へ
10〜12自転車控える橋・高架を避ける脚立中止植木鉢撤去
13〜15歩行も建物沿いへ速度落とす高所作業中止ベランダ空に
16〜20屋外移動最小限走らない判断屋外作業中止窓養生完了
20〜原則屋内待機走行中止室内作業のみ室内退避

中止基準は家族・職場で事前にカード化し、玄関や掲示板に貼ると迷いません。


5.窓・出入口の守り方:養生・二重化・待機場所

5-1.窓の養生(簡易〜強化の優先順位)

  • 基本カーテン閉飛散防止フィルム(平時施工)。
  • 強化雨戸・シャッター。ない場合は養生テープを**“枠周り”中心**に(米字は破壊防止ではない)。
  • 優先順風上の角部屋→2階以上→大きい窓の順で対応。

5-2.出入口の管理(押し戻しと指挟み対策)

  • 風圧でドアがはねるため、内開き側に人を立たせない
  • 段ボール・マット足元のすき間風を弱め、室温低下を防ぐ。
  • 宅配ボックス・表札など、外れやすい付属品は一時撤去。

5-3.室内の待機場所(安全帯を決める)

  • 風下側の部屋窓の少ない中央寄りが安全。
  • 停電備え(ライト・モバイル電源・ラジオ)を手の届く範囲に集約。
  • 割れた時窓から離れて足元確認→厚手の靴・手袋で移動。

窓と出入口のチェックリスト

区分すること完了
フィルム/雨戸/テープの順で確認
ベランダ小物撤去・手すり固定
玄関風圧の挟み込み対策
室内ライト・ラジオ・電源を手元に

Q&A(よくある疑問)

Q1. 平均と瞬間、どちらを重視?
A. 両方。屋外作業や移動の中止は瞬間風速、窓や固定物など持続影響平均風速を重視。

Q2. 風速計がなくても判断できる?
A. 体感スケール(旗・木・砂埃・看板音)で段階判定は可能。迷えば一段上で行動。

Q3. 養生テープは米字が良い?
A. 枠周りの補強が優先。米字は破片の飛散軽減が目的で、破壊防止ではない雨戸・フィルムが基本。

Q4. 車はどこに避難させる?
A. 高台・屋内上階・風下の壁沿いが基本。橋の上・樹木直下・看板直下は避ける。

Q5. ベランダは何から片付ける?
A. 道路側へ飛ぶ物→高さがある物→重い物の順。物干し台・パラソル・折り畳み椅子は優先撤去。

Q6. 通勤や登校の判断は?
A. 15m/sを一つのめやすに在宅・時差を検討。20m/sが見込まれるなら原則見合わせ

Q7. 停電が心配。窓を開けて換気して良い?
A. 風下側の小窓を短時間だけ。風上の大窓は開けない。割れ物から離れて換気。

Q8. 雨どいが外れそう。応急でテープして良い?
A. 高所作業はしない。風が弱いうちに地面から届く範囲で固定、無理は禁物。


用語辞典(やさしい言い換え)

  • 平均風速:一定時間のだいたいの強さ
  • 最大瞬間風速一番強く吹いた一瞬の風。
  • 飛散物風で飛ぶ・転がる物
  • 遮蔽(しゃへい)風よけになる物(壁・林など)。
  • ビル風:建物の形で風が速くなる現象。
  • 風下(かざしも):風が通り過ぎた側待機場所に向くことが多い。

まとめ:風速を行動に変える三原則

  1. 平均+瞬間で段階判定。迷えば一段上で行動。
  2. 飛散物の目安から片付け順を決め、風が上がる前に完了。
  3. 歩行・車・作業中止基準をカード化し共有。——これで、風の数字が具体的な安全行動に変わります。
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