結論:衛生消耗品は「勘」ではなく式で決めるのが最短です。1日の使用回数 × 人数 × 月の日数 × 予備係数(1.2〜1.5)という一つの式で、育児・介護のどちらも欠品ゼロ設計にできます。
本稿では、オムツ・おしり拭き・手袋・マスク・消毒・ティッシュの基本に、口腔ケア・防水シーツ・清拭料・排泄処理袋・洗剤・防臭材まで範囲を広げ、月間・週次の管理表、コスト計画、季節・流行期の上乗せ、置き場づくり、ごみ量の見積まで一気通貫でまとめました。
計算の骨格を作る:共通の式と前提
基本式と変数の意味
必要量[月間]= 1日の使用回数 × 人数 × 月の日数(30仮置き) × 予備係数(1.2〜1.5)
- 1日の使用回数:平日/休日・外出・入浴で増減。多い日・少ない日を平均して置く。
- 人数:対象者数(乳幼児/要介護者/介護者の手袋・マスク等)。
- 予備係数:発熱・下痢・来客・買い出し不能を吸収(通常1.2、流行期1.4〜1.5)。
対象ごとの「使い方のクセ」を先に固定
- 育児:オムツ替えは授乳前後+睡眠前後で集中。外出は予備2〜3枚を必ず携行。
- 介護:起床・食後・排泄・入浴前後に清拭や交換がまとまる。手袋は両手1回1組換算で数える。
予備係数の選び方と根拠
状況 | 目安係数 | 具体例 |
---|---|---|
通常期 | 1.2 | 発熱・下痢が月0〜1回程度。買い出し容易 |
流行期(冬の咳風邪/夏の腸炎) | 1.4 | 嘔吐物処理・洗濯増・受診増 |
長期不在/買い出し困難 | 1.5 | 台風・大雪・入院付添・在宅勤務集中 |
端数は切り上げが基本。欠品の機会損失は在庫余りより痛手です。
用途別・標準使用量の目安(1人1日)
育児(0〜3歳)
- 紙おむつ:新生児6〜10、乳児5〜8、幼児3〜5。
- おしり拭き:1〜3パック/週(1回3〜6枚×替回数)。
- おむつ用ゴミ袋:1〜2枚/日(まとめ縛り)。
- おむつ替えシート・防水マット:1〜2枚/日(洗い替え分は別途)。
介護(要介護1〜5の在宅想定)
- リハビリパンツ/パッド:3〜6枚(昼2〜4、夜1〜2)。
- 使い捨て手袋:排泄介助1回1組×回数+清掃(合計6〜12組)。
- 使い捨てエプロン/ペーパー前掛け:食事/口腔ケア/処置で1〜3枚。
- 防水シーツ:0.2〜0.5枚/日(週2〜3回交換なら日割り0.3程度)。
家族共通(衛生・台所・洗濯)
- ティッシュ:0.3〜0.6箱/人・月(1箱=150〜180組)。
- キッチンペーパー:0.2〜0.4ロール/世帯・日。
- 消毒液(アルコール/次亜塩素酸系):100〜200ml/世帯・日。
- マスク:外来通院・来客時の使用者に1〜2枚/日。
- 洗濯洗剤/酸素系漂白:洗濯回数×規定量(嘔吐・下痢対応がある月は**+20〜40%**)。
用途別・1日あたり標準値 早見表(拡張)
カテゴリ | 品目 | 1日標準(1人/世帯) | 備考 |
---|---|---|---|
育児 | 紙おむつ | 5(3〜10) | 月齢で変動 |
育児 | おしり拭き | 0.3パック | 1パック=80枚目安 |
育児 | ゴミ袋 | 1.5枚 | まとめ縛り |
介護 | パンツ/パッド | 4(3〜6) | 昼夜別運用 |
介護 | 使い捨て手袋 | 8(6〜12) | 両手1組換算 |
介護 | 使い捨てエプロン | 2(1〜3) | 口腔/食事/処置 |
介護 | 防水シーツ | 0.3枚 | 週2〜3交換を日割 |
共通 | ティッシュ | 0.5箱/人・月 | 家族合算で管理 |
共通 | キッチンペーパー | 0.3ロール/世帯・日 | 調理量で変動 |
共通 | 消毒液 | 150ml/世帯・日 | アルコール等 |
共通 | マスク | 1枚/使用者・日 | 医療・来客時 |
共通 | 洗濯洗剤 | 洗濯回数×規定量 | 嘔吐・下痢時は+20〜40% |
月間必要量の算出:モデル別に手を動かす
モデルA:赤ちゃん1+大人2(オムツ中心)
前提:乳児おむつ6/日、おしり拭き0.4P/日、ゴミ袋1.5/日、防水マット日割0.3。予備1.3。
- 紙おむつ=6 × 30 × 1 × 1.3 = 234枚
- おしり拭き=0.4 × 30 × 1 × 1.3 = 15.6→16パック
