南海トラフ地震に備えようと思っても、「何から始めればよいのか」「非常袋を買えば足りるのか」「津波が来る地域ならすぐ逃げるべきなのか」で迷いやすいものです。しかも実際の災害では、地震の揺れだけで終わるとは限りません。津波、停電、断水、通信不良、道路の寸断、物資不足が重なることがあります。
そこで家庭で最初に作りたいのが、家族用の安全計画です。難しい資料ではなく、家の中の危険、出口、備蓄、避難先、連絡方法を紙1枚にまとめた「家庭内マップ」で十分です。
この記事では、南海トラフ想定エリアに住む家庭が、自分の家・地域・家族構成に合わせて安全計画を作る方法を解説します。海沿い、河口、内陸、マンション、子どもや高齢者がいる家庭でも、今日から決められる形に整理します。
結論|この記事の答え
南海トラフ想定エリアの安全計画で最初にやるべきことは、家庭内マップを作ることです。非常食を買うより先に、「どこが危ないか」「どこから逃げるか」「誰とどこで合流するか」「何を持つか」を家族で見える形にします。
家庭内マップには、少なくとも次の5つを入れます。
- 家の中の危険箇所
- 室内から外へ出る経路
- ブレーカー、ガス元栓、止水栓の位置
- 備蓄と持ち出し品の置き場
- 集合場所、避難先、連絡方法
迷ったらこれでよい、という最小解は、A4用紙1枚に「自宅の簡単な間取り」「第1避難先」「第2避難先」「家族の連絡先」「水・トイレ・ライトの置き場」を書き、玄関と冷蔵庫に貼ることです。きれいな地図でなくてもかまいません。災害時に家族が同じ判断をできることが大切です。
まず優先するのは、津波や火災など命に関わる危険から離れることです。次に、在宅避難できるか、避難所へ行くべきか、親族宅へ移動するかを決めます。後回しにしてよいのは、防災用品を一気に買いそろえることです。用品より先に、逃げる方向と連絡方法を決めてください。
これはやらないほうがよいのは、津波浸水想定区域にいるのに「警報を見てから考える」と決めてしまうこと、家族の集合場所を1か所だけにすること、スマホの地図だけに頼ること、備蓄を1か所にまとめすぎることです。
南海トラフ対策は、特別な家だけの話ではありません。海から近い家庭は津波、内陸は停電や断水、丘陵地は土砂災害、マンションはエレベーター停止や上階への水の運搬が問題になります。自分の家の弱点に合わせて、家庭内マップを作ることが出発点です。
南海トラフ想定エリアで家庭内マップが必要な理由
南海トラフ地震への備えで難しいのは、被害が一つではないことです。大きな揺れ、津波、火災、液状化、停電、断水、通信障害、物流の遅れが、地域によって違う形で起こります。
つまり、全国共通の防災リストをそのまま使うだけでは足りません。自分の家が海に近いのか、川の近くなのか、丘陵地なのか、マンションの高層階なのか、車がないと移動しづらい地域なのかで、優先順位が変わります。
家庭内マップは「家族の判断をそろえる道具」
家庭内マップは、プロが作る避難計画ではありません。家族が災害時に同じ方向へ動くための紙のメモです。
たとえば、父親は「近くの小学校へ行く」と思い、母親は「高台の公園へ行く」と思い、子どもは「家に戻る」と思っていると、合流が難しくなります。スマホがつながればよいですが、大規模災害では通信が不安定になることもあります。
家族であらかじめ「自宅が危なければここ」「そこが無理ならここ」「連絡が取れなければ県外の親族へ伝言」という形を決めておくと、迷いが減ります。
スマホの地図だけでは足りない
スマホの地図は便利ですが、停電、電池切れ、通信障害、画面破損が起きると使えなくなることがあります。災害時は、普段使っている便利なものほど使えなくなる前提で考える必要があります。
紙の家庭内マップなら、子どもや高齢者でも見られます。玄関、冷蔵庫、非常袋の中に同じものを入れておけば、誰が見ても次の行動を確認できます。
国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、住所を入力して身の回りで起こりうる災害リスクを調べられます。家庭内マップを作る前に、津波、洪水、土砂災害、高潮など、自宅周辺のリスクを確認しておくと判断しやすくなります。
