津波(つなみ)は、海の水そのものが大きなかたまりになって動き、すごい速さで陸(りく)へおしよせる特別な波です。日本のように海に囲まれた国では、正しく知ってすばやく行動することが、いのちを守るいちばんの近道。ここでは小学生にもわかる言葉で、津波のしくみ・影響・逃げ方・日ごろのそなえまでを、表やチェックリストつきでくわしく説明します。
1. 津波のきほん|どんなもの?
1-1. 津波の意味を一言で
- 海の水まるごとがドーンと動く現象。ふつうの波とちがい、水の量(体積)がとても大きいのがポイント。
- 海の上では波が低く見えるのに速いのが津波のこわいところ。新幹線なみの速さで遠くまで広がります。
- 海岸に近づくと、浅い場所でブレーキがかかるため、高さがグーンと大きくなることがあります。
1-2. ふつうの波と何がちがう?
- ふつうの波:表面の水が主に上下にゆれる。風が原因のことが多い。
- 津波:海の底から表面までの水がまるごと前へ動く。だから押す力(推進力)がとても強い!
- 見た目が穏やかでも流れの力が強いので、50cmでも人が足を取られて転びやすいよ。
1-3. 速さと高さのイメージ
- 深い海では超高速(時速数百km)。
- 浅い所ではスピードが落ちる代わりに高さが増す。
- 波というより**大きな流れ(濁流)**として押し寄せるため、**水が引く力(引き波)**でも流されやすい。
速さ・到達時間のめやす(かんたんな例)
海からの距離 | 来るまでの時間の目安 | できる行動 |
---|---|---|
海岸そば(~1km) | 数分以内 | ただちに高い所へ。迷ったら海と反対へ走る |
町なか(1~3km) | 数分~十数分 | 近くの**津波避難ビル(3階以上)**や高台へ |
内陸(3km~) | 十数分以上 | 川沿いをさけ、標高の高い方面へ |
ふつうの波 vs 津波(ちがい早見表)
比べるポイント | ふつうの波 | 津波 |
---|---|---|
原因 | 風 | 地震・噴火・崩れなど |
動く水の深さ | 表面が中心 | 海底から表面まで |
見た目 | 白い波頭が立つことが多い | 遠くでは低く見えることも |
危険の正体 | 打ち寄せる力 | 押す力+引く力(流れ) |
ポイント:「見た目が低い=安全」ではない! 流れの力に注意しよう。
2. 津波はどうして起こるの?
2-1. いちばん多い原因は地震
- 海の下で大きな地震が起こると、海底(かいてい)が持ち上がったり、さがったりします。
- その動きが海の水を持ち上げて、**ドドーン!**と広がり、津波になります。
- 近くの地震だけでなく、遠くの海で起きた大きな地震の津波が、何時間もかけて日本に届くこともあります。
2-2. 地震以外でも起こることがある
- 火山の噴火:海底火山や沿岸の噴火で水が大きく動く。
- 大きな土砂くずれ・山体崩壊:海や湖に落ちると水が押し出される。
- 氷や岩の大きなかたまりが海に落ちても津波になることがある。
2-3. どうやって広がる?
- 津波は同心円状に海へ広がり、深い海ほど速く遠くまで進みます。
- 海岸の形(湾や入り江)によっては波が集まり、ふだんより高くなることがあります(増幅)。
- 防波堤(ぼうはてい)を越える高さになることもあるので、施設があるから安心とは限らないよ。
原因と広がりのイメージ表
原因 | 広がり方の特徴 | 注意点 |
---|---|---|
地震(海底の上下) | 広い海へ同心円状に伝わる | 遠い場所にも届く |
噴火・爆発 | 一方向に強い波が出ることも | 灰・ガスの危険も |
土砂くずれ | 近くで急に大きな波 | 狭い湾で特に高くなる |
3. 津波が来るとどうなる?(影響)
3-1. 海や川の“サイン”
- 急に潮がひく(海岸が広く見える)/逆に急にはんらんする。
- ゴーッという地鳴りのような音がする、茶色い水のかたまりが近づく。
- 川の流れが海の方向へ逆流し、橋の下を低い方向から高い方向へ水が動くことも。
3-2. 町への影響
- 建物・車・電柱が押し流され、道路や橋がこわれる。
- 家の中にも水や泥が流れ込み、重い家具も動くほどの力。
- ガラスやがれき・流木がぶつかり、大けがの原因になる。
- 電気・ガス・水道などのライフラインが止まり、学校やお店もしばらく使えないことがある。
3-3. 津波の後に残る危険
- 水がすぐに引かない、地面がぬかるみで歩きにくい。
- 切れた電線・ガス漏れ・汚れた水など見えない危険がいっぱい。
- マンホールのフタが外れていることがある。水の中は歩かない!
