エレベーター停止時の階段移動術|事故防止の実践ガイド

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防災

止まった日こそ、落ち着いて“安全に上下する”。 停電・点検・混雑・地震や火災でエレベーターが使えないと、階段は唯一の動線になる。転倒・将棋倒し・踏み外し・荷物落下・体調急変を防ぐために、フォーム(上り/下り)→通行の作法→装備と服装→介助→ケース別対応実地目線で体系化した。

まずは**「手すり・三点接触・半歩リズム」の型を体に入れ、段差と踊り場の見え方を整える。さらに体力差・服装差・施設差を前提に訓練プランチェック表**まで用意した。


  1. 1.階段移動の基本設計:体の使い方と通行ルール
    1. 1-1.三点接触と半歩リズム(上り/下りの共通基礎)
    2. 1-2.“通行は手すり優先”と列の作り方
    3. 1-3.“事前の一手”で事故を減らす
      1. 基本フォーム・通行ルール 早見表
  2. 2.上りの技術:疲れにくい・踏み外さない
    1. 2-1.体重の載せ方(前傾すぎない)
    2. 2-2.手すりの使い方(引くより“置いて支える”)
    3. 2-3.呼吸とペース配分(息切れ前に休む)
      1. 上りで効く“疲れない工夫”表
  3. 3.下りの技術:事故が多い“降り”を守る
    1. 3-1.体の位置(重心はやや後ろ)
    2. 3-2.視線と足運び(3段先を見る)
    3. 3-3.“やってはいけない”を減らす
      1. 下りの“転ばない”対策表
  4. 4.荷物・服装・視界:転倒を呼ばない準備
    1. 4-1.荷物の持ち方(両手を空ける)
    2. 4-2.靴と服装(滑らない・絡まない)
    3. 4-3.視界の確保(傘・フード・曇り)
      1. 荷物・服装・視界 チェック表
  5. 5.介助・混雑・災害時:弱い人を先に通す設計
    1. 5-1.介助の基本(声掛け→位置→合図)
    2. 5-2.ベビーカー・車いす(原則は階段に入れない)
    3. 5-3.混雑時の流し方(将棋倒しを作らない)
      1. 介助・混雑・災害時 早見表
  6. 6.施設タイプ別の注意点:職場・駅・商業施設
    1. 6-1.オフィス・学校の階段
    2. 6-2.駅の階段
    3. 6-3.商業施設・病院の階段
      1. 施設別・危険ポイント表
  7. 7.ケース別の“つまずき”対策:雨・雪・停電・視覚不良・煙
    1. 7-1.雨・雪で濡れた段(滑る段鼻)
    2. 7-2.停電・薄暗がり(誘導灯の活用)
    3. 7-3.煙・におい(火災の疑い)
      1. ケース別・即効テク表
  8. 8.短時間で身につく訓練:週30分のミニプラン
    1. 8-1.平日5分×3本(基礎)
    2. 8-2.週末15分(応用)
    3. 8-3.月1チェック(実力確認)
      1. ミニ訓練・記録表(例)
  9. 9.Q&A(よくある疑問)
  10. 10.用語辞典(やさしい言い換え)

1.階段移動の基本設計:体の使い方と通行ルール

1-1.三点接触と半歩リズム(上り/下りの共通基礎)

  • 三点接触:常に手すり+左右いずれかの足3点を接地。足を出す前に手を置く。
  • 半歩リズム一段=半歩小刻み二段飛ばしは厳禁
  • 視線3〜4段先。足元ばかり見ると頭が下がり転びやすい

1-2.“通行は手すり優先”と列の作り方

  • 右/左側通行のルールがあれば従う。ただし空いている手すり側を優先し手を離さない
  • 追い越し禁止が原則。抜く必要があるときは踊り場声掛けしてから。
  • 列は1列肩が触れない距離=一段以上の間隔を保つ。止まるときは壁側へ。

1-3.“事前の一手”で事故を減らす

  • 靴ひもを結び直す(緩さは指一本)。かかとを奥まで入れる。
  • カバンは背負う(リュック)か体に密着両手を空ける
  • 息が上がる前に休む:踊り場で5〜10秒、壁側に寄って水分一口。