家庭内マップに必ず入れる5つの情報
家庭内マップは、細かく作り込みすぎると続きません。最初は「命に関わる情報だけ」を紙1枚に集めるのが現実的です。
1. 家の中の危険箇所
まず、家の間取りをざっくり描き、危ない場所に印を付けます。
危険箇所になりやすいのは、背の高い家具、食器棚、冷蔵庫、テレビ、水槽、窓ガラス、大きな照明、倒れやすい本棚、玄関をふさぐ可能性がある家具です。
大切なのは、怖がることではなく、対策の順番を決めることです。寝る場所の近く、子どもや高齢者がよくいる場所、玄関までの通路をふさぐ物から優先して見直してください。
| 危険箇所 | 起きやすい問題 | 今日できる対策 |
|---|---|---|
| 背の高い家具 | 転倒・通路ふさぎ | 固定、配置変更 |
| 窓ガラス | 飛散・足のけが | 飛散防止、靴を近くへ |
| 食器棚 | 割れ物の散乱 | 扉ロック、低い収納 |
| 冷蔵庫 | 移動・転倒 | 固定、前に物を置かない |
| 玄関周辺 | 逃げ道ふさぎ | 荷物を減らす |
最初から全部を完璧にする必要はありません。安全を優先する人は、まず「寝室」「玄関までの通路」「台所」の3か所から始めると効果が出やすいです。
2. 室内から外へ出る経路
次に、家の中から外へ出る経路を2つ書きます。玄関だけでなく、勝手口、掃き出し窓、ベランダ、共用廊下なども確認します。
地震でドア枠がゆがむ、家具が倒れる、ガラスが割れることがあります。出口が1つしかないと思っていると、そこが使えないときに動けません。
戸建てなら、玄関と勝手口、または玄関と庭側の窓。マンションなら、玄関から共用廊下、ベランダ側の避難経路、非常階段の場所を確認します。ただし、マンションの避難方法は建物ごとに異なるため、管理規約や避難設備の表示を優先してください。
3. ブレーカー・ガス元栓・止水栓
地震後は、火災、漏電、ガス漏れ、水漏れなどの二次被害にも注意が必要です。家庭内マップには、ブレーカー、ガス元栓、止水栓の位置を書きます。
ただし、危険が迫っているときに操作へこだわりすぎるのは避けてください。火災や津波が近いなら、命を守る行動が優先です。余裕がある場合に、火の元確認や電気・ガス・水道の遮断を行うと考えましょう。
ガスや電気の復旧は、製品表示、ガス会社、電力会社、自治体、管理会社の案内を優先してください。ガス臭い、漏電が疑われる、浸水した電気設備がある場合は、自己判断で触らず専門窓口へ相談します。
4. 備蓄と持ち出し品の置き場
備蓄は「持ち出す物」と「家で使う物」に分けます。全部を非常袋に入れると重くなり、実際には持てません。
持ち出し用は、ライト、靴、手袋、スマホ充電、薬、最低限の水、身分確認に必要なものなど、避難行動に必要なものを優先します。在宅用は、水、食品、簡易トイレ、衛生用品、カセットこんろ、電池、ポリ袋など、生活を続けるためのものです。
政府広報は、水は1人1日3リットル、食品は最低3日から1週間分を備えることが望ましいとしています。消防庁も、最低限3日間程度の水や食料品を備蓄し、家族構成や住居・地域の特性に応じて必要な物を考えるよう案内しています。
5. 集合場所と連絡方法
家族が別々の場所で被災することもあります。自宅、学校、職場、買い物先、通勤途中など、発災時の居場所は一つではありません。
集合場所は1か所だけでなく、第1、第2、第3まで決めます。津波や浸水の可能性がある地域では、低い場所の公園や学校だけでなく、高台や津波避難ビルも候補にします。
| 決めること | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 第1集合場所 | 自宅前 | 危険なら使わない |
| 第2集合場所 | 近所の公園 | 津波・浸水区域か確認 |
| 第3集合場所 | 高台・避難所 | 徒歩ルートを確認 |
| 連絡先 | 県外親族 | 伝言ハブにする |
| 合図 | 「無事・〇〇へ」 | 短文で統一 |
連絡は、電話だけに頼らないほうが現実的です。SMS、災害用伝言サービス、紙のメモ、玄関への掲示、県外親族への伝言など、複数の手段を決めておきましょう。
在宅避難・高台避難・避難所移動の判断基準
