【南海トラフが来たら危ない県ランキング】被害予測・津波到達・実務対策を地域別に深掘り

南海トラフ地震は、日本の太平洋側に沿う海溝域で起こるマグニチュード8〜9級の超巨大地震です。政府評価では今後30年以内の発生確率が7割超とされ、発生すれば激しい長周期・短周期の揺れ、広域の津波、長期の停電・断水・物流寸断が同時多発します。とりわけ沿岸の平野・河口低地・埋立地は、揺れ・液状化・津波の複合リスクを抱えます。

本稿は、津波の規模・到達の早さ・地盤条件・人口と都市機能・インフラと医療アクセスを複合的に見て、相対的に**「危険性が高い」と語られやすい5県をランキング形式で整理し、“起きやすい連鎖”をどこで断つかを、家庭・学校・職場の運用に落とします。ランキングは断定ではなく相対評価**です。公式ハザード・自治体公表値で居住地の条件を必ず上書きし、あなたの生活導線に合わせて読み替えてください。

上位5県の総覧（要点比較）

数値は最大クラス想定の目安表現です。地形・地点・想定条件により変動します。居住地の公式想定で必ず上書きしてください。

この表の読み方：左の順位は“総合的な相対評価”です。**「津波到達が早い×人口が沿岸に偏る×基盤施設の集中」**など、連鎖が起きやすい条件が重なるほど順位が上がります。個々の市区町村では評価が逆転することもあります。

1位｜高知県が「危ない」とされる理由と、暮らしに落とす対策

リスクプロファイル：外洋直面・高遡上・到達の早さ

高知県は外洋に開いた太平洋沿岸が長く続き、湾形の“くびれ”や谷地形で津波エネルギーが局所増幅します。最大クラスでは30m級の遡上が想定される地点が点在し、到達は最短で数分。震度7相当の強い揺れが見込まれる地域もあり、家具転倒・出火・道路の亀裂がほぼ同時に発生し得ます。

津波・揺れ・地盤：通学路と生活動線を“上へ”書き換える

津波は川沿い・谷筋・道路の切り通しに沿って一気に遡上します。学校・職場・買い物の動線を標高と段差で再設計し、徒歩で高台・避難ビルまでの所要分数を家族ごとに身体化。液状化しやすい低地・埋立地は長期のライフライン停止と地盤沈下を前提に、在宅継続／外部避難の判断レバー（浸水深・警戒レベル・夜間/悪天候）を文字化します。

優先対策：鍵・段差・暗闇を先に潰す

避難ビルの鍵・開放時間・屋上導線を平時に確認。夜間の照度と足元の段差を実地でチェックし、懐中電灯はヘッドライト型を基準に。家庭は寝室の安全化（大型家具固定・飛散防止フィルム）、ヘルメット・ライト・靴・手袋をベッド脇へ。沿岸は車でなく徒歩を原則に、家族集合地点を1か所固定して迷いを消します。

避難行動のタイムライン（例）

2位｜静岡県：東海想定域直近、大都市・港湾・平野の複合リスク

リスクプロファイル：強震＋広域津波＋液状化の三重苦

静岡は東海想定域に隣接し、平野・港湾・工業集積が強い揺れ・液状化・津波の三重苦を生みます。沿岸区には10m超の津波が想定される地点も。河口低地・埋立地は地盤変状とライフライン断が長引きやすい点が難所です。

津波・揺れ・地盤：内陸シフトと“階層の強化”

富士川扇状地や沿岸低地では、内陸の台地・高台の公共施設に一時生活拠点を移す“二層生活”の準備が有効。家具固定・耐震診断に加え、液状化しにくい地盤を選び、倉庫・データ・家族の合流場所を別層に持つと復旧が速まります。港湾近傍は津波×危険物の複合を前提に操業停止と物流切替の手順を共有します。

優先対策：港湾・幹線・医療の“三角形”を攻略

港湾・幹線道路・基幹病院を結ぶ三角形の内側で住まい・職場を選ぶと、救急到達・物資受け入れ・通院が途切れにくくなります。発災直後はガス遮断・初期消火・出火監視を役割分担。EV/PHEV・ポータブル電源で在宅の電源層を厚くし、冷蔵の優先消費を平時から練習しておきます。

内陸移動の優先順位（例）

3位｜和歌山県：紀伊水道の“地形増幅”と河口低地への圧力

リスクプロファイル：狭水域の集束と湾奥の高水位

和歌山は紀伊水道の狭い海域で津波エネルギーが集束しやすく、湾奥・河口低地で10m超の浸水が想定されます。内陸の急峻地形では土砂災害が重なり、道路・橋梁の途絶が孤立を生みやすい構造です。