基本フォーム・通行ルール 早見表

項目ルール理由
接触手すり+足の三点転倒時の支点を確保
歩幅半歩(小刻み)踏み外しを抑える
追越原則禁止将棋倒しの起点を作らない
休憩踊り場の壁側流れを妨げない

2.上りの技術:疲れにくい・踏み外さない

2-1.体重の載せ方(前傾すぎない)

  • 胸から前ではなく“骨盤から前”へ。上体はわずか前傾膝は曲げすぎない
  • 踏面の中央に足を置き、親指の付け根で押す。

2-2.手すりの使い方(引くより“置いて支える”)

  • 強く引かない体の倒れ込みを止める支点として軽く添える。
  • カバンは反対側に持ち替え、手すり側の腕を自由に。

2-3.呼吸とペース配分(息切れ前に休む)

  • 2段で吸う→2段で吐く一定リズム
  • 階ごと5〜10秒の小休止息が弾む前に休む。
  • 心拍サイン:会話が1文で切れるならペース落とす

上りで効く“疲れない工夫”表

課題兆候すぐ効く対策
太ももが重い歩幅が広がる半歩化・手すりで体幹安定
息が切れる肩で息をする2-2呼吸・壁側休憩
足裏が痛いつま先立ち踏面中央を使う・靴紐調整
腰がつらい反り腰骨盤前・上体わずか前傾

3.下りの技術:事故が多い“降り”を守る

3-1.体の位置(重心はやや後ろ)

  • つま先から降りない踵から静かに置く。
  • 上体は直立膝を軽く曲げ衝撃を吸収

3-2.視線と足運び(3段先を見る)

  • 視線は3〜4段先。段鼻(段の縁)をぼかすように見る。
  • 手すりの握り直し踊り場手前で行う。

3-3.“やってはいけない”を減らす

  • 片手スマホ止まって操作
  • 小走り一段一歩に置き換え。
  • 荷物偏り重い側を内側手すり側の手を空ける

下りの“転ばない”対策表

危険ケースありがちな行動置き換える動作
駆け下り急ぎで速度UP一段一歩・踵から着地
片手スマホ目線が落ちる止まって操作・両手フリー
荷物偏り体が傾く重い側を内側・手すり側の手を空ける
子連れ手すりから離れる子は内側・手首を軽く保持

4.荷物・服装・視界:転倒を呼ばない準備

4-1.荷物の持ち方(両手を空ける)

  • リュックが基本。肩掛けは短くして体に密着
  • 買い物袋は左右で分散段鼻から出ない長物斜めに

4-2.靴と服装(滑らない・絡まない)

  • 踵が固く反りにくい靴溝3mm以上の底
  • 裾の長いコート前を留める
  • 手袋手すりに汗を残さない

4-3.視界の確保(傘・フード・曇り)

  • 傘は閉じる/水切りしてから階段へ。
  • フード視野を狭める
  • 眼鏡の曇り止め出入口前に。

荷物・服装・視界 チェック表

項目NG例正解例
カバン片手下げ+反対手スマホリュックで両手フリー
すり減った底溝3mm以上・踵しっかり
長い裾が遊ぶ前を留めて絡み防止
雨具差したまま下りしまう/斜め持ちで視界確保

5.介助・混雑・災害時:弱い人を先に通す設計

5-1.介助の基本(声掛け→位置→合図)

  • 名乗って短く具体に:「内側手すり側から支えます」。
  • 介助者=手すり側/被介助者=外側二人三脚
  • 段替わりでは**「今から段です」**と声で合図。

5-2.ベビーカー・車いす(原則は階段に入れない)

  • 可能ならエレベーター代替を待つ。やむを得なければ駅員・施設職員を呼ぶ。
  • 二人以上前後を支え荷重は腰で受ける。

5-3.混雑時の流し方(将棋倒しを作らない)

  • 1列固定・追い越し禁止
  • 転倒者が出たら即声掛けで列を止め、端に寄せる
  • 手すりなし側に体が寄らないよう間隔を保つ。

介助・混雑・災害時 早見表

場面一言配置注意点
高齢者介助「手すり側につきます」介助者=内側段替わりで声合図
子ども同行「手すり握ってね」子=内側手首を軽くつかむ
混雑「止まります」1列維持追越禁止
災害「壁側へ寄ります」列を間引く将棋倒し回避

