通学路で待避場所を見つける術|地形と施設の実践ガイド

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防災

突然の豪雨・突風・地震・不審者――「その場で安全に止まれる場所」を先に決めておけば、迷いが行動に変わります。

本稿は、日々の通学路でどこに寄り、どこを避け、どう合図するかを、地形・施設・時間帯・季節の四つの軸で整理。地図に落とし込める判定基準家庭・学校で共有できる表声かけテンプレ5分×4回の訓練メニューまで、今日から使える実践情報をまとめました。


  1. 通学路での「待避」の考え方:優先順位・合図・隊列
    1. 先に決める三原則(探す順)
    2. 隊列と合図(短く・大きく・同じ言葉)
    3. やってはいけない行動ベスト5
      1. 待避の三条件・判定早見表
  2. 地形から見つける待避:坂・川沿い・高架・狭い道・海風
    1. 坂道(上り・下り)の鉄則
    2. 川沿い・用水路・橋のたもと
    3. 高架下・歩道橋・立体交差
    4. 狭い路地・袋小路・工事区間
    5. 海風・山あい(地域特有)
      1. 地形別・危険と安全の目安
  3. 施設から見つける待避:開いている・人がいる・助けを呼べる
    1. 公共施設と学校周辺
    2. 商店街・駅前・個店
    3. 医療・交通・地域拠点
    4. 寺社・集会所・駐在所
      1. 施設別・開放性と頼りやすさ
  4. 時間帯・天気・季節で変えるコース:朝・下校・荒天・夏冬
    1. 朝(通勤が重なる)
    2. 下校(人通りが薄い)
    3. 荒天(豪雨・強風・雷)
    4. 季節の注意(夏・冬)
      1. 現象別「やること/避ける場所」表
      2. 時間帯別・推奨ルート例(作り方の型)
  5. 家庭・学校での共有:待避地図・声かけ・訓練
    1. 5分で作る「待避地図」
    2. 声かけテンプレ(店・交番・学校)
    3. 5分×4回の訓練メニュー(週1で回す)
    4. 家庭共有・書き込み表(配布用)
  6. 事例で学ぶ:3つのケーススタディ
    1. ケース1:下校時の急な豪雨
    2. ケース2:強風と横断歩道の白線
    3. ケース3:不審者情報でルート変更
  7. Q&Aと用語辞典:迷いを先回りで解消
    1. Q&A(よくある疑問)
    2. 用語辞典(やさしい言い換え)
  8. 持ち物チェックと貼り札テンプレ
    1. 日常持ち(ランドセル・かばん)
    2. 季節追加
      1. 玄関貼り札(そのまま使える)
  9. まとめ:道の“影”をつないで、家まで鎖のように

通学路での「待避」の考え方:優先順位・合図・隊列

先に決める三原則(探す順)

  1. 車両から離れる:車道と柵・段差・植え込みで分かれる場所。
  2. 屋根で守る雨・落下物・強風を避けられる庇(ひさし)・アーケード・ピロティ。
  3. 人目がある助けを呼べる・見られている(店前・交番近く・駅前)。

迷ったらこの順番:「屋根人目」。三つそろえば最優先。

隊列と合図(短く・大きく・同じ言葉)

  • 先頭指差し→声→復唱で伝える。合言葉は**「止まる!」「右による!」「店に入る!」**の三語に統一。
  • 最後尾後方確認役自転車・車が来たら**「後ろ!」**と短く。
  • 横断は二列にしない一列で間隔を取り、曲がり角の前で減速

やってはいけない行動ベスト5

NG行動なぜ危険か代わりにすること
白線・金属の上で立ち止まる雨で油膜化・横すべり白線をまたぐ/脇の乾いた帯へ
角で急旋回足元が滑り転倒減速→一旦止まる→向きを変える
店の入口をふさぐ車いす・台車と接触壁ぎわに沿って待つ
帰り道の近道(裏道)人目が少ない商店前が続く通りへ
低い所へ集まる水が集まる・車が切れ込む段差が上がる場所へ移動

待避の三条件・判定早見表

条件目安
車両から離れる柵・段差・植え込みがある歩道橋の根元、ガードレール内側
屋根で守る雨・落下物・強風を避ける商店の軒、寺社の庇、公共施設のピロティ
人目がある助けを呼べる・カメラ駅前、交番近く、店内入口付近

地形から見つける待避:坂・川沿い・高架・狭い道・海風

坂道(上り・下り)の鉄則

  • 上り見通しの短いカーブ外側は避け、内側の壁沿いへ。階段状の脇道があれば一時退避。
  • 下り速度が出る自転車に注意。縁石が高い側家の塀がある側へ寄る。
  • 合図:**「減速!」**を前から後ろへ復唱。

