震度5強で家具はどう動く?|部屋別シミュレーションガイドをプロが徹底解説

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防災

震度5強は立っているのが難しく、固定の甘い家具が大きく移動・転倒・落下しやすい強さです。被害の出方は、床材(摩擦)・壁の強さ・家具の高さと重心・固定方法・設置向き・中身の詰め方で大きく変わります。

本記事は、部屋別(リビング/寝室/台所/子ども部屋・在宅ワーク/玄関・水回り・収納)に「何がどの方向へ、どれくらい動くのか」を目でイメージできるように解説し、固定・配置・避難動線表・手順・チェックリストで具体化します。最後にQ&A用語辞典も付け、今日から実行できる改善策まで落とし込みました。


  1. 1.まず結論:転倒・移動の「三条件」を抑える
    1. 1-1.三条件=高さ・重心・向き
    2. 1-2.「移動」は固定不足×低摩擦で加速
    3. 1-3.最優先は「寝る場所・出入口・ガラス」
    4. 1-4.床材別の“すべりやすさ”目安
  2. 2.リビング:テレビ・本棚・背の高い収納の動き
    1. 2-1.テレビ周りのシミュレーション
    2. 2-2.本棚・飾り棚のシミュレーション
    3. 2-3.ソファ・ローテーブルのシミュレーション
  3. 3.寝室:タンス・ベッド・照明の落下
    1. 3-1.タンス・チェストのシミュレーション
    2. 3-2.ベッド周りのシミュレーション
    3. 3-3.照明・窓ガラスのシミュレーション
  4. 4.台所:食器棚・冷蔵庫・加熱機器の挙動
    1. 4-1.食器棚・吊戸棚のシミュレーション
    2. 4-2.冷蔵庫のシミュレーション
    3. 4-3.加熱機器・ガスボンベ
  5. 5.子ども部屋・在宅ワーク:小物の飛散と転落
    1. 5-1.学習机・本棚のシミュレーション
    2. 5-2.PC・モニター・周辺機器
    3. 5-3.ベランダ・窓際・ロフト
  6. 6.玄関・水回り・収納:避難動線の確保
    1. 6-1.玄関・廊下
    2. 6-2.浴室・脱衣所・トイレ
    3. 6-3.納戸・押し入れ
  7. 7.固定・配置・避難の「実務」:今日から変えられること
    1. 7-1.固定の三枚看板(重ね技)
    2. 7-2.配置の黄金則
    3. 7-3.施工がうまくいく小ワザ
    4. 7-4.避難の初動(家の中)
  8. 8.間取り別ミニ設計:ワンルーム/2LDK/戸建て
    1. 8-1.ワンルーム
    2. 8-2.2LDK(家族)
    3. 8-3.戸建て(二階建て)
  9. 9.点検と更新:暦に組み込む“家の耐震ルーティン”
    1. 9-1.月1点検(10分)
    2. 9-2.季節前見直し(梅雨前・台風前・年末)
    3. 9-3.家族訓練(年2回)
  10. Q&A(よくある疑問)
  11. 用語辞典(やさしい解説)
    1. まとめ

1.まず結論:転倒・移動の「三条件」を抑える

1-1.三条件=高さ・重心・向き

  • 高さ胸より上の家具は、揺れで上部が先に大きく振れてこの原理で転びやすい。
  • 重心:**上に重い物(本・食器・家電)**が載ると、一度揺れてから前に倒れ込む力が増す。
  • 向き扉や引き出しが揺れの進行方向に開く向きだと、自重で飛び出し→前荷重→前倒れになりやすい。

1-2.「移動」は固定不足×低摩擦で加速

  • フェルトの“滑りやすくするタイプ”は移動距離が伸びる。滑り止めは粘着系やゴム系を選ぶ。
  • フローリング+埃数十センチ単位でズレることがある。脚の下に粘着マットで摩擦を上げる。

1-3.最優先は「寝る場所・出入口・ガラス」

  • 寝室の頭上避難扉や廊下大きなガラス前無配置または低い家具が原則。倒れても人に当たらない配置が最後の守り。

1-4.床材別の“すべりやすさ”目安

床材すべりやすさよく起こる挙動対策の要点
フローリング(ワックス強)高い数十cmの横滑り粘着マット短脚化
フローリング(マット有)位置ずれマットの四隅固定
低いズレにくいが沈み込み脚面積を広く
タイル・樹脂高いすべり+跳ねゴム脚/下部ストッパー