- 引き波のときも危険。岸に近づくほど強い流れに引っぱられます。
津波のこわさ 早見表
大きさの目安 | 何が起こる? | 注意点 |
---|---|---|
50cm | ひざ下でも足を取られる | 無理に歩かない、すぐ高所へ |
1〜3m | 車や小さな建物が被害 | 避難ビル3階以上へ |
10m以上 | 大規模破壊・町が水没 | 早期避難のみが守り |
覚えておこう:津波は1回だけじゃない。何回も来ることがあるよ。
4. 津波が来たらどうする?(いまの行動)
4-1. 合図をまったらダメ!
- 強いゆれを感じたら、すぐ高い所へ。
- 津波警報の音(テレビ・ラジオ・スマホ)が鳴ったら、ただちに避難。
- 見に行かない・写真を撮らない。1分の遅れが命を分けます。
- エレベーターは使わないで、階段を使う。
4-2. どこへ逃げる?
- 高台・山の上・ビルの3階以上など、より高い場所へ。
- 津波避難ビルや津波避難タワーの表示を探す。
- 海・川・用水路沿いを通らず、海から離れる方向へ。橋の上は水や風で危険なことがあるよ。
4-3. 安全行動のコツ
- 徒歩で避難(車は渋滞・水没の危険)。
- 両手があくリュック、ヘルメットや帽子、運動靴が安心。
- 最初の波の後も戻らない。何回も波が来るので、避難解除までとどまる。
- 学校・家・外出先どこにいても、いちばん近い高い所へ向かうのが鉄則。
状況別・やること/ダメなこと
状況 | やること | ダメなこと |
---|---|---|
強い地震を感じた | すぐ高所へ走る | 海岸を見に行く |
警報が鳴った | 家族で合流せず各自で高所へ(後で集合) | 車で海沿いを移動 |
最初の波が去った | さらに高い所へ移動、解除まで待機 | 家や海に戻る |
ミニ持ち出しセット(こども用・軽量)
品名 | 目的 |
---|---|
笛(ホイッスル) | 助けをよぶ合図 |
小型ライト | 夜の足元を照らす |
予備マスク・ハンカチ | ほこり・寒さ対策 |
小さな水(300〜500ml) | のどのかわき対策 |
ラップ・ポリ袋 | 防水・防寒・けがの保護に応用 |
5. いまからできる備えと練習(家族で)
5-1. 家族ルールと避難コース
- **集合場所A(高台)/B(避難ビル)**を決め、別ルートも用意。
- 家→集合場所まで実際に歩いて、何分かかるか時計で計る。
- 連絡方法は「電話→SMS→災害伝言板」の順番テンプレを決めておく。
5-2. ハザードマップ・持ち物
- 住んでいる町の津波ハザードマップで浸水エリア・標高・避難ビルをチェック。
- 防災リュックには、水・ライト・電池・モバイルバッテリー・タオル・くすり・笛(ホイッスル)・簡易トイレ。
- 履きなれた運動靴とレインコートは玄関に定位置で、夜でもすぐ取れるように。
- 高さの目安:ビル1階=約3m、3階=約9〜10m。でも地形や建物でちがうので案内表示を最優先に。
5-3. 情報の見方を知ろう
- 津波注意報:海辺に近づかない。川の河口も危険。
- 津波警報:ただちに避難。高い所で待機。
- 大津波警報:命を守る最善の行動。より高い場所へ、長時間とどまる。
- 遠地(えんち)津波にも注意。遠くの地震でも時間差で到達します。
津波情報 早見表
区分 | 危険度 | 行動のめやす | よくある合図 |
---|---|---|---|
津波注意報 | 中 | 海岸・河口に近づかない | サイレン・TVテロップ |
津波警報 | 高 | 直ちに避難、高台・避難ビルへ | 緊急速報音・アナウンス |
大津波警報 | 極高 | より高い場所へ、解除まで戻らない | 繰り返しの警報・避難指示 |
まとめの合言葉:「ゆれたら すぐに たかい ところ」——これを家族みんなで声に出して覚えよう!
家族で使えるチェックシート(コピペOK)
- 集合場所A(高台):____ 集合場所B(避難ビル):____
- 家からAまでの時間:__分 Bまで:__分
- 避難ルート:海から遠い道/階段ルート/橋を使わない
- 連絡文テンプレ:「無事。○○にいる。○時にまた連絡。」
- 玄関に置く物:運動靴/レインコート/懐中電灯/ホイッスル/小さな水
- ハザードマップの確認日:__年__月__日(半年ごとに見直し)
最後に:津波は待ってくれない災害。でも、知っていれば動ける災害でもあります。今日、家族で避難コースを1回歩くことからスタートしよう。