「どこにいる?」「どこで会える?」に即答できる家庭は、いざという時に強い。 本稿は、子どもの連絡カードの作り方と、家族の合流訓練を月1回のルーティンとして回すための実践ガイドです。
作成テンプレ、更新日、声かけ練習、地図の置き方に加え、年齢別の運用、個人情報の守り方、季節・災害別の合流順、印刷と保管のコツ、ゲーム化して続ける工夫まで拡張。家で今日から始められる具体手順に落とし込みました。
子どもの連絡カードの基本:目的・項目・携帯場所
連絡カードの役割と到達目標
連絡カードは**「身元の提示」「家族への連絡」「合流地点の共有」を、周囲の大人(店員・警察・先生)が一目で理解できる形**に整える道具です。到達目標は、子ども自身がカードの内容を読み上げられ、第三者がすぐに電話できる状態を保つこと。音読10秒以内で要点が伝わると実用的です。
必須項目・推奨項目の整理
- 必須:氏名(ふりがな)/学校・学年/生年月日/保護者名/連絡先(優先順に2つ)/住所(町名まで)/当面の合流先(例:○○交番・△△商店前)
- 推奨:持病・服薬/アレルギー/血液型/筆談可否/外国語サポートの要否/顔写真(半年以内)/帰宅禁止エリア(工事・冠水)
- 注意:個人情報は必要最小限+最新版。スマホ写真だけでなく紙のカードも持つ。
携帯と保管の分散
- 携帯:ランドセル外ポケットの透明窓/制服ポケット内側の防水ミニ袋/首下げケース(服の内側)
- 保管:予備カードを家・学校・学童に1枚ずつ。家の玄関に貼り札を置き、持ち出し忘れゼロへ。
連絡カード・項目早見表
区分 | 項目 | 記入例 | 更新頻度 |
---|---|---|---|
必須 | 氏名・ふりがな | 山田はるか(やまだ はるか) | 半年ごと |
必須 | 保護者・連絡先 | 山田あきら 090-xxxx-xxxx | 変わるたび |
必須 | 合流先 | ○○交番→××商店→学校 | 月1で確認 |
推奨 | アレルギー・服薬 | 卵アレルギー/吸入あり | 医師受診後 |
推奨 | 顔写真 | 直近6か月内の写真 | 季節ごと |
推奨 | 帰宅禁止エリア | 川沿いの低地× | 状況で更新 |
家族の合流訓練:月次ルーティンの組み立て方
月1回・30分の型(平日の夜に)
- 読み合わせ(5分):子どもが自分でカードを音読。店員さん役の保護者が質問(名前・住所・合流先)。
- 地図なぞり(10分):家→学校の待避点3か所に星印、合流順(1→2→3)を書き、番号で呼ぶ練習。
- 声かけロール(10分):店・交番・学校へ短文で伝える練習を立って実施。声量・視線・姿勢もチェック。
- 装備点検(5分):カードの汚れ・写真の古さ・筆記のにじみを確認し、必要なら差し替え。
週次の“超短縮”運用(3分)
- 玄関での唱和:「1で待つ→10分で2へ→無理なら3→家に電話」。
- 持ち物タッチ:カード→タオル→反射材の3点タッチを声に出して確認。
役割ローテーション(飽きさせない)
- 先頭役:指差し・合図。「止まる/右による/店に入る」。
- 最後尾役:後方確認・人数点呼。「3・2・1、全員OK」。
- 話しかけ役:店員・交番に一言で伝える練習。
月次ルーティン・チェック表
内容 | 担当 | 実施日 | 評価(◎○△) | 次回課題 |
---|---|---|---|---|
カード読み上げ | 子 | 第1水曜 | ○ | 合流先の順番が入れ替わった |
地図更新 | 親 | 第1水曜 | ◎ | 新しい工事区間を反映 |
声かけ練習 | 親子 | 第1水曜 | ○ | 店員役の質問を追加 |
装備点検 | 親 | 第1水曜 | ○ | 写真を新しくする |
つまずきやすい場面の対処:雨・停電・通信不良・混雑
