給湯器の停電復帰チェック手順|安全確認と再起動ガイド

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防災

停電後の一杯のぬるま湯には、確かな手順が要る。 本稿は、停電復旧後に家庭用給湯器(ガス・石油・電気貯湯型)の安全確認→初期化→再起動→動作確認を、失敗しやすい順番で解きほぐした実務ガイドです。

ガス・電気・水圧の三条件をそろえ、誤操作による再故障二次被害を避けるために、指差しチェック表・症状別の対処表・年2回の点検メニューまで収録しました。※機器仕様は家庭ごとに異なるため、異常を感じたら無理をせず専門業者へ


  1. 1.停電復帰の全体像:三条件をそろえる
    1. 1-1.三条件=【電気/ガス(または燃料)/水圧】
    2. 1-2.復帰前の安全確認(家・人を守る)
    3. 1-3.タイプ別の初期状態を知る(期待値を合わせる)
  2. 2.手順書:再起動の正しい順番(最短で安全に)
    1. 2-1.ステップ0:停電復旧直後の5分(自己診断に任せる)
    2. 2-2.ステップ1:ガス・燃料の復帰
    3. 2-3.ステップ2:水の流れを整える(空気抜き→エア噛み解消)
    4. 2-4.ステップ3:操作盤の初期化と設定(元に戻す)
    5. 2-5.ステップ4:点火試験(台所→洗面→浴室の順)
    6. 2-6.ステップ5:最終確認(におい・音・表示)
  3. 3.症状別トラブル早見表:原因と手当て(現場で即判断)
    1. 3-1.「お湯が出ない/水のまま」
    2. 3-2.「湯が途中で止まる/度々エラー」
    3. 3-3.「音・におい・見た目の違和感」
    4. 3-4.凍結・スケール・サーモ固着(番外編)
  4. 4.タイプ別の要点:ガス・石油・電気貯湯(構造に合わせる)
    1. 4-1.ガス給湯器(都市ガス/LP)
    2. 4-2.石油給湯器(灯油ボイラー)
    3. 4-3.電気貯湯(エコキュート)
  5. 5.再発防止と日常点検:止めない家にする
    1. 5-1.停電前の備え(平時に仕組みを作る)
    2. 5-2.年2回のセルフ点検(春・秋の“シーズン前点検”)
    3. 5-3.停電が長いときの切り替えと節湯
  6. Q&A(よくある疑問)
  7. 用語辞典(やさしい言い換え)
  8. まとめ:三条件を整え、順番を守る

1.停電復帰の全体像:三条件をそろえる

1-1.三条件=【電気/ガス(または燃料)/水圧】

  • 電気:分電盤の主幹ブレーカーON回路ごと順番にON。コンセントの確実な差し込み・延長コードの焦げ・割れの有無を確認。
  • ガス・燃料ガスメーターの復帰(遮断表示・赤点滅時)、LPガスは元栓開度減圧器の霜付き、石油ならタンク残量・ストレーナー詰まり
  • 水圧断水からの回復を確認。元栓・止水栓の開度、ストレーナー(ごみ取り)や循環口フィルタの詰まりを点検。

1-2.復帰前の安全確認(家・人を守る)

  • ガス臭・焦げ臭があるときは、換気→元栓閉→退避→連絡。火気・火花・スイッチの操作は避ける。
  • 濡れた手で分電盤・プラグを触らない。水濡れ配線は乾燥確認まで通電しない。
  • 給湯器まわりの可燃物撤去、給排気口の積雪・落ち葉・巣を除去。換気扇・窓の確保。

1-3.タイプ別の初期状態を知る(期待値を合わせる)

方式代表例復帰の要点注意ポイント
ガス給湯器都市ガス・LPガスガスメーター復帰→通電→操作盤ON風呂自動はふろ温度・自動保温の再設定
石油給湯器灯油ボイラー通電→点火→油圧安定タンク残量/フィルタ、エア噛み解消に時間がかかる
電気貯湯(エコキュート)ヒートポンプ通電→時刻設定→湧き上げ再開満湯まで数時間〜。夜間運転設定の再確認

重要断水中は運転しない(空焚き・故障のおそれ)。水が安定してから実施。


2.手順書:再起動の正しい順番(最短で安全に)

2-1.ステップ0:停電復旧直後の5分(自己診断に任せる)

1)分電盤の主幹ブレーカーON→各回路ブレーカーを順番に入れる。
2)給湯器の専用回路は最後にON(他機器の突入電流を避ける)。
3)室内の操作盤(リモコン)電源はOFFのまま5分待機(自己診断・通信再確立)。
4)屋外機の異音・異臭・水漏れが無いか目視。