- ゴミ袋=1.5 × 30 × 1 × 1.3 = 58.5→60枚
- 防水マット=0.3 × 30 × 1 × 1.3 = 11.7→12枚(洗い替え含む)
- ティッシュ(家族)=0.5箱/人・月 ×3人= 1.5→2箱
- 消毒液(世帯)=150ml ×30= 4.5L
モデルB:要介護1人+介護者1(在宅)
前提:パンツ/パッド4/日、手袋8組/日、エプロン2/日、防水シーツ日割0.3、予備1.3。
- パンツ/パッド=4 × 30 × 1 × 1.3 = 156枚
- 手袋(両手で1組)=8 × 30 × 1 × 1.3 = 312組
- エプロン=2 × 30 × 1 × 1.3 = 78枚
- 防水シーツ=0.3 × 30 × 1 × 1.3 = 12枚
- ティッシュ(2人)=0.5箱 ×2 = 1箱/月(様子で+1)
- 消毒液=150ml ×30= 4.5L
- マスク(通院週2)=2枚 ×4週= 8枚
- 洗濯洗剤=洗濯回数×規定量(失禁・嘔吐多めの月は+30%)
モデルC:赤ちゃん1+要介護1+大人2(複合)
モデルA+Bを単純合算し、流行期は係数1.4で再計算。置き場と買い出し頻度で週次納入か月次まとめ買いを選定。
月間必要量・比較表(概算)
モデル | 紙おむつ | パンツ/パッド | おしり拭き | 手袋 | エプロン | 防水シーツ/マット | ティッシュ | 消毒液 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 234枚 | — | 16P | — | — | 12枚 | 2箱 | 4.5L |
B | — | 156枚 | — | 312組 | 78枚 | 12枚 | 1箱 | 4.5L |
C | 234枚 | 156枚 | 16P | 312組 | 78枚 | 24枚 | 3箱 | 9L |
切り上げで端数処理→翌月へ繰り越し。在庫振れを平準化できます。
季節・流行期の上乗せと介護度・月齢補正
季節要因
- 冬(感染症増):マスク・消毒液・手袋を**+20〜40%。洗剤も+20%**。
- 夏(発汗・下痢増):紙おむつ・おしり拭きを**+10〜20%。消臭・防臭袋を夜間用に追加**。
介護度・月齢による補正
- 夜間失禁が多い:パッドは夜用比率を上げる(同枚数でも吸収量を上げる)。
- 新生児期:おむつは**+30%**を一時的に上乗せし、2週ごとに見直し。
- トイレトレーニング期:日中はパンツ+パッドの薄手で総量を微減。
補正の当て方 早見表
要因 | 補正量 | どこに当てる? |
---|---|---|
冬の咳風邪流行 | +30% | マスク・手袋・消毒・洗剤 |
夏の腸炎流行 | +20% | おむつ・おしり拭き・消臭袋 |
夜間漏れ多い | 置換 | 同枚数で夜用へ置き換え |
外出が増える | +10% | ゴミ袋・おしり拭き・替え一式 |
収納・補充・衛生:回る仕組みを先に作る
置き場所は「使用現場の半径1m」に固定
- オムツ・おしり拭き・ゴミ袋はおむつ替え台の直下に7日分+予備10%。
- 手袋・エプロン・消毒はトイレ前扉裏の吊り下げポケットへ。
- 防水シーツは寝具の足元棚に3回分をまとめて格納。
欠品ゼロの補充リズム
- 週次点検(日曜):残量チェック表に○=十分/△=半分以下/×=不足を記入。
- 月次購入:算出量の9割を定期購入、1割は店頭で品切れ・サイズ替えに対応。
- 流行期は係数1.4〜1.5に切替え。
ごみ量と置き場の設計
- オムツ・パッド類の日量→週量→回収日前日まとめ縛り。
- 臭い対策:防臭袋は夜間・来客前のみ使用でコスト最適化。重曹・炭を蓋裏ポケットに入れて再利用。
置き場所×在庫量 早見表(初期セット)
場所 | 品目 | 使う人 | 置く量の目安 |
---|---|---|---|
おむつ替え台 | 紙おむつ・おしり拭き・袋 | 乳幼児 | 各7日分+予備10% |
トイレ前扉裏 | 手袋・エプロン・消毒 | 介護者 | 14日分(通院・来客対応) |
ベッド足元棚 | 防水シーツ/マット | 当人 | 3回分(洗い替え含む) |
台所下 | キッチンペーパー・消毒 | 家族 | 14日分 |
玄関収納 | マスク・予備セット | 家族 | 1ヶ月分 |