川沿い・用水路・橋のたもと

  • 増水時は橋のたもとを避ける水門・堰は渦ができやすい。
  • 堤防の横風は体を流す。風上側石垣・建物壁を風よけに。
  • 欄干の内側白線があれば必ず内側へ

高架下・歩道橋・立体交差

  • 歩道橋下柱の内側が安全。車道側の抜けは風であおられる。
  • 高架下水はね・水たまりを避け、壁際の乾いた帯を選ぶ。
  • 立体交差の合流点は車の死角が多い。一段低い場所水が集まるので避ける。

狭い路地・袋小路・工事区間

  • 袋小路では背を壁に出入口を見張れる位置で待つ。
  • 工事区間仮設板・鉄板・段差が滑る。係員の見える位置まで戻る。
  • ミラー裏・電柱の影は死角。見通しの利く四つ角へ移動。

海風・山あい(地域特有)

  • 海沿い防風柵の内側建物の風下へ。
  • 山あい落石注意ひさし・トンネル入口の側壁で待つ(車道側に出ない)。

地形別・危険と安全の目安

地形避けるべき地点待避の良い地点
坂のカーブ外側車・自転車の接近が見えないカーブ内側の壁沿い
橋のたもと増水・水はね・見切り悪い橋の手前の広い歩道
高架下の吹き抜け風の通り道柱内側・壁際
低地のT字路水が集まる・車が切れ込む少し高い店先・段差上
工事の仮設鉄板雨で極端に滑る係員近くの歩道側

施設から見つける待避:開いている・人がいる・助けを呼べる

公共施設と学校周辺

  • 学校の門前・ピロティ:登下校時は人が多く見守りがある。警備員・先生に声をかけやすい。
  • 公民館・図書館・出張所入口の屋根+ベンチが定位置。開館時間を家庭で共有。
  • 交番:地図に**「合流点」**として明示し、道順を覚える。

商店街・駅前・個店

  • 商店の軒雨・落下物・風から守られる。**「店の外で立ち止まり→声をかける」**の手順を教える。
  • 駅前の喫煙所・駐輪場は人が多いが視界不良入口近くの明るい場所で待つ。
  • コンビニ店内に入る→保護者へ連絡→店員に相談の三段階で。

医療・交通・地域拠点

  • 医院・薬局の庇:雨宿りと応急処置の相談がしやすい。
  • バス営業所・ターミナル:係員の目が届き、連絡放送がある。
  • 郵便局・消防分団詰所昼間は人がいることが多い。場所を地図で確認。

寺社・集会所・駐在所

  • 門前・庇の下風よけに最適。段差があり水が寄りにくい。
  • 集会所掲示板緊急時開放の掲示がある場合。下見で確認。
  • 駐在所は小規模でも頼れる窓口。位置を暗記。

施設別・開放性と頼りやすさ

施設屋根人目開放性(時間)連絡の取りやすさ
学校門前・ピロティ○(登下校◎)
図書館・公民館△〜○(開館中)
商店の軒・コンビニ◎(営業時間)
医院・薬局△〜○
郵便局・消防分団△〜○△〜○
寺社・集会所△〜○○(行事時◎)△〜○
交番・駐在所

時間帯・天気・季節で変えるコース:朝・下校・荒天・夏冬

朝(通勤が重なる)

  • 自転車通勤の流れと逆側を通り、広い歩道を優先。
  • 信号待ちは屋根のある位置を事前に把握し、止まる場所を固定

下校(人通りが薄い)

  • 商店前の連鎖を合流点として配置。裏道の近道は使わない。
  • 日没前後明るい帽子・反射材で存在を示す。

荒天(豪雨・強風・雷)

  • 豪雨段差の上建物入口の上りへ移動。水が流れ込む低所を避ける。
  • 強風角・トンネル口は突風。建物の内側の角でやり過ごす。
  • 広場・高い単独樹・川原を回避。建物沿いで低姿勢。

季節の注意(夏・冬)

  • 夏の熱・夕立日陰と水分の確保。アスファルトの照り返しが強い場所は避け、商店の軒で冷却。
  • 冬の凍結・みぞれ橋・坂が滑りやすい。点字ブロックの段差でつまずきに注意。

現象別「やること/避ける場所」表

現象やること(1→3)避ける場所
豪雨段差上へ→屋根下へ→連絡低地・地下入口・橋のたもと
強風建物の内角→柱内側→停止吹き抜け・角の先・高架の端
金属柵から離れる→建物沿い→低くしゃがむ広場・単独の高木・河川敷
みぞれ小刻み歩幅→手すり→白線回避橋・斜面・金属板
猛暑日陰確保→水分→短距離移動無木陰の道・照り返し強い場所

時間帯別・推奨ルート例(作り方の型)

時間帯基準待避点の置き方
自転車流と逆・広い歩道交差点ごとに屋根のある待機点
下校人目の多い通り商店前→寺社→交番の鎖配置
荒天風雨・落雷回避建物沿い→屋根→明るい場所連続