津波・揺れ・地盤：谷筋と橋を避ける逃げ方を身体化

津波は川を逆流。橋は渋滞と落橋のリスクでボトルネックになりがちです。谷筋を避け、尾根筋や台地へ抜ける徒歩ルートを昼・夜・雨で実測しておきましょう。長周期の揺れを想定し、古い非構造部材の落下・タンスの転倒を未然に断ちます。

優先対策：避難ビルの“実使用性”と在宅継続の衛生

避難ビルの鍵・解放時間・トイレは現地確認が必須。孤立短縮の鍵は衛生の連続運用です。飲料水・簡易トイレ・除菌・手指の仕上げ消毒を1週間分確保し、調理不要の主食を高齢者・子ども仕様でそろえます。

谷筋回避ルートの設計メモ（例）

4位｜三重県：熊野灘の直撃と伊勢湾の“内湾リスク”が同居

リスクプロファイル：外洋直撃×内湾長期浸水

三重は熊野灘の外洋沿岸が高遡上津波に晒される一方、伊勢湾奥の都市域は津波×高潮×内水の重なりで長時間の浸水が懸念されます。震度7級の強震域が想定され、橋梁・トンネル・鉄道の被災は広範に及ぶ可能性があります。

津波・揺れ・地盤：二つの顔に二つの手

外洋側は**“より早く・より高く”を絶対原則に、海沿い滞在時間を最小化。湾奥側は止水板・土嚢・排水路清掃など事前整備で床上浸水の深さと時間を削ります。液状化懸念地では基礎形式・地盤改良**の確認を徹底。

優先対策：拠点の冗長化と観光・農漁業の再起動計画

物資拠点・避難所・医療は複数候補を持ち、一本の道路が切れても回る網を築きます。観光・農漁業は水・電源・冷蔵の確保と販路の迂回を事前に固めると、操業再開が加速します。

止水・排水チェックシート（自宅/店舗）

5位｜愛知県：巨大都市圏の集積リスクと液状化・湾奥津波の重なり

リスクプロファイル：人口・産業・交通が密に絡み合う

愛知は人口・産業・交通が高密度に集中し、広域強震・液状化・湾奥津波＋高潮が都市機能の長期低下を招きやすい構造。サプライチェーンの結節点が多く、全国への波及も大きくなります。

津波・揺れ・地盤：広域停電前提の“在宅継続力”を厚くする

十数分〜数十分の津波到達目安でも、渋滞×出火の都市部で車避難は致命的遅延を招きます。徒歩・自転車で堤内高所・堅牢ビルへ。液状化エリアは上下水停止・トイレ問題が長引く前提で、水・衛生・電源・情報の在宅継続層を分厚くします。

優先対策：多拠点BCPと家庭内の階層防災

企業は代替拠点・遠隔勤務・分散倉庫の多層BCPを平時から回し、家庭は寝室の安全化・初期消火・携行安否カードを標準化。マンション上層階は垂直避難の利点を活かしつつ、長周期・長期停電への備え（簡易トイレ・給水車受け入れ動線）まで描いておきます。

在宅継続の装備レイヤー（目安）

行動設計のまとめ表（家庭・学校・職場で共通運用）

津波時の“合図と言葉”テンプレ（家族・職場で共有）

• 合図：「（名前）今から徒歩で上へ。合流はA地点」
• 返事：「了解。車は使わない。B階段で向かう」
• 確認：「到着したら**メッセージ“着”**を送る。戻らない」

生活動線の“夜間点検”メモ

• 懐中電灯は両手が空くヘッドライト型。玄関・寝室・車内に配置。
• 階段・段差・側溝の位置を夜に歩いて記憶化。
• 避難ビルの屋上導線（非常扉の開放・鍵の位置）を事前確認。

おわりに：ランキングは“行動の順番”に翻訳してはじめて意味を持つ

ランキングは脅かすための数字遊びではありません。通学・通勤・買い物・通院という毎日の導線に重ね、上へ逃げるルートの身体化・寝室から始める安全化・在宅継続の4本柱（水・衛生・電源・情報）を整えたとき、はじめて命と暮らしを守る道具になります。今日15分、地図で標高と避難先を確かめ、夜道を一度歩く。その小さな一歩が、次の一日を守ります。