コストと買い方:年間ブレを抑える実務
年間コストの目安(モデルB:要介護1人)
品目 | 月量 | 単価例 | 月額 | 年額 |
---|---|---|---|---|
パンツ/パッド | 156枚 | ¥70 | 約¥10,920 | 約¥131,040 |
手袋 | 312組 | ¥6/組 | 約¥1,872 | 約¥22,464 |
エプロン | 78枚 | ¥18 | 約¥1,404 | 約¥16,848 |
防水シーツ | 12枚 | ¥180 | 約¥2,160 | 約¥25,920 |
消毒液 | 4.5L | ¥400/L | 約¥1,800 | 約¥21,600 |
合計 | — | — | 約¥18,156 | 約¥217,872 |
まとめ買いは最大3か月分までが無難。置き場と回転が合わないと品質劣化・置き場圧迫につながります。
買い方の工夫
- 定期便9割+店頭1割で微調整。
- サイズ変更期(S→M、L→LL)は小ロットで様子見。
- 防災備蓄は古い順に先出し(先入れ先出し)でロスゼロ。
ミニ電卓:あなたの家の必要量(手順と記入欄)
1)対象者ごとに1日あたり使用回数を用途別に書く。
2)人数と**月の日数(30)**を掛ける。
3)**予備係数(1.2〜1.5)を選ぶ(流行期は+0.2)。
4)(1)×(2)×(3)**で品目ごとに月量算出。
5)週次点検→月次購入に落とし込む。
品目 | 1日使用 | 人数 | 30日 | 係数 | 月量(切上げ) |
---|---|---|---|---|---|
紙おむつ | ×30 | ×1. | |||
パンツ/パッド | ×30 | ×1. | |||
おしり拭き(P) | ×30 | ×1. | |||
手袋(組) | ×30 | ×1. | |||
エプロン | ×30 | ×1. | |||
防水シーツ/マット | ×30 | ×1. | |||
ティッシュ(箱) | ×30 | ×1. | |||
消毒液(ml) | ×30 | ×1. |
記入後、端数は切り上げ→翌月繰越枠をメモ。翌月は在庫残を差し引き再計算します。
Q&A:迷いどころを一気に解決(拡張版)
Q1. 使い捨て手袋の数が読めない。
A. 排泄回数×1組+清掃・入浴前後で+2〜4組を基準に。予備係数1.3で計上。両手で1組換算です。
Q2. おしり拭きの減りが早い。
A. 1回の使用枚数(例5枚)を家族で共有し、多い日と少ない日を平均化。1パック80枚で割れば日量が出ます。
Q3. パッドとパンツ、どちらを多めに?
A. 夜間漏れが多ければパッド増、着脱支援が多ければパンツ増。昼夜で種類を分けて見積が最適です。
Q4. マスクは家族全員分が必要?
A. 通院・来客対応者を中心に。常時着用しない家族は最小枚数で良いでしょう。
Q5. 流行期の在庫はどれくらい上乗せ?
A. 係数1.4〜1.5。3〜4週間の買い出し困難を想定して上積みします。
Q6. 置き場が狭い。
A. 週次納入(週1購入)に切替え、詰替え・圧縮・扉裏吊りで**“縦に収納”**。
Q7. ごみの臭いが気になる。
A. 夜間・来客前のみ防臭袋を使い、普段は重曹・炭で吸着。回収日前日まとめ縛りで滞留時間を短縮。
Q8. 消毒液はどのくらい持てば?
A. 通常100〜150ml/日、流行期は**+30%**。詰替えボトルを現場ごとに置くと無駄が減ります。
用語辞典(やさしい言い換え)
- 予備係数:病気・来客・天候など想定外に備える上乗せ割合。
- 平準化:多い日と少ない日を平均に寄せて計画しやすくすること。
- 先入れ先出し:先に入れた在庫から使う運用。古いものを残さない。
- 小ロット:少量で試す買い方。サイズ替え期に有効。
- 日割り:週・月単位の交換を1日あたりに均して計算すること。
まとめ:式に入れて、置き場ごとに回す
在庫管理は感覚ではなく式で。1日の使用×人数×30×予備係数で月間必要量が即算出できます。置き場は使用現場の半径1m、補充は先入れ先出し、週次点検+月次購入で回せば、欠品ゼロ・廃棄ゼロ・家計ブレ最小が現実に。
まずは今日、あなたの家の1日使用回数を5分で書き出し、今月の必要量リストに当て込みましょう。明日からの補充が、ぐっと静かで簡単になります。