南海トラフ想定エリアでは、「避難所へ行くか」「自宅に残るか」「高台へ逃げるか」の判断が重要です。ここを間違えると、備蓄があっても安全につながりません。
津波リスクがある地域は高台避難を最優先
海沿い、河口、低地、埋立地、川沿いに住んでいる場合は、津波や浸水のリスクを最初に確認します。津波は到達時間や高さが地域で大きく異なるため、自治体のハザードマップを必ず確認してください。
強い揺れや長い揺れを感じた場合、海岸や河口の近くでは、津波警報を待たずに高台や津波避難ビルへ向かう判断が必要な地域もあります。気象庁は、南海トラフ地震臨時情報が発表された場合、日ごろからの備えの再確認や、後発地震に注意した防災対応を求める情報として扱っています。地域の防災情報とあわせて確認してください。
津波避難では、車より徒歩を優先する地域が多いです。道路渋滞や液状化、橋の損傷、停電による信号停止で車が動けなくなる可能性があるためです。ただし、足が不自由な人や地域の避難計画によって事情は変わるため、自治体の案内を確認してください。
自宅が安全なら在宅避難も選択肢
自宅が津波や土砂災害の危険区域に入っておらず、建物の安全が保たれているなら、在宅避難が現実的な場合があります。
避難所は多くの人が集まり、プライバシー、感染症、トイレ、睡眠、ペット、乳幼児、高齢者のケアで負担が出ることがあります。自宅で安全に過ごせるなら、避難所へ行くより在宅で生活を続けるほうがよいケースもあります。
ただし、在宅避難を選ぶには、水、食品、簡易トイレ、灯り、情報手段、衛生用品が必要です。停電や断水が数日以上続くことを想定し、最低3日、できれば1週間を目標に備えを増やします。
避難所へ行くべき場面
避難所へ行くべきなのは、自宅にいることが危険な場合です。建物に大きな損傷がある、火災や煙が近い、津波や浸水区域にいる、土砂災害の危険がある、室内で生活できない、家族に医療的な支援が必要などが目安になります。
避難所は、何でも用意されている場所ではありません。必要な薬、眼鏡、補聴器、保険証のコピー、乳幼児用品、生理用品、ペット用品など、個別に必要なものは家庭で準備しておく必要があります。
判断を表にして家族で共有する
災害時にその場で考えるのは難しいため、家庭内マップに判断表を入れておくと役立ちます。
| 状況 | 最初の判断 | 次にすること |
|---|---|---|
| 強い揺れ・津波リスクあり | 高台へ避難 | 家族の合流より命を優先 |
| 火災・煙が近い | その場を離れる | 風下・煙を避ける |
| 自宅が安全・備蓄あり | 在宅避難 | 水・トイレ・情報を確認 |
| 建物損傷が大きい | 避難所へ | ブレーカー等は余裕があれば |
| 家族と連絡不能 | 決めた集合場所へ | 県外親族へ短文伝言 |
この表は家庭ごとに書き換えてください。海沿いの家庭と内陸の家庭では、最初に動く方向が変わります。
備蓄配置と持ち出し品の決め方
備蓄は、量だけでなく置き場所が大切です。1か所にまとめると、その場所が壊れたり浸水したりしたときに使えなくなります。
備蓄は「分散」と「優先順位」で考える
防災用品を一つの大きな箱にまとめると、管理は楽です。しかし、地震で家具が倒れて取り出せない、浸水する、玄関まで持てない、重すぎて運べないという問題が起こります。
おすすめは、玄関、寝室、台所、車、物置などに役割を分けることです。
| 場所 | 置くもの | 理由 |
|---|---|---|
| 玄関 | 靴、ライト、手袋、持ち出し袋 | すぐ出るため |
| 寝室 | 靴、笛、ライト、眼鏡 | 夜間のけが防止 |
| 台所 | 水、食品、カセットこんろ | 在宅避難用 |
| トイレ周辺 | 簡易トイレ、袋、消臭剤 | 断水対策 |
| 車内 | ブランケット、水、雨具 | 外出時の備え |
浸水リスクがある地域では、1階床近くに全備蓄を置くのは避けます。2階や高い棚、上階にも分けて保管します。ただし、重い水を高い棚に置くと落下の危険があるため、収納場所は安全性も考えてください。
水と食品は「最低3日、目標1週間」