2.リビング:テレビ・本棚・背の高い収納の動き

2-1.テレビ周りのシミュレーション

  • 薄型テレビ前方へ30〜50cmスライド→転倒が典型。角から落ちると破損が大きい。低い台でもテレビ本体だけが前に出やすい。
  • テレビ台:引き出しが自重で飛び出し重心が前へキャスター付きは揺れと共振して移動しやすい。
  • 壁掛け下地のない石こう面アンカー不十分だと脱落の恐れ。
  • 対策耐震ベルト/ポール/ストッパー壁-台-テレビを一体化。引き出しロック背面配線の余裕も確保。

テレビ重量×台の種類 早見表

テレビ重量台の種類典型リスク対策
〜10kgローボード前滑りベルト+前縁ストッパー
10〜20kgキャスター台移動+前倒れキャスター固定+ベルト
20kg超壁掛け取付部の抜け下地固定+補助ワイヤ

2-2.本棚・飾り棚のシミュレーション

  • 上段が重い本棚前倒れが典型。可動棚棚板が飛び出し落下物になる。
  • ガラス扉枠の歪み→割れの流れ。観音開き自重で開放しやすい。
  • 対策L字金具+ベルト+粘着マット三点固定最上段は軽量物扉ロック+飛散防止

2-3.ソファ・ローテーブルのシミュレーション

  • 脚が細いソファ数cmのズレキャスター付移動しやすい。
  • ガラス天板テーブル跳ねてずれることがある。
  • 対策脚下に耐震マットキャスターはロックガラス天板は滑り止め角保護も有効。

リビングのリスクと対策 早見表

家具/設備典型動き主因対策の優先度
薄型テレビ前滑り→転倒低摩擦・重心前耐震ベルト+台固定 ★★★★
本棚(上重)前倒れ高さ・上重L金具+ベルト ★★★★★
ガラス扉棚開放→破損自重開放扉ロック+飛散防止 ★★★★
テーブル跳ねズレ天板遊び滑り止め ★★★

3.寝室:タンス・ベッド・照明の落下

3-1.タンス・チェストのシミュレーション

  • 引き出しが自重で飛び出し前荷重→前倒れ鏡台は鏡が振れて割れやすい。
  • 脚の高いチェスト横揺れで脚が折れることも。
  • 対策L字金具+前倒れ防止ベルト引き出しロック上段は軽量天板に重い収納を置かない

3-2.ベッド周りのシミュレーション

  • ヘッドボードの倒れ込み枕元の照明/時計の落下が典型。2段ベッドは上段の転落に注意。
  • 対策:枕元上は無配置ヘッドボード背面を壁固定足元側へ重い収納就寝時は靴・ライト・笛を手元へ。

3-3.照明・窓ガラスのシミュレーション

  • ペンダントライト大きく振れて器具同士が接触し破損のおそれ。
  • 大きな窓サッシ歪み→ガラス応力集中で割れやすい。
  • 対策短い照明/密着型へ、飛散防止フィルム厚手カーテンで飛散緩和。

寝室のリスクと対策 早見表

家具/設備典型動き主因対策の優先度
タンス/チェスト引出飛出→前倒れ上重・引出自重金具+ロック ★★★★★
ヘッドボード倒れ込み未固定壁固定 ★★★★
ペンダント/窓振れ/破断振幅増大密着型+飛散防止 ★★★★

4.台所:食器棚・冷蔵庫・加熱機器の挙動

4-1.食器棚・吊戸棚のシミュレーション

  • 観音扉・引き戸自重で開放し、食器が一斉に飛び出す。吊戸棚は蝶番が外れ落下の恐れ。
  • 対策扉ロック棚板の段差でストッパー化重い食器は下段吊戸棚は耐震ラッチガラス扉は飛散防止

4-2.冷蔵庫のシミュレーション

  • 前方に数cm〜10cm移動上部が壁に当たり変形することも。キャスターが原因の横移動が起こりやすい。
  • 対策背面/上部の固定ベルト前脚を下げてキャスターを浮かせる下部ストッパー周囲の隙間に余裕を確保。

