「馬ってどれくらいの距離を走れるの?」「1日に何km移動できるのか知りたい」——そんな疑問を持ったことはありませんか?
馬はかつて人間の主要な移動手段であり、軍事・農業・交通の分野で多大な貢献を果たしてきた動物です。現代でも競馬や乗馬をはじめ、多くのシーンでその走行能力が活かされています。特にサラブレッドのような競走馬だけでなく、広大な放牧地で暮らす野生馬、山道を駆ける在来馬など、多様なシーンで活躍する馬の走行能力には目を見張るものがあります。
この記事では、「馬は1日に何km走れるのか?」という疑問に対して、馬の種類や走り方別の距離の違い、体力の限界、休息の取り方、飼育管理のポイント、そして歴史的活用例まで、徹底的に解説します。馬に興味を持ち始めた初心者の方から、愛馬家、乗馬クラブ関係者、競馬ファンまで、どなたにも役立つ情報をお届けします。
1. 馬の平均的な1日の走行距離とは?
通常の歩行スピードと移動距離
馬が常歩(なみあし)でゆったりと移動する際、時速は5〜6km程度です。無理なく移動できるこの歩き方で1日を過ごした場合、平均して30km〜40kmほどの距離を移動することが可能です。途中で休憩をはさみながらも、自然体での移動としては非常に効率的で、馬の基礎体力の高さが伺えます。
野生馬・放牧馬の1日の行動範囲
野生馬や広い放牧地で暮らす馬たちは、餌を探したり仲間と群れを成して移動したりする中で、1日20〜30kmほどを歩いているとされます。特別なトレーニングをしているわけではなくとも、自然と体を動かしているため、持久力と筋力が保たれています。
騎乗・長距離移動時の目安
人が馬に乗って移動する場合、25〜35km程度が無理のない目安とされます。地形や気温、馬の体調を考慮しながら1〜2時間おきに休憩をはさむことで、40km前後の距離を1日で移動することも可能です。トレッキングツアーや乗馬旅行ではこの数値が基準とされることが多いです。
2. 走り方別で見る馬の走行距離の違い
常歩と速歩:低負担で長く動ける
常歩は最もリラックスした歩き方で、負担が少なく長時間継続可能です。速歩(はやあし)になると時速10〜15km程度となり、体力消耗もやや増えるため、1〜2時間連続で行うのが限界とされています。休憩を挟めば30km以上の移動も可能です。
駆歩・ギャロップ:スピードとスタミナのバランス
駆歩(かけあし)は時速20〜30kmで比較的持続可能なスピードです。サラブレッドのような軽種馬であれば、適度な駆歩を交えつつの長距離移動が可能です。一方、ギャロップ(全力疾走)は時速60kmを超えるものの、持続できるのは1〜2km程度。完全なスプリント型で、長距離には適しません。
休憩を挟んだ“インターバル走行”の活用
常歩や速歩、短距離の駆歩やギャロップを組み合わせて、休憩を定期的に挟みながら移動するスタイルであれば、健康な馬なら50km以上の移動も可能です。これはエンデュランス競技でも取り入れられている走行パターンです。
3. 馬種ごとの走行距離の特徴
サラブレッド:短距離に特化した瞬発力
サラブレッドは競馬に最適化された馬種で、時速60km超のスピードで1,600m〜2,400mの距離を走るのが一般的。長距離を走り続ける体力というよりは、短距離での瞬発力・スピード重視の構造をしています。
アラブ馬・モンゴル馬:究極のスタミナ馬
アラブ馬やモンゴル馬は、乾燥した過酷な環境でも数十kmを走り抜ける驚異的な持久力を持っています。エンデュランス競技では1日100km以上を走破することもあり、連続した長距離移動においては世界でも屈指の性能を誇ります。
日本在来種:安定性とタフさが武器
木曽馬や道産子などの日本在来種は、山間部での運搬や農作業にも活躍してきた歴史があり、過酷な地形に強く、スタミナも十分。速くは走れないものの、30〜40km程度を着実にこなす堅実な働き者といえます。
4. 長距離走に必要な管理と注意点
水分・ミネラル補給と休憩の重要性
長距離走行では発汗量が増えるため、脱水症状を防ぐためにも水と電解質の補給が不可欠です。理想的には1〜2時間ごとに短い休憩を取り、馬の呼吸や心拍を安定させることが、翌日のコンディションにもつながります。
蹄・脚・背中のケアが寿命を延ばす
長距離走行後は、蹄のチェックや脚部のアイシング、背中へのマッサージなど、リカバリーの時間をきちんと確保することが大切です。装蹄の状態や鞍のフィット感なども、移動距離の快適さに大きく影響します。
地形と天候によるリスク管理
高温多湿な夏場や寒冷な冬、急な登坂やぬかるんだ泥道では、同じ距離でも体力の消耗度が大きく異なります。事前にルートを把握し、無理のない計画と臨機応変な判断が、安全な長距離移動のカギです。
5. 歴史や文化に見る馬の驚異的な走行記録
騎馬民族の長距離移動術
モンゴルの遊牧民や中東の遊牧文化では、1日に100km以上の距離を複数の馬を交代しながら移動するスタイルが確立されていました。馬の体力配分、地形の読み、馬具の工夫など、文化としての知恵が蓄積されています。
郵便・軍用馬の走行実績
かつてのヨーロッパや日本では、馬による郵便輸送や軍事行動が日常的に行われていました。日本の飛脚制度では、宿場間の交代制を駆使して1日で数十kmを移動し、軍馬もまた1日に50〜70kmの行軍をこなしていたという記録があります。
トレイルライド・エンデュランス競技の発展
現代のトレイルライド(長距離乗馬)やエンデュランス競技では、競技として1日100km以上を走るケースもあります。これらは人馬一体の体力・戦略・信頼関係が求められる過酷な挑戦であり、馬の持久力と適応力を改めて実感できる舞台でもあります。
まとめ|馬の1日の走行距離は条件とケア次第で無限の可能性がある!
馬が1日にどれほど走れるかは、馬の体力、種類、ペース、環境、ケアの有無によって大きく異なります。常歩であれば30〜40km、適切な管理のもとでは50〜60kmも可能で、トレーニングされた馬ならエンデュランス競技で100km以上をこなすこともあります。
大切なのは、馬に無理をさせず、信頼関係を築いたうえで必要な水分・栄養・休息・ケアを適切に与えること。それによって、馬の本来持っている驚異のパフォーマンスは最大限に発揮されるのです。
馬と人との歩みは、距離ではなく“絆”に裏打ちされた共走(ともばしり)の歴史。これからも、その力強さとやさしさに目を向けながら、馬と共に歩む楽しさを感じていきたいですね。