6.施設タイプ別の注意点:職場・駅・商業施設

6-1.オフィス・学校の階段

  • 朝夕の一方向流が起きやすい。下り優先の時間帯上りは壁側待機
  • 掲示物の直下は落下に注意。手すり側を選ぶ。

6-2.駅の階段

  • 列の合流(ホーム→コンコース)が発生。踊り場での急停止を避け、表示に従う
  • 雨天金属縁が滑りやすい。5cm内側を踵で使う。

6-3.商業施設・病院の階段

  • 荷物・ベビーカーが混在。広い側を使い速度差を作らない。
  • 香り・照明の演出で段鼻が見えにくいことがある。3段先視線を徹底。

施設別・危険ポイント表

施設起きやすい事象先手の一手
オフィス/学校一方向の波壁側待機→流れが切れたら合流
合流・金属縁の滑り5cm内側を踵着地・手すり優先
商業施設/病院速度差・視界演出広い側で速度合わせ・3段先視線

7.ケース別の“つまずき”対策:雨・雪・停電・視覚不良・煙

7-1.雨・雪で濡れた段(滑る段鼻)

  • 段鼻(縁)から5cm内側踵着地で使う。
  • 手すり先行→足の順に。濡れ靴は拭く

7-2.停電・薄暗がり(誘導灯の活用)

  • 踊り場の誘導灯次の目印に。スマホは止まって操作
  • 片手ライトよりヘッドライトが安全。

7-3.煙・におい(火災の疑い)

  • 姿勢を低く風上へ手すり側の壁伝いに移動。
  • 非常口表示をたどり、扉の向こうの煙も確認して進む。

ケース別・即効テク表

事象危険即効テク
雨・雪段鼻が滑る踵から静かに・5cm内側
停電足元不明誘導灯→次の踊り場へ
視界・吸入低い姿勢・風上・壁伝い

8.短時間で身につく訓練:週30分のミニプラン

8-1.平日5分×3本(基礎)

  • 上り:半歩リズムで10段×3セット
  • 下り:踵着地で10段×3セット
  • 手すり:握る→離す→置くの支点感覚を練習。

8-2.週末15分(応用)

  • 荷物3kgを背負って上り下り各3本
  • 雨用の靴段鼻5cm内側の着地を反復。

8-3.月1チェック(実力確認)

  • 2階分会話が続くペースで上り下り。
  • 靴底の溝靴ひもの状態を確認・交換。

ミニ訓練・記録表(例)

日付上り(本)下り(本)荷重気づき
10/1330kg息切れ前休憩が効いた
10/8333kg踵着地が安定

9.Q&A(よくある疑問)

Q1.急いでいる時、どこまでなら走っていい?
階段は走らないが答え。踊り場だけ小走りも、他者の進路変化で危険。時間に余裕を。

Q2.荷物が重い。下りが怖い。
重い側を内側に。手すり側の手を空ける一段一歩・踵からに徹する。

Q3.ヒールや厚底靴の時は?
前足部が大きく出る靴はNG片手で靴を脱ぎ靴を手で持って降りる選択も。裸足は滑るので靴下を履く

Q4.子どもが階段を怖がる
数える遊びでリズムを作る。「1・2で吸う、3・4で吐く」。手すり側を歩かせる。

Q5.杖を使っている
杖→足→足の順で三点接触踊り場ごと休憩し、ペースは人任せにしない

Q6.めまい・息切れを感じた
壁側に寄って座り、深呼吸同伴者がいれば連絡し、無理せず中断

Q7.手すりが片側しかない
手すり側=内側を通行。対向者が来たら踊り場でやり過ごす


10.用語辞典(やさしい言い換え)

三点接触:手すりと両足のうち二つ、合計三箇所が常に階段に触れている状態。
段鼻:階段の段の縁。滑りやすいので踏み外しに注意。
踊り場:階段の途中にある平らな場所。休憩や方向転換に使う。
踏面/蹴上:踏む面の奥行き/一段の高さ。
誘導灯:停電時にも点く避難を示す灯り。
内側/外側:手すり側/反対側のこと。安全度は内側が高い。


まとめ:階段は三点接触・半歩リズム・手すり優先。上りは骨盤から前・2-2呼吸、下りは踵から静かに・3段先を見る。荷物は両手を空け、混雑時は1列固定で追越禁止。雨・雪・停電・煙でも踊り場を次の目印に落ち着いて。週30分のミニ訓練で型を体に入れ、靴・荷物・視界の三点を整えれば、エレベーター停止の日でも安全に移動できる。

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