4-3.加熱機器・ガスボンベ

  • コンロ周辺の小物落下→着火源の順で危険が増す。
  • 対策耐震ストッパーで機器の滑走抑制ボンベは転がらない収納出火時の遮断手順を貼付火の回りに可燃物を置かない

台所のリスクと対策 早見表

家具/設備典型動き主因対策の優先度
食器棚扉開放→落下自重開放ロック+下段重心 ★★★★★
吊戸棚ラッチ外れ取り付け弱耐震ラッチ ★★★★
冷蔵庫前/横移動キャスターベルト+脚調整 ★★★★
カセット/調理器落下/滑走低摩擦滑り止め+遮断手順 ★★★

5.子ども部屋・在宅ワーク:小物の飛散と転落

5-1.学習机・本棚のシミュレーション

  • 引出し飛出→前倒れ机上の照明跳ねて落下
  • 対策引出ロック机と壁をL金具で固定スタンドはクランプ固定机上は軽量化

5-2.PC・モニター・周辺機器

  • モニターは前滑り→角から落下プリンターは高い振動で移動外付け機器は配線に引かれて落下
  • 対策粘着マット/ベルト配線は余裕を持たせて結束(引っ張られても抜けやすく)、電源タップは固定

5-3.ベランダ・窓際・ロフト

  • 鉢植えや小物が飛散手すり越しの落下も。ロフトははしごが外れる恐れ。
  • 対策窓際は軽量物のみ鉢は低い位置落下防止バーロフト金具点検

子ども部屋・在宅ワーク 早見表

家具/設備典型動き主因対策の優先度
学習机引出飛出→前倒れ自重開放ロック+L金具 ★★★★
モニター/機器前滑り/移動低摩擦/振動粘着マット ★★★★
ベランダ小物飛散/落下軽量/高所低位置化 ★★★

6.玄関・水回り・収納:避難動線の確保

6-1.玄関・廊下

  • シューズラック転倒→扉塞ぎが典型。姿見が破損→散乱
  • 対策ラック上部固定姿見に飛散防止廊下は物を置かない玄関に懐中電灯と靴を常備。

6-2.浴室・脱衣所・トイレ

  • 湿った床+割れ物負傷リスク増洗濯機が移動してホース外れも起きやすい。
  • 対策洗濯機ベルト/ストッパー棚の落下防止マットでガラス片カバー予備の止水キャップ

6-3.納戸・押し入れ

  • 高い位置の重箱/家電飛び出す引戸が外れる避難遅延
  • 対策下重心化落下防止バー引戸ストッパー懐中電灯の定位置

動線確保 早見表

場所典型障害対策
玄関ラック転倒/鏡破片上部固定/飛散防止/床を空ける
廊下置物の落下置かない・固定
水回りガラス片/家電移動ストッパー/マット

7.固定・配置・避難の「実務」:今日から変えられること

7-1.固定の三枚看板(重ね技)

  • L字金具:**壁の下地(柱/間柱)**に効かせる。位置は下地探し器・針で確認
  • ベルト/突っ張り:上下でを取る。ベルトは上部と下部の2本が安定。
  • 粘着マット底面の摩擦を上げる。脚面積を広くし、**貼付温度15〜35℃**を守る。

7-2.配置の黄金則

  • 重い物は下、軽い物は上本・食器・水最下段へ。
  • 扉や引出は揺れ方向と直交する向きで設置。開口が前向きならロックを追加。
  • ガラス前は空間を作り、通路は90cm確保寝床の頭上は無配置

7-3.施工がうまくいく小ワザ

  • 貼付前は脱脂→乾燥→圧着→24時間養生
  • ネジは同径で長さだけ足さない下地に合う径・長さを選ぶ)。
  • 原状回復が必要なら台座プレート+粘着石こう用アンカーなどを使う。

7-4.避難の初動(家の中)

  • 靴を履く玄関を開ける(建付けが変わる前に)、ブレーカー位置確認大声で所在確認通路の障害をすぐにどかす。

固定・配置のチェックリスト

項目できている要対応
背の高い家具はL金具固定
テレビはベルトで台と一体化
引出・扉にロック
重い物は下段、ガラス前は空ける
玄関・廊下は無配置
冷蔵庫は脚調整+上部ベルト
洗濯機はストッパー装着