水は1人1日3リットルがよく使われる目安です。飲み水だけでなく、調理や最低限の衛生にも使うためです。4人家族なら、3日で36リットル、7日で84リットルになります。数字だけ見ると多く感じますが、ペットボトル、ウォータータンク、普段の飲料の買い置きで分けると少し現実的になります。
食品は、非常食だけでそろえようとすると費用も置き場所も大きくなります。政府広報が紹介するローリングストックのように、普段食べる食品を少し多めに買い、古いものから食べて補充する方法が続けやすいです。
費用を抑えたい人は、特別な防災食より、米、パックご飯、缶詰、レトルト、乾麺、スープ、野菜ジュース、クラッカーなど、普段も消費できるものから始めると無駄が出にくくなります。
簡易トイレは後回しにしない
災害時に見落としがちなのがトイレです。水や食料は用意していても、断水時にトイレが使えず困る家庭は少なくありません。
簡易トイレは、1人1日5回前後を目安に考えると、必要数を計算しやすくなります。4人家族で3日なら60回分、7日なら140回分です。最初から完璧にそろえるのが難しければ、まず3日分を用意し、少しずつ増やします。
持ち出し袋は軽くする
避難時に持ち出す袋は、在宅備蓄とは別にします。特に津波や火災で急いで逃げる可能性がある地域では、持ち出し袋が重すぎると危険です。
持ち出し袋には、ライト、モバイルバッテリー、常備薬、簡易トイレ数回分、マスク、手袋、雨具、身分証コピー、現金、家族連絡メモ、最低限の水や行動食を入れます。大量の水や食料は、家に残す在宅備蓄として分けておきましょう。
よくある失敗とやってはいけない例
南海トラフ対策でよくある失敗は、備えを「買うこと」で止めてしまうことです。買っただけでは、家族が動ける計画にはなりません。
失敗1:避難先を1か所だけにする
「避難所は近くの小学校」と決めていても、その道が通れない、津波や浸水の方向にある、混雑している、家族が別方向にいることがあります。
集合場所は、最低でも第1、第2、第3まで決めてください。津波リスクがある地域では、低い場所の避難所だけでなく、高台や津波避難ビルも入れます。
失敗2:家族全員が同じ行動をする前提にする
平日の昼間、家族は別々の場所にいます。子どもは学校、大人は職場、高齢の家族は自宅、誰かは買い物中かもしれません。
「家に戻る」を唯一のルールにすると、津波や火災の方向へ戻ってしまう危険があります。命に関わる危険があるときは、家族合流より先に安全な場所へ逃げるルールを作ってください。
失敗3:車避難を前提にしすぎる
車は荷物を運べる便利な手段ですが、災害時は道路渋滞、信号停止、橋の損傷、液状化、燃料不足が起こる可能性があります。津波避難で車が詰まれば、かえって危険になることもあります。
車を使うかどうかは、地域の避難計画、家族の事情、道路状況で判断が変わります。徒歩避難ルートを必ず用意し、車は「使えたら使う」程度に考えておくほうが安全です。
失敗4:備蓄を買いすぎて管理できない
不安になると、防災用品を一気に買いたくなります。しかし、置き場所がなくなる、期限切れに気づかない、家族が場所を知らない、重くて持てないという問題が起こりがちです。
買う順番は、水、簡易トイレ、ライト、モバイルバッテリー、普段食べる食品、衛生用品からで十分です。高価な専用品は、家庭内マップを作り、自分の弱点が分かってからでも遅くありません。
失敗5:ハザードマップを見たことがない
自宅のリスクを知らずに備えると、優先順位を間違えます。海沿いなのに高台ルートを確認していない、川沿いなのに浸水深を知らない、丘陵地なのに土砂災害警戒区域を見ていない、という状態は避けたいところです。
国土交通省のハザードマップポータルサイトや自治体の防災マップで、自宅、学校、職場、親族宅、よく行くスーパー周辺のリスクを確認してください。
ケース別判断
南海トラフ対策は、家庭条件で大きく変わります。自分に近いケースから優先順位を決めましょう。
海沿い・河口・低地に住んでいる場合
津波や浸水を最優先で考えます。備蓄より先に、高台までの徒歩ルート、津波避難ビル、避難にかかる時間、夜間の道、橋やアンダーパスの有無を確認してください。