家庭・学校での共有:待避地図・声かけ・訓練

5分で作る「待避地図」

  • 家→学校の地図星=待避点矢印=合流方向電話絵=連絡可能地点
  • 番号順の合流文を短く:「1で待つ→10分で2へ→3で連絡」。

声かけテンプレ(店・交番・学校)

  • :「雨宿りさせてください。○○小の△△です。連絡が取れるまでここにいます。
  • 交番:「○○小の△△。自宅は□□。保護者に電話をお願いします。
  • 学校:「荒天で店に待避。今は○○店前。10分後に××交番へ移動予定。

5分×4回の訓練メニュー(週1で回す)

  1. 指差し・復唱:合図「止まる/右による/店に入る」を10回ずつ
  2. 待避点ダッシュ:家の前→最寄りの屋根下まで安全に早歩き
  3. 声かけ練習:家族が店員役。一言で用件→名前→所属
  4. ルート確認:地図の番号順に歩く。新しい店や工事を更新。

家庭共有・書き込み表(配布用)

番号待避点の名称住所/目印合図の言葉次の移動先
1例:○○商店の軒○丁目△番×号「店に入る!」2:□□神社の門前
2例:□□神社の門鳥居前の庇「右による!」3:××交番
3例:××交番三叉路角「合流!」家・学校へ連絡

事例で学ぶ:3つのケーススタディ

ケース1:下校時の急な豪雨

  • 状況:帰り道に雷を伴う強い雨。視界が悪い。
  • 行動交差点手前の商店の軒へ→保護者へ連絡10分後、交番へ合流
  • 振り返り低地の横断歩道の中央に残らず、手前で止まれたのが勝因。

ケース2:強風と横断歩道の白線

  • 状況:風が急に強まり、白線の上で足が滑りそうに。
  • 行動白線をまたいで乾いた帯へ→建物の内角でやり過ごす。
  • 振り返り角で減速→一旦停止→向きを変えるを守れた。

ケース3:不審者情報でルート変更

  • 状況:近所で声かけ情報。通常の裏道を避ける必要。
  • 行動商店前の連鎖ルートへ変更→交番前を通過学校へ連絡
  • 振り返り人目の連続性がある通りを選べた。

Q&Aと用語辞典:迷いを先回りで解消

Q&A(よくある疑問)

Q1.店舗の軒で待つのは迷惑?
**A.入口をふさがず、「雨宿りさせてください」**と一言。早めに移動先を決め、長居しないのが礼儀。

Q2.交差点の中央に取り残されたら?
A.無理に戻らず、島状の安全地帯で待つ。信号が変わったら最短の歩道へ。白線の上では立ち止まらない

Q3.不審者に追われたら?
A.人目のある店・交番へ直行。「助けてください。○○小の△△です」とはっきり携帯は歩きながら使わない

Q4.雷で大きな音がしたら?
A.金属柵から離れ、建物沿いで低くしゃがむ単独の高木・広場は避ける。

Q5.友だちとはぐれたら?
A.地図の番号順に次の待避点へ進み、そこで待つ逆走しない

Q6.店が閉まっていた場合は?
A.同じ通りの次の庇へ。閉店でも屋根と人目があれば一時待避は可能。入口はふさがない

Q7.地下道は安全?
A.豪雨時は水が集まりやすい地上の屋根下を優先。

Q8.小さな子の合図は?
A.片手を高く上げて振る大声で三語(止まる/右による/店に入る)。

用語辞典(やさしい言い換え)

  • 待避:危険を避けるため一時的に身を寄せること。
  • 庇(ひさし):建物入口上の出っ張り。雨や落下物から守る。
  • ピロティ:建物の1階が抜けた空間。屋根があり雨よけになる。
  • 合流点家族や先生と落ち合う場所
  • 風上/風下:風が来る側/流れていく側
  • 安全地帯:交差点の島状の待機場所
  • 白線:横断歩道の白い帯。濡れると滑りやすい。

持ち物チェックと貼り札テンプレ

日常持ち(ランドセル・かばん)

  • 小さなタオルばんそうこう連絡カード(氏名・学年・保護者連絡)/反射材シール
  • 折りたたみ雨具軽く短いもの。風に弱い傘は避ける。

季節追加

  • 飲料日よけ帽子
  • 手袋耳あて滑りにくい靴

玄関貼り札(そのまま使える)

「傘よし/靴底よし/合図よし」
待避点1→2→3、10分ごとに前へ
連絡カードは外ポケット


まとめ:道の“影”をつないで、家まで鎖のように

車から離れ、屋根で守り、人目のある場所番号順に鎖のように並べておけば、どんな事態でも次の一手が見えます。地形を見る目施設の開放性を日々更新し、家族・学校で共有しておくこと。通学路は、準備次第で不安の道から「守られた道」へ変えられます。

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