2-2.ステップ1:ガス・燃料の復帰

  • ガスメーター復帰:遮断表示・赤ランプ点滅時は復帰ボタン3分待つ(安全確認中は操作しない)。
  • LPガス:ボンベの元栓開度を全開→1/4戻しで固定、減圧器の霜が消えるまで待つ。
  • 石油灯油残量ストレーナー清掃エア抜きの要否を確認。

2-3.ステップ2:水の流れを整える(空気抜き→エア噛み解消)

  • 最寄りの水栓を「水側」から開け、空気混じりの吹き出しが収まるまで待つ。
  • 次に**混合水栓の「湯側」**を短時間開閉し、エア噛みを抜く。
  • 風呂自動は循環金具のフィルタを外して髪・糸くずを除去→注水運転で配管の空気を押し出す。

2-4.ステップ3:操作盤の初期化と設定(元に戻す)

  • 室内操作盤をON時刻・ふろ温度・湯温・自動保温・予約の各設定を確認。
  • 入浴剤を使う予定がある場合は入浴剤対応モードの有無を確認(なければ循環を避ける)。
  • 省エネ設定(学習機能・湧き上げモード・エコ運転)を希望に合わせて再設定。

2-5.ステップ4:点火試験(台所→洗面→浴室の順)

  • 台所の湯栓を弱めに開く30〜60秒でぬるくなれば成功(熱交換器が冷えていると時間がかかる)。
  • 洗面→浴室の順で各所の点火を確認。急全開は避ける(エア噛み時は失火しやすい)。
  • 風呂自動は注水→追いだきの順で運転、「残湯あり」誤検知を避けるため浴槽栓の密閉を再確認。

2-6.ステップ5:最終確認(におい・音・表示)

  • におい:焦げ臭・ガス臭が無いか。
  • :異常な金属音・轟音が無いか。
  • 表示:エラー表示が出ないか、湯温が設定値へ安定するか。

3.症状別トラブル早見表:原因と手当て(現場で即判断)

3-1.「お湯が出ない/水のまま」

症状主な原因すぐできる対処追加メモ
水のままガス遮断・断水・電源OFFメーター復帰、元栓・止水栓、ブレーカー確認断水復帰直後は濁り水が出ることあり
ぬるくならない設定温度低い・熱交換器が冷え切り設定を+5℃、1〜2分待機、別栓でも試す冬は出湯まで時間がかかる
点火音がしないリモコンOFF・安全装置作動リモコンON、エラー解除、再起動連続再点火は避け、1分間隔を置く

3-2.「湯が途中で止まる/度々エラー」

症状主な原因すぐできる対処追加メモ
途中で消火水圧低下・エア噛み水側から再度空気抜き、時間帯をずらす同時間帯の需要集中で水圧低下あり
エラー表示過熱・換気不足・排気口塞ぎ吸排気清掃・積雪落とし・再起動屋外機まわり30cm以上の空間目安
自動湯はりが進まない循環口の詰まりフィルタ掃除、髪・糸くず除去入浴剤の残渣が詰まりの原因に

3-3.「音・におい・見た目の違和感」

症状可能性対処注意
異音(ゴー)着火遅れ・風の吹き込み風除けを整える、再起動改善無ければ運転停止→連絡
焦げ臭電装の異常・煤(すす)直ちに停止・換気・業者連絡再起動しない
白い湯気冷気との温度差正常なことが多い甘い臭いは不完全燃焼の恐れ→停止

3-4.凍結・スケール・サーモ固着(番外編)

症状可能性家でできる範囲
冬の無音+出湯不可給水・給湯配管の凍結無理に加熱・叩かない。室温で自然解凍→保温材補修
湯量が弱いストレーナー・シャワーヘッド目詰まりフィルタ洗浄、ヘッドの酢水つけ置き(金属部は不可)
温度が安定しない混合水栓サーモの固着温冷を数回ゆっくり往復して解消を試みる

4.タイプ別の要点:ガス・石油・電気貯湯(構造に合わせる)

4-1.ガス給湯器(都市ガス/LP)

  • ガスメーター復帰→通電→操作盤ONの順が基本。
  • 給排気口の塞がり(雪・落ち葉・巣)を除去し、強風時の吹き返しに注意。
  • 追いだき配管に空気が入ると失火しやすい→注水運転→追いだきで解消。
  • 浸水・冠水後使用しない(内部腐食・漏電の恐れ)。