8.間取り別ミニ設計:ワンルーム/2LDK/戸建て

8-1.ワンルーム

  • ベッドを窓と高家具から離す。テレビは低い台+ベルト。通路はベッド脇→玄関へ一直線に。
  • 押し入れ上段には軽い布物のみ。非常袋は玄関ドア横に。

8-2.2LDK(家族)

  • 寝室は低い収納中心子ども部屋は机と棚を壁固定。廊下と玄関の動線に物を置かない
  • 台所扉ロック・下段重心を徹底。冷蔵庫周りに余裕

8-3.戸建て(二階建て)

  • 階段の踊り場に物を置かない二階寝室の頭上無配置一階は浸水・家具移動に備え低重心
  • 納戸落下防止バーで封じ、懐中電灯の定位置を家族で共有。

9.点検と更新:暦に組み込む“家の耐震ルーティン”

9-1.月1点検(10分)

  • 固定金具・ベルト・突っ張りの緩み、粘着マットの劣化を確認。
  • 通路の障害物ゼロ懐中電灯の電池非常袋の中身を声出しで確認。

9-2.季節前見直し(梅雨前・台風前・年末)

  • 家具の下重心化を再点検。飛散防止フィルムの端の浮きも確認。
  • 水回りホースの劣化止水キャップの所在、靴の置き方も見直す。

9-3.家族訓練(年2回)

  • 夜間停電想定で枕元→玄関靴+ライトで歩く。障害箇所をその場で修正。
  • 集合合図(短文)と連絡先を唱和。子どもにも役割を渡す。

Q&A(よくある疑問)

Q1.L字金具なしでベルトだけでも大丈夫?
A. ベルトは有効ですが、壁下地に効かせた金具との併用が理想。家具-壁-床の一体化で強くなります。

Q2.賃貸で壁に穴を開けられない
A. 粘着ベース+突っ張り+下部ストッパー三点セットで代替。原状回復タイプの金具も検討を。

Q3.食器棚の扉ロックは普段が面倒
A. 自動ロック(耐震ラッチ)なら揺れたときだけ作動。日常の手間が少ない方式を選びましょう。

Q4.冷蔵庫は重いから動かないのでは?
A. キャスター+低摩擦意外と動きます前脚を下げてキャスター浮かせ上部をベルト固定が有効。

Q5.ガラスは全部フィルムが必要?
A. 大きい一枚物就寝・出入口付近を優先。全部でなくても効果があります。

Q6.固定しても倒れたら?
A. 倒れても人が居ない配置へ。寝る位置・歩く通路から離すのが最後の砦。

Q7.突っ張り棒だけで安心?
A. 天井の下地に当たらない滑ります。L金具やベルトと併用し、幅方向のズレも抑える。

Q8.壁掛けテレビは安全?
A. 下地固定+適合ネジ+補助ワイヤで信頼性は高い。石こうボードのみは不可。必ず下地へ。

Q9.ロフトベッドはどうする?
A. はしご金具の緩み点検寝返り防止柵上段の物置化禁止。心配なら下段就寝へ切替。

Q10.固定用品の貼り替え時期は?
A. 粘着マットは1〜2年ベルトはほつれや金具の緩みで交換。貼付面の脱脂を毎回徹底。


用語辞典(やさしい解説)

  • 重心:物の重さの中心。高い位置にあるほど倒れやすい
  • 耐震ラッチ揺れで自動ロックする扉金具。食器や物の飛び出しを防ぐ。
  • L字金具家具と壁を直角に固定する金具。**下地(柱/間柱)**に効かせると強い。
  • 粘着マット:ゴム状の滑り止め。底面の摩擦を増やし移動距離を減らす
  • 飛散防止フィルム:ガラスが割れても破片が飛び散りにくくする透明フィルム。
  • 下地:壁の石こうボードの裏の柱など。ネジがしっかり効く場所
  • 落下防止バー:棚前面に渡す物の飛び出しを防ぐ。
  • 台座プレート:粘着で貼る平らな土台。上から金具や吸着具を固定できる。

まとめ

震度5強では、高さ×重心×向き転倒・移動の差がはっきり出ます。まずは寝室・出入口・ガラス前を片づけ、L金具・ベルト・粘着マット三点固定を基本に、重い物は下・通路は空けるを徹底。貼付前の脱脂→養生、下地固定、通路の確保という三つの習慣が、次の強い揺れで命の通り道を守ります。今日の小さな固定が、明日の大きな被害を減らします。

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