強い揺れや長い揺れを感じたら、情報を待つより先に高い場所へ向かうルールを家族で決めておくことが重要です。非常袋は軽くし、走る・歩く・階段を上がる行動を妨げない形にします。
内陸に住んでいる場合
内陸でも安心とは限りません。停電、断水、物流の停止、火災、道路の寸断、土砂災害が起こる可能性があります。
津波リスクが低い地域なら、在宅避難の備えを厚くするのが現実的です。水、簡易トイレ、食品、灯り、電源、衛生用品を優先してください。井戸、給水拠点、避難所、病院、親族宅へのルートも確認します。
マンションに住んでいる場合
マンションでは、エレベーター停止、断水、トイレ、上階への水の運搬、共用部の停電が課題になります。特に高層階では、水を後から運ぶのが難しくなります。
水や簡易トイレは多めに室内保管し、持ち出し袋は軽くします。共用部の避難経路、非常階段、掲示板、防災倉庫、管理組合の安否確認ルールも確認してください。
子どもがいる家庭
子どもがいる家庭では、学校や保育園との連携が重要です。引き渡しルール、迎えに行けない場合の対応、通学路の危険箇所、家族の合言葉を確認します。
子どもに細かい防災知識を詰め込むより、「揺れたら頭を守る」「海の近くなら高い場所へ」「家族と連絡できないときの集合場所」を繰り返し確認するほうが実用的です。
高齢者・持病がある人がいる家庭
薬、眼鏡、補聴器、杖、入れ歯、保険証コピー、医療情報メモをすぐ持てるようにします。避難に時間がかかる場合は、早めの避難や近所の協力が必要です。
体調や持病がある場合は個別事情を優先してください。避難所生活が難しい場合もあるため、親族宅、福祉避難所、自治体の要配慮者支援制度を確認しておくと安心です。
| 家庭条件 | 最優先すること | 後回しでよいこと |
|---|---|---|
| 海沿い・河口 | 高台ルート確認 | 防災用品の買い足し |
| 内陸 | 在宅避難備蓄 | 遠方避難の細部 |
| マンション | 水・トイレ・階段対策 | 重い持ち出し袋 |
| 子どもあり | 学校ルールと合流先 | 細かい用品分類 |
| 高齢者あり | 薬・支援・早め避難 | 自力だけの計画 |
家庭内マップの保管・見直し・訓練
家庭内マップは、作ったら終わりではありません。家族構成、通学先、職場、道路状況、備蓄の期限は変わります。
保管場所は3か所に分ける
家庭内マップは、玄関、冷蔵庫、非常袋の中に置くのがおすすめです。玄関は避難前の確認、冷蔵庫は家族が普段から見る場所、非常袋は外へ出た後の確認に役立ちます。
紙は濡れると使いにくくなるため、クリアファイルや防水袋に入れます。スマホで写真を撮っておくのもよいですが、紙を基本にしてください。
見直しは年2回からでよい
毎月完璧に見直す必要はありません。まずは年2回、春と秋、または防災の日と年末など、忘れにくい時期に確認します。
見直す項目は、備蓄の期限、子どもの学校や通学路、家族の連絡先、薬の種類、避難所や高台ルート、家具固定のゆるみです。台風前や梅雨前には、浸水・土砂災害のルートも確認します。
10分訓練で十分
防災訓練というと大げさに感じますが、家庭では10分で十分です。
夜にライトだけで玄関まで歩く。ブレーカーの場所を確認する。子どもと集合場所を声に出す。持ち出し袋を背負って玄関まで歩く。高台まで実際に歩いてみる。
こうした短い訓練のほうが続きます。災害時に必要なのは、完璧な知識より「体が覚えている行動」です。
よくある質問
Q1. 南海トラフ地震に備えるなら、まず何をすればよいですか?
まず家庭内マップを作ってください。防災用品を買う前に、自宅の危険箇所、出口、避難先、集合場所、連絡方法を紙に書きます。そのうえで、水、簡易トイレ、ライト、食品を増やすと、備えが生活に合いやすくなります。用品から入るより、行動計画から入るほうが失敗しにくいです。
Q2. 備蓄は本当に1週間分必要ですか?
南海トラフのような広域災害では、物流や支援が遅れる可能性があります。最低3日分をまずそろえ、可能なら1週間分を目標に増やす考え方が現実的です。水は1人1日3リットルが目安になりますが、保管場所や家族構成で調整してください。最初から完璧でなく、少しずつ増やせば十分です。
Q3. 津波リスクがある地域では、家族を待ってから逃げるべきですか?