4-2.石油給湯器(灯油ボイラー)

  • タンク残量フィルタ/ストレーナーの清掃・エア抜きを点検。
  • 冬季は寒冷地仕様の灯油を使用。燃焼室の**煤(すす)**が多いと感じたら運転停止→清掃依頼。
  • 排気の熱で可燃物が焦げやすいので周囲の片付けを。

4-3.電気貯湯(エコキュート)

  • 復電後は時刻設定→湧き上げ再開。**満湯まで数時間〜**が普通。
  • 非常時給湯(タンク残湯の給湯)の可否と出湯温度を確認。
  • 夜間電力モードのみでは回復が遅いとき、昼間の臨時湧き上げを実行。
  • 漏電遮断器の作動があった場合は原因確認が先(雨水侵入・配線劣化など)。

5.再発防止と日常点検:止めない家にする

5-1.停電前の備え(平時に仕組みを作る)

  • 屋外機周りの掃除(落ち葉・蜘蛛の巣・雪対策)。30cm以上の空間を確保。
  • 非常時マニュアル操作盤のそばに掲示。復帰手順・連絡先・ブレーカー位置を図で。
  • ガスメーター復帰の手順を家族で共有。子ども・高齢者にもイラスト掲示

5-2.年2回のセルフ点検(春・秋の“シーズン前点検”)

項目目安やり方
吸排気口春・秋目視清掃、巣・雪・落ち葉除去
循環フィルタ月1取り外し→水洗い→乾燥
配管保温冬前破れの補修、結束バンドで固定
漏れ・染み月1床まわりの水染み・錆の確認
屋外電源半年コンセントの緩み・劣化点検

5-3.停電が長いときの切り替えと節湯

  • 電気貯湯:満湯後は適温を下げる・シャワーは短時間で節湯。
  • ガス・石油:仕様が許す範囲でポータブル電源非常電源を活用(必ず機種仕様を確認)。
  • 代替熱源(カセットコンロ等)での湯沸かしは換気・一酸化炭素火傷に注意。

Q&A(よくある疑問)

Q1.停電復帰後、エラー番号が出っぱなし。どうする?
A. 電源OFF→5分待機→再起動で消えれば一時的。繰り返す場合は給排気・水圧・ガス復帰の三条件を再点検し、改善しなければ専門業者へ。

Q2.お湯が出たり出なかったりする。
A. 水圧の変動・エア噛みが典型。水側から空気抜き湯側を短時間開閉。改善しなければ止水栓・ストレーナー詰まりを点検。

Q3.エコキュートがぬるい。
A. 復電直後は湧き上げ途中で出湯が不安定。時刻設定→湧き上げ再開を行い、満湯まで待機。それでも回復しなければ漏電遮断器・配管保温を確認。

Q4.ガス臭がする。運転して良い?
A. 運転禁止換気→元栓閉→退避→連絡。自己判断で再起動しない。

Q5.配管が凍っているかも。
A. 無理な加熱や叩く行為はNG。室内の暖房で周囲を温め自然解凍を待つ。解凍後は保温材の補修を。

Q6.復帰後にシャワー温度が安定しない。
A. 混合水栓のサーモ固着フィルタ目詰まりを疑う。温冷をゆっくり往復し、フィルタ洗浄を。

Q7.停電中に給湯器を操作してしまった。
A. 復電後にブレーカー→燃料→空気抜き→操作盤→点火試験の順でやり直し。異常があれば停止。


用語辞典(やさしい言い換え)

エア噛み:配管に空気が入って流れが乱れること。空気抜きで解消。
ストレーナー:配管のごみ取り網。詰まると流れが悪くなる。
循環金具:浴槽の吸い込み・吐き出し口。ここが詰まると追いだき不良に。
湧き上げ:電気貯湯がタンクの湯を温める運転。満湯まで時間がかかる。
漏電遮断器:漏電を自動で止める安全装置。復帰前に原因確認が必要。
入浴剤残渣:入浴剤の溶け残り。フィルタ詰まりの原因。


まとめ:三条件を整え、順番を守る

停電復帰の給湯器は、電気・ガス(または燃料)・水圧の三条件がそろってはじめて正常に点火します。あわてず、ブレーカー→燃料・メーター→空気抜き→操作盤→点火試験の順番で確認。におい・音・表示の違和感が一つでもあれば停止が最善です。小さな再起動の成功体験を積み重ね、年2回の点検止めない家を育てましょう。

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