雨・強風・雷のとき
- 雨:屋根のある店先・公共施設の庇へ。横断歩道の白線・金属板では立ち止まらない。
- 強風:建物の内側の角で止まり、角を曲がる前に減速。傘は胸元の前で低く。
- 雷:広い空地・高い単独木・川原は避ける。建物沿いで低くしゃがむ。
停電・エレベーター停止のとき
- エレベーター:閉じ込められたら非常ボタン→落ち着いて名乗る→外の家族に電話。むやみにこじ開けない。
- 暗い階段:手すりを持ち、一段一段。スマホライトは足元のみ照らす。
通信が不安定・混雑で連絡が届かないとき
- 優先連絡先を2つ以上(親→祖父母→学校)カードに記載。
- SMS定型文を端末に保存:「今○○店前。10分待ち→××交番。返信不要。」
- 公衆電話の位置を地図に印。硬貨を小袋に入れて携帯。
- 混雑時は交番・店内の固定電話を頼る。
現象別・やること早見表
現象 | 1分以内 | 10分以内 | 30分以内 |
---|---|---|---|
豪雨 | 屋根下へ | 合流先1で待機 | 2→3へ移動 |
強風 | 建物の内角 | 角で減速・停止 | 風向きが弱い通りへ |
雷 | 建物沿いへ | 低くしゃがむ | 落ち着いてから連絡 |
停電 | 明かり確保 | エレベーターなら通報 | 階段でゆっくり移動 |
通信不良 | SMS・公衆電話 | 合流先2をめざす | 学校へ到達連絡 |
年齢別・家庭事情別の運用:幼児〜中学生・きょうだい差
幼児・低学年(読み上げ中心)
- カード:顔写真大きめ、合流先は絵や記号も併記。
- 訓練:音読→指差し→復唱の3手順に限定。10秒で言える短文に。
中学年前後(自分で判断)
- カード:追加欄に「行き先メモ」「帰宅禁止エリア」。
- 訓練:店員・交番での話しかけを一人で実施。報告メッセージも書かせる。
きょうだい・発達差への配慮
- 歩幅・速度に合わせ、合流点を細かく。
- 文字が苦手なら図・色・番号で示す。
- 音が苦手な子は耳あてや合図カードを追加。
年齢別・カード運用の目安
年齢 | カードの作り | 練習の中心 | 合流の工夫 |
---|---|---|---|
幼児 | 写真大・記号多め | 指差し・復唱 | 合流点を近距離で多く |
低学年 | 文字+記号 | 音読10秒 | 店員への一言練習 |
高学年 | 文字中心・追加欄 | 一人で話しかけ | SMS定型文の活用 |
中学生 | 情報最小+更新徹底 | 報告メッセージ | 代替ルートの判断 |
作って配る:カード様式・印刷・地図・貼り札
連絡カードの書式(片面・A6想定)
氏名(ふりがな):____(____)
学校・学年:____
生年月日:____
住所(町名まで):____
保護者名・連絡先①:____
連絡先②(祖父母・職場など):____
アレルギー・服薬:____
合流先:①____ → ②____ → ③____
今日の行き先メモ:____
顔写真(6か月以内)貼付欄:□
印刷・加工のコツ(長持ち・見やすい)
- 用紙:耐水紙または厚手。にじみにくいペンで。
- 加工:ラミネートまたは透明カードケース。角を丸くして安全に。
- サイズ:A4を4分割でA6。家用はA5で大きく掲示。
家→学校の「合流地図」の作り方
- 家から学校までの地図に**星印(待避)・丸(合流)**を記す。
- 番号順に**「10分で次へ」**の矢印。
- 電話マークで連絡可能地点を示す。工事・冠水は×印。
玄関の貼り札(声出し用)
「カードよし・合流順よし・電話よし」
1で待つ→10分で2→3で連絡
白線・金属で立ち止まらない
配布物・管理の表
種別 | 枚数 | 置き場所 | 更新時期 |
---|---|---|---|