津波リスクが高い地域では、家族を待つより先に高い場所へ逃げるルールが必要です。家族全員が同じ場所にいるとは限りません。あらかじめ第2・第3集合場所を決め、「まず各自が安全な高台へ移動する」と共有しておくほうが安全です。合流は命を守った後に考えます。
Q4. 車で避難する計画でもよいですか?
車が必要な家庭もありますが、車だけを前提にするのは危険です。渋滞、道路損傷、信号停止、燃料不足で動けなくなることがあります。特に津波避難では、地域のルールを確認し、徒歩ルートも必ず用意してください。車は使えない場合があると考え、代替案を家庭内マップに書いておきます。
Q5. マンション上階なら津波は大丈夫ですか?
上階にいれば浸水を避けられる場合もありますが、それだけで安心とは言えません。停電、断水、エレベーター停止、トイレ、水の運搬、孤立が問題になります。マンションでは、在宅避難の水・簡易トイレ・電源を厚めにし、管理組合の防災計画や共用部の備えを確認してください。
Q6. 家庭内マップは手書きでもよいですか?
手書きで十分です。大切なのは、きれいな地図ではなく、家族が見てすぐ分かることです。間取り、危険箇所、出口、備蓄、集合場所、連絡先が分かれば役立ちます。スマホで作って印刷してもよいですが、停電や電池切れに備えて紙で保管してください。
結局どうすればよいか
南海トラフ想定エリアの安全計画は、難しく考えすぎると進みません。最初にやることは、家庭内マップを1枚作ることです。自宅の簡単な間取りを書き、危険箇所、出口、備蓄、集合場所、連絡先を入れてください。これが家庭の防災の土台になります。
優先順位は、津波や火災など命に関わる危険の確認、避難先と集合場所の決定、水・トイレ・ライトの準備、家族別の持ち物、見直しの順です。防災用品を大量に買うことは後回しでかまいません。先に「どこへ逃げるか」「どこで会うか」「何日家で過ごせるか」を決めます。
最小解は、A4用紙1枚に「自宅の危険」「出口2つ」「第1〜第3集合場所」「県外の連絡先」「水と簡易トイレの置き場」を書き、玄関と冷蔵庫に貼ることです。余裕があれば、ハザードマップを確認し、高台や避難所まで実際に歩いてみます。
後回しにしてよいものは、高価な防災グッズや細かすぎる装備表です。まず必要なのは、ライト、靴、水、簡易トイレ、スマホ充電、常備薬、紙の連絡メモです。特にトイレは見落としやすいので、水や食品と同じくらい早めに考えてください。
今すぐやることは3つです。自宅のハザードを確認する。家庭内マップを手書きで作る。家族で「津波なら高台、停電だけなら在宅確認、連絡不能なら第3集合場所」と声に出して共有する。
迷ったときの基準は、「その場所に残る危険」と「移動する危険」のどちらが大きいかです。津波や火災が近いなら移動を優先します。自宅が安全で備蓄があるなら在宅避難も選択肢です。持病、乳幼児、高齢者、障がい、ペットが関わる場合は、一般論より個別事情を優先し、自治体や専門窓口、管理組合の情報も確認してください。
南海トラフ対策は、恐怖を増やすためのものではありません。家族が迷わず動き、無理をせず、必要なところで公式情報や地域の支援に頼れるようにするためのものです。紙1枚の家庭内マップから始めれば、備えは今日から現実になります。
まとめ
南海トラフ想定エリアの家庭防災では、非常袋を買うだけでなく、家族がどう動くかを決めることが重要です。家庭内マップに、危険箇所、出口、遮断ポイント、備蓄、集合場所、連絡方法をまとめると、災害時の判断がそろいやすくなります。
備蓄は最低3日分を土台にし、南海トラフのような広域災害では1週間程度を目標に増やすと安心です。ただし、買いすぎて管理できない備蓄より、普段使いしながら補充するローリングストックのほうが続きます。
海沿いなら高台避難、内陸なら在宅避難の継続、マンションなら水・トイレ・階段対策など、家庭ごとに優先順位は変わります。まずは自宅周辺のハザードを確認し、家族で同じ紙を見ながら話し合うことから始めましょう。