連絡カード(本番) | 2 | 子ども携帯・学校 | 半年ごと |
連絡カード(予備) | 2 | 家の玄関・学童 | 半年ごと |
合流地図 | 2 | 家の壁・ランドセル | 季節ごと |
貼り札 | 1 | 玄関 | 月1で見直し |
個人情報の守り方:見せすぎない・更新忘れをなくす
見せる相手・場面を限定
- 外での掲示はしない。必要なときに取り出して見せる運用に。
- 顔写真は半年で更新し、古いものは裁断して廃棄。
情報の最小化
- 住所は町名まで、連絡先は優先2つに絞る。
- SNSにカード画像を載せない(ぼかしでも残る情報がある)。
更新忘れをなくす仕組み
- 家族カレンダーに更新日を登録。
- カードの隅に次回更新月を手書き。
- **学校行事(学期始め)**に合わせて見直す。
災害・事象別の合流順テンプレ:地震・水害・交通止まり
地震時
- 頭上の落下物を避け、建物沿いの屋根下へ。
- ガラス片の少ない通りを選び、合流先1→2→3の順。
大雨・内水氾濫
- 低地・地下へ降りない。橋のたもとは避ける。
- 段差の上→店の庇→交番の順に移動。
交通機関の長時間停止
- 駅の外の商店前・交番を合流に。
- 改札前の密集を避け、店員・警備に声をかける。
事象別・合流順の型
事象 | 1 | 2 | 3 |
---|---|---|---|
地震 | 建物の屋根下 | 商店の軒 | 交番 |
大雨 | 段差の上 | 店の庇 | 学校のピロティ |
交通止まり | 商店前 | 交番 | 家へ電話 |
続ける工夫:ゲーム化・記録・ごほうび
ゲーム化する
- タイムアタック:合図→到達までの時間を短縮。
- 宝さがし:地図の番号ごとに小さなシールを集める。
- 店員さん検定:言い方をていねい・大きな声で言えたら合格。
記録を残す
- チェック表に日付・所要時間・できた点を書き、**◎○△**で見える化。
- 写真は家内の共有アルバムへ(外部公開しない)。
ごほうび
- 達成シールを集めたら、好きなおやつや家族ゲームの時間をプラス。
Q&Aと用語辞典:迷いを先回りで解消
Q&A(よくある疑問)
Q1.個人情報が心配です。
A.町名まで・連絡先は優先2つだけ・顔写真は半年で更新。用途外の公開は避けること。
Q2.スマホだけで足りますか?
A.停電・圏外に備え、紙のカードと硬貨を必ず。端末ロック中でも見せられる緊急情報画面の準備も有効。
Q3.合流先が閉店していたら?
A.同じ通りの次の屋根下へ。入口をふさがず、明るく人目のある場所を優先。
Q4.兄弟で移動速度が違う。
A.先頭は指差し→声→復唱、最後尾は後方確認役。二列にしない。短い区間で合流点を多く置く。
Q5.練習に飽きます。
**A.**役割を交代し、店員役・警察役・先生役をローテ。タイムアタックで楽しさを足す。
Q6.学校や近所のお店に話を通すべき?
A.可能なら顔合わせを。「困ったらここに来ます」と一言伝えるだけでも安心感が違います。
用語辞典(やさしい言い換え)
- 連絡カード:名前・連絡先・合流先などをまとめた紙のカード。
- 合流先:家族が落ち合う約束の場所。
- 待避:危険から離れて一時的に身を寄せること。
- 庇(ひさし):建物の入口の上の屋根。
- 復唱:聞いた言葉をそのまま言い返すこと(合図の共有)。
- 合図カード:文字が読みづらい場合に使う絵・色・番号の札。
まとめ:カードは“紙の道しるべ”、訓練は“家族の合言葉”
連絡カードは「読める」「見せられる」「更新されている」を満たして初めて効きます。 月1回の合流訓練で、声・地図・装備を同時に磨き、**「1で待つ→10分で2→3で連絡」**を家族の合言葉に。年齢や季節に合わせて中身を見直し、迷いを前日に解消すれば、当日の足取りは軽く、安全は強くなります。